緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§39.共に進歩する

ダイアナ「通過儀礼なの、あれは。

それをすませる前は、アルバリーではどうしても村の一員だって認められない雰囲気があって。だから、あらためておめでとう、アン。ようこそ、私たちの国へ!」

 

アン「はは、は。

フリーメーソンてのもこんな感じなのかな。それにしては、終わった今だから言うけど、ヌルくないか。

カトリックと本気で戦う気なんてないだろ、おまえら」

 

ダイアナ「全面対決をしたいの?ガチで?

まあ勝てるとは思うけど、東方教団を喜ばせるだけだよ。

私たちの為すべき使命は、相手を殲滅することではなくて、考えを改めさせ共に進歩する方向へ導くことなんだから。

カトリックがなくなれば、次は東方に対して同じことをします。

ね、平和主義でしょう?」

 

アン「今のままじゃあ、永遠に到達できないと思うよ。

カトリックはおれたちのことを心からバカにしてる。はいはいごくろうさん、ってゴミを並べてつつかせ、柵の向こうからゲラゲラ嗤ってるんだ。

それが歯痒いんだよ」

 

ダイアナ「相手のことをゲラゲラ嗤ってるのは私たちだって同じだから。より堂々と。

うーん、いま一歩前進すべきだってことかあ。

難しいねえ。何を加えればいいんだろう」

 

新年明けて。マリラは連日、婦人会の集まりに出かけている。

アンは許可を得て、ダイアナをお茶に招いた。

こんなにじっくり膝突き合わせて語らうのっていつ以来かな。ミセス・マクドナルドの着任以降、ますますクラスの人気者として不動の地位を築いているダイアナの、まばゆいオーラが目に痛い。

そしてクリスマスイヴェントの愚痴をようやく吐き出してるところなのに、もう負けムード。

なぜ勝てん。

自信に満ちていた半年前のおれはどこへ行った。

アンはせつなげに、まっしろな窓の外へ視線を泳がせる。

 

ダイアナ「殲滅戦するんだったら、ミセス・マクドナルドはどう?

私、何度も言ってるけど、とっくに限界を超えているの。ほんと、今すぐ消し去りたい。

アンだったらできるでしょう?何をあげたらやってくれる?」

 

アン「まあ、おまえは重圧浴びまくってるからな。おまえだけが極端に。

おかげで他の全員がたすかってる。

おまえの願いをききとどければ、おれ、みんなから怨まれちゃう」

 

ダイアナ「ひどいなあ。アンは、私との友情よりも、ぬるま湯にひたっていることを選ぶんだ。

マチルダも独占しちゃってさあ。ゆるせないよ、この、極道者!」

 

アン「くすぐってるつもりか?おれ、不感症だぞ。

うーん、ミセス・マクドナルドかあ。

ドビンズなら、即、消し去ってやるんだけどなあ」

 

ダイアナ「ドビンズは別にいいよ。なんにもできないおじさんだもの。

あーあ、次は男の先生がいいなあ。

醜ければ醜いほどいい。御しやすいから」

 

アン「女の武器を持ってるからこそ言えるセリフだぞ、それ。

やっぱり当分、今のままがいいんじゃないか。おまえも少し苦労を知れ。

ブスはブスであり続ける限りあらゆる男が嫌いなんだ。だからおれは、もうすこし今のままがいい」

 

ダイアナ「絶望的になっちゃうわ。

ねえ私、アンにお化粧してあげることできるよ。ギルバートも振り向くくらい素敵なレイディにさせてあげられる。

そうしたら少しは私の悩みにも共感してもらえる?」

 

アン「ナチュラルにすっげえ失礼だったぞ、今のおまえ。

ミセス・マクドナルドにもっといじめられてしまえ。おれがけしかけてやる」

 

ダイアナ「ほんとひどいこと平気で言うのね、アンって。ひっく、ひっく。

あ、ちょっとトイレ」

 

アンはじっくり考えてみた。

 

マクドナルド夫妻ほど御しやすいタイプもないのだ、実際。かれらは秀才肌なので、型に嵌った計算式で合理的な解を導き出し、自信をもって飛びつく。

その行動は予測が可能だ。

ジェイムズ・シェパードみたいなナチュラル・ボーン・うそつきに比べたら、ほんとかわいい。

 

今のところ、もっとよくわからないのは、ベル先生だが……

彼の心理戦の能力値はかなり高い。とくに回転速度が驚異的。しかしコンディションにムラッ気がありすぎのように見える。あれは擬態なのか?どうだろ。

 

ドクター・ベルが隙をマクドナルド夫妻に突かれたらイチコロだ。

展開が読みきれねえなあ。

時間をかけるほど、マクドナルド側が有利になる。約1ヶ月、見張ってんだろ?

いつでも料理できるぞと、手ぐすね引いてるような感じもするんだよなあ……

 

あれ、ダイアナはまだ戻ってこないのか?

と気付いて様子を見にいった。

トイレの中で酔いつぶれていて、あられもない姿で眠りこけていた。

マシュウに見つからないよう抱きかかえて部屋へ連れていく。ダイアナは笑ってすませるだろうが、おじいちゃんは死ぬまで脳裏に反省が焼き付くだろう。

 

あーあ。いちご水のラベルを貼ってある瓶に入ってたの、マリラお手製の葡萄酒じゃないか。

美味しそうに何杯も飲んでやがった。気付けよ。やれやれ。

 

アンは、ダイアナの寝顔をぼーっと眺めていた。

ほんと、クソ美人だ。

お化粧しないでこれだろ。まったく、ゆるせねえ。

もうちょっといじめてやる。

 

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