緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§112.ストリート・チルドレン

木曜日。午前10時過ぎ。

サラ・クルー、玄関を出る。

 

ポストに封筒を投函はしたが、郵便局へは寄らずに商店街へ向かって歩いていく。

人影が背後から音もなく近付いてきた。サラに追いつく。

「なにやってんだよ。また襲われるぞ」

 

サラ「ヒッ!

……そばかす?

ああ、びっくりした」

 

そばかす「ちゃんと報告したのか?レイプされましたって」

 

サラ「未遂だけどね。言ったわよ。

だから今日からは、書留の受け取りはあたしの仕事じゃなくなったの。ただの買い物回りだけ。降格ね」

 

そばかす「わかってんのかよ。次は連中、アテにしてた金が手に入らず、おまえを陵辱するだけしてポイだぜ。より危険になった」

 

サラ「心配してくれてるの?あたしを?ありがとう、そばかす。

たしかにそうかもしれないけど……これが、囮の役目だから」

 

そばかす「まったく、いらつくぜ」

 

サラ「そばかすも、あたしを見張ってるの?昨日の男たちとは知り合いなの?」

 

そばかす「知り合っちゃいねえ。

ストリート・チルドレンはお互いの動きを監視してるんだ。儲け話にゃ便乗するし、警察は共通の敵なんだよ。

昨日あんなの見ちまったから、女同士、放っておけねえじゃないか。だから忠告しにきた。それだけだ」

 

サラ「そっかあ……ごめんね、世間知らずで。

実は、校長先生からあなたのことを根掘り葉掘り訊かれたの。

それで、あたしまで、ちょっとあなたのことを怪しいなって思い始めちゃってたの。ほんとにごめんなさい」

 

そばかす「そのくらい用心深い方がいいんだよ。校長先生ってミスターだかミセスだかミンチンか?さすがに裏街道を心得てるな」

 

サラ「ミスターはいないわ。ミスだし。レイディ・ミンチンと呼ぶのが適切ね。

ねえ、そばかすって、あたしたちのスクールを知ってるの?」

 

そばかす「知ってる、とは?」

 

サラ「昨日あたしを助けてくれたとき、ミンチンの生徒だぞって言ってくれて、それで男たちがひるんだのよね。

あれ、いつ知ったのかなあって思って」

 

そばかす「おまえ、いつも同じ格好であの家から出てくるじゃないか。それを何度か見てたから、ってだけだ。邸の中のことまでは知らねえ」

 

サラ「ああ……そうか。なんだ、単純なことだったのね」

 

そばかす「でも、ちょっとだけ訊いていいか。おれ、人を捜してるんだ。

9歳の女の子で、マチルダという。今年の初めにシャーロットの寄宿学校へ預けられた。それ以来連絡をとれなくなって。

親友なんだ。ミンチンに、そんな子いないかな」

 

サラ「マチルダ……姓は?」

 

そばかす「長たらしい名前だった。おれ、いつもマチルダとしか呼ばなかったからな。

特徴は……本が大好きだ。とても物知りなんだ。

そんな新入生、いるかい?」

 

サラ「捜してみるわ。あたしも、全員を知っているわけじゃないから。

あなたのことを何と呼べば通じるかしら?」

 

そばかす「そばかす。赤毛のそばかすでわかってくれると思う。

住所不定だ。今はここらへんに棲みついているが」

 

サラ「マチルダもストリート・チルドレンだったの?そんな子は……うちには入ってこないか」

 

そばかす「良家のお嬢様なはずだよ。厳しい両親だと聞いたこともある。

しあわせでいてくれると、いいんだけどな」

 

サラ「もし見つけられたら、そばかすへ恩返しができるわね。女子学園はミンチンだけじゃないから、出入り業者のおじさんおばさんたちにもそれとなく訊いておくわ。少し時間をちょうだい」

 

そばかす「たすかるぜ。サラをまた見かけたら声かける。油断はするなよ」

 

数時間後、コッパー・ビーチズ。

アンがクラリスに報告をしている。

 

アン「もしかしてあの子かも、までは勘づいてくれたように思います。うまくパイプ役をつとめてくれるといいんですが」

 

クラリス「上首尾じゃないかしら。

ところでシャーロットにもストリート・チルドレンているものなの?見たことないんだけど」

 

アン「いませんよ。ハリファクスになら、いました。ファミリー同士の抗争も絶え間なかったですけどね」

 

クラリス「そばかすはマチルダとどこでどんな風に友情を育んだのか。設定はしっかりできているの?」

 

アン「マライア・ミンチンはファージングに細かく質問してきます。ファージングは嘘をつくのが下手で、洗脳にも耐性が無さすぎる。グリン・ゲイブルズのアンなんてフレーズを記憶させちゃったら、たちまち調べられてしまうでしょう。

マチルダは3年前に出会ったときだって用心深かった。赤毛のそばかす。これだけで通じると確信しています。マチルダの口からおれの素性が漏れることもないでしょう。

それ以外のプロフィールというかイメージは、メアリ・ヴァンスから拝借しました。マチルダはヴァンスと面識ほとんど無いけど、おれ、よく彼女のことも喋ってましたから。

風来坊で、しばらくアルバリーで暮らしてた行動派の上級生。今はシャーロットに来てマチルダの行方を気にしている。ウォームウッドの実家についてはあんまり知らない。もちろんマチルダの家族に尋ねるツテは無い。

ひとまずこんな設定ですね」

 

クラリス「いいのじゃない?

メアリ・ヴァンス。とても魅力的なキャラクターだし、便利な存在だわ。小説に出せば、都合よくなんでもさせられちゃいそうね」

 

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