緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§168.とどめの一撃

足下と頭上に気をつけながら、少女は扉の前まで来る。

ゆっくり開ける。

床は真っ赤で、ジョー・リーランドは出血多量により死にかけていた。

 

カール「ターゲットは仕留めたが、まだ油断ならない。仲間がいる可能性あり。私は周辺を調べてから戻る。オーヴァー」

 

もと生徒は、目を丸くする。もと先生に詳細を尋ねる。

 

カール「こいつの最後の言葉、聞いてなかったの?」

 

アル「設備棟の中、うるさくて」

 

カール「ロイ、あとを頼む!……と叫んだんだ。

無線を聞いている敵が他にもいるって前提で考えなきゃな」

 

アル「どこから調べよう」

 

カール「アル。君には受け持ちがあるはずだ。定位置へ戻れ。

今度の機転には感謝するが、調子に乗るのはよくないぞ」

 

アル「了解」

 

会議室へ戻った少女は、引き続き無線を聴くことに注力する。

カールはテオに要請した。殺人者が二人組だった場合どこかで別行動となった可能性はあるか。IDキーが使用された履歴を再チェックしてみてくれと。

ロイと呼ばれた残党も聞いているはずのチャンネルではあるが、むしろこのやりとりでプレッシャーを与えられるなら、それもアリか。

つくづく敵対したくない連中だよな。

 

やがてカールの巡回報告とテオのログ解析から、ターゲット02はターミナル棟を出て管制塔へ向かったようだと推定される。

塔の設備エリアへ直結するドアが20時すぎに開けられており、その後、照明をつけたり消したりしている痕跡があったのだ。しかもカールが無線機を積極的に使って01の捜索を始めた途端、この痕跡が途絶える。

02は01より慎重な性格で、今も塔内で息を潜めていると考えてよさそうだ。

ハンスは02の始末をアレクサンダーの班に命じ、テオにはログの監視を継続させた。

 

規則的なノックの後、一般女性が入ってきたのでアルは驚いた。

頬のふっくらした、善良そうなおばあちゃまだ。

ユーリですと名乗られる。

一般には男性名だけど女性名にも使われるよな、と思ってたらミセス・ユーリは迷いもなくエージェントたちの持ってきたバッグ類をまとめ始めた。

味方だと確信したのでアルもお手伝いする。

 

続いて、テオとクリストフ。

それぞれ台車を持ってきた。荷物をすべて載せ、撤収にかかる。

4人でゾロゾロ、廊下を滑走路側へと渡っていたら、ロビーの方向からけたたましい機銃音。

人々が叫びながら逃げ惑ってる。

むしろ逃がしているのか。

 

滑走路端にトラックが駐めてあった。

荷台へバッグを詰めて載せ、しばし待つ。

ほどなくハンスたちのチームが駆けてきて、MP5などの装備をやはり荷台へ投げ入れ、脇のオフロード車へ乗りこむ。

 

オフロード車が走り出し、トラックがすぐ後を追う。

滑走路をまっすぐ北へ向けてかっとばす。

ターミナル棟の先に管制塔が聳えているが、最上階のガラス張りが一部割れていた。そこから人のようなものが落ちていくのを見た。

もがくように手を振っている風だったから、やはり人かな。

建物の向こう側では光の明滅が鮮やかだ。

ここでユーリおばあちゃんが顔を寄せてきて、教えてくれた。

 

ユーリ「警察がやっと到着して、バリケードをつくって、犯人たちとの交渉を始めようとするタイミングだったの。

本当は私たち、それより早く撤収するはずだったんだけどね」

 

アル「ああ、保安要員が余計なことしなければ、すぐ終わってたはずでしたものね」

 

ユーリ「2人目も見つけ出して始末したわ。さっき管制塔の8階から突き落とされてたのが、それ。

高さはせいぜい90フィートだから、2秒ちょっとのダイビングしか楽しめないわね。かわいそうなこと」

 

アル「アレクサンダーとジェームズがやったんですよね。かれらもこのあとすぐ逃げてくるんでしょうか」

 

ユーリ「管制塔チームも4人いたのよ。あとの2人はフリッツとフランコね。

大丈夫でしょう、彼女たちなら。

もし追い詰められたら、M20装甲車で助けに行かなきゃならないけど」

 

アル「ミセス・ユーリも入れて13人。もっといたりして。

すごいですね、即席でこれだけのエージェントが集まるなんて」

 

ユーリ「あらあら。ええと、アル。アルよね。あなたのピンチだから集まったのよ。

みんな、あなたに一目置いてるの。

すばらしいサイレンサーだわ。まだまだ改良していってちょうだい。おやすみしてもらわなきゃならない人たちが、私への依頼だけでも半年分はたまってるんだから」

 

助手席のテオが振り向いて、最高のスマイルをアルに捧げる。

運転しているクリストフも、ミラー越しに微笑んでいた。

少女は、苦笑いで応える。

 

2台の車輌は滑走路の北端を突き抜け、破壊済みの柵をくぐってユニオン・ロードへ乗り上げた。脱出成功。

そのあと、アジトのひとつである整備工場へ入って清掃やら点検やらといった後片付け。

素顔に戻った仲間たちとの閑談も弾む。

ハンスあらためルーシー・アイルズバロウからは、こんな、とどめの一撃をくらった。

 

「皆、明後日までに請求書を提出して。最終的にはアンに支払わせるんだけど、彼女には仕事の厳しさも覚えてもらわなくちゃいけないから、余計な酌量をしない金額で提示してほしいの。

アン、いいわね?

全員プロなんだから。余裕があれば、チップだって弾んであげて」

 

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