緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§149.埋め合わせできそう

ダイアナ「ハロー!ジム、お元気?」

 

シェパード「おかげさまで。そちらは?」

 

ダイアナ「すっかり普通の学生に戻ってます。

休学してたぶんを、レポートの数と密度で埋め合わせできそうだから、予定通りあと1年で卒業するのが目標です」

 

シェパード「ずいぶん簡単そうに言うじゃないか」

 

ダイアナ「嘘よ嘘。とってもたいへんなの。ジムに毎週励ましに来てほしいの。そうすれば可能だわ」

 

シェパード「例の調査の件で、予定より橋を渡る回数が増えそうだが、その度に君と会うことは難しいと思う」

 

ダイアナ「ん?」

 

シェパード「想像してた以上に、ずっと手強い連中だった。より慎重に立ち回る必要がある。君も、心しておいてくれ」

 

ダイアナ「えっと。Gさんのことですよね?」

 

シェパード「もちろん。モンモランシーがそちらへ行っているだろう?」

 

ダイアナ「はい。ほぼ毎日見かけます。話をしたりとかは、してませんけど」

 

シェパード「アンは勘づいたみたいだよ」

 

ダイアナ「え?

……2文字のアンですか?」

 

シェパード「君を見張っていたメンバーが、接触を受けたそうだ。殺人ロボットのような凄みを感じたと言っている。

余計なことをされたくないから、アンにはある程度説明しておくべきかと思うんだが、それで悩んでいてね。だから電話した」

 

ダイアナ「ちなみに誰ですか、接触されたメンバーって」

 

シェパード「ラム・ダスだ」

 

ダイアナ「ラム・ダスがアンに捕まえられちゃったってことですかあ???」

 

シェパード「驚くだろう」

 

ダイアナ「なんておそろしい子」

 

シェパード「個人的な好奇心で探っているだけだと思いたいが、ともかく、やってしまうからね彼女は」

 

ダイアナ「うまくけしかければ、ひとりでギズを壊滅させることもできたりして」

 

シェパード「ギ……Gに好条件を提示されれば、その逆だってありえるよ。だから誠意をもって打ち明けておいた方がいいと思うんだ。これ以上探られる前に」

 

ダイアナ「そう、ですね。誠意をもって。その通りです、ジム」

 

シェパード「それから、Gも決して侮ってはならない。中枢に、とんでもないやつらがいた。僕たちみたいな零細は、簡単にひねりつぶされてしまう」

 

ダイアナ「シ……S商会は、零細ですか」

 

シェパード「もちろん」

 

ダイアナ「わかりました。あたしも慎重に構えます。まだGとの縁は切れてないので、できることがあれば命じてください」

 

シェパード「普通の芸能事務所なら、大役を蹴ったアイドルを二度と起用はしないだろう。Gは寧ろ、堂々と蹴り飛ばした君にもっと大きな仕事を与えたいと考えてるようだ。思わぬアプローチを仕掛けてくる可能性もあるから、要警戒につとめてほしい」

 

ダイアナ「わかりました」

 

通話終了。

ダイアナは、アンとの最近のチャットを読み返す。おバカな話しかしてないなあと我ながら呆れる。

まだ祖母の方が心の内を読みやすい。

身を引き裂かれる想いでヘラクレスとアンを戦わせている苦悩が行間から伝わってくる。

アンは、人狼ゲームが得意だったな。今はもっと手強くなってるんだろうな。

そんなことを考えながら、部屋へ戻り、出かける支度をする。

 

今夜は、ジュディがパブで仕事。ダイアナは休日だ。

カフェでしばらく、サリーと一緒に勉強をする。

サリーはわからなくなるとすぐ相手に訊くので、先に片付く。髪を束ねて、走りに出ていく。

ダイアナ、ひとり黙々と課題に取り組む。

 

人影が近付いてきた。

彼は、椅子をひとつ持ってきて、ダイアナの斜め向かいに座る。サリーの席には荷物が置いてあるからだ。

 

ダイアナ「お久しぶりです。さっき聞きました。油断してたわけじゃないんでしょう?」

 

ラム・ダス「それどころか、君を盗撮してる男を捕まえるのが任務だったんだ。今だって、あのとき自分がいったい何をされたのか、わからないくらいだよ」

 

ダイアナ「今もどこかから私たちを見ているかもしれませんよ。まるでゴーストのような女です。

まあ、ジムがちゃんと説明してくれるって言ってたから、多少は手加減してくれるようになるかもだけど」

 

ラム・ダス「君の親友だと言ってた。それは確かですか」

 

ダイアナ「小学校からのつきあいです。もう5年目になるのか。

当時から、おそるべき不思議ちゃんではありましたけどね」

 

ラム・ダス「見逃してくれてありがとう、とお伝えください。では」

 

男は去っていった。

ダイアナは、現在の連絡先を交換しとくんだった、と後悔する。

 

ぼんやり勉強していると、サリーが戻ってきた。

一緒にジョギングしていたゴードン・ハーロックを紹介される。まだ20代後半だが、下院議員の秘書だという。

ずいぶん大物をつかまえてきたなあ、とダイアナは感心する。

 

2時間の勤務を終えて、ジュディが戻ってきた。今日もほどよく酩酊したようだ。

最近贔屓にしてくれるお客さんがついて、チップもはずんでくれるんだとか。

ミスター・ジャーヴィス・ペンドルトン。

実業家で独身。愛嬌があって、知的な女性を特に好み、お喋りしているととても安らいだ気分になれるのだとジュディはすっかりメロメロである。

 

寮へ帰って、寝る準備をしていた頃、アンからメッセージが送られてきた。

ラム・ダスの盗撮画像を加工して、エロティックな半裸姿にさせている。

「もう邪魔はしないから」とキャプションがついていた。

ダイアナは殺意に震える。

 

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