緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§115.クイーン・ストリート

州都シャーロットには、テレビ局がある。

島でABCといえば、ほとんどの場合このローカルチャンネルを指す。

 

地方メディアの性として、とにかく郷土愛を盛りたて、人々を元気にさせる明るいニュースをつくっては流す。

人口密度が高くなるほど住民を不安にさせる方が収益を上げられるので暗いニュースばかりが濫造されるものだけれども、田舎だから強い刺激は嫌われるのだ。

クリスマス恒例のテロが愛されながら続いているのもそのせいか。

視聴者のなるべく大勢が喜びそうなものを撮りたがる。この原則も、都会にくらべてシンプルだ。

赤ちゃんと小動物が画面を彩らない日は無い。

しかしそればかりでも飽きられる。

 

扱いは若干難しくなるが、青春を謳歌している女の子たち。これも好まれやすい素材といえる。

実際、街角にはしょっちゅう撮影班がうろついていて、マイクを向けられても怒らない人間を必死で探しているものだ。

ちなみに都会では襲撃をおそれてカメラの後ろ側には必ず屈強な護衛役が睨みを効かせているものだけど、そんなことをしているからますます毛嫌いされるんだよ。

アビグウェイトはローカルなので、報道者と視聴者の距離がまだまだ近い。そこからなるべく遠ざからないようにしたいものだね。

信頼って一度でも裏切っちゃうと取り返しのつかないものだからさ。

 

クイーン・ストリートで取材に応じる女子学生たちの映像が、拡散されて大きな渦となり始めていた。

純真そうなルックス。清楚なファッション。そして知的なカウンタートーク。

老若男女に爽やかな印象を与える三人組は、この近くに住んでいる大学生らしいぞ。

トレジャーハンターたちが日に日に増えていく。

しかしその正体を知った者がわざわざライヴァルにヒントを与えてやるはずもなく、偽の手懸りが大量に撒き散らされて話題を長続きさせた。

テレビ局への問い合わせも止まらない。

もちろんスタッフたちも、またあの娘たちに会いたい。許可をとって、大学を案内してもらう番組なんてつくれないだろうか。

ローカルながら大勢の視聴者たちが夢を見た。

当の女子学生たちも面白がって、捜索者がうろつきそうな場所へは姿を現さずに過ごした。

 

クラリス「いったい何をやっているの。こんな楽しそうなかくれんぼ、私も混ぜてくれなくちゃずるいわ」

 

ダイアナ「あら、おばあさまったらメディアが嫌いなのだと思ってました」

 

クラリス「ABCには過去に私を追い回していたほどのパパラッチはいないみたいですからね。

で、どうするの。いつかはスポットライトに晒されるつもりでいるの?」

 

ダイアナ「3人の間で、温度差があるんですよ。サリーは目立ちたいしジュディは逃げ通したいし、私は、ほどほどにからかって遊びたいかなあっていう」

 

クラリス「ふうん。じゃあサリーをデビューさせるためにジュディとあなたが裏方と名脇役をつとめてあげるわっていう感じなのかしら」

 

ダイアナ「なにせ私たち若輩者ですので。追跡者がどんな手を使ってくるか、不安で不安で授業中も眠れないのでございますわ」

 

クラリス「小説一本書けちゃうわね。

私が添削してあげるから、ペンネームで出版してお小遣い稼ぎでもしなさい」

 

ダイアナ「もう。やりたいことがいっぱいありすぎて困っちゃいますわん。

それじゃおばあさま。困ったときは遠慮せずに助けを求めますから、生温かく見守っていてくださいな。愛してまーす」

 

こんな電話をした翌日には、ABCの取材陣が大学構内を歩き回っていた。

クイーンズ・カレッジの歴史と文化を伝えるミニ番組をつくるという建前で、理事会に許可申請を出していたらしい。スタッフには、きっかけとなった街頭インタビューのチームも加わっていて、ダイアナたちはあっさりと見つけられた。

 

しかもABCはローカルといえどプロ集団であったから、パフォーマーとしてデビューしませんかと口説く材料まで持ってきていて、まずサリー・マクブライドが心を揺り動かされる。

ジュディ・アボットはますます隠れた。

そしてダイアナ・バーリーは契約条件を細かく確認して、それをすべて祖母に知らせた。

 

クラリス「おかしな展開になってきたわね。

ネタの提供としてはありがたく受け取っておくわ。

それで、あなた自身はどうしたいの。

もう一度テレビに出てみたいの?それともパーソナリティ契約まで呑んでみるつもりでいるの?」

 

ダイアナ「中途半端はよろしくありません。やるなら徹底的に。

それこそ鋼の意志が必要であることだけはわかっているつもりです。もちろん自分で決めること。

芸能界なんて、強欲な詐欺師たちの吹き溜まりでしょう。おばあさまの小説でいっぱい読んできました。

それが今、リアルに目の前へやってきた。大冒険になりますわ。

この挑戦から目を背ける勇気が、私には足りないのです」

 

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