俗物少年合理君 作:この俗物怪物くん
のび太の部屋には、未来型アーケードゲーム『ウエスタン・ガンマン』の筐体が鎮座していた。
光線銃を構えたのび太の目は、普段の眠たげな顔とはまるで別人。まるで砂漠のガンマンのように研ぎ澄まされている。
「来いっ……!」
ゲーム画面の保安官が次々と現れる。
バン!バキュン!ピシュン!──完璧な照準。無駄な動きは一切ない。
撃つたびに「PERFECT!」「AMAZING!」「NOBITA BONUS!!」と光の文字が弾け飛ぶ。
最後のターゲットを撃ち抜くと同時に、画面中央に金色の文字が輝いた。
『PERFECT! SCORE: 30,000pts! NEW WORLD RECORD!』
「やったぁーーーっ!!」
のび太はガッツポーズ。
ドラえもんが横からぴょこんと顔を出した。
「すごいじゃないか、のび太くん!パーフェクト3万点!このゲームの世界最高記録だよ!君は本当に射的の天才だ!現代科学の七不思議、生命の謎、宇宙の収束、そしておばあちゃんの漬物のレシピ並みに奇跡的だよ!」
「えっへん!僕だってやればできるんだ!」
胸を張るのび太。その姿は、今だけはちょっとカッコよかった。
だが、ドラえもんは急に真顔になった。
「それにしても不思議だなぁ。他に何の取り柄もないのに。勉強だめ、運動だめ、ノロマでグズでちょこちょいでドジで、おまけにエッチ。」
「そこまで言わなくてもいいでしょ!!」
のび太が顔を真っ赤にして叫ぶと、ドラえもんは涼しい顔で続けた。
「いや、科学的に説明がつかないんだよ。遺伝子のどこに射撃だけうまい要素があるんだろう? たぶん未来の研究者が君を解剖したらノーベル賞が取れるね」
「やめてよそんな怖い研究!」
その様子を、部屋の隅から眺めていた二人の影。
合理くんと、彼に付き添う鈴木さんである。
合理くんはゆっくりと拍手を始めた。
「素晴らしい、野比くん。実に見事だ」
「え?あ、ありがとう……」
「アメリカでの実銃訓練と、この反動のない玩具の銃とで、射撃精度が全く変わらない。しかも一発の誤差もない。もはや天才ではない。怪物(モンスター)だ」
「怪物て!」のび太は思わずズッコケた。
鈴木さんは微笑みながら両手を胸の前で組む。
「まあ、正義さま。野比さん、そんなにすごい方だったのですね」
「ああ」合理くんは静かにうなずいた。
「傭兵として戦場に投入すれば、単独で一個師団を壊滅させることも可能だろう。コストパフォーマンスが神がかっている」
「褒めてるのかどうか分からないよ!」
合理くんは電子手帳を取り出してメモを取る。
「野比のび太、資産価値:人類級。初期投資ゼロで射撃能力を維持。潜在的リターン率:∞(無限)うむ、完璧だ」
ドラえもんが少し引き気味に尋ねる。
「合理くん……なんか怖いこと考えてない?」
「考えているとも」合理くんの目がギラリと光る。
「もし野比くんの射撃精度をAIに学習させれば、無人防衛システムが完成する。国防省に売れば……いや、民間流通させれば……!」
「ダメだよそんなの!」とドラえもんが慌てて止める。
「落ち着きたまえ、ドラえもんくん。僕は暴力のために使うつもりはない。ただ、利益のために使うだけだ」
「どっちもろくでもないよ!」
その時、のび太が再び銃を構えた。
「見ててよ、合理くん!もう一回パーフェクト取るから!」
彼は集中した。周囲の空気がピンと張り詰める。
画面上の敵が一斉に出現。
その瞬間──
「バン!バキュン!ピシュン!ピピピピピッ!」
……0.2秒。すべての標的が撃ち抜かれた。
ゲーム機は煙を上げ、画面がバグり、「CONGRATULATION!? YOU ARE GOD.」という謎の英語が浮かんだ。
「すごい……!」鈴木さんが目を輝かせる。
「ゲームがのび太さんを神と認識しましたわ!」
「君はもはや電子機器の支配者だな」と合理くん。
「もし電脳世界に転生したら、確実にラスボスだ」
「ボ、ボスって……!」
のび太が慌てて銃を下ろすと、ゲーム機から煙がもくもくと出た。
「わ、壊れた!?」
ドラえもんが冷静にスイッチを切りながら言う。
「うん、君の才能がハードウェアの限界を超えたんだね。これはもう、人類がついていける領域じゃないよ」
「そんなこと言われても嬉しくないよぉ!」
合理くんは、壊れたゲーム機を前に腕を組む。
「ふむ……野比くんの脳の神経伝達速度を測定すれば、ゲームの限界を超える理由が分かるはずだ。MRIと電極、そして少々の倫理違反があれば──」
「ダメだってば!」とドラえもん。
「じゃあ簡易実験でいい。次はBB弾でやろう」
「もっとダメだよ!!」
鈴木さんがうっとりした目で合理くんを見つめる。
「やはり正義さまは天才ですわ……世界を動かす頭脳、そして暴走する好奇心……ステキ」
「ありがとう鈴木さん。だが、これは科学の探究心だ」
のび太は遠い目でため息をついた。
「僕の部屋、どんどん研究所みたいになってきたよ……」
◇◇
のび太の部屋。
光線銃のグリップを軽く回しながら、彼は窓の外を眺めていた。
太陽が傾き、夕暮れの光が畳に差し込む。
のび太はため息をついた。
「はぁ〜……僕が西部劇の時代に生まれていたらなぁ。きっと早撃ちの名手として、ビリー・ザ・キッドやワイアット・アープみたいに歴史に名前を残せたかもしれないのに!」
ドラえもんが鏡の前で蝶ネクタイを締めながら答えた。
「はいはい。そういうこと言う前に、まず宿題を片付けようね〜」
「だって、僕の射撃の腕前、もう神レベルだよ!?時代が違うだけで、僕は英雄だったんだ!」
「(整髪剤をシュッと吹きかけながら)うんうん。分かった分かった。……っていうか、君の英雄ってだいたい犯罪者寄りなんだよね」
「ひどいなぁ!僕は正義の味方だよ!」
そんな言い合いをしている間にも、ドラえもんは鏡の前で服装チェックに余念がない。
「さて、ミイちゃんとのデートの時間だ。火の元と戸締まりには気をつけるんだよ!」
鼻歌まじりに出ていくドラえもん。
その背中を見送ったのび太の目が、急にギラリと光った。
「……チャンス到来、っと!」
「えーっと、目的地は……1880年ごろのアメリカ西部!これで僕も伝説のガンマンだぁ〜!」
その瞬間、背後から聞き慣れた低い声がした。
「野比くん。君、タイムマシンで過去へ行くつもりだろう?」
「ひぇっ!?」
振り向くと、そこにはいつの間にか現れた合理くんと鈴木さん。
二人は完全に「監視モード」の顔で立っていた。
「な、なんで分かったの!?心の声まで聞こえるの!?」
「いや、君の思考パターンは僕のデータベース上では単純に分類されている。『暇→現実逃避→後悔→反省→再発』という見事なループ構造だ」
「ぐっ……ぐうの音も出ない……」
合理くんは腕を組み、興味深そうにタイムマシンを見つめる。
「しかし、これは興味深い実地試験(フィールドワーク)だ。未来科学の結晶であるタイムマシン――ぜひとも体験させてもらおう」
鈴木さんがすかさず前へ出る。
「正義さまが行くなら、私もご一緒しますわ!西部の風に吹かれる正義さま……想像するだけでロマンチックですわ♡」
「えぇっ!?君たちも来るの!?」のび太は完全に混乱。
「まぁ、未来の科学って素敵ですわね。まるで夢の乗り物ですわ」
「あの、どっちかっていうと夢っていうより悪夢の予感しかしないんだけど……」
「安心したまえ。僕がいる限り、理論上は安全だ」
「理論上!?」
◇◇
夜の野比家。
静まり返った部屋に、布団をめくる小さな音が響く。
「……よし、今だ」
のび太は押し入れをそっと開け、枕を抱いて眠るドラえもんの青い背中を確認した。
「ぐー……ぐー……」
完璧な熟睡。
のび太はニヤリと笑い、そっと手を伸ばす。
目当ては、ドラえもんの枕の下に隠された――スペアポケット。
「ふっふっふ、これさえあれば僕も一人前の未来人だ!」
ポケットを腰につけると、のび太は忍者のように机の引き出し――タイムマシン乗り場へと向かった。
「うわっ!?もう来てたの!?」
タイムマシンに着くと、すでに合理くんと鈴木さんが待っていた。
合理くんは腕時計を確認しながら冷静に言う。
「3分遅刻だ、野比くん。未来の旅において時間を守らない者は、過去をも変えかねない。気をつけたまえ」
「うぅ、出発前から説教かぁ……」
のび太が泣きそうになりながらタイムマシンに乗り込むと、目に飛び込んできたのは――アタッシュケース3つ。
「な、なにそれ!? なんかすっごい物騒な雰囲気なんだけど!」
合理くんは当然のように答えた。
「何ということもない。あらゆる不測の事態に備えるのはリスク管理の基本だ。内部には、現地通貨、自己防衛ツール、非常食、そして――」
彼は一つのケースをパカッと開けた。
中には、まるで映画撮影でも始めるかのような西部劇風衣装一式が並んでいた。
「――郷に入っては郷に従う。これもまた、ビジネスの基本だ」
鈴木さんが思わず拍手した。
「まあ、正義さま!用意周到ですわね!」
「なんか……修学旅行前のクラス委員長みたいだなぁ」
ブウゥゥン……とエンジン音が響く。
三人を乗せたタイムマシンが時空トンネルに突入する。
のび太は未来の科学にワクワクしながら、スペアポケットをごそごそ探った。
「そうだ!これを食べて!」
彼が取り出したのは――ぷるぷると揺れる『ほんやくこんにゃく』。
「さあ、これで言葉の心配はないぞ!」
鈴木さんは興味津々でそれをつまむ。
「まぁ!食べ物で翻訳だなんて、未来ってロマンチックですわね♡」
一方、合理くんはそれをまじまじと見つめて唸った。
「経口摂取型のリアルタイム翻訳システム……。このメカニズムさえ応用できれば、国連会議もAI通訳も要らなくなる。これ、世界を一つにまとめる経済兵器だ」
「怖い方向に考えるなよ!!」
三人は衣装に着替えた。
のび太はテンガロンハットにチェックシャツ、ベルトのホルスターに玩具の銃を差した典型的ガンマン。
鈴木さんは、胸元が大きく開いた赤いドレスに白いレースのグローブ。
そして合理くんは、黒いフロックコートに金の懐中時計――完璧な西部貴族スタイル。
「おお〜、まるで映画のワンシーンみたい!」
のび太はご満悦……だったが。
鏡の前に立った合理くんの眉がピクリと動く。
「……ふむ。衣装は完璧だ。だが、致命的な問題点が一つある」
のび太:「え?ボタン取れてる?」
「違う。我々の外見そのものだ」
合理くんは3人の姿をじっと見回した。
「この子供の姿では、無法者が集う酒場に入ったところで、ミルクでも出されて終わりだろう。ビジネスの基本は相手に侮られないことだ」
「……あ」
のび太の脳裏に、昼間ジャイアンにバカにされた記憶がよみがえる。
「(くっ……また舐められるのか……)」
しかし、すぐに彼の表情がニヤリと変わった。
「ふふふ……この僕に、秘策あり!」
彼はスペアポケットをガサゴソと漁り、何かを取り出す。
――そう、『タイムふろしき』である。
「これを被れば、未来の姿に変身できるんだ!」
パサッ。
煙が立ち上がり――そこに現れたのは、スラリとした青年ののび太だった!
あの丸っこい頬は引き締まり、目はキリッと光り、身長は180センチほど。
「フッ……どうだい?これなら文句ないだろ?」
声も低くなっている。
まるでのび太二世だ。
鈴木さんは思わず手を叩いた。
「まぁ!未来ののび太さんって、こんなに格好良くなるんですのね!」
「へっへーん!」(←中身は小学生)
続いて鈴木さんも、ふろしきを被る。
パァァァン!
煙の中から現れたのは――グラマラスで気の強そうな美女。
黄金比で計算されたドレス姿に、合理くんが一瞬だけ口を開けた。
「……ほう」
「まあ、素敵!これが未来の私……♡」
鈴木さんはくるりと一回転。
ドレスがふわりと舞う。
そして最後は合理くん。
彼はふろしきを科学者のように検分しながら言った。
「物質の時系列的分解と再構成……。興味深い。試してみよう」
のび太が彼にふろしきをかける。
煙が晴れると――そこに現れたのは、切れ長の目をした長身の青年。
冷たい知性を湛えた瞳、整ったスーツ(なぜか西部風)、完璧な佇まい。
「……ふむ。交渉相手に威圧感を与えるには、悪くない外見だ。これでリスクは一つ潰せたな」
「(同じふろしき使ったのに……僕だけコスプレ感すごい)」
時空トンネルを抜ける直前、合理くんは端末を操作しながら冷静に言った。
「さて、目的地は1880年アメリカ西部。気温38度、銃社会、経済システムは金本位制。現金を持たない我々は、まず信頼を売るところから始めよう」
「まぁ、なんてビジネス的♡」
「えぇ……僕、早撃ち大会に出るつもりだったのに……」
合理くんはにやりと笑う。
「安心したまえ、野比くん。どんな夢も、契約書一枚で現実になる。」
「やだぁ!その夢の叶え方こわいよぉ!!」
タイムマシンは光に包まれ、三人を乗せて荒野の彼方へ――。
次の瞬間、彼らの目の前には、赤茶けた砂漠と巨大なサボテン、そして馬に乗った保安官の姿が広がっていた。
未来の科学と、19世紀のロマンがいま交錯する。
そして、合理くんはサングラスをかけて言った。
「……よし、西部市場の支配を始めよう」
「だからビジネス目線やめなさいってばー!!!」
◇◇
眩しい光が引き、耳鳴りが止むと――そこは一面の荒野だった。
赤茶けた大地に乾いた風が吹き抜け、巨大なサボテンが天を突く。遠くではコヨーテが遠吠えしている。
タイムマシンのタイムホールが、プシューッと開いた。
まず降り立ったのは、テンガロンハットをかぶった一人の青年。
「や、やったぁーっ!ここが本物の西部の世界なんだ!!」
――のび太だった。
足が長すぎて、降りるときに段差を見誤り、思いっきり前のめりに転んだ。
「いっっったぁ……! うわっ、これ……足が!足が長いってバランス取るの難しい!」
見た目は凛々しい青年ガンマンだが、動きは相変わらずのび太のままである。
次に、ふわりとドレスの裾を押さえながら降りてきた美女がいた。
「まあ……なんて素敵なところ!まるで映画の中みたいですわ!」
――鈴木さんである。
風にドレスが揺れ、金色の髪飾りが太陽にきらめく。だが足元はヒール。砂地にズボッとめり込むたびに、彼女は笑顔のまま体勢を崩した。
「こ、これは……歩きにくいですわね!」
「そりゃそうだよ、そんな靴で来る人いないよ!」
最後にゆっくりと降りてきたのは――漆黒のロングコートを翻す青年。
切れ長の目、無駄のない所作、そしてアタッシュケース三つを片手で軽々と持ち上げる腕力。
「……なるほど、ここが1881年、アリゾナ州トゥームストーンか。」
合理くんだった。
彼の視線はすでに遠くの町へ向けられている。
「インフラは未整備、法治は未成熟、治安は劣悪。だが、それ故にフロンティア・スピリットに溢れている。そして何より――」
乾いた風が彼のコートをはためかせる。
「――天然資源が手つかずで眠っている。これは……大きなビジネスチャンスの匂いがするな」
鈴木さんが目を輝かせる。
「さすが正義さま、見方が違いますわね♡」
「いや、目の前にあるの砂とサボテンだけだから!」のび太がツッコミを入れた。
三人は町を見下ろす丘の上で打ち合わせを始めた。
「で、そのカバンには何が入ってるの?」のび太が指さす。
合理くんはアタッシュケースを一つ持ち上げ、カチャリとロックを外す。
「言っただろう? あらゆる事態への備えだ」
開いたケースの中には――
金貨、契約書、拳銃、翻訳端末、ついでに「出資交渉用スマイル練習マニュアル」まで入っていた。
「……お金と武器と笑顔って、なんか怖い組み合わせだなぁ」
「すべて交渉の道具だよ、野比くん。西部の時代において、信頼は弾丸よりも高価だ」
合理くんはもう一つのケースを開けた。
中には、なぜか手製の企業ロゴ入りポスター。
「え、Rational Frontier Holdings? ってなにこれ会社!?いつ設立したの!?」
「今さっきだ」
彼は涼しい顔で答える。
「起業はスピードが命だ。市場の空白を突くのが、真の投資家というものだ」
鈴木さんは胸を張る。
「つまり、私たちはこの西部の地で新しい未来を築く開拓者ですのね!」
「いや、ただの観光旅行のつもりだったんだけどなぁ……」のび太は頭を抱えた。
丘を下り、三人は町へと歩き出す。
砂埃が舞い上がり、酒場のピアノの音が遠くから聞こえてくる。
「おおっ、すごい!馬車だ!保安官だ!うわっ、牛が歩いてる!!」
のび太は大興奮で写真を撮りまくる。
「やめろ、バッテリーの無駄遣いだ。ここでは充電設備など存在しない」合理くんが冷静に止める。
鈴木さんは周囲の視線を集めていた。美女の登場に、カウボーイたちが口笛を吹く。
「ヘイ、プリティーガール! 俺の馬に乗らないか?」
その瞬間、銃声が一発。
バンッ!!
カウボーイの帽子が風に飛ぶ。
のび太が、煙を上げるコルトをくるくる回してニヤリと笑った。
「悪いね、僕はもう馬より速いんだ」
「まぁ!素敵ですわのび太さん!」
「ふむ。君の腕はやはり怪物級だ。射撃精度0.02秒以内。西部全土で通用するレベルだ」
「えっ、そんな分析いらないよ!怖いからやめて!」
町の入り口に着くと、酒場(サルーン)のドアがきしむ音を立てて開いた。
合理くんは一歩踏み出し、まるで株式市場の開場ベルを鳴らすように宣言した。
「さあ、野比くん。君の怪物としての実力、存分に見せてもらおうか。まずはこの町のサルーンで情報収集と、我々の事業の足がかり作りだ」
のび太(青年)は腰の銃を叩きながらニヤリと笑う。
「任せてよ。ここでは拳より早く、銃で語るのがルールなんだ!」
鈴木さんは胸元のブローチを直しながら言う。
「そして私は、サロンのマダムとして、正義さまのお手伝いをしますわ♡」
「うむ、頼もしい」合理くんは頷いた。
「僕はこの町に銀行を設立し、通貨制度を再構築する」
「スケールでかすぎるよ!!」
夕暮れ。
三人がサルーンの扉を押し開けると、ピアノの音が止まり、全員の視線が集まった。
「……誰だ、あんたらは?」
カウンターの男がつぶやく。
合理くんはゆっくりと帽子を取り、笑った。
「通りすがりの投資家だ。だが、ここに未来を感じた。――この町、買わせてもらおう」
「買うって……町を!?」のび太と鈴木さんが同時に叫ぶ。
「ビジネスはスピードだと言っただろう?」
カウボーイたちは一瞬ポカンとしたが、すぐに爆笑した。
「ハッハッハ! おもしれえガキだな! 金はあるのかい?」
合理くんはアタッシュケースをバンと置き、金貨をひとつ放り投げた。
カシャン、と高い音が鳴る。
酒場中の空気が、ぴんと張り詰めた。
のび太は思った。
(……この人、やっぱり本気でやる気だ……!)
合理くんはゆっくりと微笑み、グラスを掲げた。
「諸君。ここは機会(チャンス)の荒野だ。――乾杯しよう。僕たちの、西部開拓事業の成功に!」
「か、乾杯ですわっ!」
「(僕の夢となんか違う……)」
こうして、ガンマンの夢と投資家の野望とマダムのロマンを乗せた、奇妙な西部開拓物語が幕を開けた。
夕日を背に、合理くんが言う。
「さあ、未来を創りに行こう。――過去からな」
「うまいこと言ったけど、意味が深すぎるよ!!」
そして彼らの冒険は、誰も予測できない方向へと転がっていくのだった。
映画版に突入
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