サリー・マクブライド。クイーンズ・カレッジ2年生。
彼女の恋人ゴードン・ハーロックは州下院議員の秘書。ジョギングでよく出会うことがきっかけで親しくなった。
サリー「政治家のつとめは、住民を幸福にすること。
幸福になるためにはお金が必要。
だから才能のある実業家をうまく舵取りして、商売をしやすくさせてやる。
そのための法律を整えるのが仕事だね。
畢竟、これに尽きると思ってていいんじゃないかな。意外とシンプルなんだよ、わからず屋さん以外には」
ジュディ「実業家も、社会を発展させていきたい人ばかりよ。
貧乏な世帯へも教育を与え、より高度な仕事を選択できる道を拓けば、地域全体の生産力と購買力がもっと強まる。
そのために政治家さんたちへ力添えをするの。
理想的な民主主義国家では、経済と政治は常に手を取り合って前へ進んでいくものなのだわ」
ダイアナ「そしてその妻たち同士も、仲睦まじく交際するというわけね。
ところで女性の社会進出って、これからますます進んでいくものかしら?」
サリー「政治の世界では女性議員も増えてきたけど、やはり激務だから適性があっても薦めづらいところはある。
ただ、投票制だからね。住民の心さえ掴めば誰だって議員や首長になれるんだ。
門戸は常に開かれている。
ますます進出していくべきだと思うよ」
ジュディ「財界は、職種によっては女性の方が向いてる環境、まだまだあるわよ。
肉体労働は男に独占させてあげるから、管理職は女性にまかせて。これが理想ね。
その実現をめざすには、男たちへの正しい教育が必要なのだと思ってます」
ダイアナ「わからず屋さんを排除するのにも、教育の行き届いた男を差し向けるのが最適解かしらね。
こうしてみると、たしかにシンプルで簡単に感じられるわ。変革って」
サリー「とはいえ問題は常に発生するものだし、解決までの道が単純とも限らない。
政治家なら多数決で選んでいいけど、司法に多数決は禁物だ。それは憎悪の温床となる」
ジュディ「どうして?より多くの人が正しいと考える方を正解とするべきじゃないの?」
サリー「実際にそれをしちゃうと、マイノリティは一方的に叩きのめされて退場さ。
民衆の大多数は犯罪なんてしやしない。当然こちらがマジョリティで正義だ。犯罪者の側が間違っているのは論ずるまでもないことだが、それを突きつけられたアウトサイダーはより凶悪化するだけなので、こいつをうまく弱毒化するプロセスが必要というわけなんだ。
判事には、敵をも愛し改心させる特殊技能が求められる。つうこったな」
ジュディ「大変なお仕事ね。そんな判事自身も、確実に怨まれて標的にされやすいでしょうし」
サリー「もちろん判事は警察が守るよ。悪党なんて近寄らせない。
社会秩序を守るためには権力が威信を持ってなくちゃダメなんだ。
以上は、だいたいゴードンからの受け売りなんだけどね」
ジュディ「とても立派な方だわ。ゆくゆくは、彼も議員へ?」
サリー「やっぱり目指してはいるみたいだよ。まだ若いし、毎日が勉強だって寝言でさえつぶやいてたりするんだけど、まあ、でっかく育ってほしいものだねえ。
あたしも捨てられないように、がんばらないとな」
ダイアナ「もうちょっと具体的なイメージが欲しいんだけど、明かせる範囲だと最近はどんな仕事をしているの?」
サリー「そうねえ。
ギルモア銀行が倒産しそうだって噂になってるじゃん。
実際、かなりやばいみたいなんだ。
でも銀行が潰れると、この州だけじゃなく連邦全体が痛手を負う。
ギルモアに貸し付けをしていた各州の銀行が連鎖倒産する可能性だってあるし、すでに国外の企業にも取引を断るところが出始めている。
だからギルモアを救ってやらなくちゃ、と議会が予算を通そうとしているんだよね」
ジュディ「銀行は放漫経営しても州に助けてもらえるわけ?ずるいなあ」
サリー「そうはいっても見殺しにはできないだろう?
もちろん金を出すからには口も出す。無能な役員を追い出して、今後は実績のある投機家に経営をまかせる」
ダイアナ「我こそは、と政治家に売り込みをかけてる暇なトレーダーがいっぱいいそうね」
サリー「たしかに大勢いる。皆、必死だ。
話くらいは聞いてあげるべきだろう?
そんなわけで連日ひっぱりだこなんだよ。議員のスケジュールは分刻みで埋まっているし、ダメなら秘書でもいいからっていう人だっているんだ」
ジュディ「そんなに焦って相手して、適切な判断なんてできるものかしら」
ダイアナ「採用をお断りした無職から、怨みを買うだけのような気がするんだけどなあ」
サリー「だから警察力を強化して治安維持を徹底しなくちゃならないわけだよ。ほんとに、たいへんなんだ。
ただ、なんとかギルモアを倒産させずにすみそうな方向へ動いている。
すべて平和のためなんだ、わかってくれ」
ダイアナ「その予算、元は税金でしょ?納税者への説明はちゃんとできるの?」
サリー「もちろん、ちゃんとするさ。
実績のある広告代理店に破格の宣伝費を支払っている。
すべて平和のためなんだ、わかってくれ」