緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§159.知りすぎていた男

本日もペンドルトン氏はジュディを指名し、個室へと連れこむ。

ダイアナも出勤日なので、ご相伴にあずかる。

ペンドルトン氏はまだまだ純粋な女性恐怖症患者様なので、ジュディが傍にいてくれないと、他の女性とは対話が続けられない。それでも少しずつ慣らしていきたい。ダイアナもジュディも、それをわかって協力してさしあげる。

こんな関係が、今夜をもって終わりそうだ。

 

ダイアナ「お二人に、打ち明けたいことがあるんです。ミスター・ジョン・スミスの件で」

 

ジュディとジャーヴィスの顔が一瞬で蒼白になった。

そいつの名前をなぜ突然出すんだ!とダイアナへ烈しい批難の眼差しを突きつけてくる。

 

鏡でも見せて、2人が完全にシンクロしていることをわかってもらえたら話が早いんだけどな。とダイアナは少し考えてみるけれど、推理ショーとは神聖な儀式だ。安易なショートカットはよろしくない。

じっくり一手ずつ、ひもといていかなくては。

 

語り終えて、しばらくの間、沈黙。

ジュディ・アボットとジャーヴィス・ペンドルトンはしっかりと手を握りあって聴いていた。

ふたりとも相手に秘密を持っていたのだが、すでにそれは消失したのだ。

これからどうするかなんだけど。

障害は無いのだから、早く一緒になっちゃえば?

というところ。

 

ダイアナ「あとはお二人で話し合ってもらえばと思うので、あたしは戻っちゃった方がいい?」

 

ジャーヴィス「あ……お願いです。時間まで、いてください。ウィスキーを追加でもらおうかな」

 

ジュディ「ダイ……ひどいよ。いったい、どこから気付いてたの?」

 

ダイアナ「女児の家庭教師をしてた件にまで嫉妬心を燃やすミスター・ジョン・スミスが、ペンドルトン氏の登場に危機感を抱かないのはおかしい。

パブで働き始めたことは手紙で伝えてないので切り出すわけにはいかなかったんでしょうが、監視はしているだろうなと思ってました。

でも最大の決め手は、ジャーヴィスがジュディのくすぐりどころをほんとよくわかってるなあと感心したことですね。

知りすぎていた男ですよ、まったく」

 

ジャーヴィス「完敗です」

 

ダイアナ「お二人にそれぞれ伝えたあとで引き会わせようかなとも考えたんですが、それもまた気まずかろうなあと。

むしろ、ここで、あたしの口から全部説明して、それを同時に聞いてもらうことで、まあ、これからの新しい出発を印象づけるエポックにできるんじゃないかしらと。

いかがでしたかね」

 

ジュディ「ついさっきまで、そんなこと、匂わせもしないで」

 

ダイアナ「これでも女優やってましたから。駆け引きはポーカーフェイス。ね」

 

ジャーヴィス「私は、おちついてきました。

その……ダイアナ、ありがとう。私はいま、これからはもう、ジュディに嘘をつかなくていいんだって、すごく心が軽くなっているんです。

ほんとうに、感謝してもしきれない。ありがとう」

 

ダイアナ「ジュディがこれからも、お手紙を書くことを希望されますか?同じ私書箱の、ミスター・ジャーヴィス・ペンドルトンへ宛てて」

 

ジャーヴィス「いただければ嬉しいけれど、書きたいことがあるときにで結構です。それより電話番号とチャットのアカウントを交換したいな。あ……このお店で会うのは、今後どうしたらいいだろう」

 

ダイアナ「そこ、すごく重要ですよね。

ジュディもよく聞いて。

ジュディは、ホステスの仕事も気晴らしになるから好きでやってるんですけど、ミスター・ペンドルトンとしては辞めてほしいと思われますかねえ」

 

ジュディ「……」

 

ジャーヴィス「偽らざる心境としては辞めてもらいたいんだが、理由は嫉妬だけではなくて。

これからは外でも堂々とおつきあいしたいのに、ホステスと客、という関係も続けていくのはおかしいんじゃないか。というところなんだ」

 

ダイアナ「さすが実業家らしい几帳面さですね。じゃあ、あたしもジュディは辞めるべきだよに一票。

気晴らしは他に見つけましょう。

どう?ジュディ」

 

ジュディ、うなずく。

 

ダイアナ「店との交渉は、私が調整して、うまくやります。

カムフラージュとして、ミスター・ジャーヴィスはジュディが辞めたあとで1回、友達を連れて来店してください。

お目当ての娘がいなくなったので、ミスター・ジャーヴィスはそれ以降来なくなる。

お友達はその後ひとりで数回来て、自然に離れていく。

これなら余計な勘繰りもされないでしょう」

 

ジャーヴィス「承知した。そのときは、ダイアナを指名してもいいかな?

僕はやっぱり、君たち以外のお嬢さんとは、まだちょっと」

 

ダイアナ「いいですとも。ご無理なさらず」

 

ジュディ「……あたし、クイーンズには、まだ通ってていいの?」

 

ジャーヴィス「当然だよ。これまで通り学費は僕が納めるし、お小遣いが必要なら言ってくれ。ダイアナや、ミス・サリーと楽しくしっかり勉強して、卒業したらそのあとどうするかは、また考えよう」

 

ダイアナ「ミスター・ジャーヴィス。あなたはジュディを、病める時も健やかなる時も、喜びの時も悲しみの時も、愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを、誓いますか?」

 

ジャーヴィス「はい!わたしは生涯かけて彼女を幸福にすることを誓います」

 

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