白兎成長譚 作:たい焼き丸
これはあり得たかもしれない未来
少年の教育をめぐる保護者たちの争い。男の浪漫を教えようと奮闘する祖父と浪漫を阻止し真っ当な男へと成長させたい親たちに揉まれながらも成長していく少年の物語。
ベルが7歳の時ベルに新しい家族が加わった。
静寂を好み口より先に手が出るが何よりも優しい義母、筋骨隆々な体にそぐわず繊細で美味しい料理をつくる叔父。
ベルにとっては祖父以外にはじめて出来た家族であり何よりも大切なものになっていった。
だが祖父にとっては誤算であった。
常日頃からベルに「男ならハーレムじゃ!」や「覗きこそ男の浪漫!」などとベルに教えこみゆくゆくはハーレムを作らせようと考えていた祖父にとってこの2人の子育てへの参加は誤算中の誤算であった。
2人が加わった直後のことをゼウスは思い返す。
「ザルド、アルフィアよなぜ今になってこの子の元へ訪れたんじゃ?
てっきりお前たちは次の世代の踏み台になると思っとったわい」
ゼウスの質問にザルドは面白くないとばなりに淡白に答えた
「エレボスのやつが送還されて計画はなしそれにベルを一目見ちまったら悪に落ちるなんて出来なくなっちまった」
「わたしも同じだ。メーテリアの生き写しのようなあの子を見て見ぬふりをすることなんてできなかった」
「そうかエレボスのやつは送還されたのか。しかし何故送還されたんじゃ?あやつはまだ何もしてなかっただろう?」
「ああそうだ、あいつは本当に何もしてない。思い出しただけであの神について行こうとしたのが腹立たしくなるぜ。エレボスのやつ下見だとかいって登ったバベルから落ちてすぐ送還されやがったんだ。」
「そうか。それは災難じゃったな」
ゼウスはエレボスを憐れむと共に何をしてるんじゃと思った。
「じゃが何はともあれお前たちが生きてあの子のことを思ってくれるのはとても感謝しておる。そう言う意味ではエレボスもいい仕事をしおったわい」
ゼウスは心から2人への気持ちを述べベルと共にあろうとしてくれることを嬉しく思っていた。
「それはそうとお前たちベルとはもう会ったのか?」
「いやまだ会っていない。こいつはともあれ私はまだ心の準備ができていないからな。」
「なんじゃそうなのか。ならあの子が起きたら早く会ってあげてくれあの子はずっと家族に憧れをもっていたからな。きっと喜ぶじゃろ」
「あぁそうするさ」
アルフィア はどこか嬉しそうに呟いた。
その後これまでの経緯などたわいも無い話をしてベルが起きるのをまっていた。
あれから1時間がたったころベルはまだ眠い目をこすりながらゼウスたちがいるところへと歩いてきた。
「お祖父ちゃんおはよ。今起きたから夕飯作るの手伝うね」
ベルはまだ寝ぼけているのかアルフィア とザルドには気づかない様子だった。しかしその数瞬の後ベルをおおった灰色の髪の美女によりベルは2人の存在をはっきりと認識し始める。
アルフィア はベルのことを目にすると同時にレベル7の身体をもって目に見えぬ速さでベルを抱きしめたのだ。
いきなり知らない人に抱きしめられたこともその早さに驚きベルは固まっていた。そして固まったベルを見てアルフィアは優しい顔を浮かべながらベルへと話しかけた。
「ベル愛しい私の息子、どうか今会いにきたことを許してほしい」
ベルは何をいってるのか理解するのに時間がかかった
「息子?僕はあなたの息子であなたはお母さんなの?」
「正確にはお前の母の姉だがな、私のことはアルフィアお義母さんと呼ぶように
「え?お母さんの姉ならおば」
ドゴン!!!ベルが叔母さんと言うより早くベルの頭には拳骨が落とされていた。
「痛い!なにするのさ!」
「いいかベルよく聞け。私のことはお義母さんと呼べ。私は叔母さんと言われるのを嫌う次いったら先に手が出る」
「もう出てるよ」
「なにかいったか?」
「いえ何も」
「そうか、では私のことはなんで呼ぶのだ?」
「アルフィアお義母さん」
「そうだそれでいい」
このやり取りでベルは理解したこの人に逆らってはいけないと逆らったら殺されると。
アルフィアの紹介が終わったあと全身鎧を着た筋肉質な男の人も挨拶をしてくれた。
「ザルドだこれから宜しくなベル。まあそうだな、俺のことは叔父さんとでも思ってくれ」
「うんわかった!宜しくお願いしますザルド叔父さん!」
「敬語はよせこれからは家族なんだからな」
「うん!わかった!」
ザルド叔父さんのほうはアルフィア お義母さんと違い常識的な人だと思った。
ひとしきり自己紹介が終わったあとベルは夕飯の準備をしようとしたがザルド叔父さんが食事を作ってくれることになりザルド以外はリビングで待っていた。
待っている間ベルは今まで空白だった家族の時間を埋めるようにアルフィアに読み聞かせをしてもらっていた。
そうこうしているうちに夕飯どきになりアルフィアはベルへ質問をした。
「ベルお前は将来なにになりたいんだ?」
その質問が来た際ベルより先に反応を示したのはゼウスであった。
これまでゼウスがベルに教えてきた通りならベルの答えは手に取るより明らか、そしてそれを聞いたアルフィアが怒ることも明らかであった。
そしてゼウスはベルが答えを言う前に逃げる準備をする。
「僕ハーレムを作れる英雄になる!」
ベルがそう口にした瞬間ゼウスの体は逃げる動作ではなく埋まる動作へとチェンジしていた。そしてアルフィア から放たれる回避不可能な無詠唱魔法。ゼウスが頭に全身悶えるなかアルフィアはゼウスを問答し始めた。
「おいジジイ、何故あの子からハーレムという単語が出てくる。英雄になるだけでも私は頭が痛いというのによりによってハーレムを作る英雄だと
お前はこの数年間あの子に何を教えていたのか教えてもらおうか」
「ご、誤解じゃアルフィア !ベルは英雄譚を読んで自分で考えた答えじゃ」
「ほほう、ではベルに聞いてみるか。ベルお前はハーレムが何かしってるのか?」
アルフィアの質問にベルは誇らしげに答えた
「うん知ってるよ!男の浪漫で英雄なら誰もが持ってるものだってお祖父ちゃんがおしえてくれたもん!」
そう誇らしげに答えるベルに教えが生きてることを実感しながらも冷や汗をかくゼウス。
「おいクソジジイ あの子はこういってるぞ、何か言うことはあるか?あったとしても言わせまい。お前はあの子の教育に悪影響しか与えない。今日は少しで済ましてやるが次はないと思え。」
そういった直後アルフィアの魔法によりゼウスは畑へと埋まっていった。
その様子を見ながらザルドはこの家でアルフィアに逆らうのはやめようと決め、またベルをベルの父親やゼウスのようにさせないと心に誓った。ベルは突然消えた祖父に心配の眼差しを向けるのであった。
その後アルフィアは何事もなかったかのように席に戻るとザルドへと一言「価値観を正すため教育は私がする」そう伝えるとアルフィアは食事を再開した。それを聞いたザルドは深く賛成し同意するしかなかった。
ベルはなにをいってるのか分からないといったかんじだったが家族との食事というのに舞い上がってそんなことはどうでも良くなっていた。そして3人はこれまでのベルの話を聞きながら食事を再開するのであった。
3人が食事しているとき、土の中のゼウスはというとベルにハーレムを作らせるためどうにかあの2人の穴をつく方法を考えていた。このままではベルは一途なつまらない男になってしまう、それだけは避けねばならないとゼウスは固く心に誓いどうにかしてベルをハーレムへと導くと決心したのだ。
そうしてベルが新たな家族との幸せを感じている間にベルの知らぬところで教育をめぐる争いの火蓋は切られたのであった。