ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第101話 “伝説”超えのクライマックス!

『なんと“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”、タワーブリッジと逆タワーブリッジを上下で衝突させるというとんでもないツープラトンを披露してみせた――っ! その姿はまさに、ウォーズマンが解説したとおり水面に反射するふたつの巨大な橋! 我々は今、21世紀の未来に生まれる予定のロンドン名物を目の当たりにしている――っ!』

 

 タワーブリッジ同士の激突という、ロビンマスクがふたりいなければ成立しないであろうツープラトン。

 この“究極の超人タッグ戦”決勝の舞台、ロビンマスクではなく彼にゆかりのある超人ふたりがそれを実現してみせた。

 ネプチューンマンは万太郎をタワーブリッジに固めたまま、愉快げに笑う。

 

「グハハ。かつて一度身を投げたこともあるテムズ川の水質が改善され、将来的にはタワーブリッジが映るほど綺麗になるか……夢のような話だ。いつになるかはわからんが、長生きしなきゃいけねえな」

 

 盟友・ウォーズマンが考案してくれた未来形ツープラトンには確かな手応えを感じていた。

 逆タワーブリッジの姿勢で乗っていたウォーズマンが降り、ケビンマスクを解放。

 ネプチューンマンも同じく万太郎を解放した。

 

『さあ、今度はザ・坊っちゃんズ(ヤングマスターズ)のふたりがダウーン! 消耗戦の様相を呈してきたこのシーソーゲーム、はたして万太郎とケビンは立ち上がることができるのか~~っ!?』

 

 ツープラトンに次ぐツープラトン、まさしくタッグ戦の終盤というべき怒涛の攻防。

 そろそろ4人のうちの誰かが沈むのではないか、観衆はそう予感しながらリングに視線を送っていた。

 しかし、“ザ・坊っちゃんズ”は――

 

『た……立った――っ! 万太郎とケビンの心は折れていない~~っ!』

 

 息を荒げ、全身から血を流しながらも、軋む骨や潰れた肉を動かし続ける。

 正義超人はネバーギブアップが信条――ウォーズマンが口にした言葉はふたりにも共通している。

 

「フフフ……シーソーゲームか。だったら次はボクたちの番だ。かましてやろうぜ、ケビ……」

 

 万太郎が相棒に語りかけようとした、そのとき。

 未来で“難攻不落の鉄騎兵”と呼ばれる男の体が、グラリと揺れた。

 

「ケビン!?」

 

 そのまま前のめりに倒れてしまう。

 

『あ――っとケビンマスク、一度は立ち上がったものの再ダウン! ここにきて体力切れか~~っ!?』

 

 ダウンしたケビンを見て、万太郎は気付かされる。

 半ば忘れかけていた、相方が抱えるハンデを。

 

「ケビンは重篤状態からの病み上がり……そこにタワーブリッジという自身の必殺技(フェイバリット)をくらってしまったことで、肉体的にも精神的にも一気にダメージが回ってきた~~っ!」

 

 父ロビンマスクから継承されし必殺技を、己が見たこともない新しい形で師や師の宿敵に返される。

 その衝撃は計り知れず、ケビンマスクから気力と体力を根こそぎ奪ってしまったのだ。

 ケビンが起き上がれぬままカウントはあっという間に進み――ついに。

 

『ここでテンカウントゴングです! 時間無制限三本勝負の二本目は、“ザ・坊っちゃんズ”ケビンマスクのKOにより、“新星・ネオ・イクスパンションズ”に軍配が上がった――っ! し、しかしケビンマスク……三本目はやれるのか~~っ!?』

 

 ケビンマスクのKOにより、“新星・ネオ・イクスパンションズ”が三本勝負の二本目をものにした。

 これで試合は1対1のふりだし。

 だというのに、ウォーズマンは勝者らしからぬ心配そうな瞳で弟子の倒れる姿を見ていた。

 

「ケ……ケビン……」

 

 もしかしたらケビンはこのまま立ち上がってはこれないのではないか。

“究極の超人タッグ戦”という最高の舞台を最後まで闘い抜くことができず終わってしまうのではないか。

 そんな寂寞とした不安に押しつぶされそうになる。

 思わず駆け寄ってしまいそうになったウォーズマンの肩を、パートナーが叩いた。

 

「信じろウォーズマン。おまえの愛弟子を」

「ネプチューンマン……」

 

 この試合に下手な仏心は無用。

 対戦相手としてできるのは手を差し伸べることではなく、信じること。

 ケビンマスクならきっと――と。

 

『あ――っと、ケビンマスクが立ち上がった――っ!』

 

 ほどなくして、ふたりの期待どおりケビンはよろめきながらも立ち上がってきた。

 

「オ……オレは……」

 

 ケビンは己の意識が一瞬飛んでしまっていたことを知り、申し訳なさから相方に頭を垂れる。

 

「すまない、万太郎……油断しちまった」

「なに言ってんだ。これで勝負はイーブン。むしろ緊張感が増してちょうどいいくらいさ」

 

 せっかくの三本勝負でストレート勝ちなどしてはつまらないとばかりに、万太郎はまだ試合が続くことを喜んでいた。

 あの弱虫万太郎が、自分が寝ている間にずいぶん勇ましくなったものだ。

 ケビンは相棒の成長を心強く思い、どっしりと構える対戦相手を見た。

 

『これよりインターバルに入る! 今から10分後にラストとなる三本目開始じゃ――っ!』

 

 ハラボテがインターバルの開始を告げ、息をつかせぬ試合はようやくの区切りを向かえる。

 トーナメント・マウンテンの麓では、ブロッケンJrとジェロニモが両チームの状態を分析していた。

 

「万太郎とケビンは満身創痍だ。もう技のひとつもくらえるか怪しいところだぜ」

「それはイクスパンションズも同じズラ。特にウォーズマンさんはいつ体がショートして動かなくなってもおかしくねえ」

 

 当人たちも同じように考えているだろう。

 ザ・坊っちゃんズ陣営、キン肉万太郎はケビンマスクにささやく。

 

「それでケビン、どうする?」

「どうする、とは?」

 

 万太郎はチームリーダーとして、おそらく最も合理的であろう作戦を提示する。

 

「わかっているだろう。ボクらの体力はもうギリギリだ。しかし“新星・ネオ・イクスパンションズ”のウォーズマンはもう活動限界時間を超えつつある。このままのらりくらりと攻撃を躱し、ウォーズマンの活動停止を待つって戦略もあるけど」

 

 ケビンは答える。

 

「そんな狡い手で師匠超えを果たしたくはねえ。真っ向勝負だ」

「だよね」

 

 万太郎はニッと笑む。

 それでこそボクのライバル。それでこそボクの相棒だ。

 チームリーダーとして万太郎が今するべきことは、作戦提案などではない。

 頼れる相棒の背中を押すことだ。

 

『なんだぁ――っ!? 10分間のインターバルが終わるまでまだ間があるが……ケビンマスク、早くもリング中央に向かっていくぞ――っ』

 

 ケビンマスクが示すのは、戦闘続行の意思表示――ファイティングポーズ。

 まだリング上に残っていたウォーズマンに向かい、思いの丈をぶつける。

 

「ウォーズマンがフルスペックで闘えるのは30分が限界……多少のアップデートで改善はされているだろうが、10分そこらのインターバルでどうにかなるものでもねえ。むしろ下手なインターバルなど設けず、間を置かず闘ったほうが都合がいいはず……違うか?」

 

 ウォーズマンは答えない。

 駆け引きなどではなく、ただ単にケビンの行動に衝撃を受けすぎていたのだ。

 

「ケビン……おまえ」

 

 チームの利を捨ててまで師匠超えを果たさんとするその熱意。

 決して褒められたことではない。褒められたことではないが――

 ウォーズマンは胸に熱いものが込み上げてくるのを止められない。

 

「ちまちま休んでる間にオレの最大の目標がショートしちまったら適わねえ! ハラボテよ! インターバルなんかいらねえから今すぐ三本目のゴングを鳴らせ――っ!」

 

 ケビンマスクの試合ルールを無視した要求に、宇宙超人委員会のノックはどうするべきかと迷う。

 判断を最高責任者であるハラボテ・マッスルに委ねるべく、視線を横にやった。

 

「い、委員長……」

「その意気や良し」

 

 これまで数多くの名勝負をジャッジしてきたハラボテは、判断を誤らない。

 真剣な表情で木槌を振り、ゴングを叩きつける。

 次にゴングを鳴らすときが、この試合の完全決着のときだ――という思いを込めて。

 

『三本目開始~~っ!』

 

“究極の超人タッグ戦”決勝戦時間無制限三本勝負、最後の一本目が始まった。

 

『あ――っと“ザ・坊っちゃんズ”に“新星・ネオ・イクスパンションズ”、双方インターバルを捨て決戦の三本目を開始してしまった――っ! すべてはウォーズマンの活動限界時間を考慮したうえでのケビンマスクの判断! リング上ではさっそくその両者が向かい合うが、吉と出るか凶と出るか~~っ!?』

 

 小休止と思われたところでのまさかの試合再開に、新世代超人(ニュージェネレーション)の面々も沸き立つ。

 

「ケビンは今さっきKOされたばっかだぞ! いくら真剣勝負のためとはいえ、正気の沙汰とは思えねえ~~っ!」

 

 d・M・p(デーモンプラント)時代からケビンのことを知るスカーは、言葉とは裏腹に「それでこそケビンだ!」という喜びを表情ににじませていた。

 

「いや! しかしかわりにネプチューンマンが回復する時間も失われた! 戦略的にはアリかもしれん!」

 

 ジェイドもまた、冷静に戦略面を見ようとはしているがケビンの闘志に感化され体が前のめりになるのを抑えられない。

 

「たぶんそんなこと考えてないぜあの野郎! ウォーズマンとの試合をより長く続けたいと……楽しんでやがる!」

 

 キッドはあの場に自分が立っていないことを悔しく思い、だからこそ熱烈な視線をウォーキューブの決勝リングに注いだ。ここから先は一瞬たりとも見逃すまいと。

 

「ウオオオ――ッ!」

 

 リング上ではウォーズマンとケビンマスクが急接近。

 互いに正面から拳を突き出した。

 

『ウォーズマンにケビンマスク、向かい合ってジャブを打ちあう~~っ!』

 

 テリーマンvsテリー・ザ・キッドの“テキサス・フィスト・デスマッチ”を思い出させる愚直な打ち合い。

 さすがに試合終盤、ふたりともすでに満身創痍というだけあって、いつ倒れてもおかしくない危なっかしさがある。

 だがケビンマスクはそんなものお構いなしといった感じに、高笑いをする余裕すら見せた。

 

「ハハハハ~~ッ! 楽しいじゃないかウォーズマン! こんな楽しい試合……まだまだ終えられねえよな~~っ!」

 

 ウォーズマンはケビンの拳打を捌き、同じく拳打での反撃を入れながら、向かい合うライバルの意に同調する。

 

「友の命が懸かった試合で愉悦に興じるとは許しがたし! だが楽しんでしまっているのはオレも同じ……特別に説教はなしだ!」

 

 言いながらのハンマーパンチは、しかし豪快に空を切った。

 ケビンマスクが冷静に半歩身を引き、ウォーズマンの空振りを誘ったのだ。

 

「いつまでも師匠面をするのはやめてもらおうか!」

 

 そのまま体を横に回し、遠心力を利用した裏拳を放つ。

 

『ケビンマスク、ウォーズマンの脇腹に強烈なバックハンドブロ――ッ!』

 

 軽いジャブの中に混ぜ込まれた痛烈な一撃。

 

「ウッ」

 

 ウォーズマンの体は痛みに耐えるため停止し、体重を支えることすら困難となる。

 

『おっとウォーズマン、前のめりにグラついた~~っ』

 

 前屈みになったウォーズマンを見て、ケビンは打撃戦にこだわらず組みにいった。

 

『ケビンマスク、ウォーズマンの首を両腕でクラッチし……』

 

 頭部を脇の下で挟むフロントチョークの体勢に移行。

 その状態で後ろ側に倒れた。

 

「キングダム・ネックチャンスリ――ッ!」

 

『引っこ抜いた――っ!』

 

“狂乱の貴公子”ロビンマスクの血を感じさせる荒々しいフロント・ネックチャンスリードロップ。

 ケビンマスクはウォーズマンの首から腕を離し、しかしすぐには起き上がってこない様子を見て言う。

 

「どうしたウォーズマン! せっかくおまえを気遣いインターバルをなくしてやったっていうのに……このケビンマスクを鍛え上げた男はこんなものか!?」

 

 先輩を敬わない後輩超人の挑発を、ウォーズマンは新たなるエネルギーとして立ち上がる。

 

「生意気を~~っ」

 

 眼光鋭くケビンを睨み、膝立ちの姿勢から右腕を構えた。

 

「ベア・クロー!」

 

 手の甲から、ウォーズマンの代名詞である熊の爪が飛び出る。

 だがその切っ先は“完璧なる死時計の刻印(パーフェクト・デスウォッチブランディング)”を破られた際に折れたまま。脅威度はまったくない。

 

「そんな爪の折れたベア・クローでなにをするつもりだ――っ!」

 

 ケビンもそれをわかっているからこそ、臆さず突っ込んでいった。

 それに対し、ウォーズマンは右手のベア・クローに左手を添え――投げた。

 

『あ――っとウォーズマン、折れたベア・クローをケビンマスクに投擲した――っ!』

 

 凶器として使えぬなら投擲武器として使う。極めて合理的な判断。

 しかし相手は百戦錬磨のケビンマスク。そんな苦し紛れは通用しない。

 

「こんな虚仮威しなど!」

 

 ケビンは腕で投げつけられたベア・クローを払う。もちろんダメージはない。

 

『い……いや! ベア・クローを投げたのは単なる囮だ――っ!』

 

 その間、ウォーズマンはケビンから距離を取っていた。

 

「ベア・クローがなくとも、オレにはおまえにも授けたこの技がある!」

 

 向かう先はリングロープ最上段。

 反動で跳躍力を増し、技のセットアップに入る。

 

『ウォーズマン、トップロープから飛び体にひねりを加える~~っ!』

 

 全身を矢のごとくピーンと伸ばし、両掌を合わせて鋭き鏃を形作った。

 

「一度的を絞ればあとは畏怖を捨て、思い切りと勇気を持ち……身は弩弓の様に、拳は箭の様に回打し、敵を穿つ――っ!」

 

 ひねりを加えた動きは回転を生み、ウォーズマンの体はドリルと化した。

 

「マッハ・パルバライザ――ッ!」

 

 ベア・クローがなければスクリュー・ドライバーは使えない――が、マッハ・パルバライザーならば!

 ウォーズマンは自身が教えたこの技で、ケビンマスクのKOを狙いにいく。

 直撃すれば陶器が割れるかのように粉々になるだろう危険な突撃技だ――しかし。

 

「“天使のように細心に、悪魔のように大胆に”……あんたに教えてもらった攻撃の極意は忘れちゃいない。ならばこそ!」

 

 この技の破壊力、入射角、攻撃速度、そしてウィークポイントは……知り尽くしている!

 ケビンは体操選手のようなひねりを加えてジャンプした。

 

『お――っとケビンマスク、高く飛び上がりウォーズマンの超人削岩機を避けた――っ』

 

 回避しただけでは終わらない。

 ウォーズマンのマッハ・パルバライザーとすれ違う瞬間、その身に飛びつき、カウンターを狙う。

 

『そしてすかさずウォーズマンの左手首を持ち、肘から手を差し込みウォーズマン自身が自らの首を絞める格好にして……』

 

 マッハ・パルバライザーの突進力には抗わず、関節を極めて矢のような体勢を崩す。

 鏃の折れた矢が標的に命中すればどうなるか――簡単なこと。突き刺さらず地に落ちるだけだ。

 

「肉絞め落とし――っ!」

 

 両手という鏃を失ったウォーズマンのマッハ・パルバライザーは、頭部を先端にしてコーナーの鉄柱に激突。

 ケビンマスクが組みつき、関節を極められた状態ではもちろん受け身など取れなかった。

 

『ウォーズマンのマッハ・パルバライザーが、ケビンマスクによって完全攻略~~っ!』

 

「あれは……ボクがかつてケビンマスクにやってみせたマッハ・パルバライザー破り!」

 

 ケビンマスクが見せたこのムーブは、超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝で万太郎が見せたものだ。

 それを正確にコピーし技の授け手であるウォーズマンに返すとは、なんたる強かさ。

 

『ウォーズマン、ダウーン! あ~~っとしかし――っ!』

 

 コーナーに崩れる落ちるウォーズマン。

 だがコーナーということは、リングの外から容易に手が届く位置ということ。

 電光石火の早業でネプチューンマンがリングインし、ケビンに向かって両足を突き出した。

 

『ダウンしたウォーズマンの手にすかさずタッチし、ネプチューンマンが逆襲のミサイル・キックだ――っ!』

 

 マッハ・パルバライザー攻略の達成感を噛み締めていたケビンは、自身が蹴り飛ばされるまでネプチューンマンを認識すらできなかった。

 

「グアッ」

 

『ケビンマスク、リングの外までぶっ飛ばされた――っ』

 

 超人レスリングの試合はリングの上で行われるもの。

 とはいえ、場外が絶対の安全圏かといえばもちろんそんなことはない。

 

「いくぞウォーズ!」

「ああ!」

 

 ネプチューンマンとウォーズマンはふたり揃ってトップロープに登り、リングの外で体勢を立て直そうとしているケビンを見下ろす。

 そして、それぞれがタイミングをずらしながら飛び降りた。

 

「イクスパンションズ・プランチャ――ッ!」

 

 場外の相手に体の前面からぶつかっていくダイビング・ボディアタック。

 まずはネプチューンマンがケビンの腹部に衝突。ベストに仕込んだ鋼鉄の鋲が深く肉を刺す。

 そのネプチューンマンの上にウォーズマンが重なり、技の重さを倍化させた。

 

『“新星・ネオ・イクスパンションズ”、ふたり重なったプランチャーでケビンマスクを圧殺する――っ! さらにネプチューンマンの一張羅である鉄鋲ベスト突き刺し刑のおまけ付きだ――っ!』

 

「ガハァッ」

 

 吐血し、両手を力なく開くケビン。

 ロビン王朝(ダイナスティ)自慢のヒストリーアーマーを身に着けていたとしても、内臓が潰れかねない一撃だ。

 さすがは我が身を投げ出す捨て身のツープラトン――だがそれだけに、体勢を立て直すのにも時間がかかる。

 

「攻撃後の隙がデカいぜ、イクスパンションズ!」

 

 リングの反対側から回り込んできた万太郎が、イクスパンションズのふたりに奇襲をかける。

 右脇でネプチューンマンの首を、左脇でウォーズマンの首を捕らえ、そのまま肩の上まで担ぎ上げた。

 

『な……なんと万太郎、プランチャーの体勢から起き上がろうとしたネプチューンマンとウォーズマンのふたりを、たったひとりで両肩に担ぎ上げる――っ! これはまさか、キン肉バスターの体勢か――っ!?』

 

 万太郎が掴むのはネプチューンマンの右脚とウォーズマンの左脚。

 さらにそれぞれの首を両肩にフックさせることでバランスを保ち、ふたり同時のキン肉バスターを実現させている。

 

「見ているかカオス! おまえが花山神社のプロレスショーで見せてくれた……ボクがおまえという超人の存在を知るきっかけとなった技で、念願のトロフィー球根(バルブ)を手に入れてみせるぜ――っ!」

 

 これをやるにはとてつもない両腕の筋肉と強靭な腰のパワーが必要。

 人間相手なら可能かもしれないが、手負いとはいえレジェンドクラスの超人ふたりに通じるものではない。

 しかし――キン肉万太郎にはそれを可能にする力がある。

 

「火事場のクソ力――っ!」

 

 マスクから飛び出ている前髪がめくれ、額の肉マークが燃え上がる。

 まったくぶれない体幹でキン肉バスターの形を維持し、ウォーキューブの床を強く蹴った。

 高さを稼ぎ、降下地点をリング内へ定め――キャンバスに我が身を叩きつける。

 

「カオス・バスタ――ッ!」

 

 当然、その衝撃は万太郎の肩の上にいるふたりにも激しく伝わった。

 オリジナル版のように五所蹂躙絡みとはいかないが、ダウンを奪うには十分な威力を発揮する。

 イクスパンションズの二人を足もとに置きながらひとりリングに立つ万太郎。

 試合終盤で見せたまさかの無双っぷりに、キン肉マン、テリーマン、ロビンマスクが驚きをあらわにする。

 

「ぎょえ~~っ!? ネプチューンマンとウォーズマンをふたりいっぺんにキン肉バスターなど、わたしでもやらんぞ~~っ!」

「普通なら不可能だ! しかしそれが可能となっているのは、イクスパンションズのふたりが満身創痍だからこそ!」

「万太郎にはネプチューンマンたちのような加齢による体力の衰えも、ケビンのようなブランクもない! やはり体力面では独壇場か――っ!?」

 

 ダウンカウントが進む。

 すでに三本勝負の三本目。このままテンカウントを迎えることはすなわち敗北にほかならない。

 

「グオオ……ま、まさか一試合中に二度もキン肉バスターをくらってしまうとは……」

 

 ネプチューンマンは悲鳴を上げる体に鞭を打ち立ち上がろうとするが、そのしぶとさは万太郎に目をつけられた。

 完全に立ち上がるその前に、万太郎が組みつく。

 

「なら三度目をくらってみるか?」

「な……なにィ!?」

 

 背中側から覆いかぶさり、両腕で胴をクラッチ。

 続けてキャンバスを蹴った。

 

『万太郎、ネプチューンマンをくの字に曲げ……そのまま担ぎ上げてジャンプ――ッ!』

 

 この体勢は、シングル仕様のオリジナル版キン肉バスター。

 万太郎ならばさらにターンオーバーやマッスル・Gなどの派生技に分岐させることも可能だろう。

 数ある選択肢のうち、万太郎が――いや。

“ザ・坊っちゃんズ”が選び取ったのは、20世紀の地ではまだ見せていないツープラトンだった。

 

「わかってるよな――っ! ケビーン!」

「あたりまえだ! トウ――ッ!」

 

 リングに復帰したケビンマスクが、先に飛び上がった万太郎を追うように跳躍した。

 万太郎は相棒の動きを確認し、ネプチューンマンの体を頭上に持っていく。

 逆さ状態にしてから両大腿部を掴み、首を肩の上に置いて、純正の五所蹂躙絡みを発動させた。

 

『やはりキン肉バスターだ――っ! そして、ケビンマスクも万太郎を追って高くジャンプしている――っ!』

 

 上昇する最中、ケビンマスクの全身がボアァと輝きを放つ。

 

「メイルストロームパワ――ッ!」

 

 万太郎の火事場のクソ力に見合うパワーを引き出すべく、ロビン一族伝来の大渦(メイルストローム)パワーを行使。

 そのうえで万太郎とネプチューンマンの背後に躍り出て、逆さになって一緒に降下していく。

 ただそれだけでは終わらず、捕らえられているネプチューンマンに自身も技を仕掛けにいった。

 

『ケビンマスク、キン肉バスターに固められたネプチューンマンの両脚に自らの両脚をこじ入れ、さらに両手首を両手でクラッチする――っ』

 

 上下が逆転しているため見た目にはわかりづらいが、ケビンが仕掛けたのはこの決勝戦で一度見せている必殺技。

 ロビンマスクとキン肉マンが“ザ・坊っちゃんズ”の狙いに気づき声をあげる。

 

「48の殺人技のひとつ、キン肉バスターと……」

「ロビン王朝秘伝奥義OLAPのツープラトンではないか~~っ!?」

 

 単体でもフィニッシュ・ホールドにするには十分な2大必殺技。

 万太郎とケビンはそれを同時に、ひとりの超人に集中砲火しようというのだ。

 

「いくよケビン! 股間にイチモツ……」

「手にニモツだ――っ!」

 

 キン肉バスターとOLAPの夢の共演。

“ザ・坊っちゃんズ”最強最大の必殺技であるそのツープラトンの名は――

 

「NIKU→LAP――――ッ!」

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