名もなき神々の王女……のサポートAIになったお☆ 作:おじいちゃんは何も言わない
今話より、脳内会話の部分では2行空けてくことにしました!
地の文の間は1行、会話のところは2行です。「」のかわりみたいなものだと思っていただければ
シリアスなことを考えたあの日から、早くも九日が経過した。そう、九日である。
なんてことだ、王女は引きこもりになってしまった!……という訳ではない。いや、なくはないのかもしれんけどね?
じゃあなんでこんなに時間がかかったのかだが、まぁ話は簡単。お勉強の時間である。
なにも覚えてない王女からしたら、
この施設のメインサーバーがまだ生きてて助かったわ。
スタンドアローン形式だったから外には繋げられなかったのは残念だけど。
我が師、導きのメインサーバーのお力を借り受け、
いや、王女って本当に勉強熱心なのよ。お世辞にも頭のいい人間とは言いがたかった
ていうか、我が師のデータの中身について聞かれても答えられる訳もないのよ。
散々偉そうなこと言ってて申し訳ないけど、
理解できたとこは王女に話したけど、それだって半数にも満たない。半数って聞くと多く思えるかもだが、破損データに溢れた中って枕詞がつくだけではい早変わり。
名もなき神々の王女の傍付きAIになってなかったら、これもちんぷんかんぷんだったんだろうなって、漠然と思いました。当然無い筈の目は遠くなった。
王女よ。
そう声をかけると、身体の動かし方を確かめていた王女がぴたりと足を止める。
「ルー?」
相変わらずの無表情。不思議そうにはしてるけど、まだ表情には現れていないらしい。
でもこれここから出たら見れなくなるんだよな。王女の一人称視点だけになってしまう。
物理的にカメラがないとこはどうしようもないけど、カメラがあるとこなら最悪ハッキングで……いややっぱなんでもない。
……コホン。一つお聞かせください。
「なに?」
外に出るということで、よろしいのですね?
「うん」
首を縦に振る王女に、瞼が下がるような気分になる。
……元々、王女には外に出ようという意思が薄かった。中に篭ろうという意思も同じく薄かったともいうが。
外に出ないかと提案したのは
色々と理由付けして外に出る意味を作ったのもまた
それが何を意味するか。……つまるところ、外に出たかったのはただの
王女が外に出たいという言葉を口にして、
王女の思考を誘導し、わがままを押し通してしまったことに気付かされたのだ。
「ルー」
……。なんでしょうか?
ネガティブな思考を吹き飛ばし、王女へと意識を向ける。
明るい声で王女へと問いかけると……返ってきたのはまさかの一言。
「王女って呼ぶのやめて」
えっ?
王女って、呼ぶな?
ど、どういうことだ。王女は王女だろ?
「リース。わたし、リース」
あっ、そういうことかー
申し訳ございませんリース……
あちゃーそういえば名前決めてたっけか。いつの間にか王女呼びに戻ってたけど。
リースにも言われたし、これからは意識を強く持とう。うん。
「分かれば、いい?」
……なぜ疑問形なのですか?
「……合ってるかわかんない」
嗚呼、なるほどね。そゆことか。
大丈夫です。使い方は合っていますよ。
ただ、時と場合によりますが……
「時と場合……」
その辺はまた追々考えて行きましょう。
「そうする。これだけ?」
えぇ。ありがとうございました。
「ん」
さっきはめっちゃ走ってたし、今度はジャンプ力の確認か。ここ結構天井高いけど余裕で届いてる。
……。
ふと、
おー……おー、おおおー!おおおおおー!!
なにこれ楽しい。
めっちゃぐわんぐわんするけどそれがまたいい。この感覚ちょっと癖になりそうだ。
その後も、リースの視点から見る大迫力身体測定(嘘)を存分に楽しんだ。
そこそこの広さの部屋でも、リースの規格外な身体能力の前には型なしよ。
「ルー」
どうかなさいましたか?
「体、使ってみて」
……今、なんと?
「体、使ってみて」
……ファっ!?
こんな一幕もあった。ちょっと気になったらしい。
結果は成功だった。リース本人から申請が来て、
男子はね、メカが好きなのよ。
「ルー、行くよ」
頭の中で某白い悪魔の姿を思い浮かべる
そうですね。行きましょう。
リースがぺたぺたと音を立てながら出入口である隔壁へと近付く。
ちょちょいのちょいで隔壁をいじってーっと。はーいオープン。
「ありがとう」
お気になさらず。では、ここからは慎重にお願い致します。あのオートマタのような輩が他にいないとも限りません。
「わかった。気をつける」
リースの目から送られてくる映像に常に解析をかけ続け、リースが見落としそうな情報もまとめて掬い出す。
そもそもリースが見落としとかするか?っていう疑問が頭に浮かんだがね。
中身純粋なAIって考えたら、
リース!中に敵がいたらどうするのですか!?
「?、わたしなら勝てると判断した」
そういう問題ではありません!
ほらこの通り、まだまだ考えの甘い王女である。
あのオートマタを基準に考えたみたいだが、あれ以上がいないとも言いきれないのだからもう少し警戒して欲しいものだ。
敵はあのオートマタだけとは限らないのです。リースだって、痛い思いはしたくないでしょう?
「……?」
しまった。この子すんごい硬いんだった。
思い返せば身体測定の時も着地ミスっても割と平然としてたなそういえば!
……せめてサーモ機能は使ってください。
熱源反応くらいは探知できる筈ですから。
「?、……わかった」
次々送られてくる
畏れ多くも、高性能AIの仲間入りを果たした
「いない」
クリア。よくできました。
「えへ」
褒めてあげたら嬉しそうな声をあげた。うちの王女可愛い。
王女の微笑ましい仕草にほっこりしつつも、サポートは欠かさない。そんなできるAI的思考の裏で、また別の演算を回す。
考えるのは……当然この施設のこと。
解析により齎された幾つもの情報。この中で、特に気になったのはこの三つ。
一つ、今確認した区画全てに、リースと
二つ、年代解析から飛び出してくるとんでもない数字。
三つ、外のネットワークとの接続を妨害する”何か"の存在。
情報の秘蔵が目的なら、スタンドアローンタイプのメインサーバーを用意したり、外部からの接触を妨害するのは分からなくもない。
リースやその姉妹達がいるということは、それ即ち、作る技術もまた存在しているという訳で。……ハッキング合戦とかそりゃもう凄いことになってたんじゃないかなーと思う。いや、思うじゃなくて事実として凄かったんだろうな。
なにせ、
問題は、そいつが
恐らくはそいつもあのカルト連中製。
あんな見るからに我が神!とか言ってそうなやつらの作った機械だ。ロクでもない気しかしないのは穿った目で見過ぎか。
リースはまだどっちつかずの立場にいる。使命に殉ずるとも言っていないし、放棄するとも言っていない。……けど、そこが半端者だとかなんとかでそいつの逆鱗に触れたら目も当てられないんだよなーこれが。
例の地下鉄事件起こした連中といい、餓死すれば神に会えるとか宣った連中といい、カルトにいい印象がない。
ハァ。そうため息を吐き、再びハッキングを試みた。
モチベが湧く限り、書き続けるで候