ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第010話 リザーブマッチ再来!立ち上がる名コンビ!

 ついに幕を開けた“究極の超人タッグ戦”一回戦。

 Aブロックでは相撲の殿堂、蔵前国技館で“ジ・アドレナリンズ”対“鬼哭愚連隊”、そして“ネオ・イクスパンションズ”対“スーパー・トリニティーズ”が。

 Bブロックではオンボロ球場の川崎球場で“マッスルブラザーズ・ヌーボー”対“地獄のカーペンターズ”、そして“ヘルズ・ベアーズ”対“チーム・コースマス”が。

 それぞれの地で熱戦の火蓋が切って落とされた。

 

「火事場のクソ力~~~~っ!! マッスル――ッ、G(グラビティ)――ッ!!」

 

「ホワァ~~~~イ!」

 

『万太郎のマッスル・Gに続き、グレートⅢのパワーボムが今、リングキャンバスに突き刺さる――っ!』

 

 Bブロックの初戦は“マッスルブラザーズ・ヌーボー”対“地獄のカーペンターズ”。

 試合は素人丸出しのグレートⅢをキン肉万太郎が上手く導き、マッスルブラザーズ・ヌーボーが優勢。

 そしてついに、万太郎がデーク・棟梁にマッスル・Gを、グレートⅢがザ・プラモマンにパワーボムを、ツープラトンフィニッシュとはいかずとも、それぞれの必殺技を炸裂させた。

 

『ああ――っと究極の超人タッグ戦勝利チーム第一号は、キン肉万太郎&キン肉マングレートⅢの“マッスルブラザーズ・ヌーボー”に決まった――――っ!』

 

 万太郎&グレートⅢに期待していなかった観客たちも、この結果に大熱狂。

 敗北したデーク・棟梁&プラモマンも清々しい気持ちでふたりを称え、二回戦へ送り出した。

 

 一方のAブロック、蔵前国技館の“ジ・アドレナリンズ”対“鬼哭愚連隊”。

 ロビンマスクは“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”がこれみよがしに設置したケビンマスク入りのクリアベッドに気を取られ、死皇帝&ザ・ガオンの残虐殺法に押され気味だった。

 しかしそこは新たなる相棒であるテリー・ザ・キッドの奮闘、そしてなにより母を想うケビンマスクの献身により、真の力を発揮したロビンが勝機を手繰り寄せた。

 

「アドレナリン・ブリッジ――――ッ!」

 

『あ――っと究極の超人タッグ戦一回戦Aブロック第1試合、テリー・ザ・キッド&ロビンマスクの米英混成コンビ“ジ・アドレナリンズ”が鬼哭愚連隊を倒した――――っ!」』

 

 最後はロビン・スペシャルとテキサス・クローバー・ホールドを組み合わせた新型ツープラトンで見事“鬼哭愚連隊”を下したのである。

 

 これで“マッスルブラザーズ・ヌーボー”と“ジ・アドレナリンズ”が二回戦進出。

 ここまでは、ネプチューンマンが知る“前回”とほぼ同一の流れで展開されている。

 

 だが、しかし。

 このあと、“究極の超人タッグ戦”の流れははっきりとした形で変わることとなる。

 

 

 ◇

 

 

「そろそろか」

 

“ネオ・イクスパンションズ”の控え室。

 前の試合が終わり、自分たちの出番ももう間もなく……というタイミングで、ネプチューンマンが立ち上がった。

 

「どうしただネプチューンマン? まだ入場のお呼びはかかってねぇだよ」

 

 しかし、相棒のセイウチンは不思議そうに首を傾げる。

 入場の際は大会運営スタッフが呼びに来る手筈だ。今出ていっても委員長のハラボテ・マッスルに段取りを守れと小言を言われるだけである。

 

「オレたちの入場はかなり先延ばしにされる。おまえは体を冷やさないようほどほどにアップしておけ」

「えええ~~~~っ、なんで!?」

 

 どうやら野暮用があるらしいネプチューンマンはセイウチンにそれだけ告げて出ていってしまった。

 なぜ入場が先延ばしにされる情報など掴んでいるのか、セイウチンには皆目見当もつかない。

 

「うう~~っ、ネプチューンマンのおっちゃんのことは信頼してるけども、ちょいちょいひとりでいなくなるのはどうにかしてほしいだ」

 

 タッグパートナーとしてネプチューンマンのことは信頼しているが、なにかを秘密にされているのは薄っすらと感じている。

 それを打ち明けてくれないのは、やはり己がまだ正義超人として頼りないからだろうか……と、セイウチンは意気消沈した。

 

 そのとき、普段より少しだけ下げた視線が、謎の光源を捉える。

 それはどうやら、ネプチューンマンの荷物らしい革袋から発せられていた。

 

「なんだぁ? なにか光って……?」

 

 セイウチンは夜闇で飛ぶ虫のように、本能のままその光に誘われていった。

 

 

 ◇

 

 

 一方その頃、川崎球場。

 Bブロックの第二戦、“ヘルズ・ベアーズ”対“チーム・コースマス”は大波乱の展開を迎えていた。

 

『あ――――っと“ヘルズ・ベアーズ”ベルモンドのヌイグルミ内より突如、黒い塊が現れスプートニックマンの巨体を抉り風穴をあけた~~っ!」

 

 愛らしいクマちゃんコンビ“ヘルズ・ベアーズ”、その内のひとりであるベルモンドの正体が、全身真っ黒のボディを持った強豪超人――ウォーズマンであると判明したのだ。

 ウォーズマンは姿を表すと同時に、必殺のスクリュー・ドライバーでスプートニックマンをKO。

 先に勝利したマッスルブラザーズ・ヌーボー、観戦していた2000万パワーズを筆頭に、場内は大混乱を巻き起こした。

 

『“究極の超人タッグ戦”Bブロック第2試合は大波乱! ただの色物超人タッグかと思われていたヘルズ・ベアーズの片割れの正体がウォーズマンだと判明! 圧倒的強さでチーム・コースマスを難なく料理して二回戦進出を決めた――っ!』

 

 その模様は中継によって蔵前国技館の観客たちにも伝わり、大きな反響を呼んだ。

 

「川崎球場にウォーズマンだよ!」

「今からでも遅くねぇ!」

「みんな、ウォーズマンの勇姿を拝みにいくとしようぜ――――っ!」

「女房を質に入れてでも観にいかなくちゃ――――っ!」

 

 我先にと川崎球場へと向かおうとする超人レスリングファンたち。

 なにしろウォーズマンである。

 超人オリンピック準優勝の肩書きを持つ大人気超人にして、この時代の歴史ではほんの数日前に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”で無念の死を遂げたはずの男。

 そんな彼が奇跡の生還を果たしたとならば、女房を質に入れてでも観に行かなければというのは決して大げさではない。

 

『これからこちら蔵前国技館では“究極の超人タッグ戦”Aブロック一回戦第2試合が始まろうとしていますが、人気超人ウォーズマン登場に観客が川崎球場に移動しようと出入り口に群がります!』

 

 その魅力は、後に控えているネオ・イクスパンションズ対スーパー・トリニティーズのカードより上と見なされた。

 Aブロックに人気超人が集まり、Bブロックにいけ好かないマッスルブラザーズ・ヌーボーがいるからと、わざわざ会場に落差を設けた超人委員会会長ハラボテ・マッスルとしては、このまま観客が流れていくのはおもしろくない。

 そこで自らマイクを取り、こんなこともあろうかと用意していた奇策を仕掛けようとする。

 

『会場のお客様、どうぞご静粛に! 川崎球場に負けじと……ビッグニュースを用意しました! 周知の通りA・B両ブロックともまだ一回戦にもかかわらず凄惨極まりない試合が続いております! このままではせっかく勝ったチームが次の試合に出場できなくなるという最悪の事態も十二分に考えられます! そういう不測の事態に備えて、宇宙超人委員会タッグ特別ルールの第一条四項を適用! ただ今からスペシャルリザーブマッチを行うことと致します!』

 

 リザーブマッチの開催――もう1試合おまけで観られるという餌を与え、観客を引き留めようとしたのだ。

 各スタンド席には、このために馳せ参じた名のある超人タッグチームがずらりと並んでいる。

 カレクック、スカイマン、タイルマン、チエの輪マン、クリスタルマンといった過去に活躍した正義超人もいれば、ザ・ヘクトパスカル、老酒男、ダンクガング、鬼瓦マン、キン肉マンスカルといった新鋭の姿もあった。

 

『蔵前・川崎の超人レスラーたちに告ぐ……我こそはと思わんタッグチームは今すぐ座席に取り付けてある“究極の超人タッグ出場最終エントリースイッチ”を押すのだ――――っ!』

 

 各超人タッグチームは手元に置かれたスイッチを押すことでリザーブマッチへの参加を表明する。

 しかし先に行われた三試合があまりに凄惨なものであったためか、ほとんどのチームが二の足を踏んでいた。

 

「リザーブマッチにエントリーさせてもらうぜ――っ!」

 

 そんな中、臆病風など知ったこっちゃねぇと言わんばかりにスイッチを押したチームが現れる。

 スポットライトが当たり、蔵前国技館にいる誰もがそのふたりに注目した。

 

『あ――っと一番手に名乗りを上げたのは……な、なんと! カナディアンマン&スペシャルマンの“ビッグ・ボンバーズ”だ――――っ!』

 

 カナダの象徴である楓を額に宿す超人、カナディアンマン。

 胸にSPECIALの刻印を記すアメリカ超人、スペシャルマン。

 ふたり合わせて“技巧コンビ”ビッグ・ボンバーズである。

 

『皆様ご存じのとおり、ビッグ・ボンバーズといえば先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”に正式エントリーするも、突如として乱入してきたアシュラマン&サンシャインの“はぐれ悪魔超人コンビ”に襲われ、代表の座を奪われたのであります!』

 

 その解説を受け、カナディアンマンとスペシャルマンのふたりは悔しさを顔ににじませた。

 

「そう……そしてその後、それぞれの故国へ帰った折には人々より散々罵倒された……」

「石を投げられ、運営するジムを破壊され……ここまでするのかと涙を呑んだ……」

 

 たった一度の敗北――いや、敗北未満の醜態。

 それが彼らふたりの人生を狂わせ、しかし新たな闘志を目覚めさせる原動力となった。

 

「これはオレたちにとって汚名返上の大チャンス!」

「大手を振ってそれぞれの故国に凱旋するためにも、リザーブ枠はオレたちがもらう! すべてはビッグ・ボンバーズの捲土重来のために――――っ!」

 

 すなわち、リザーブマッチを利用しての“究極の超人タッグ戦”への参戦。

 超人レスリング界最大級の大会で活躍し、ビッグ・ボンバーズここにありと知らしめる。

 勝ちを渇望する敗者の逆襲――“捲土重来”を成さんと立ち上がったのである。

 

『おお――っとビッグ・ボンバーズ、気合に満ちあふれている――――っ!』

 

 意気込むふたりに、観客も沸いた。

 当の本人たちは緊張があるのか、どこか険しい表情を浮かべている。

 

「さあ、もう後戻りはできないぞカナディアンマン」

「わかっているさスペシャルマン」

 

 言葉とは裏腹に、カナディアンマンの肩は微かに震えていた。

 相棒思いのスペシャルマンはその僅かな変調を目ざとく捉える。

 

「カナディアンマン……ふ、震えているのかい?」

「フフ……武者震いだよ。なぁに、心配はないさ」

 

 カナディアンマンは自らの肩をガシッと掴み、強引に震えを止めた。

 熾烈極める“究極の超人タッグ戦”への参戦……普段なら臆病風に吹かれ尻込みしてしまっただろう。

 だが今は違う。

 常の彼らにはなかったある絶対的な自信が、背中を押してくれている。

 

「なんせオレたちの実力は、ネプチューンマンのお墨付きだからな」

 

 カナディアンマンは少し前の邂逅を振り返った。

 

 

 ◇

 

 

 ハラボテによるリザーブマッチの開催が告知させる直前。

 会場のスタンド席に向かおうとしていたカナディアンマンとスペシャルマンのふたりに、声をかける超人がいた。

 

「ちょっといいか、おふたりさん」

 

 風格のある口髭と仮面、屈強な肉体とそれを包む鉄鋲ベスト。

 まさか面と向かって話す機会が訪れるとは、とふたりは驚く。

 

「お、おまえは……」

「……完璧(パーフェクト)超人ネプチューンマン!」

 

 先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”では対戦かなわなかった“ヘル・ミッショネルズ”の一角、ネプチューンマンがそこにいた。

 

「今の立場は正義超人だ……それはいいとして、いったいどこへ行くつもりだ?」

「ど、どこって……」

「フフ……知っているぞ。リザーブマッチエントリーの話がきているのだろう?」

「な……なぜそれを?」

 

 ネプチューンマンは不敵に笑みを作り、カナディアンマンとスペシャルマンの進路を阻むように立つ。

 一瞬、先のトーナメントで自分たちを襲撃した“はぐれ悪魔超人コンビ”の顔が頭をよぎるが……ネプチューンマンはすでに本戦出場が決まっている超人、それも本来ならこのあとすぐ試合に出る予定だ。滅多なことは起こさないだろう。

 

「ハラボテの考えそうなことなど手に取るようにわかる。それで、カナディアンマンにスペシャルマン。おまえたちはリザーブマッチにエントリーするのか?」

「い、いや……それは」

「オレたちには……」

 

 ネプチューンマンの質問に、カナディアンマンとスペシャルマンは言い淀む。

 リザーブマッチ。本戦出場が叶わなかった超人コンビに与えられた最後のチャンス。

 超人委員会から誘いをかけられたふたりも勇みそのチャンスに縋ったが、直前になって躊躇してもいた。

 この大会はレベルが高すぎる。はたして自分たちなどが参戦して爪痕を残せるだろうか、痛い思いをするだけになるんじゃないか……と。

 

 そんなふたりの心配に反し、ネプチューンマンは肩を落として言う。

 

「そうか……それは残念だな。おまえたちふたりなら……と、オレは思っていたのだが」

「え?」

「オレたちなら……なんなんだ?」

 

 ネプチューンマンの思わぬ反応に、カナディアンマンとスペシャルマンが息を呑む。

 

「なにって、時間超人打倒の大役だよ」

 

 仮面の奥から放たれる熱烈な視線。

 そこに込められているのは、期待、だった。

 

「リザーブ枠というものは、本エントリーしている選手が怪我などのアクシデントで欠場を免れないときに出番が回ってくるもの。知ってのとおり、打倒・時間超人を標榜しているロビンマスクやキン肉万太郎は一回戦から大きく負傷してしまった……このままでは時間超人とぶつかるより先に体が悲鳴を上げ、リタイアを余儀なくされることもあるだろう」

 

 そうなのだ。ここ蔵前国技館でも、まだ一回戦だというのにあのロビンマスクが大苦戦を強いられた。

 アイドル超人と呼ばれる実力者たちでも容易に勝利することができない環境、やはり自分たちなどでは……というのがふたりの心境である。

 

「そうなれば時間超人と闘うことになるのはリザーブ枠に収まったタッグチーム……しかしそんな大役はそんじょそこらのタッグチームには務まらないだろう。よほどの実力派チームでなければ」

 

 時間超人コンビ“世界五大厄”の実力は噂ではアイドル超人軍にも匹敵するという。

 正義超人として、この大会の主目的を彼らの打倒とするならやはりそれなりの強者がリザーブ枠に入るべきだ。

 そしてネプチューンマンは、

 

「たとえば、そう……ビッグ・ボンバーズとかな」

 

 その枠には自分たちこそが相応しいと言った。

 カナディアンマンとスペシャルマンは驚き、興奮をあらわにする。

 

「ネプチューンマン……お、おまえ! オレたちビッグ・ボンバーズが時間超人を打倒できる器だっていうのか!?」

 

 ネプチューンマンは口元で笑みを作った。

 

「先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”、実はオレはおまえたちが脱落してくれてホッとしていたんだ」

 

 そしてそのまま、過去を振り返るように語る。

 

「ビッグ・ボンバーズの実力はトーナメント開催前から耳にしていた。テリーマン&ジェロニモの“ニュー・マシンガンズ”やバッファローマン&モンゴルマンの“2000万パワーズ”といった新造タッグよりも、老舗タッグチームであるおまえたちこそが難敵……当時“ヘル・ミッショネルズ”だったオレとビッグ・ザ・武道の最大のライバルになると警戒していたのだ」

 

「オ、オレたちが……!?」

「ネプチューンマンの……難敵!」

 

 これほどの称賛を受けたのは初めてのことである。

 それも完璧超人として猛威を振るったネプチューンマンの口から飛び出すとは、思ってもみなかった。

 

「そんなおまえたちが、突如乱入してくれた“はぐれ悪魔超人コンビ”に不意打ちも同然の襲撃を受け脱落してしまった……あんな卑怯極まりない方法でな。が、俺たちにとってはまさに濡れ手で粟。あの大会最大の幸運だったと言えよう」

 

 弱体チームと罵られ、本戦前に成すすべもなく退場させられてしまった苦い思い出。

 その裏で、まさかファイナリストであるネプチューンマンがそんなことを考えていたとは。

 

「もしおまえたちが本来の予定通りトーナメントに参加していたとしたら……」

 

 ネプチューンマンはカナディアンマンとスペシャルマンの顔を順に見回し、視線を下げる。

 そして、悪い想像を振り払うように頭を振った。

 

「……考えたくもないな」

 

 絶対強者と仰ぐネプチューンマンにそうまで言われ、カナディアンマンは喜色をあらわにした。

 

「ネ、ネプチューンマンはそこまでオレたちのことを評価してくれていたのか~~っ」

「い、いや……カナディアンマン。なにか言っていることがおかしくないか……?」

 

 相方のスペシャルマンはネプチューンマンの言動を疑っていたが、カナディアンの興奮は抑えられない。

 間髪入れず、ネプチューンマンはふたりに真摯な眼差しを向ける。

 

「カナディアンマンにスペシャルマンよ。回りくどい真似はやめ、率直に頼みたい。オレとていつ重傷を負い、志半ばでリタイアしてしまうかわからん。だが、後ろにおまえたちが控えてくれているというなら思う存分闘える。どうか時間超人打倒を果たすため、正義超人軍の秘密兵器として、リザーブマッチに参加しその枠を勝ち取ってはくれないか?」

 

 それは光栄極まりない、正義超人としての共闘の申し入れだった。

 自分たちを侮る観衆を見返したい、捲土重来を果たしたいと、自分自分自分、自分のことばかり考えていた己が嫌になる。

 カナディアンマンは涙を流し、ネプチューンマンの真摯な眼差しに向き合った。

 

「カ、カナディアンマン……」

 

 隣のスペシャルマンはまだどこかためらっているようだったが、カナディアンマンはもう止まらない。

 

「任せろ――っ! 正義超人軍秘密兵器(シークレット・ウェポン)の大役、オレたちビッグ・ボンバーズが引き受けた! 大船に乗ったつもりで待っていてくれ――っ!」

 

 大胆不敵にそう宣言し、リザーブマッチの場へと走り出す。

 スペシャルマンも戸惑いを浮かべたまま、しかしカナディアンマンのパートナーとしてそのあとについていった。

 

「グフフ、ありがとよぉ――っ」

 

 ネプチューンマンはそんなふたりの背中を、悪い笑みで見送った。

 

 

 ◇

 

 

 そして時は戻る。

 リザーブマッチエントリー第一号となったビッグ・ボンバーズは、ネプチューンマンからの評価を糧に闘志を漲らせていた――いや、正確にはカナディアンマンひとりだけが。

 

「オレたちの実力は、あのネプチューンマンが認めてくれているんだ。リザーブマッチに誰が出てこようが敗北はありねぇ……それどころか時間超人を打倒し、トロフィー球根(バルブ)を手にするのもオレたちになるだろうぜ――っ」

「グゥ~~ッ、そ……そうだろうか……」

 

 早くも優勝シーンを妄想するカナディアンマンの横で、スペシャルマンは不安そうに唸る。

 そして彼らに続き、リザーブマッチへの参加を表明する声があがり始めた。

 

「では、彼らの対戦相手は我々が務めましょう!」

 

 戦いの場に似つかわしくない丁寧な言葉づかいが、蔵前国技館のどこかより発せられる。

 スポットライトはすぐにその姿を捉えた。

 リングへと続く花道の途中、ふたりの超人の影がある。

 ひとりは身に外套を覆い、すっぽりとその容姿を隠していたが……もうひとりはその特徴的な容姿を隠すことなく曝け出していた。

 

 両肩に(ナイト)(ルーク)、チェスの駒を載せた超人など、この世にはひとりしかいない。

 

「ああ――っと! 現れたのはキン肉万太郎やテリー・ザ・キッドらと同じ新世代超人(ニュージェネレーション)の一角、チェック・メイトだぁ――――っ!」

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