ヴィクトリア・ブレイブ、キヴォトスに行く 作:ヴィクトリア大好き
冬の休暇を利用してブルアカのアニメを見返しました。
せっかくなら原作ゲームもやろうかと思って見てみると、まさかの必要容量が10GB超え…
ファンパレに15GB以上持っていかれている私のスマホ(しかも容量64GBの内残り5GBしかない)では不可能でしたね。
今作では一部の人物及び物語に大きな改変がありますが、温かい目で見守っていただけるとありがたいです。
「やっと着いたのだ…」
少し疲れた様子でヴィクトリアが呟く。
「シャーレ部室の奪還、お疲れ様です。私ももうすぐ到着予定です。ヴィクトリア先生、オルクスさんは先にシャーレの地下へ向かってください。そこで合流しましょう。」
「分かったぞ、リン。」
無線越しにリンが告げ、ヴィクトリアも応じる。
「それと、本当によく頑張ったな、君たち!!感謝してもしきれないのだ!!」
ヴィクトリアはここまで一緒に戦ってくれたユウカ達に感謝を告げる。
「えっ!?でも、ほとんどヴィクトリア先生のおかげですよ!私は当然のことをしただけですし…」
「私なんてオルクスさんに助けられてばかりでしたし…」
「先生たちが最前線でどんどん相手を倒していくので、スナイパーの私なんてほとんど何もできてませんよ…」
「いや、全然そんなことはないぞ!!ハスミが奥から向かってくる不良生徒たちを鎮圧してくれたおかげでかなり楽に戦えたのだ!!」
ユウカ、チナツ、ハスミがそれぞれの感想を言う。ほぼ何もしていないと自虐するハスミをヴィクトリアは励ます。
「ヴィクトリア、そろそろ行くぞ…時間がない」
「…!?」
それまで黙っていたオルクスが口を開く。急に話し出したことに驚いたのか、隣にいたスズミは目を丸くしていた。
「…どうかしたか?」
「えっ…あ、いえ、なんでもないです。急に話し始められたので…」
「そうか。」
オルクスはヴィクトリアと二人きりの時以外はあまり喋ろうとしないのである。
「私たちも同行しましょうか?」
ヴィクトリアとオルクスだけで建物に入ることを危惧したチナツが言う。
「いや、君たちはここで待機して不良の残党が来たらここで迎え撃ってくれ。それにワカモの動向も分かっていないからな。突如、シャーレ部室を再攻撃してくる可能性もあるだろう。」
「そうですね…分かりました。それではお気を付けて…」
ヴィクトリアとオルクスはユウカ達と入り口で別れ、地下室へと降りて行った。
*****
「うーん……これが一体何なのか検討もつきませんね。これでは壊そうにも……」
シャーレの地下では狐の面を付けた少女が何かを確認していた。
「君はここで何をしているのだ?君が持っているその機械は…?」
それを部屋に入ってきたヴィクトリア達が発見する。
「…あらあら。気付かれてしまいましたか…それに私に気付かれずに部屋に入るとは、流石は戦闘慣れしているだけありますね」
「君が狐坂ワカモだな。」
ワカモはヴィクトリア達と戦おうと戦闘態勢に入る。そして間合いを詰めようとした瞬間、ワカモの視界に飛び込んできたのは、ヴィクトリアの澄んだ蒼い瞳と整った顔立ちだった。
「あ、ああ…し、し、失礼いたしました~~~!!」
「なんなんだアイツは…」
ヴィクトリアと目が合った瞬間に戦意を喪失し、走り去っていったワカモにオルクスが言う。それからワカモと入れ違いになるようにリンが地下室にやってきた。
「お待たせしました。……?何かありましたか?」
「…ここに来るときにワカモとすれ違わなかったか?」
「いえ、居ませんでしたが…」
ヴィクトリアがリンに聞くが、リンは見ていないらしい。
「…連邦生徒会長が残したのはこの機械か?」
地面に落ちた先程ワカモが持っていた機械を指さしてオルクスが言う。
「……よかった。幸い傷1つなく無事です。」
そういうとリンはその機械、タブレット端末のような何かを拾い上げヴィクトリアに渡す。
「これは…?」
「普通のタブレット端末にしか見えますが…実は正体が分からないものです。製造元やOS、システム構造、動く仕組みすら不明。連邦生徒会長はこれを“シッテムの箱”と呼んでおりました。これで先生がタワーの制御権を回復させられる筈だと…我々では起動すら出来ませんでしたが…先生なら。」
そう言うとリンは邪魔にならないように部屋から出ていった。それに続く形でオルクスも部屋を出る。リンとオルクスが出て行ったあと、ヴィクトリアは“シッテムの箱”のスイッチを押し、電源を付けた。
*****
…
Connecting To Crate of Shittim...
システム接続パスワードをご入力ください。
「パスワードって何のことだ!?食べられるのか!?」
今までの生涯であまり電子機器と関わりのなかったヴィクトリアはパスワードという言葉に困惑する。しかし、突如ヴィクトリアの脳内に謎の文字が浮かぶ。
「まさか、これか?」
ヴィクトリアは取り敢えずその文字をパスワード?として打ち込む。
……我々は望む、七つの嘆なげきを。
……我々は覚えている、ジェリコの古則を。
……。
接続パスワード承認。
現在の接続者情報はヴィクトリア・ブレイブ、確認できました。
「本当にこれがパスワードだったのか!?」
ヴィクトリアは脳内に浮かんだ謎の文字がパスワードであったことに驚く。
シッテムの箱へようこそ、ヴィクトリア先生。
生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステム A.R.O.N.A に変換します。
その瞬間、ヴィクトリアの意識は途切れた。
ヴィクトリアが目覚めた場所では青空教室(物理)であった。そこにはいくつかの机が並んでおり、その内の一つで水色の髪の少女が突っ伏して寝ていた。
「むにゃ……カステラには……いちごミルクよりもバナナミルクの方が……」
「確かにお嬢さんの言う通りカステラにはバナナミルクの方が合うぞ!!」
まるで意識があるかのような寝言にヴィクトリアは少女の意見に賛同して様子を見る。しかし、いくら待っても反応がないので顔を覗き込むと、やはり少女はぐっすり眠っていた。
「くううぅぅ……Zzzz」
「お嬢さん、起きてくれないか?私は君に用があるのだ!」
しかし、それでも少女は起きない。ヴィクトリアが少女の肩を軽く揺らすと少女は目覚めた。
「むにゃ、ううん……ありゃ?」
「急に起こしてしまってすまないな…」
「い、いえ、大丈夫ですよ!?この空間に入ってきたってことは…ヴィクトリア先生ですよね!?」
ヴィクトリアはその問いに対して頷く。
「うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」
「お嬢さん、一度落ち着いてくれ。私は特に急いでいるというわけではないからな。」
「あっ、はい!!そういえば自己紹介がまだでしたね。私はアロナ!この“シッテムの箱”に常駐するシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
落ち着きを取り戻した少女は自信満々に自己紹介をする。だが、一つだけヴィクトリアに理解できないところがあった。それは…
「よろしく頼むぞ、アロナ!ところで…君の言う“OS”とは何なのだ?SILVIAのようなものか?」
「えっと…OSというのはコンピューターを動かすために不可欠な基本ソフトウェアのことです。簡単に言えば、人間でいうところの脳みそみたいなものですね。SILVIA?というのはよく分からないですが…」
この時、アロナは気づいた。ヴィクトリアには自分の持つキヴォトスの常識が一切通用しないことに…
「なるほど…それで、この教室は死神の固有結界のようなものという認識で合っているのか?」
「いえ、ここは“シッテムの箱”の中ですね。」
「そうなのか?」
色々と話が脱線したのでアロナが話を元に戻す。
「やっと会うことができました!私はここで先生を、ずっとずーっと待ってたんです!」
「眠くなるぐらい待たせ過ぎてしまったみたいだな…すまない、アロナ。」
「いえ、ヴィクトリア先生のせいではありませんよ!!居眠りしてしまった私にも落ち度はあるので!!」
「これからよろしく頼むぞ、アロナ!」
「はい!まだ体のバージョンが低い状態でして、特に声帯回りの調整が必要ですが……これから先、様々な面で先生を頑張ってサポートしていきますね!」
互いに挨拶を交わしたところで次の話題に移る。
「あ!そうだ!形式的ではありますが、生体認証を行います♪さあ、私の人差し指に先生の指を当ててください!」
「こんな感じか?」
ヴィクトリアは左手を伸ばすとアロナの人差し指に自分の人差し指を当てる。
「うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?実はこれで生体情報である指紋を認識するんです!画面に残った指紋を目視で確認するのですが…すぐに終わります!こう見えて目も良いので!」
「凄いぞ、アロナ!」
だが、ヴィクトリアは気づいていない。アロナが指紋の確認に手間取っていたことに…
「……はい!確認終わりました!」
「よく頑張ったな、アロナ!今度、君の為にバナナミルクを持ってくるぞ!」
何も知らないヴィクトリアは完璧に遂行したと言わんばかりに元気に話すアロナにご褒美をあげることを約束する。
「それともう一つ頼みたいことがあるのだ…」
ヴィクトリアはここまでにあったこと、主にサンクトゥムタワー関連についてアロナに伝える。
「なるほど、先生の事情は大体把握できました。連邦生徒会長が行方不明になって、それが原因でタワーの制御権や行政権が失われてキヴォトスは今大混乱に陥ってると……」
「そうなのだ!!サンクトゥムタワーの復旧についてだが…頼めるか?」
「はい、サンクトゥムタワーの問題は私で何とか解決できそうです!お任せください!」
アロナはヴィクトリアからの頼みを快く承諾するとサンクトゥムタワーの復旧に取り掛かる。
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……先生!サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今、サンクトゥムタワーはアロナの統制下にあります!!」
「よくやったぞ、アロナ!それじゃあ早速、制御権を連邦生徒会に渡してくれ!」
「本当にいいんですか?今のキヴォトスはヴィクトリア先生の支配下にあるも同然で…」
「ああ、私はかつてのゼロニクスやラストエンデルスのように誰かを力で支配しようとは思わないからな。それに、私が制御権を持ったままだとキヴォトスの学園自治の仕組みを破壊してしまうのだ…」
本当に連邦生徒会に渡していいのかと、若干不安げに渋るアロナにヴィクトリアはそれをはっきりと否定する。
「分かりました!これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
アロナがサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管すると、ヴィクトリアは最後に聞いておきたかったことをアロナに聞く。
「そういえば、連邦生徒会長がどんな人なのか知ってたりしないか?」
「……私はキヴォトスに関する情報の多くを知ってはいますが、調べようにも連邦生徒会長についてはほとんど知らないんです。彼女が何者なのか、どうしていなくなってしまったのかも…お役に立てず申し訳ないです.…」
アロナは先ほどまでと比べてトーンダウンしたような様子で話す。
「そうか…ありがとう、アロナ!」
「はい!ヴィクトリア先生、最後にこの場所を出入りする方法をお伝えしておきますね…」
*****
「……はい。分かりました。」
ヴィクトリアが気が付いた時には教室から現実の地下室へと戻っており、いつの間にか照明も点いていた。先ほどの声の主はリンのようだ。彼女はどこかに電話をかけていた。さらに辺りを見渡すと壁際にはオルクスもいた。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように行政管理が進められます。」
ヴィクトリアの方に歩いて近づきながらリンが言う。同じようにオルクスもヴィクトリアの方に近づく。
「…これでもう危機は去ったのか?」
ヴィクトリアがリンに尋ねる。
「はい。おかげさまで…ヴィクトリア先生、オルクスさん。キヴォトスの混乱を防いでくださったこと、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。それと、ここを襲撃した不良たちと停学中の生徒たちの一部は先ほどオルクスさんが討伐なされました。」
「悪い、ヴィクトリア、メガネ。狐面の女だけ取り逃がした…」
「いや、他の不良たちは捕まえたのだから十分だ!!ありがとう、オルクス!!」
「オルクスさん…私のことをメガネと呼ぶのは止めていただけませんか…?それと、ここを襲撃した不良たちの残党はこちらで追跡・討伐いたしますのでご心配なく。」
いつの間にかオルクスはリンにメガネという呼び名を付けていたようだ。オルクスが他人を特徴で呼ぶのはいつもの事である。*1
「それでは“シッテムの箱”もお渡ししたので私の役目は終わったようですね。」
そう言ってリンはその場を去ろうとするが何かを思い出したかのようにヴィクトリア達の方に振り返る。
「……あ、もう一つありました。着いてきてください。連邦捜査部“シャーレ”をご紹介いたします。」
ヴィクトリアとオルクスはリンに案内されながらシャーレを見て回る。どうやらシャーレはかなり大規模な施設のようで、実験室や図書室、体育館、射撃場、さらには高級マンション顔負けの居住区まで完備されていた。
「すごい建物なのだ!!」
「…アルシェリアが住んでた城よりも広い」
そして、最後にヴィクトリア達が辿り着いたのはオフィスのような部屋だった。
「ここがシャーレのメインロビーです。長い間空っぽでしたけれど、ようやく主人を迎えることになりましたね。」
リンが扉を開いた先には封の切られていない段ボールがいくつか積み重なっていた。
「リン、シャーレの仕事は生徒達の悩みを解決することなのか?」
「それも一つですね。シャーレは権限だけはありますが、これといった目標のない組織ですので……特に強制力は存在しません。ご説明した通り、キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なくどんな学園の生徒でも、先生が希望した生徒を部員として加入させることも可能です。」
「そうなのか…」
「メガネ…この紙の束はサインが必要な書類か?」
オルクスが近くにあった書類の束を指差して言う。
「書類と言ってもサインするだけのものばかりというわけではありませんが…」
「すまない…書類の作り方を教えて欲しいのだ…」
死神には書類仕事という概念はない。あって報告書にサインを書く程度なのだ。リン曰く、書類仕事に関してのマニュアルが用意されているのでそれを参考に進めて欲しいとのことだ。何より、連邦生徒会は連邦生徒会長の捜索に全力を尽くしていてキヴォトスのあちこちで起こっている問題に対処できるほどの余力がない。ましてや、ヴィクトリアとオルクスに書類仕事を1から教える時間もほぼないのである。*2
「これからよろしくお願いしますね、ヴィクトリア先生、オルクスさん。」
「こちらからもよろしく頼むぞ、リン!!」
「……よろしく頼む、メガネ」
「だから、私はメガネではありません。確かにメガネを掛けてはいますが…」
こうして、ヴィクトリアのシャーレの先生としての生活が幕を開けた。
まだ、もう少しだけ続きます。
「クックック…超法規的な権力を持つ連邦捜査部“シャーレ”。そのトップがまさか“力”の所持者になるとは…」
キヴォトスのどこか、窓から差し込む日差しだけが照らす薄暗いデスクのある簡素な部屋で、一人の異形がぽつりと呟いた。
「クククッ…10000年ぶりでしょうか……勇者と災厄という名を聞くのは。あれはゼロニクスに仕えた振りをしていたころでしたかね… 確か当時の災厄の名前は…メアリス・リーゼスクライヴ。そして、対となる勇者は…アイン・レイツァルス。あの頃はラストエンデルスとゼロニクスを生み出した罪滅ぼしの事ばかり考えていましたが…」
そう呟くと、彼はシャーレを監視していたドローンに帰還命令を出した。
「今の私の目的は“暁のホルス”ですが…ククッ、ラストエンデルスとゼロニクスが遺していった“力”についても…ですが、“力”の被害者の彼女たちがわざわざ間接的な加害者の一人である私に協力する気があるとは思いませんがね…」
そう言って彼は椅子に腰を下ろし、しばらくしてから口を開いた。
「貴方に会えることを楽しみにしていますよ…“勇者”と“災厄”…………いえ、先生。」