緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§189.ヴァニティ・フェア

レベッカ・シャープ。

アミーリャ・セドレの相棒。

 

アミーリャの刑事裁判より7年も前に死んでいるので、はっきりしたことはわからないのだが、途轍もなくブスだったらしい。

ピンカトン・チルドレンの間でもここだけは証言にブレが無くて、気味が悪いほどだ。

 

アミーリャは艶気があって、男を手玉にとる才能に恵まれていた。それを考えると不思議にも思われるが、似ていなさすぎるからこそ強い友情を培えたのかもしれない。

ピンカトンから逃げ出した二人は、ずっとコンビを組んでいたようだ。

アミーリャが公判中認めた事例には、こんなプレイがあった。

 

1. 街で、金を持っていそうな男を見つけ、アミーリャが気を惹く。

2. レベッカがやっかみ、厭味を言うことで、男とアミーリャは連帯しやすくなる。いい雰囲気になったらモーテルへ誘いこまれてあげる。

3. 男がお楽しみの最中、レベッカが忍びこみ、そいつの所持品をあらため、電子情報など含め盗めるものを根こそぎ頂戴する。

4. 男を眠らせたらアミーリャも出てきて、レベッカと次の街へ行く。同じ地域には、数年間近寄らない。

 

こんな放浪生活を何年も楽しんできた二人だったが、あるとき、過去に餌食とした男から見つけられた。

男は仲間たちと示し合わせ、同じ手口でレベッカが潜入したところで、モーテルごと包囲する。

女二人は車で深夜の森へと連行され、思う存分、仕返しをされた。

アミーリャには輪姦、レベッカには殴る蹴るだ。

レベッカは死んだ。

 

アミーリャはなんとか行きつけだったモグリ医者のもとへ辿りつき、一年近く療養する。

その間に出産した。女の子だった。

レベッカの魂を弔うつもりで同じ名前をつけ、慈しんで育てた。

 

ここからは、新たなコンビで二人旅が始まる。

レベッカ・シャープ2世、愛称ベキィはアミーリャから盗みとサヴァイヴァルの手ほどきを受けて育った。

母親の遺伝子はあまり受け継いでおらず、赤毛でチビで醜かったが、だからこそ、より強い絆で結ばれていた。

体に無理がきかず、始終痛みをこらえているアミーリャを笑顔にさせるためなら、ベキィはどんなことでもした。

カレンダーには馴染みのない生活だったが、春に生まれたんだよと言われていたので、3月になるとお祝いをした。

 

ベキィは6歳になった。

その年の夏、仕事から戻ると、アミーリャの姿が無かった。

ベキィは隠れながら相棒を捜し回り、警察署まで辿りつくが、侵入中に拘束される。

刑事たちはこのチャンスを逃さず、次の公判で二人を対面させた。

 

アミーリャ・セドレの罪は確定。同年暮れに処刑される。

レベッカ・シャープ2世には保護観察の手続きがとられ、特別施設預かりとなった。精神と肉体に叩きこまれた邪悪な毒をすっかり浄化してからでなければ孤児院にも送れないと配慮されたのだ。

再教育には一年ほどかけられた。

結果は良好と担当医が承認し、ベキィは孤児院へ回される。

角も牙も生命力さえ削ぎ落とされた無力なケモノは、たちまち柵の中で先輩たちから揉まれることとなった。

 

醜くて弱っちいウスノロになぞ誰も本気で味方なんてしない。

多くの者が、ここで単純な解を選択することと思う。

だがレベッカ・シャープ2世は何かを思い出したのだ。愛する者から教えられた、大切なものを。

そして、ここからはまったく新しい一人旅が始まったわけだ。

 

ダイアナ「この中に、どれだけ、少女Aの関わった事件があるのかしら。

これ以上絞りこめないわ。少しはヒントをちょうだいよ」

 

アン「おいおい大学生。裁判記録ってのは、送検された先でしかつくられないものなんだぜ。

未解決事件の資料は警察内にしか無い。非公開だ。

勘違いが過ぎるぜ、まったく」

 

ギルバート「少女Aは捕まったことがない。よって、今日僕たちが調べた中に、少女Aによる犯行は含まれていないということになりますよね」

 

ダイアナ「なにそれ!無駄足踏ませたわけ?」

 

アン「おまえたちが真剣にやってくれたおかげで、おれの目的は達成された。母さんを殺したやつらの名前がここに全部載ってる。これから、こいつらに、仕返しをして回る」

 

ギルバート「お手伝いさせていただけますか?」

 

アン「必要なときに呼ぶ。日々、銃身を磨いてな」

 

ギルバート「了解です」

 

ダイアナ「面白くないなあ。あたしは何をすればいいの?」

 

アン「法律関係をもっと勉強しておいてほしいな。ロバート・グラント弁護士の事務所とかどうだ。鍛えてもらえると思うぜ」

 

ダイアナ「プリシラのお兄さんでしょ?あんたのコネになんか頼らずに採用されてみせるわよ。イーだ」

 

ギルバート「素朴な感想なのですが、今日の調査は、アンにとって、つらくはなかったのですか?6歳の頃とはいえ、かなりの衝撃だったはずなのでは……」

 

アン「16歳でもキツいぜ。6歳児にはもっとキツかったよ。抵抗しようがなかったもの。

あの施設の連中はあらかた半殺しにしてやったんだが、ついでに様子を見て回って、ヘラヘラ生きてたら追加の制裁を加えてやるのもいいな」

 

ダイアナ「そっちも未解決のままなの?」

 

アン「そうだと思うよ。おれが捕まっていないところをみると」

 

ギルバート「ああ、きれいな夕焼けだ。

どうします?僕なら、どこへでもお伴します。食事して、夜も調査を続けますか?」

 

アン「いや、今日は疲れた。アビグウェイトへ戻ろう。

その前に共同墓地へ寄ってくれないか。

母さんが眠ってる。8年ぶりに挨拶したい。

おまえたちも紹介しておいてやりたいからさ」

 

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