12月第一週の総会で、今年のクリスマス襲撃地はサマーサイドに決まった。
完全な議事録などそもそも作られていないので当時の参加者による昔語りに基づくけれど、例年よりも長い時間をかけて話し合われたらしい。
A.サマーサイドでやらねばならぬ派と、
B.サマーサイドでだけはやってはならぬ派が、
まっぷたつに割れた。
全員がへとへとにくたびれ果てたところで投票にかけられる。B派の候補地はばらばらだったので、A派が最大票数を獲得した。
なにやっとんじゃおまえら。
ただ、決まった以上はすぐに根回しが計られた。
バスがアルバリーを出てから戻るまでのスケジュールが分単位で表にされ、サマーサイドにおける巡回ポイントと行動予定も綿密に文書化され、州警察へ提出された。
「当日はこの通りに実行するので、了承していただきたい。むしろ爆弾魔がさも教団と関わりあるかのような偽装をしてこの祝祭に乗じてくるならば、そこに最大の手懸りが残されるはず。徹底的に捜査して、事件を解決に導いてもらいたいのである」
州警察は説得された。
サマーサイドの市議会やジェイムズ・フォーブスの事務所へも、警察から伝えられた。
当日は市内いたるところに制服・私服の警察官が立ち、メディアにも要請して中継する・しないにかかわらずカメラで記録をしてもらう。
「なんとしても今年中にRAKを捕まえます」
こう力説されて、議員たちもフォーブスも承服した。
アルバリー村のペリー牧師は、総会へ出て初めてサマーサイドの爆弾騒ぎを知った。
議論の最中は水も喉を通らなかったが、終ってみると、自分は特にすることがないと気付く。送り出したら村で待ち、戦士たちを迎えるだけだ。
むしろ教団本部が発電機とテレビを準備してくれるというので、教会で中継を見ていられる。最高じゃんか。
もはや楽しみにしか感じられなくなっていた。
ドビンズ「わざわざ州都まで行ってきたんだから、もっと情報を蒐めてきてほしかったな。
……しかし、えらいことになったもんだ。
査察団がウィッチ・ステイシーの消息にこだわっていたのは、それでか。今も行方がつかめんとなると、裏で糸を引いていると断定してよさそうだな」
ペリー「ステイシーの噂は私もよく聞かされるが、毀誉褒貶が激しすぎて正体がさっぱりわからんのだ。
悪い魔女だという認識でよいのだな?」
ドビンズ「子供たちを夢中にさせて大量に連れ去っていく女教師の伝説は世界中にある。アルバリーでは未遂に終ったが、それというのも私が呪いをこの一身に引き受けて子供たちを庇ったからだ。
あの女は尻尾をつかまれる前に逃げ、今はサマーサイドへ潜伏しているということなのだろうな。そう考えると時期的にも符合する」
ペリー「なんと明晰な頭脳だ。君が捜査の指揮を執れば、あらゆる事件が軒並み解決することだろうに」
ドビンズ「それだけ呪いをかけられるオレの身にもなってくれ。まっぴらだ。
ともかく、計画が狂った。
クリスマスに資金を蓄えておくつもりだったんだが、当てが外れたよ」
ペリー「よければ、きかせてくれないか。何をするつもりだったんだい?」
ドビンズ「ウム……オレの教え子たちはほとんどが昨一年間、魔女に手懐けられていたんだよ。
オレはかれらの心に寄り添い、正しき道へと導いてやっている。従順に躾けられていた子ばかりでね、鞭も要らない。
そんなかれらだって、遊ぶ金が欲しいのさ。高学年だからな。
で、椅子やハンモック、釣り竿にルアーにと作ってるやつらがいて、オレが仲介して町で売ってもらってる。これが、ちょっとずつ軌道に乗ってきているところなんだ」
ペリー「なるほど、町で売るのか。村の中でバザーをやるより発展性はあるかもだな。最初のうちは出費の方が大きいだろうが……」
ドビンズ「町の業者は、いろいろアドヴァイスをくれる。怪我をしないよう角を丸くしてあればもっと売りやすいとか。
12月に入ると売れ筋が極端に変化することも、しつこいほど言われた」
ペリー「わかるよ。クリスマス商戦だ。都会では常識なんだ」
ドビンズ「とくにアクセサリーや奢侈品は、最新の流行を取り入れているかどうかで12月の売上が天と地ほども変わる。と熱弁をふるわれたんだが……ん?
まてまて。
クリスマス襲撃先がサマーサイドに決まったからオレの商売が期待できなくなった、という話をしていたはずだよな」
ペリー「あれ、そうだったか?
まあいいよ、初めてのクリスマスで君もウキウキしているんだろう。いいから語りたいように語ってくれ」
ドビンズ「そういう、なんでも聞き流して全部忘れていく態度は非常に不愉快だぞ。いまオレが何を説明したくて12月が特別だと言ったか、わかっているのか?」
ペリー「怒るなよ。クリスマスは街のムードを一変させる。そのイルミネーションが輝き出す12月には売れ筋が変化するから、12月に稼ぎたければそれ用の商品を作っておかないとな、という話だろう?」
ドビンズ「そう。町の業者はオレにそう言ったんだよ。
その通りにやったら業者は儲かるかもしれんがオレは破産する。
だから、という話をしたかったんだが、君があまりにも素直に聞き流しているから調子がくるっちまったよ」
ペリー「え?
今の話のどこが間違っているというんだ」
ドビンズ「業者の側から見れば大正解だよ!
だがオレは儲からない。それどころか大損をする。
ああ、なぜ君はそこに気付かない!」