ダイアナは女子寮で暮らし始め、すぐにルームメイト2人と仲良くなった。
小学校を中退し、5位の成績でカレッジに入学。親元を離れたばかり。同時に入学した2歳上のクールガイと公認カップルだったんだけど円満に別れて新しい恋を求めてます。
こんな14歳の美少女を、18歳と17歳が放っておけるわけもないから、仲良くという表現は不正確かもしれない。
でも3人は片時も離れず、寝ても覚めても昼夜問わずにおしゃべりを楽しんだ。
やはり仲良しか。
14歳から話しかけられると、ふたりはいつも緊張していたみたいだけれど。
サリー「この寮にはムカデと蜘蛛がいすぎだね。どこかに大きな巣でもつくってるんだろうか」
ジュディ「厭な取り合わせよね。
ムカデと蜘蛛って戦い合ったりしないのかしら。両方いっぺんに減ってくれるといいんだけどな」
ダイアナ「ムカデも蜘蛛も、お互いが大好物ですよ。ムカデの方が食欲旺盛だけど、蜘蛛は多産だからなあ。それにムカデはゴキブリもよく追い回して食べます。だからこの寮には、ゴキブリあんまりいないですよね」
サリー「……ダイアナって、虫、平気なの?その、ムカデも蜘蛛も、さわれたりするの?」
ダイアナ「田舎育ちですから。
虫がお嫌いでしたら、猫を何匹か飼うといいです。躾けないと、あちこちに食い散らかしたりしますけどね」
ジュディ「強いなあ。
あたしはサリーよりは耐性あると思うけど。出るたび、叩くのはあたしの役目だったし」
サリー「ああ、小さな子の面倒をずっと見てたんだっけ。何人きょうだいなの?多産な家系?」
ジュディ「いや、まあ、そこそこ。恥ずかしいから訊かないで」
ダイアナ「うちにも8つ下の妹がいるんですけど、まあ甘ったれで。
あたしが出てきちゃったから、少しはひとりでなんでもするようになるのかなって期待してるんですけどね。どうしてるかなあ」
サリー「ムカデと蜘蛛をさ、退治したいときって、猫以外にうまい方法あるの?」
ダイアナ「どちらも湿気を好みますから、水回りの換気をよくしておくとか。でも、猫を常に腹ぺこにさせておくよりも効果的な対処法って思いつけないです」
サリー「そんな猫飼ってたくないよお。
あたしは、殺虫剤に頼ろうと思う。寮で共同購入すれば、大した出費にはならないんじゃないかしら」
ジュディ「殺虫剤はお薦めしない。虫ギライな娘は食事中でも遠慮なく使うし、虫は結局耐性つけちゃうから。
強いクスリは新しい病気を生むモトよ」
サリー「ねえ、田舎ではどうしてるの?」
ダイアナ「虫対策ですか?うーん。
マラリアが流行してたり、バッタの大群が襲いかかってきたときには村ぐるみで防衛しなくちゃあいけないんでしょうけど、日常でだったら……慣れちゃいなよ、って思うんですけどね?」
ジュディ「あきらめろと言ってるのよね?抵抗なんてしないで、受け容れて、身を委ねよ、と」
サリー「もっとうまい勝利の仕方がどっかにあるんじゃないかって、もう少しジタバタしてみたいよな」
ダイアナ「そんなに虫がお嫌いですか?」
サリー「さっき、バッタの大群に襲われたらって言ったじゃない。内陸出身者にはそれ、洒落にならないのよ。
いざその場にいたら、虫だってせいいっぱい生きてるの!なんて言ってられないから。
作物だけでなく、紙や衣類など植物由来の財産が根こそぎ食べ尽くされてしまうの。戦うしかないじゃない。人類が滅んでも虫は生き残る。あいつらはどこでだって生きられるから守ってやる必要無いの。
でも私たちは、せめて自身の生活環境くらい守り抜かなくちゃ。
手始めにこの寮から、ムカデと蜘蛛を追い払いたいな。できる限りスマートにね」
ダイアナ「なるほど……そんな発想、したことなかったです。ポジティヴだし進歩的ですね。
でも、サリーが住んでたのは都会なんでしたっけ?」
サリー「ああ、この夏までプリンス・アルバートに住んでた。サスカチュワン州のどまんなかさ。開拓者の街だ。
虫なんて、物好きがペットショップで買うものだった」
ダイアナ「生きていくのに、ものすごくお金がかかりそうですね」
サリー「おうよ。だからしっかり勉強して、稼げる人間にならなくちゃならんのだ。
それがあたりまえだと思ってたんだけど、ダイアナはあたしにとってアメイジングすぎるわ。生まれつき頭がいいと、プレッシャーなんて感じなくてすむものなの?」
ダイアナ「そんな考え方したことないから、うまく答えられませんね。でもあたしだって毎日アメイジングを感じてますよ。
サリーもジュディも、私にとってはアメイジングです。これは楽しくてたまらないものだわ」
ジュディ「どうしてここまでポジティヴになれるのかしら。不思議だわ。
ねえ、ダイアナって実はホンモノのプリンセスなんじゃなくて?
平民の生活を覗きに来てて、それが珍しくてたまらないの、みたいな」