ヴィクトリア・ブレイブ、キヴォトスに行く 作:ヴィクトリア大好き
ヴィクトリア達がエレベーターから降りたとき、エレベーターの前では数人の女子生徒達がリンを探していた。
「ちょっと待って!代行、見つけた!待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
青い髪をツーサイドアップに結び、腰にサブマシンガンを2丁ぶら下げた生徒がヴィクトリア達の行く手を阻むように現れる。
「……うん?隣の、その、大人の方々は……?」
その生徒はヴィクトリアとオルクスが現れたことに驚いたような様子を見せた。
「首席行政官。お待ちしておりました。」
青い髪の生徒の後ろにいた腰に大きな翼を持った背の高い黒髪の生徒が言う。
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
さらにその後ろから尖った耳を持った赤い眼鏡を掛けた生徒も続けて言う。
「リン、彼女たちは誰なのだ?彼女達も連邦生徒会のメンバーなのか?」
状況がいまいち飲み込めていないヴィクトリアはリンに質問する。
「いえ、この人達は各学園から来られた暇そ…大事な方々ですね。」
リンはヴィクトリアに説明すると今度は先ほどの生徒たちの方を向いて言う。
「こんにちは。各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」
面倒がっている表情を隠そうともせずにリンが言う。
「あなた方がここを訪ねてきた理由はよく分かっています。今、学園で起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!そのための連邦生徒会なんでしょ!?」
彼女たちが言うには学校の風力発電所がシャットダウンしたり、矯正局に収容されていた不良生徒たちが脱走したり、スケバンのような不良生徒が自治区の生徒達を襲う件数が増えたことで治安が悪化したり、出所不明の不法流通した武器や自走兵器の数が2000%以上増加したらしい。それとツーサイドアップの青髪の生徒はユウカ、翼のある背の高い黒髪の生徒はハスミ、赤い眼鏡の生徒はチナツ、そしてもう一人のグレーのセーラー服の生徒はスズミというらしい。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの!?どうして何週間も姿を見せていないの!?今すぐ会わせて!」
「ユウカ、君の気持ちも分かるが一旦落ち着いてくれ。」
不満を言うユウカにヴィクトリアが言う。
「…私もずっと気になっていた。その連邦生徒会長とやらはどこに行った?」
オルクスもずっと抱いていた疑問をリンにぶつける。部屋の中に暫しの間沈黙が流れた。それから数秒が経って静寂を破るようにリンが口を開く。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと行方不明になりました。」
「私とヴィクトリアをここに連れてきた理由はそれか?」
リンに対し再びオルクスが疑問をぶつける。
「…はい。連邦生徒会長、“サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったことで今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態にあります。そのため、これまでは認証を迂回する方法を探していましたが先程までは見つかっていませんでした。ですが、ヴィクトリア先生がフィクサーになってくれるはずです。」
「私か?」
「はい。あなたです。」
リンの言葉を聞いて全員、しかも本人であるはずのヴィクトリアさえも一瞬驚いたような表情を見せた。
「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
「すまない。自己紹介がまだだったな、私はヴィクトリア・ブレイブだ。そして、隣にいるのはオルクスだ。彼女はもともとアエテルニタス・ノックスという名前だったんだが魔理沙に改名させられてしまってな…」
「えっと、いきなりで申し訳ないのですが魔理沙さんとはどなたなんですか?」
突如出された名前にユウカは困惑し質問をする。
「魔理沙は私の友人なのだ」
「そうなんですか…って今はそれを聞いてる場合じゃなかったですね…」
「……話を戻しますが、先生は元々連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。連邦捜査部、“シャーレ”、単なる部活ではなく一種の超法規的機関です。キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを際限なく加入させることができ、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。」
リンが言うにはこれからそのシャーレの部室にヘリで向かうらしい。しかし、リンが連絡を取った生徒であるモモカによるとシャーレ付近が矯正局から脱獄した生徒たちのせいで戦場と化しているという。そのため、ヘリを使えるような状況ではないだろう。そうなると徒歩で移動するほかないが…
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので私は心強いです」
「えっ」
「キヴォトスの正常化のために今、暇を持て余した皆さんの力が切実に必要です。行きましょう」
ユウカがそれは想定外だ、とでも言うような表情でリンを見る。しかし、他の3人は治安維持組織の所属であるため意外とやる気のあるような様子で出発する用意が出来ているようであった。
「ユウカは来ないのか?他の皆は行くみたいだぞ?別に怖いなら来なくてもよいが…」
もう既に建物を出ようとしているヴィクトリアがユウカに対して言う。
「ちょっ、ちょっと!!私も行きますよ!」
ユウカはヴィクトリア達の後を追うように建物を出た。
*****
あれから暫くして、ヴィクトリア達はシャーレの付近まで来ていた。そこでは多くの建物が破壊され、道路は爆撃の影響で陥没し、土埃が舞い上がっていた。
「なんで私たちが不良生徒たちと戦わないといけないの!?私、これでもうちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が……」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すには先生と、シャーレの部室の奪還が必要ですから。」
スケバンと戦いながらユウカは不満を漏らす。
「…文句言ってないで戦え」
オルクスが近くのスケバンに峰打ちを食らわせながら言う。
「そうだぞ、オルクスの言うとおりだ。そうしないと長引くだけだぞ。」
ヴィクトリアも義手ではない左手でスケバンに手刀を叩き込み、気絶させながらそう言った。
「先生!!下がっていてください!!ヘイローのないあなたとオルクスさんには危険です!!」
「そんなに危険なのか?」
「今のであなた方が強いのは分かりました。ですが、あなた方は銃弾で撃たれれば最悪の場合…」
チナツがヴィクトリアとオルクスを心配して言う。しかし、彼女たちは知らないが勇者と災厄である彼女たちは心臓にダメージを追わない限りは死なないのである。
「ユウカ、気をつけろ!前方に狙撃手がいるぞ!」
「えっ!?」
ヴィクトリアは狙撃手の存在に気付き、ユウカに警告を発した。しかし、もう動いても間に合わず、銃弾は確実にユウカに命中する…はずだった。その銃弾は真っ二つに斬られ、斬られた弾丸はそれぞれ別のスケバン達に命中した。
「よそ見をするな…死にたくなかったら戦いに集中しろ」
「はっ、はい!!」
その弾丸を斬った張本人、オルクスの言葉にユウカが銃弾が斬れたことに驚きながらも返事をする。そのとき、ヴィクトリアのもとにリンからの通信が入る。
「先生、今この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。狐坂ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険人物なので、気を付けてください。」
「ワカモ…彼女は何を考えているのだ?」
「そこまでは測りかねますが…先生気をつけてください。巡航戦車が接近してきています。」
「ありがとう!助かったぞ、リン。」
通信で情報を伝えてくれたリンに礼を言い、通信を切る。その瞬間、リンの情報通り巡航戦車が現れた。
「先生、クルセイダー型巡行戦車はスピードが速いので接近するのは危険です!!」
「なら、近づかなければよいのだな?」
そう言うとヴィクトリアは近くにあった道路標識を素手で引き抜いた。それと同時に巡航戦車から放たれた砲弾がヴィクトリアを襲う。しかし、それはオルクスに斬られヴィクトリアに当たることはなかった。
「助かったぞ、オルクス!!後は私に任せてくれ。」
そう言うとヴィクトリアは再び巡航戦車の方を向き、先程引き抜いた道路標識を剣のように構えた。
「先生!?危険ですから下がって…」
スズミが忠告するよりも早くヴィクトリアにより戦車が真っ二つに両断される。*1
「せ…戦車が道路標識で斬れた!?」
ユウカ達は目の前で起きた想定外の出来事に驚きを隠せなかった。暫し、彼女たちは沈黙する。
「先生って何者なんですか?」
ユウカが静寂を破ってヴィクトリアに聞く。
「…それはシャーレを奪還した後に話そう」
「わ…分かりました…」
「先生。一応、これで大方の敵は排除できたようです。」
そんな話をしているうちに近辺にいた敵はほとんど倒した、もしくは撤退させることに成功していたとハスミが報告する。
「あとはシャーレに向かうだけですね、まだ敵は全滅とまでは言えないので引き続き気を引き締めていきましょう。」
スズミも続いて言う。
「君たち、行くぞ!!」
ヴィクトリアの後に続く形で全員がシャーレに向けて移動をはじめ、その間誰も負傷することなくシャーレに到着することができた。