ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第100話 “いつか”の未来に架かる橋!!

『時計の針に見立てたウォーズマンのベア・クロー・ニードルが今、万太郎とケビンマスクの胸元を狙って降り下ろされた――っ!』

 

 ついに執行された“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”のツープラトン“完璧なる死時計の刻印(パーフェクト・デスウォッチブランディング)”を前に、キン肉マンは思わず顔を背けた。

 

「イヤじゃ~~っ! わたしは未来に生まれてくる我が子が串刺しになる姿など見たくはない~~っ」

 

 両のまぶたをぎゅっと瞑り、グサーッという音が聞こえぬよう耳も塞ぐ。

 ロビンマスクはそんなキン肉マンの肩を揺さぶった。

 

「キ……キン肉マン」

「なんじゃ~、ロビン。おまえだってケビンが刺し貫かれるシーンなど見たくはないだろう~~っ」

「そうではない。いいから目を開けてリングを見てみろ」

「へ?」

 

 キン肉マンとは違い、ロビンはしっかり見届けた。

 ネプチューンマンとウォーズマンが放った“完璧なる死時計の刻印”。

 それにより息子たち――ケビンマスクとキン肉万太郎がどうなったかを。

 

「ヌウ……」

「これは……」

 

 ネプチューンマンとウォーズマンが難しそうに唸る。

 とてもたった今ツープラトンを決めたタッグのものとは思えない。

 事実――ふたりのツープラトンは決まったとは言いがたいことになっていた。

 

『あ――っとベア・クロー・ニードルは狙いバッチリ“ザ・坊っちゃんズ(ヤングマスターズ)”ふたりの胸元に落とされたが……その鋭利な爪は肉に突き刺さらず! 出血もなく止まっている~~っ』

 

 ウォーズマンのフェイバリット・ウェポン“ベア・クロー”。

 ティーパックマンを惨殺、ペンタゴンの顔面を裂き、ラーメンマンの頭を抉った実績を持つそれは、決してナマクラなどではない。

 肉に触れれば傷つくのは必然。だが結果はどうだ。4本×2本の切っ先は、いずれも血を吸っていないではないか。

 

「な、なぜだ……」

 

 ウォーズマンはわけがわからず困惑。

 そんな哀れな師を見て、弟子はフッと笑う。

 

「ウォーズマン……あんたが知らんわけはないだろう」

 

 ケビンマスクはネプチューンマンの腕に捕らわれたまま言う。

 

「あんたが狙ったオレの心臓の位置は、ダディから託された鋼鉄の鎧によって守られている……この鎧はロビン王朝(ダイナスティ)の先人たちが使っていた鎧から破片を集め作られたヒストリーアーマー。その強度は究極と言っても過言ではない。かつて唯一この鎧を破壊してみせたボルトマンのエレクトリック・パワーのような飛び道具が相手ならまだしも……ベア・クローごときに刺し貫くことなどできねえ」

 

 ベア・クローは最高の攻撃力を誇る武器かもしれないが、ケビンのヒストリーアーマーもまた最高の防御力を誇る防具なのだ。

 ロビン王朝の偉大さをよく知るウォーズマンは悔しそうに唸る。

 

「ググッ……否定できん。だが、万太郎は鎧もなにも身につけていない生身にベア・クローを放った。なぜ皮膚すら裂けぬ~~っ」

 

 ウォーズマンの問いかけに、万太郎の唇が動いた。

 

「よ……鎧ならあるさ」

 

 大多数の予想どおり、その意識は飛んでいたが……寸前で戻ってこれた。

 自分たちがKO必至のツープラトンに捕らえられていると理解し、即座に対策を打ったのである。

 

「ケビン同様、ボクも父上から……ご先祖様たちキン肉王族からもらった、筋肉という鎧を搭載している」

 

 肉体の器官にすぎない筋肉を鎧と表現する万太郎。

 その言葉を受け、正義超人界一の頭脳は世紀の大発見でもしたかのような反応を見せた。

 

「あ、ああ……あああ~~っ! そ、そうか~~っ! マッスルコントロールだ――っ!」

 

 大げさに驚くミートくんを見て、キン肉マンはぽりぽりと頭を掻く。

 

「なんじゃあ? そのマッスルコント55号とかいうのは~~っ」

「なんであんたが知らないんですか――っ!」

 

 ミートくんはどこからともなく取り出したハリセンでキン肉マンをひっぱたき、解説を始める。

 

「マッスルコントロールとは筋肉を収縮させたり弛緩されたり自在に動かす技術のことです。王子だってよく力こぶを作って固くしたり大胸筋をピクピクさせたりするでしょう。あれと同じような要領で、万太郎さんは心臓周りの筋肉を収縮……ウォーズマンのベア・クローが突き刺さる瞬間に固め、ピンポイントで強度を増したんです。ベア・クローが刺さらないほどにね」

 

 ミートの解説に、キン肉マンのみならず周囲にいた超人全員が「ええ~~っ!?」と声を出し驚愕してみせる。

 中でもブロッケンJrの反応が大きかった。

 

「古くはラーメンマンに再起不能の傷を負わせ、バッファローマンのロングホーンをへし折ったことすらあるベア・クローを、ただの筋肉が止めたっていうのか!? いくらキン肉族だからってそんなことができるかよ!」

 

 ブロッケンJrはウォーズマンと同じく第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトでデビューした身。

 直接対決の機会はなかったが、ベア・クローの脅威はすぐそばで何度も見てきた。だからこそ信じられない。

 しかし、同じくベア・クローのことをよく知るロビンマスクは落ち着きを取り戻し言う。

 

「いや、おかしな話ではない。先に指摘されたとおり、ウォーズマンのベア・クローは本来手に装着してこそ真価を発揮するもの。やつは“死時計の刻印(デスウォッチ・ブランディング)”という技の形にこだわったようだが、やはり足に装着してのベア・クローでは本来の威力を発揮できなかったのだ」

 

 新型“死時計の刻印”はネプチューンマンのクラッチはパーフェクトと言えたが、ウォーズマンのレッグ・ニードル再現はお粗末と言わざるをえない。

 そこがつけ入る隙であり、ザ・坊っちゃんズは見事にそれを見逃さなかった。

 ゆえに、ここからは攻守が逆転する。

 

「火事場のクソ力~~っ!」

大渦(メイルストローム)パワ――ッ!」

 

 万太郎、そしてケビンの体がボワアァッと発光し、総身に尋常ならざるパワーを宿す。

 それぞれ大胸筋と鎧で受け止められていたベア・クローの切っ先が、バキンと折れた。

 

『あ――っとウォーズマンのベアー・クローが破壊された~~っ! 同時に万太郎とケビンもネプチューンマンのクラッチから逃れ、“完璧なる死時計の刻印”が崩壊する――っ!』

 

 窮地にこそ力を発揮する、火事場のクソ力と大渦パワー。

 その発動はネプチューンマンの超人強度2800万パワーをも黙らせ、ふたりは自由の身となった。

 

「今度はボクたちの番だケビン!」

「ああ! 万太郎……マッスル・ドッキングでいこうぜ!」

 

 技が崩れた直後、ケビンマスクがその名を口にしたことで、ネプチューンマンとウォーズマンの身が一瞬固まった。

 

「な……」

「なにっ!?」

 

 体勢を立て直すのにワンテンポだけズレが生じ、それは致命的な隙となる。

 一足早く体勢を整えたザ・坊っちゃんズが、新星・ネオ・イクスパンションズに組みついた。

 

『反撃に転じるザ・坊っちゃんズ! 万太郎はネプチューンマンを、ケビンマスクはウォーズマンを抱え上げそれぞれ上昇していく――っ!』

 

 一対一が二組。

 胴を掴みながらの跳躍は、まさしくケビンマスクが口にしたツープラトン――マッスル・ドッキングの予備動作だ。

 

「あいつら今、マッスル・ドッキングと言ったぞ! まさか出すつもりなのか、わたしたちの“至高のツープラトン”を――っ!?」

「万太郎は準決勝のアドレナリンズ戦でもカオスとのマッスル・ドッキングを決めている! ケビンとのタッグでも成功させる確率は大だ――っ!」

 

 オリジナルの使い手であるキン肉マンとテリーマンが後輩たちの見せるムーブに沸く。

 一方で、相方がカオスではなくケビンという点を不安視する者もいる――彼と親交の深いスカーフェイスだ。

 

「問題はケビンのほうだ! 技量はともかく、やつがマッスルと名のつく万太郎ベースの技を素直に使うとは思えねえ!」

 

 ザ・坊っちゃんズのデビュー戦、“ザ・デモリッションズ”戦のときも、ケビンはチームが万太郎主体になることを嫌がっていた。

 いくらカオスの命運が懸かった試合とはいえ、プライドの高いケビンが信念を曲げるとは思えない。

 スカーの懸念はリングにも届いたようで、ケビンが万太郎と共に答える。

 

「そのとおりだ! ロビン王朝因縁の相手であるキン肉マンの技は趣味じゃねえ!」

「そもそもボクたちは次代の正義超人界を担う新世代超人(ニュージェネレーション)……旧世代の技のコピーばかりでは格好がつかない!」

 

 天井近くまで上昇したザ・坊っちゃんズは、それぞれ捕獲していた相手をリリース。

 降下を始めると同時に、目的の技を発動させるための体勢に組み直す。

 

「だから!」

「この形だ!」

 

 万太郎はネプチューンマンを逆さまにし、両足首を両手でキャッチ、さらに両脇に両足をフックした。

 ケビンは逆さまにしたウォーズマンの真下に位置取り、自身も逆さになって両脚で首をフック、首4の字で締めつけた。

 

「キン肉ドライバ――ッ!」

「ロビン・スペシャル――ッ!」

 

『万太郎がネプチューンマンにキン肉ドライバーを、その頭上でケビンマスクがウォーズマンにロビン・スペシャルを、それぞれ必殺技(フェイバリット)を極めながら降下を始める――っ!』

 

 位置関係は予告した技のとおりだったが、ケビンはキン肉バスターではなくロビン・スペシャルを発動させた。

 これではマッスル・ドッキングとは呼べない。ザ・坊っちゃんズの言っていたことはハッタリだったのか?

 観衆の多くがそう思ったが――降下の最中、ケビンは万太郎の肩を掴んだ。

 

『あ――っとケビンマスクの両手が万太郎の肩を掴んだ! 四位一体となって降下速度は大加速~~っ!』

 

 バスターではないが、ケビンは本来キャンバスに着地するための手を万太郎の肩にやることでドライバーとのドッキングを果たした。

 双方共に空中から真下に落とす激突技。ならばこういうふうに組み合わせることもできる。

 キン肉ドライバーとロビン・スペシャル、それぞれは20世紀で生まれた技だが、そこに新たな息吹をもたらしたのは新世代のふたり。

 名付けて――

 

「マッスル・ドッキングNG(ニュージェネレーション)――――ッ!!」

 

 オリジナルのマッスル・ドッキングと同様、ザ・坊っちゃんズのツープラトンは合体したまま直下のリングへと突き刺さった。

 

『キャンバスを揺るがす衝撃~~っ! こ、これは我々が見たこともない新世代のドッキング技だ――っ!』

 

 首から落とされたネプチューンマン。

 激突と同時に首を深く絞められたウォーズマン。

“新星・ネオ・イクスパンションズ”のふたりが、勢いよく血反吐を吐いた。

 

「ま、まさかキン肉ドライバーと……」

「ロビン・スペシャルをドッキングさせるなんて」

 

 同世代のふたりが見せる驚愕の新技に、スカーフェイスとジェイドが震え上がった。

 テリーマンとロビンマスクは、それぞれの技に精通した者として冷静に語る。

 

「キン肉ドライバーは相手をキャンバスに叩きつける際の重量がものを言う技……あれは肩にさらにふたり分の体重がかかっているので、単純に威力は3倍だ」

「ロビン・スペシャルも降下時の速度によって威力が増す。キン肉ドライバーと連結したことによりその降下速度はやはり通常の3倍強といったところだろう」

 

 理論派ふたりの考察を受け、キン肉マンが結論を口にする。

 

「つまりあのドッキング技は、お互いにとってメリットだらけ……相乗効果抜群の超強力ツープラトンってわけか――っ!」

 

 ニュージェネレーションという言葉に偽りなし。

 ツープラトンの可能性は無限大だということを教えてくれるような必殺技だった。

 

『まさに新世代の風を感じさせる一撃! ロートルは引っ込んでろと言わんばかりのエネルギッシュさ! さしもの新星・ネオ・イクスパンションズもこれでノックアウトか~~っ!?』

 

「グウ~~ッ」

 

 ネプチューンマンの口から激痛に耐えるようなうめき声が漏れる。

 万太郎とケビンはそこで技を解き放ち、キャンバスへと着地した。

 あらためて、新星・ネオ・イクスパンションズがキャンバスに沈む。

 

『マッスル・ドッキングNG解除! ネプチューンマンにウォーズマン、当然の如くダウンとなるが……意識はまだあるのか――っ!?』

 

 意識は、ある。

 ネプチューンマンはしかし夏の終わりのセミのように力なく震え、どうにか口だけを動かした。

 

「あ、あのときも……下だったな……」

「し、下?」

 

 弱々しいつぶやきに、相手超人の様子を観察していた万太郎が反応する。

 ネプチューンマンはフフッと笑い、昔を懐かしむように目を細めた。

 

「34年前……宇宙超人タッグ・トーナメントの話だ。オレがキン肉ドライバーで下側……武道がキン肉バスターで上側だった。決勝戦で……オレたちヘル・ミッショネルズはおまえの親父、そしてテリーマンのふたりからマッスル・ドッキングをくらい……優勝を逃した。か、形はアレンジされど、同じマッスル・ドッキングが幕引きの合図になるなど……」

 

 目を閉じ、そのまま意識を閉ざす――かと思われたところで、カッと目が見開かれた。

 

「受け入れるわけにはいかねえ~~っ」 

 

『あ――っとネプチューンマン、まだ立ち上がろうというのか~~っ』

 

 ネプチューンマンは痙攣する両腕に力を込め、上体を起こそうともがく。

 

「お……おまえの言うとおりだネプチューンマン」

 

 ウォーズマンも同じように、生まれたての仔牛のような姿勢で立ち上がろうとしていた。

 

「嬉しいじゃないか。後進のやつらがオレたち世代の技を改良し、現代でも通用する技として継承してくれている。本当に嬉しい……嬉しさのあまり、それを破ってみたいという闘志がふつふつと湧いてきやがる~~っ」

 

 その黒いボディからはバチバチと音がし、火花が散り始めているようだった。

 そばに立つだけでも感じられる、オーバーヒートした機械が放つ熱気。

 ケビンマスクは師の状態を見極め、親切心から言う。

 

「無理をするな、ウォーズマン。おまえはそろそろ活動限界時間だろう……ベア・クローも失い、これからどう巻き返すつもりだ」

 

 ウォーズマンはもうこれ以上闘えまい。

 いや闘えたとしても、フルスペックを発揮することはできないはずだ。

 そう考えていたケビンだったが、

 

「正義超人はネバーギブアップが信条だぜ、ケビン」

 

 ウォーズマンは決して弱さを見せようとせず、気丈に言い返してきた。

 それでこそ、とケビンは柄にもない親切心をしまい込んだ。

 

「ならあんたに鍛えられたこのオレが直々に、諦めの悪い師に引導を渡してやる――っ!」

 

 そう言ってロープに走り、上段まで駆け上がって跳躍。

 高いジャンプ力を得て、瀕死のウォーズマンに飛びかかった。

 

『ケビンマスク、ウォーズマンにフライングボディアタックを仕掛ける――っ!』

 

 今のウォーズマンにはとても避けられないだろう。

 そんなことは相棒たるこの男にもわかっている。

 

「させるか!」

 

 ネプチューンマンは軽く助走をつけ、飛んでくるケビンに尻からぶつかっていった。

 

『ネプチューンマン、すかさず横からのヒップアタック! ウォーズマン救助と同時にケビンマスクをぶっ飛ばした――っ!』

 

 ケビンマスクの攻撃は失敗。

 だがウォーズマンのKOを目論む超人はもうひとりいる。

 

「囮にさせてもらうぜケビン!」

 

 万太郎がウォーズマンを正面から掴み、大きく勢いをつけて後ろへ転倒。

 その際左脚を前方向に伸ばし、ウォーズマンの身を高く蹴り上げた。

 

『フリーになっていた万太郎、ウォーズマンを巴投げの要領で宙高く放り投げる――っ』

 

 ウォーズマンが宙に浮いたの確認し、万太郎は次なるムーブへ移行するべく起き上がる。

 

『万太郎、その間前転しながら前方のロープめがけ飛び込み……』

 

 ロープめがけ飛び込み、越す。

 そのままいけばリングアウトだが、万太郎は寸前でロープを掴んでいた。

 

『仰向けのまま両手でロープを掴みしならせて、その反動で矢のように飛んでいく――っ!』

 

 飛んでいく先は、リング内。

 そこにはちょうど、宙空に投げ飛ばされていたウォーズマンが降りてくる。

 

「このムーブは~~っ!」

「マッスル・ミレニアムだ!」

 

 スカーフェイスとジェイドがワッと前のめりになり、先の展開を期待する。

 先ほどはケビンマスクをクロス・ボンバーから救うために発動した技だが、今度はストレートにKOを狙いにいく。

 

「マッスル~~ッ」

 

 矢と化した万太郎がウォーズマンの両手をキャッチせんと迫るが、

 

「タッグマッチでそんな大仕掛けなシングル技が通用するか!」

 

 なんとその前にネプチューンマンが立ちふさがった。

 

「魔の直滑降!」

 

 突進してくる万太郎に対し右腕を振るう。

 なんてことはないショルダースルーだが、マッスル・ミレニアムに対する効果は絶大。

 

『ネプチューンマン、右腕をタイミングよく払い矢の如く飛んできた万太郎の軌道を後ろに反らした――っ! 万太郎はあさっての方向に飛んでいく――っ!』

 

「マッスル・ミレニアムの加速がつく前に潰された!」

 

 テリー・ザ・キッドが瞠目する。

 マッスル・ミレニアム破り……かつてケビンマスクは後ろに大きく反り返ることで受け止め、悪魔超人ザ・コンステレーションはロープを切断することで無効化したりなどしたが、ネプチューンマンはより少ない労力で見事に技を防いでいる。まさしくベテランのテクニックと言ったところだろう。

 

「助かったぜネプチューンマン」

 

 降下してくるウォーズマンはマッスル・ミレニアムの脅威が去ったと見るやいなや、反撃にモードを切り替える。

 標的は仰向けに倒れているケビンマスク――その頭部に狙いを定め、体をよじった。

 

「ウォーズイストリービチリ!」

 

『ウォーズマン、落下しながらも着地点を計算、微調整し……ヒップアタックをくらったばかりのケビンの頭にヘッドバットをくらわせた――っ!』

 

 ズガァンという衝撃音が鳴り響き、ロビン王朝伝来の鉄仮面が大振動。

 起き上がれないケビンに対し、ウォーズマンはいち早く体勢を立て直した。

 

「ウォーズマーン! まだまだやれるよな――っ!?」

 

 その間、ネプチューンマンは新たなる仕掛けに移るべく行動を起こしていた。

 

『あ――っといつの間にやら! ネプチューンマン、魔の直滑降により投げ飛ばされた万太郎をタワーブリッジの体勢に捕らえている~~っ!』

 

 右手で相手の首を、左手で右大腿部を掴み、肩の上で背骨がへし折れんほどにしならせるロビン流バックブリーカー。

 ネプチューンマンは終生のライバルと定めた男の技を、完璧(パーフェクト)超人由来の怪力で再現してみせた。

 

「あいつ、“世界五大役(ファイブディザスターズ)”戦に続き我が物顔でタワーブリッジを使いおった!」

 

 キン肉マンはもはや定番となったネプチューンマンの掟破りを指摘し、その真横ではロビンマスクが悔しげに唸る。

 

「グゥ~~ッ、さすがは英国超人! 私のものに勝るとも劣らない見事なフォームのタワーブリッジだ!」

 

 タワーブリッジのスペシャリストであるロビンからもお墨付きが出た。

 ウォーズマンは敬愛する師の技を使いこなすネプチューンマンを見て、闘志を燃やす。

 

「おまえにやれるかどうかと問われたならば、やれると答えざるをえない! 現役にしがみつこうとするおっさん伝説超人(レジェンド)の相方として……先に音を上げるわけにはいかないんだ――っ!」

 

 相棒がタワーブリッジを見せるなら……オレだってタワーブリッジを見せてやる!

 ウォーズマンは足もとにいたケビンマスクを担ぎ上げ、肩の上で同じように首と右大腿部をクラッチ、背中をしならせた。

 

『なんとウォーズマンまでケビンマスクをタワーブリッジに極めた――っ!』

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”によるタワーブリッジの共演である。

 

「さすがは我が弟子! こちらも見事なタワーブリッジ!」

 

 関係の深いふたりが我が必殺技を同時に発動させるとは!

 感極まったロビンマスクは初めてサーカスを見た子供のような拍手を送った。

 

「し、しかしウォーズマンの体はそろそろショートしそうだぞ!?」

 

 感情が抑えられないロビンを前に、彼のパートナーであるテリー・ザ・キッドは現状をただ告げる。

 ウォーズマンの全身各所からは火花が散り、煙も上がり始めているのだ。

 活動限界時間である30分はもう経過したのか? 興奮のあまり誰も正確な時間など計れていない。

 

「ケビンマスクよ!」

 

 確かなことは、ウォーズマンがタワーブリッジに一切手を抜いていないという事実のみ。

 

「知ってのとおりこの技はイギリスはロンドンの名物である巨大な橋をモチーフにしたロビン一族の至宝! フルパワーで技が極まれば、相手超人はその跳ね橋のごとく体を真っ二つにされてしまうだろう!」

 

 全精力をこのタワーブリッジに注ぎ、勝負に勝つつもりか。

 捕らえられたケビンマスクはそう予想するが、いきなり語りだしたタワーブリッジの起源については意図が読めない。

 

「い、今さらなんの講釈だ。あ……あんたのことは師匠として尊敬しているが、この技に関してはオレのほうがスペシャリスト……なにも教えてもらうことなどねえ~~っ」

 

 勝利を確信した上でのパフォーマンスかなにかか……いいや、ウォーズマンはそういったことをするタイプではない。

 ケビンの疑問は、続く言葉でさらに混迷を極める。

 

「ではおまえは知っているか!? そう遠くない未来、このタワーブリッジがふたつになるかもしれないことを!」

「!?」

 

 タワーブリッジが……ふたつに!?

 ケビンマスクのみならず、トーナメント・マウンテンに集いし30万人以上の観衆全員が疑問符を浮かべる。

 

「ど、どういうことじゃロビン~~ッ」

「私にもわからん! なんだそれは!?」

 

 謎解きが得意ではないキン肉マンはもちろん、タワーブリッジの元祖であるロビンすらウォーズマンがなにを言いたいのか見当がつかない。

 イギリスはロンドン市内を流れるテムズ川に架かる跳開橋……1894年の完成以降、その姿がふたつに分裂したことなどない。もしや『ロンドン橋落ちた』の歌で知られるロンドン橋のことを言っているのか? いや、ウォーズマンは“そう遠くない未来”と発言した。

 であるならば――

 

「タッグそれぞれがタワーブリッジを……まさか……そ、そうか~~っ。そういうことか~~っ」

 

 最初に真相にたどり着いたのは、今まさにタワーブリッジの餌食となっているケビンマスクだった。

 ウォーズマンは愛弟子が答えを得たことを嬉しく思い、意気揚々と続きを語る。

 

「そうだ! ロンドン名物タワーブリッジはテムズ川の上に架かっている! この川はロンドンの下水道問題などにより汚いことで有名だが、近年では新潮路トンネルの建設計画が持ち上がりその水質を改善しようという動きがある! もしも計画がうまくいき、テムズ川に光り輝く水面が生まれれば……そこに荘厳なる2本めのタワーブリッジが映し出されることだろう!」

 

 美しい水面は、ロンドンの誇りを輝かしく反射するのだ。

 

「天と地! 鏡合わせのようにな――っ!」

 

『ウォーズマン、ケビンマスクをタワーブリッジに捕らえたまま高くジャンプ――ッ!』

 

 ウォーズマンは21世紀の未来から来た者として、師と弟子の誇りであるタワーブリッジに新たな可能性を示そうとしていた。

 同じくイギリスの超人であり、テムズ川とは大きな因縁を持つネプチューンマンとなら――それができる!

 ウォーズマンは空中で180度回転、タワーブリッジの体勢を逆向きにした。

 

『あ――っとそして、今度は逆タワーブリッジの体勢で落ちてくる――っ! その先には万太郎をタワーブリッジに捕らえるネプチューンマンが待ち構えているぞ~~っ』

 

 狙うのは――タワーブリッジと逆タワーブリッジのコラボレーションだ。

 構造はいたってシンプル。

 タワーブリッジに極められた万太郎の上に、逆タワーブリッジに極めたケビンマスクを下にして落ちる。

 さすれば美しきテムズ川の水面と、未来に誕生する新たなロンドン名物を見ることとなるだろう。

 

「リバーリフレクテッド・タワーブリッジ――――ッ!!」

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”の未来形ツープラトンが、“ザ・坊っちゃんズ”に炸裂した。

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