緑きりつま、赤毛きたれり   作:ひねもす@HAMELN

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§74.なんでもお見通し

アイドル・ワイルドの役割分担を簡単に説明しよう。

 

リーダーはアン。薬品の調合から瓶詰めまでは彼女のみが行う。

その加工場は村内にいくつかあり、厳重な罠が仕掛けられているので余人の侵入をゆるさない。

この管理を、ヴァンスが受け持つ。精製過程では何日もかけて熟成させる必要があり、その定期的な観測もヴァンスの仕事である。

空瓶・ペーパーフィルター・固形燃料・触媒となる塩化物など様々な器材は定期的にギルバートが運び込み、運び出す。

最近登場させていないがジェイムズ・シェパードもよく来ていて、力仕事を手伝ったり、離れて見張りについてくれたりする。なかなか頼もしいのだぞ。

もっと人手が欲しいところだけど、技術よりも信用が第一だ。信用のおけない奴がウロチョロ嗅ぎ回っていたりすれば、問答無用で敵認定である。

 

イグナティウスは、あっさり捕まった。

抵抗しなかったのは賢明かもだが、無策で無防備なのはいただけない。工作員の資格無しと見做す。

こんなやつ、仲間になんてまっぴらだ。

 

イグナティウス「あれ、そこにいるのはアンだね?

いつもありがとう。心から感謝している。

今度は僕に恩返しをさせてくれ。君たちの力になる。なんでも、いうことをきくよ」

 

ダイアナ「……」

 

ヴァンス「こいつに目隠しは意味ないんだよ。鼻と耳を塞がない限り、なんでもお見通しなのさ」

 

アン「口を塞ぐのは最後にしてやる。

イグナティウス。どこまで調べたんだ?ぜんぶ白状しちまえ。

小細工を弄したら、寿命を縮める」

 

イグナティウス「ものすごく仲の良い、素人グループの仕業だろうってところまでは推理した。

アンも何らかの形で関わっているみたいだ、までは確信してた。

でもそれ以上の深入りはしてないよ。正式に招待されるのを待つことにしたんだ。

そしたらこのザマさ、あはは」

 

ヴァンス「こないだ、アタシに説教したよな。その割にアンタだって、油断と隙のカタマリじゃないか」

 

イグナティウス「そういうことになるね。うん、反省しよう。僕は傲慢でした。心に刻みます」

 

アン「法医学者ってのは、みんな、あんたくらいの能力持ってるものなのかい?」

 

イグナティウス「人それぞれかなあ。師匠と僕とでも、得意分野は異なるからね」

 

アン「君にできて、師匠にできないことを3つほど挙げてごらん?」

 

イグナティウス「若さゆえの体力。頭の回転が速いこと。この陽気な社交性。えーと、まだ言ってもいい?」

 

アン「逆に、君が師匠にかなわない点を、あるだけ言ってごらん」

 

イグナティウス「年齢ぶん積み上げてきた経験と知識。熟成されたダンディズム。性欲が枯れてるから女に危険視されないところ。えーと、まだなんかあるっけ」

 

アン「ずっとこの調子で喋られてもな。

ああ、この際だから訊いておこうか。

あんたってさ、ゲイなの?バイなの?

ここにいる誰とでもやれるの?

おれとだったら、どうなんだい」

 

イグナティウス「うーん……」

 

ヴァンス「アタシの顔色うかがってやがるな。

こいつはね、口先だけ達者で、自分から襲いに行くことはないよ。

誰にでも見境なく勃起はしやがるけど、リアルの前では超ビビリだ。そうだよな?」

 

イグナティウス「……うーん……」

 

アン「痛いところを突いたようだな。

なあ、おれ想像すんだけどさ、イグナティウス。

おまえ、生身の人間、あんまり好きじゃないだろ。てか、怖がってるよな。

きっと、死体にしてからならいつまでも楽しくまぐわっていられるのに、ってそういうタイプじゃないのか?」

 

静寂。

 

アン「あらら?図星かな。

悪かった。いまの話はこれっきりだ。

ちょっと休憩しよう」

 

イグナティウスだけ椅子に縛りつけたまま、他は部屋を移る。

 

ヴァンス「アン……抉ったよ、今のは」

 

アン「なかなか口にする話題じゃないけど、今日はちょっとエキサイトしちまった。

やっぱり……そうかあ。いやあ、当てたはいいが、複雑な心境だ。

あいつを生かして帰したら、おれ、これからベル先生にどんな顔して挨拶すればいいんだろう」

 

ダイアナ「笑えばいいと思うよ、何ごともなかったかのように。

アンがこの程度で凹むのが意外なんだけど」

 

ヴァンス「アンタって、おかしくない?」

 

アン「ヴァンスこそ、そのリアクションおかしいぞ。

それにしても……どうする、あいつ。

仲間には加えない。それは決定事項だ。

……やっちまうしかないな」

 

ダイアナ「アンを怨むかもしれないしね。いや、怨むに決まってるな。

そりゃあ、ゆるしちゃおけないだろうね。

ギル、あんた最後まで押さえつけておける?」

 

ヴァンス「あの……話が進みすぎてないか?

それも決定事項なのか?マジで殺すのはさすがに夢見が悪いぜ」

 

アン「見てたろ。勃起してたぞ、あそこで。同情する余地は無いだろう。

ひと思いに楽にしてやるか、せめてものお楽しみを長引かせてやるか。それが問題さ」

 

ヴァンス「あの、せめてもう一回だけ、チャンスをやれない?

アタシが責任をもって監視するからさ。あいつはストレスも憎しみも、溜めたりできないやつなんだ。アタシも、うまく誘導するから。

な、お願いだよ、たのむよ」

 

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