2週目の日曜学校に、不良グループがあらわれた。
男ばかり。
15歳前後かと思われるが、11歳のアンを含む日曜学校生徒たちの目には屈強な猛獣の群れに映る。
訂正。野生のケダモノは自然の定めたルールを決して逸脱しない。
今ここにいるのは、ルールこそ破るべきものと心得ている性欲衝動至上主義者の集団である。
さあ諸君早く逃げろ。
野卑な応酬がしばらく続いたが、どうやら不良たちの目的は先週仲間入りしたばかりのアンだと判る。
下っ端のひとりがボキャブラリーの貧弱さを武器に「かわいいねー」「ほんとキミかわいいねー」とデレデレ絡んでくる。
しかし残りの全員が冷たい視線で、あきらかに失望していた。
「ここまでブスとは」
「わりぃ。目が腐った」
そんな呪詛がブツブツと聞こえる。
アンは静かに怒りを溜めた。礼拝堂を血に染めるのは、自分は構わないがあとあと面倒だろう。
殺るとしたら墓場でかな。
生かしたまま全財産搾り取ってやるのが理想なんだが、如何せん人数が多すぎる。生き残りを逃してはならない。
となれば全員の首をかっさばいて、おれ自身は涼しい顔で帰宅する……
うーん。現実的に難しいな。
だがしかし、せめて2人はこの場で殺させろよ。そろそろリミッターが壊れちゃう。
野郎どもはバラけだし、めいめい好みのかわいい子にちょっかいを出し始める。おどけながら胸を触ったり、スカートをめくったり。なかなか露骨だな。これも田舎だからか。
それはさておき、依然アンに注目している物好きが3人ほどいた。集団の中では明らかに格上。並の女は飽きた、たまにはゲテモノでも食ってみるか、そんな表情で余裕かましてやがる。
実際のところ、どうでもいい挨拶や質問をいくつかされたのだが、アンは時折それに聖書の詩句で返答した。
逃げ場があるなら完全無視でもいいのだが、無いので、せめて知能でこちらが格上だということを示しておこうとしたまでだ。
ちなみに「へえお勉強熱心だねえ、お嬢ちゃんアタマイインデチュネー」とかクソ以前のリアクションしか返ってこなかったので、アンの心中はますますささくれだっていった。
こっそり忍び出した誰かが牧師館までスーリス先生を呼びに行ってくれたので、不良どもは笑いながら退却していった。その際のやりとりを聞いていたが牧師は性犯罪者どもにとても寛容だったので、「今後一切頼るべきではない」とアンは心に刻みつけた。
来週からは、否、たった今から、常に武器を携帯しておかなきゃだな、とも。
貞操の危機を共有した少女たちから、情報を入手する。
主犯格はトーマスという、村では有名なならず者で、両親を病気で亡くしているが叔母さんに溺愛され甘やかされたまま成長したらしい。
彼を慕うゴロツキがいくらでもいるので、徒党を組んでいつも悪さをしている。近頃は免許を持てる仲間が増えたのでスタンレーブリッジや州都シャーロットに狩り場を移しているようだが、アルバリーやホワイトサンズでちょっとかわいい娘は、たいていトーマスにキスされたことあるはずだよとか。
憂鬱が増した。
黒衣の男のせいにでもして、とっとと殺してしまわにゃあかん。
集団下校しながら、今日のことをマリラに話しておこうかどうか、迷った。
結局言えなかった。同情してもらいたいわけではないし、同世代の少女たちからの情報以上のネタが出てくるとも思わなかった。
部屋でひとりきりになり、ひとしきり怒りを発散させたあと、ベッドに横たわっていたら、泣けてきた。客観的基準に照らして、やっぱり、おれって、ブスなのか。ああまで露骨にケナされるくらい、醜いか。
まあ自覚はしてるし、物心ついてからそれこそ何百回何千回と言われてきたことだからなにを今更とも思うんだが。それにしても久々に、強烈なダメージをくらったな。
あいつら全員惨殺しても、全然スッキリしねえよ。これは。
夕方、窓の外に、人影が見えた。
ひとりの少女がバスケットを携えて、グリン・ゲイブルズへ歩いてくる。
方角的にはバーリー家なので、すぐ察しがついた。同い齢だっていう娘さんだろう。シャーロットの親戚の家へしばらく泊まってるということだったが、帰ってきたのか。それで、わざわざ挨拶しに来てくれたのだろう。
小川を越えたあたりで目が合ったので、手を振ってファーストコンタクトを交わした。
その娘は、超絶級の美少女だった。