ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
「この世にひとつだけ完璧なものがあるとすれば、それは正義超人界の友情だ――――っ!」
究極の超人タッグ・トーナメント準決勝、第二戦。
“
その末に絶命、富士山火口に落ち肉体ごと燃え尽きると思われたものの、時間超人カオス・アヴェニールの決死の救命により蘇生、彼の手により元いた時代である21世紀に強制送還となる。
20世紀を去る直前、悪行超人の罪深さと正義超人の誇りを悟ったネプチューンマンは、残った
未来への
しかし……実際は違ったのである。
◇
(まったく、とんだ老醜を晒してしまった……完璧超人として悪行超人に敗れ、命すら失ったオレが、カオスとウォーズマンのおかげで生き長らえるとは……)
夢の中を浮遊するような感覚で、ネプチューンマンは述懐する。
過去――タイムワープで20世紀に飛んでからの、醜態の数々を。
ケビンマスクの救命という、正義超人に課せられた絶対的使命を無視……のみならず、その使命に奔走する新世代超人の顔の皮を剥ぎ邪魔をするなど、老人の武勇伝にもできない蛮行だ。
その結果、正義超人たちの戦力を大きく削ぐことになり、挙句の果てには同じ悪行超人として対立していた時間超人に惨敗する始末。老醜以外のなにものでもない。
(21世紀で後進の指導をするために生きて帰れ、か……昔の栄光を忘れられずやんちゃしちまうようなジジイに、今さらキン肉マンやロビンマスクの真似事をしろってか……まったく、無茶を言いやがるぜ)
だが、呑むしかない。
ネプチューンマンは生かされた身だ。カオスには大恩ができてしまった。
(そう……だな……やり直すには……遅くないのかもしれねぇ……こんなオレにも……まだできることが……)
――光。
たくさんの光が、ネプチューンマンを明るく照らす。
すでに意識は覚醒しつつあった。
夢のような状況から現実へと舞い戻り、ネプチューンマンは21世紀への帰還が成ったのだと――
「……お、おいアンタ、大丈夫かぁ?」
横たわるネプチューンマンに声をかけたのは、背広を着た初老の男性だった。
超人ではなく人間だ。顔の作りから見て日本人(ジャパニーズ)。
眉が太く、頭髪のセンスからしてもどこか前時代的な印象を漂わせる。
(ン……?)
ネプチューンマンはある違和感を得ていた。
周囲を見渡す。そこはどうやら繁華街のようだった。
看板の文字は日本語……ここは母国イギリスではなく、日本である様子。
プップー。
ネプチューンマンは道の往来で倒れていたのか、周囲にはクラクションを鳴らす車が数台。
声をかけてきた初老の男性の他、何人かの日本人がネプチューンマンを心配そうに見ている。
おそらくは行き倒れとでも思われたか……いや、それよりも問題はこの違和感だ。
(この景色は……見覚えがある)
ネプチューンマンは立ち上がり、目の前の男性に尋ねる。
「おい、ここはどこだ?」
「どこって、千駄ヶ谷だよ」
違和感は核心に近づく。
千駄ヶ谷――東京都渋谷区!
ネプチューンマンの比較的新しい記憶の中に、この街並みはしっかりと残っていた。
「なら……今は西暦何年の何月何日だ~~っ!?」
続けて尋ねるネプチューンマンに、男性はやや引きながら答える。
「な、なんだよ、おかしなこと訊くなぁ……5月3日だよ、1983年の」
返ってきた答えに、ネプチューンマンは口を開け驚く。
その数字はおよそ2週間前……ネプチューンマンが“世界五大厄”に敗北したあの日から数えての、2週間前だ。
そしてあの日から2週間前ということは、すなわち――
『いよいよ2日後に迫りました、“究極の超人タッグ・トーナメント”』
ネプチューンマンの視線が街頭ビジョン……ビルに設置された大型ティスプレイに向く。
そこでは、近日開催される“究極の超人タッグ・トーナメント”のニュースが報じられていた。
トレーニングに励むキン肉マン&テリーマンの“ザ・マシンガンズ”、ジェイド&スカーフェイスの“スーパー・トリニティーズ”、そしてロビンマスク&テリー・ザ・キッドの“ジ・アドレナリンズ”が結成されたことなど……ネプチューンマンとしては既知の事実が、あたかも最新情報とばかりに公開されている。
「あ、あ……ああ~~っ!」
ネプチューンマンはマスクの上から汗をかき狼狽した。
己はてっきり、時間超人カオスの放出したエキゾチック物質によって21世紀に送り返されたと思っていた。
それがどういう理屈か、未来ではなく過去へ……究極の超人タッグ開始前の時代に飛ばされてしまったらしい。
「これからまた始まるというのか~~っ。あの血で血を洗う残虐非道のトーナメントが~~っ」
身に起こった現実を受け入れ、ネプチューンマンは迫りくる未来を前に嘆いた。
しかし同時に、拭いきれない謎が残っていることにも気づく。
(だがどうしたことだ……? もし本当にオレが過去へ戻ったというのなら、量子力学でいうところの対消滅ってやつが起きてこのネプチューンマンの身体は大爆発を起こしてしまうはず。ここには21世紀の未来からやってきたばかりのオレがいるはずだからな。面と向かって鉢合わせなければセーフなのか? そういえば新世代超人と共に未来から来たハラボテの息子、イケメンなどは年齢を考えるともうこの頃には生まれているはずだがピンピンしていた……いや、あるいは……)
SFはあまり嗜まないネプチューンマンだが、それでもある程度の知識はある。
導き出した可能性としてもっともありうるのは、意識だけが過去に戻ったという仮説。
(この身体は21世紀からタイムワープしてきたばかりのネプチューンマンで、しかし意識だけは2週間先の究極の超人タッグを経験したネプチューンマンのもの……意識だけがタイムワープを果たしたのだとしたら、辻褄は合う。だとしたら、だ……)
軽く動かしてみた肉体のコンディションは、確かに究極の超人タッグ終盤のものよりも始まる前のそれに近しい感覚がある。
ならば量子力学でいうところの対消滅の心配はなく、ネプチューンマンにはある選択肢が与えられた。
「よもや、やり直せるというのか~~っ。究極の超人タッグを……最初から――っ」
新世代超人や伝説超人、そして時間超人との戦いで得た経験値。
さらにはこれから先、2週間分の未来の情報。
これらを携え、もう一度究極の超人タッグ・トーナメントにエントリーできるとしたら。
「もう老醜はさらさねぇ~~っ! オレは、今度こそ……正義超人ネプチューンマンとして悪行・時間超人を成敗してみせる――っ!」
車道のど真ん中で、ネプチューンマンは猛々しく吠えた。
周囲の人々は仮面と鉄鋲ベストとパンツの男が何を言っているのかまったくわからず、困惑するばかりだった。
「うるぜーぞジジイ――っ! いいからさっさとそこを退きやがれ――っ!!」
その中のひとり、トラックに乗っていた運転手がクラクションを鳴らし、怒りを訴えた。ネプチューンマンのせいで道が通れず鬱憤が溜まっていたのだ。
怒りのボルテージはすでに限界に達しており、運転手はトラックを急発進。
なんと、ネプチューンマンが退くのを待たず彼の立つ道を突っ切ろうとする!
「キャー!」
周囲の人々は悲鳴をあげ散り散りになった。
しかし、当のネプチューンマンは一歩も動かない!
「シュワラアア――ッ」
ググッとおもむろに左腕を持ち上げ、アクセル全開で突っ込んでくるトラックに向けて前進した。
死にたいのか!? 誰もがそう思ったその瞬間、ネプチューンマンは大きく左腕を振るう!
「
大鉈のごときラリアットで、突っ込んでくるトラックを正面から両断した!
「ウヒャア――ッ!?」
衝撃で吹き飛ばされる運転手。ネプチューンマンは即座に飛び、その身を空中で鮮やかにキャッチする。
そして、喧嘩ボンバーにより両断されたトラックは己に何が起きたかを今さら理解したかのように爆発した。
「あ、あわわ……」
信じられない光景を目の当たりにした運転手は泡を吹き、己を担ぐネプチューンマンを見やる。
「いけねえなぁ~~っ。車は安全運転がキホンだぜ」
運転手に一言、注意を投げかけ地面に下ろしてやる。
そして炎上する車の残骸を背後に、静かに歩み出した。
「こうしちゃいられねぇ――っ。ここが千駄ヶ谷ということは、おそらく“あの”タイミング。だとしたら善は急げだ」
過去へのタイムワープ。降って湧いたやり直しの機会。
思わぬ境遇に陥ったネプチューンマンは、これを好機と捉え指針を固める。
歩みは徐々に速度を増し、いつしか走り出していた。
「待っていろ、伝説超人に新世代超人……そして時間超人共! 今度の完璧超人、いや正義超人ネプチューンマンは一味違うぜぇ――っ!」