Angel Boxes!   作:ピンクのナービィ

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少年少女は水の中。

 皆が水泳大会で忙しい中、一人ギルドの第二コンピューター室で"彼"と喋る。

 

「つまり、Angel Playerとはこの世界のマテリアルを構築・改変できるソフトであるために、この世界に属する魂へも干渉可能であっておかしくはないと?」

「ええ。尤も、おかしくはない、だけですが。……あなたたちの魂、あるいは精神と呼べるものもまた、この世界に属するもの。なぜなら肉体が細切れにされたり圧し潰されたりしても、あなたたちはその場で復活する。それはそこに魂が留まっているからであると思えませんか?」

「……理解は及ぶ。であればNPC化もその一種か。人間を取り込み魂の無いNPCに変えているのではなく、魂を封じ込めている、とでもいうべき」

「はい。でなければ強い想いに呼応して戻ることができる、というプログラムの仕込みようがありませんからね」

 

 確かにそうだ。

 それに、遊佐の人格……あるいは魂への封鎖もAngel Playerで行っている描写があった。

 

「ですから、というわけでもありませんが……あなた方が狙っている枯渇。あれ、どうして世界が先に枯渇すると思ったんですか、と聞きたかったんです」

「……まさか、先に人間が消費される、ということがあるのか?」

「さぁ? 僕はプログラマーのような頭脳を持っていませんから、なんとも。どちらにせよどちらかでしょう。世界との結びつきが強いが故に世界から枯渇するのか、世界との結びつきが弱いが故に人間から枯渇するのか。二つに一つ……なんて確率で戦うには、リスクがありすぎるように思いますが」

「枯渇が狙いじゃないからそれはどちらでも構わない。構わないし、人間から消費されるのであればそれはそれでいいのではないか? それもまた一種の消失。消える分には構わないだろう」

「それが一般生徒となることとどう違うのか、僕にはわかりかねますが」

 

 まぁ、そうだ。

 転生できないことを恐れているのだろうが、どの道今の自分は消える。自己同一性は担保されない。

 だとするのならば、ここで楽園を築いて生き続けるも、NPC化して自意識を失うのも同じこと。枯渇に巻き込まれて消費されるのも、だ。

 そういうのに納得ができないから今皆やるべきことをやっているのだろうが。

 

 なんにせよ。

 

「参考になった。また来るよ」

「ええ、いつでもどうぞ」

 

 もう少し……違う側面から調べる必要がありそうだ。

 

━━━λ√ヽ━━・・

 

 影の化け物を減らすためにギルドの連絡路を歩いている時の事だった。

 

「おい」

「ん」

 

 側面通路から出てきた大男に声をかけられた。

 ひげ面の、明らか工場育ちな……もっと言うと戦時下だったのだろう雰囲気の感じ取れる男性。

 

「見ない顔だが、聞いた特徴と一致する。お前が陽江だな」

「そういうあんたはチャーだな」

「ああ、そうだ」

 

 チャー。ギルドにおける武器製造の旗頭。戦線の要。

 彼がこの世界にいたことで、仲村ゆりと日向秀樹は戦う意思を見出せた。

 

「拳銃は使えるか?」

「使えるが、使わん。基本徒手空拳か短剣を使う」

「そうか。武器が必要になったら言え。どんなものでも作ってやる」

「知らんものも作れるのか?」

「すぐには無理だ。だが、ここには図書館というものがある。調べれば知識を得られる場所、がな」

 

 良い心構えだ。

 

「それで、そんなことを聞くためだけに来たのか?」

「いや。上の連中に知らせて欲しいことがあっての接触だ。まずゆりっぺとの通信用に使っていた無線機の電波が届かなくなった。中継器を置いているにもかかわらずのことだ。地盤に何かあるのか、世界に異常が起きているのか、地下深く過ぎて諸々が機能しなくなっているのか……」

「なるほど、問題だな。伝えよう」

「助かる。そしてもう一つは……見てもらった方が早い。今時間はあるか?」

「ああ」

「ついてこい」

 

 特に何か言うこともなくついていく。

 ギルド。原作ではたびたび事件が起きていた場所だけど、はたして此度は何が起きたのか。

 

 道中、時折湧いて出てくる影の化け物を退治しながら進む。

 

「ギルドの連中は大丈夫なのか? 常日頃からこの始末で、問題は……」

「これが常日頃だったら問題だな。……ギルドにはほとんど湧いてこない。この連絡路に来て初めてここまでの敵がいることを知ったよ」

「そうか。やはり明るみに出ることは避けているらしいな」

「この分であれば、対天使用トラップを常時起動させておいてもいいのかもしれないな。影の化け物にも重みがある。加えて人間がいなければ自身の危うさに無頓着と来れば、殺しも楽になるだろう」

 

 確かに、それはアリかもしれない。

 サイコロトラップなんかは超有効打だろうし。そもそもどうやって作ったんだって感じはあるけど。

 小型推進エンジンといいアレといい、実は未来の高校生が一人くらい混じっていてもおかしくないと考えている。

 

 とまぁそこで会話が途切れて、また進んでいく。

 現れる敵現れる敵に切削バイトを投げつけること二十分、結構巨大な穴を滑り降りること四回ほど。

 

 それで……そこへ辿り着いた。

 

「こ……れ、は」

「ここだけじゃない。ここ以外にも数十のエリアで、この光景を見ることができる」

 

 眼下──広がりに広がる、黒。

 

 ともすれば油田のようにも見える。クレーターのような形状の地面に溜まる漆黒。微動だにしないそれ。

 いや、注視すれば動いているのはわかる。そして縁の方が靄がかっていることも──無数に動く、光る目があることも。

 

 影の化け物。その溜池。

 

「どんな攻撃をぶち込んでも除去することはできなかった。発見後から一度も溢れ出たことがない故に脅威とはいえないが、これが溢れ出たら、と思うと報告が必要だろう」

「ああ……これは、マズいな」

 

 一斉に。一気に。残さず。

 数十あるという池からこいつらが飛び出したら……流石に終わる。

 

「なにまで試した?」

「携行型の対戦車ミサイルまでだ」

「それ以上の武器……兵器の製造は?」

「すぐには難しい。さっき言った通り、一から調べる必要がある」

「火薬や燃料の類は?」

「試したが、燃えることはなかった。燃料が燃焼するだけで終わる」

 

 切削バイトを手に取り──今出せる全力で投擲する。

 踏み込み時に足場を少し砕くほどの威力。

 

 直線を描いて直進するそれは巨大空洞の闇を駆け抜け、溜池に突き刺さり──。

 

 沈黙、した。

 

「ノーダメージか」

「なるほど、拳銃が要らないわけだ」

「火力ではなく殲滅力が必要だな、これは」

「ああ、俺達もそう思ってな。天使を頼るつもりだった」

 

 銃撃機並みの戦闘力を、ね。

 ただ……さしもの立華奏とて、あそこに突っ込むのは愚策なんじゃないか?

 

「というか……ノーダメージ、ということがあり得るのか?」

「奴らは流体のようなふるまいをする。あるかないかで言えば、あるんじゃないか?」

 

 だとしたら銃弾も斬撃も効くまい。……何かからくりがあるはず……だが、なんだろうな。

 

 アプローチとしてあと思いつくのは凍らせる、とかか。川があるんだ、しかも流入量が恐らく無限である河川が。

 あれを引き込めば……いや、水嵩が増すと地上への渡りがつくようになるだけか。

 

「これと同じものがあと数十あると言ったな」

「ああ。場所はバラバラだが」

「……ノーダメージなのではなく、すぐさま補充しているだけ、という可能性はないか? つまり、あの影の池は──」

「底で繋がっている、と? さながらアリの巣のように」

「爆薬が爆発して、影の化け物自体にノーダメージというのがあり得たとして、あのクレーターまでノーダメージというのは納得が行かん。だから、それを飲み込んだ瞬間に地下へ地下へと追いやった……あるいはもっとたくさん影の化け物が溜まっている空間へ持ち込んだ、くらいしか辻褄が合わないだろう」

「やつらにそこまでの知能があると?」

「影の化け物自体には無いのやもしれんが、それを作り出した奴にはあるだろう。加えて数日前には人型の影の化け物も出てきている。……最早何が起きたとておかしくはないさ」

「……上との連絡がつかなくなったのもその辺りだな。俺はその話を知らない」

「無線妨害……か?」

「タイミングの合致をどう判断するかはゆりっぺの仕事だろう」

 

 仲村ゆりに些か背負わせすぎな気もするが。

 自身の葛藤が晴れた今、あれは「普通の女の子」だろうに。

 

「とにかく、二件の報告了解した。工場の人員が心配なのだろう? 早めに帰ってやるといい」

「助かる。信頼できる仲間だが、戦闘能力は上の奴らに及ばない。敵が人間でないとなると後れを取ることもあるだろう。朗報を期待している」

「それは仲村次第だが」

 

 連絡路の方へ戻っていくチャー。

 その姿を見送ったあと、溜池の方へ視線を戻す。

 

 ……しかし。

 なんだ、勝手に新入りとして紹介されていたのか。よくわからん話だな。

 

━━━λ√ヽ━━・・

 

「そ、ありがと。悪いわね、あたしたちの事情に付き合ってもらっちゃって」

「構わないが……どういうアプローチを取るつもりだ?」

「今はまだなんとも。音無くんとか奏ちゃんとかと話し合って決めるわ。ああ、もし戦闘関連のオペレーションになったら、あなたも協力してくれるわよね。その量の化け物が溢れ出したらあなただって危ないもの。あなたが世界の尖兵でなければ、だけど」

「もう何度も襲われているからわかってほしいんだがな」

「あらごめんなさい。お誂え向きに性別まで隠しているから、あなたこそ天使なんじゃないのかって疑っちゃったわ」

「天使には雌雄がない。真逆だ」

「別にあなた両性ってわけでもないんだから逆じゃなくない?」

 

 それはそう。

 

「真面目な話……なぜ化け物はギルドの連中を襲わないのだと思う? 正直言ってギルドの戦力はあたしたちより低い。数で押すにせよ闇討ちするにせよ、うってつけの存在だわ」

「以前であれば警戒されたくないのだろうと言ったが、既にバレているわけだしな」

「ええ。だというのに頑なにギルドを襲わない理由。……あんまり考えたくはないけど、無線妨害の件を考えると──」

「内通者、か」

「リーダーがそういう思考に陥るのは良くないってわかってるんだけどね。……でも内通者がいるんなら、襲われない理由も分かる。そいつが指示を出しているのなら、そして自分だけが襲われないことに疑問を持たれないためだとしたら」

 

 まぁ……そうなるよな。

 チャーが仲間想いだったからあの場では言わなかったが、その線が一番濃厚だと思う。

 

「第二コンピューター室のAIと少し話をしてきた」

「そっちも奏ちゃんから聞いているけれど、追加の話?」

「ああ。ついさっきの話だ。……結論の出ない話は一度脇に置いて、Angel Playerならば人間相手であっても改変が可能である、という話をしてきた。覚えはあるだろう?」

「……そうね。あるわ」

「つまり……裏切り者、ではなく」

「成り代わりがいるかもしれないということね」

「ああ」

 

 勿論直井文人のような思い込み勘違いがいないとは言い切れない。

 だが、この世界へ戻ってきてから起きた事象だというのなら、そこで何かが、誰かが成り代わられたと考えることもできる。……というよりそっちを信じたいの方が正しいな。

 誰しも身内は疑いたくないもの。原作知識がある分そういうフィルタリングをしてしまうので余計に。

 

「……面談が必要そうね。直井くんの催眠術で……」

「アレの能力はマストだろうが、黒幕と対面させることになりかねないのは少々心配だな」

「そう……ね。彼の戦闘能力は低い。……あなたが同行するというのは?」

「正直に言うと、守る戦いは得意ではない。椎名の方がまだ可能性はある」

「……わかった。その辺り、こっちでよく考えてみるわ」

 

 歓声が上がる。扉の向こうから。

 

「あっちも盛り上がってるみたいね。……水泳大会、本当に参加しなくていいの?」

「泳げないわけじゃないが、三十分以上息継ぎなしで潜航できる人間が参加するのは少し違うだろう」

「そう? 椎名さんもそれくらいできると思うけど」

「……出ているのか、あいつ」

「ええ、前回の反省を活かしてちゃんと泳いでもらってるわ。時間はあったから、泳ぎも教えたのよ」

「前回がどういうものだったのかは知らんが」

「ああごめんなさい。あなた色々知ってるものだから、昔からいるつもりで話しちゃった。そういうことは知らないのね」

 

 知ってはいるが、前回がどれを指すかわからなかった、が正確な言葉だ。

 あれは一回目。その後何十年とここにいるはずだからな、こいつらは。

 

「……多少の開示はする。天使。その言葉を知っていたのは、知識として知る機会があったからだ。その様子を見てきたわけではない」

「知識として……? ……奏ちゃんに関する……プロファイルみたいなものがあった、ってこと?」

「立華の、というよりお前達の、だが」

「それ……開示はありがたいけど、あなたの疑いを深めただけよ? だってあたしたちのデータを事前に見ていたとか、まさに世界の黒幕がやりそうなことだし」

「まぁ、前も言ったがどう受け取ってくれても構わん。言えることは限られているが、敵意は無い。そう伝えたかっただけだ」

「……奏ちゃんもだけど、あなたもかなり不器用なのね。なんだかそんな感じがしてきたわ」

 

 そうかもしれない。

 器用に生きられたら……違う人生があったのだろうし。

 

 いや、どうかな。不器用さは一回目の人生からそうだったかもしれない。

 

「おーいゆりっぺ? 腹でも下したか? そろそろ出番だぞー」

「今行く! っつか、女子更衣室の前に来るな変態!」

「理不尽……」

 

 そう、ここは女子更衣室。

 そして──学ランのままなこの姿。

 

 誰かに視認されようものなら変態の誹りは免れんな。

 

「じゃ、このあたりで。暇があったら『さっさと死なせなさいよ戦線』の活躍でも見ていきなさい。二階の観戦席は解放されてるから」

「ああ」

 

 足早に更衣室を出ていく仲村ゆり。

 ……観戦、ね。まだそこまで気を許されたわけじゃないんだ、余計な気苦労を与えるだけだろう。

 またいつかの機会にさせてもらうよ。

 

 

 

 

 屋内プールの屋上……というか屋根上に寝転がる。

 たびたび聞こえる歓声。まだまだ種目はあるらしい。

 

「よ……っと。ふぃー、どんなとこ登ってんだよお前。梯子なんかねーし足場も悪いってのにさ」

「日向?」

「おう! お前を見かけたって聞いてさ。観戦席にいるのかと思って探し回ったら、窓の外で見かけたとか言い出して何事かと思ったぜ」

「いいのか、水泳大会は」

「おれたちの出番はもう終わっちまったからなー。メドレーリレーで負けちまった。椎名一人が最強でも勝てないゲームだった」

 

 超跳躍じゃなく泳法に変えたのなら、まぁそうだろうな。

 とはいえ此度は目立とうとする気持ちもない、本当のエンジョイ参加。なんでもいいのだろう。

 

「やっぱ馴染めねーか、戦線メンバーとは」

「元よりどこにも馴染めない人間だったさ」

「そう悲しいこと言うなよな~。……ちなみにさ、過去の話は聞かせてくれんの?」

「聞きたいか?」

「聞きたいか聞きたくないかで言えば聞きたいさ。抱えてるものを少しでも軽くしてやれるかもしれない。でも話したくないなら話さなくていいぜ。無理に聞き出すことじゃないからな」

「……ま、特に珍しくもない話だ」

 

 空を見上げる。

 こんな青空は見たことがなかった。ずっと灰色の、曇り切った空しか。

 

「高校一年の時、ある武装集団が発起した。……お前も男子だ、一度は妄想したことがあるだろう? 授業中にテロリストが、というやつ」

「……マジで言ってんだよな、それ」

「ああ。それで……その時撃ち込まれたロケットランチャーによって、生徒の七割が死んだ。残りの三割も国に対する人質として拘束され、奴隷が如き扱いを受けた」

「日本の話か、ホントに」

「お前たちにとっては少し未来の話やもしれん。あるいは……もっと未来の、か」

 

 別世界の可能性も勿論ある。なんせ一度目の生より古い時代に生まれているし、その上でそんな事件聞いたこと無かったしな。

 最初は逆行転生だと思っていたものだけど、いやはやそんなチートは与えられなんだか。

 

「その中で、逃げだした数人の少年少女がいてな。彼ら彼女らはその武装集団に対するゲリラになった」

「国に保護してもらうってのは無理だったのか?」

「上も一枚岩ではなかったんだ。その武装集団の資金源に政治家の一人がいた。そしてそれが世間へ公表されると同時に、今度は海外が攻めてきた。そこからは……武装集団だけでなく、自分たちの命を狙う者すべてを敵と見做し、同時に連れ去られた生徒たちを奪還するための日々だ」

「……誰かの創作物を聞いてる気分だぜ」

「同感だ」

 

 ここが創作物の中だという点も含めて。

 

「その戦いの中で、お前はそんなに強くなったのか?」

「どうだろうな。元からの身体能力であった気もするし、戦いの中で磨かれていった気もする。何か契機があったかと問われたら難しいが……最初の殺人の際、何かが外れたような気はしていたな」

「殺人……っていうのは、つまり……敵を、だよな」

「敵だから何をしていいという倫理でもあるまいさ。人は人だよ、日向」

 

 一度目の生はそういう血生臭いこととは無縁だった。

 二度目の生は、血濡れだった。

 

 その時、二度目の生はもう報われはしないのだろう、と……そう悟った。

 

「他、色々ありはするが、この程度の人生だ。同情の余地は然程ない。これが……何もできずに拘束された三割の生徒であれば、また話も違ったのだろうが」

「……すまねえ。おれじゃ……なんて言葉をかければいいか、わかんねえ。あまりにも……違う世界の話過ぎる」

「問題ないさ。……報われることが何かあるとするのならば、残してきてしまった仲間たちの……吉報なりなんなり、そういうものを聞けること、になるのだろうが……天文学的確率だろうし」

「あ、けど可能性がないわけじゃないと思うぞ。戦線メンバーに高松っているだろ? 昔、アイツの生前の友達がここにいたことがあんだよ。そいつは……満足して消えていっちまったけど、つまり同じ時代、同じ場所のやつが現れることもあるんだ」

「それまで待てと?」

「あ……いや、そういうわけじゃ」

「すまんすまん。意地の悪いことを言ったよ」

 

 それに。

 

「それに……ここへ来るということは、少なくとも朗報吉報の類じゃない、ということだしな」

「……そう、だったな」

「便りが無いのが便りの世界だ。絶対に来るな、と願うしかないだろうさ」

「そうだな。……確かにそうだ」

「あと……まぁ、もし来るのだとしても、ここではなく元の世界の方がまだ良いだろう。そのためにもこの世界の破壊は必須項目だ」

「世界の破壊、ねえ。……それも正直実感わかないんだよなー。壁っていうのも体感できてるわけじゃねーし」

「危機感が持てないのだったら、水泳大会後仲村から共有されるであろう溜池を見にいってみるといい。世界の破壊の前にこちらが食い尽くされる未来が見えるぞ」

「さっきゆりっぺが呟いてたやつか。ああ、わか──」

 

 ゴン、と。

 どこぞより飛来したバケツが日向の頭に当たり、彼はそのままゴロゴロと落ちていった。

 

 ……ん?

 

「まだSSSの出場種目は残っていた、という話です」

「なるほど」

 

 一瞬現れて、そして消えていった通信士の言葉を頭頂に。

 

 晴れ渡る空を、ただただ眺む──。

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