名もなき神々の王女……のサポートAIになったお☆ 作:おじいちゃんは何も言わない
モーターが死んだドアを手動でこじ開け、中に滑り込むリース。……あっ。
「入れなかった」
ドア前からもう崩落してましたね……でも、まだまだここからですよ。
踵を返した廊下で、心做しかしょんぼりしてそうなリースに慰めの声をかける。
余計なお世話だって言われる可能性はまだない。多分そこまで自我が成長していないと思われる。
なんというか、今のリースは……型の通りに模倣してるとでも言えばいいのか。
急にわたしって言い出したのも、もしかしたらそれの影響なんじゃないかと思ってるんだよな。
まぁ元はどうあれ、リースに感情が生まれれば、きっと彼女にとってもいい変化が起きる筈だ。その元をどっから拾ってきたのかわからんのが問題だけど。
「次はこの部屋にする」
カメラの再起動に失敗、熱源探知開始。
クリア、熱源反応なし。ですが油断は禁物です。
「わかってる」
気を取り直して、隣の部屋へと狙いを定めるリース。リースが足を踏み入れるに調べられる範囲でチェックを済ませる
ブツブツ一人で考え込んでるように見えても、その実
今の己の能力を最大限活用、元の正体と、これを作り出した何者かの正体を探る。
む……リース?どうかされましたか?
「あったよ」
あった?いったいなにが?
「これ」
これは……なんでしょうか?なにかの部品のようですが。
手を皿のようにしたリースが、残骸の山から引っ張り出した何かを見せてくる。
ジョイントやロックボルトの挿入孔と思わしきパーツがあるが……照合をかけてもめぼしい物は出てこなかった。
もしかすれば、この部屋の中に繋げられるパーツが転がっている可能性がありますね。
「探してみる」
お願いします、リース。
よくある謎解き、或いは探索系のRPGとかなら、こういう時はだいたい他の部屋の謎を解いたら出てくることが多いが、あいにくここは現実。
元々厳重な管理の下保管されるような代物ならともかく、そこら辺の隙間に転がってるような物に、わざわざそんなことをするとは思えなかった。もししてたらそれこそゲームだろ。
しっかし、本当になんなのかわかんねぇな。なんなんだこれ。
負荷がかかっていますね。下手に力を加えると崩れそうです。慎重に持ち上げることを推奨します。
「慎重に」
ヤバめなヒビの入った大型の機械……の、残骸をゆっくりと持ち上げるリース。
片側の端に何かをはめ込むタイプの接続部があり、その後ろ、真ん中のやや後ろ辺りが上下に展開する構造になっている。
なんかが中に入ってるようには見えるんだが……こりゃいったいなんだ?
――と、助言と同時に色々考えるマルチタスクを遂行する
上下左右、さらには前後とあちらこちらに向けられるリースの目。度々、その精巧に再現された肌色を惜しげなく晒す裸体映り込んで、ちょっとヘコむ。
そういえばまだ服見つけれてなかったな……早く見つけねば。
ん?……リース、その引き出しを調べて頂けませんか?
邪魔な残骸を退け、部屋を見回したリース。
その中、ふと目に入ったのは、幾つかの引き出しが収まっているタイプの収納。
一見普通の収納にしか見えないそれだが、なんでか妙に気になる。
見た目は他の収納と変わらない。大き過ぎも、小さ過ぎもせず、普通ならそこらで残骸になっている機材やらに目を奪われて、見向きもされないであろうそれ。
でも、なんでか気になってしまう。
なんでだ……と、もう一度情報の精査を行い、察する。
あっ、そうか。そういうことか。これだけ他のよりもほんの一回り程温度が低いんだ。だから気になったのか。
「これ?なんで……これだけ、低い」
推察を話そうとして、次の瞬間には答えに辿り着くリースに口を閉じた。
中から冷やされている訳ではありませんね。
どちらかというと、なにか冷たい物が入ってる感じでしょうか?
「分からない。開けてみよう」
中の様子は不明です。わかっていると思いますが
「慎重に、でしょ。ルー」
えぇ。念の為、逃走ルートを共有しておきます。
チート的AI性能で割り出したルートをリースに送る。
もしなにかあっても、あの部屋まで戻れば隔壁を閉じれる。そうなれば勝ちだ。
「ありがとう」
お気になさらず。主のサポートは
「じゃあ、開けるよ」
リースが引き出しに手をかけ、ゆっくりと引いて行く――ガッ
「……」
……。
無言。静かになる部屋。
しばしの沈黙を経て、もう一度引き出しに手をかけるリース。そしてまたゆっくりと引き、ガッとまた同じ音が鳴る。
鍵、かかってましたね……。
「油断してた」
これまで見てきたところの殆どで、鍵のとこだけちょっと温度が違う現象が起きてたのも大きい。
「ルー、開けれる?」
電子錠ではありますが……電源が落ちてますので、ハッキングでは無理ですね。むしろ物理ロックと呼んだ方が差し支えないかと。
「そっか。……なら」
……。*1
手馴れた様子で、少し開かれた隙間へと、地面に届くほどに長いその髪を垂らし、差し込んで行くリース。
それだけで何をする気なのかを理解し、黙り込む
リースの目から送られてくるサーモから、髪が垂らされた部分が異常なスピードで発熱して行くのが確認でき、気が遠くなった。
確かにできるかもって教えたのは
頭髪に搭載されたナノマシン同士を集合、高速で振動させることで、ニホンミツバチの必殺技として有名な“熱殺蜂球”を擬似的に再現するこの技。
流石は超技術製のナノマシン、硬そうな鍵すらも簡単に溶断させるほどの温度を生み出すのも朝飯前、か……。
白い目になりつつ、リース流鍵突破術を見届けていると、やがて、ジュウ…という鈍い音を最後に、引き出しを開かせんと粘っていた鍵がご臨終した。今までお疲れ様、ゆっくりおやすみ……。
自由の身となった引き出しは、リースの手を借りるまでもなく勝手に開かれ、その内に収められていた物を顕にした。
「ジェネレーター。冷却装置が付いてる」
そのようですね。現在も稼働中、温度が低かったのは冷却された空気が漏れていたから、という訳ですか。
中に入っていたのは、絶賛お仕事中のジェネレーター。冷却装置が頑張っていたお陰かひんやりしてる。
ひょいひょい傾けたり裏返したりし、ジェネレーターを観察していたリースがなにかに気付いた。
リース?何を……。
先程見つけた謎の部品を取り出し、ジョイントパーツの凹みにジェネレーターを繋ぎ合わせる。――部品に刻まれたラインが光を放った。
「予測通り」
ガシャガシャと音を立てながらパーツが動き出し、接続されたジェネレーターを内部へと引っ込め、最後にボルトの回転する音を鳴らし、ロックされた。はえー、すっごい。
まさかそうなるとは……しかし、急にコンパクトになったものですね。まだそこそこ大きそうには見えますが。
なにを目的として作られたのでしょうか。
「まだ分からない。ルー、調べられる?」
電源は入ったようなので、恐らく。少々お待ちを……。
えっ?ちょっ……セキュリティなんもないんだけど。そんなことある???
〜王女探索中〜
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猫またぎ様、どうせ同じだろうと確認が遅れてしまい誠に申し訳ないです。誤字報告感謝です!