ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第103話 覇者決定!!そして…!

“究極の超人タッグ戦”決勝、勝者は“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”!

 すなわち“究極の超人タッグ戦”優勝者は“新星・ネオ・イクスパンションズ”に決定!

 

『お聞きください! トーナメント・マウンテンの麓に集った30万人の観客が、この“究極の超人タッグ戦”を制した覇者を称え、大声援と万雷の拍手を送っております! その名は“新星・ネオ・イクスパンションズ”! その名はネプチューンマン! そしてウォーズマン~~ッ!』

 

 超人レスリングの試合における勝者決定の瞬間。

 アドレナリン迸る名勝負を演じてくれた闘士たちを称えるため、観客たちはありったけの声量で叫ぶ。

 

「ネプチューンマン! ネプチューンマン!」

「ウォーズマン! ウォーズマン!」

「セイウチン! セイウチン!」

 

『お――っとこれは熱い! 惜しくも二回戦でリタイアとなってしまったネプチューンマンの元パートナー、セイウチンへコールを送る観客もおります! イクスパンションズの優勝を語る上で彼の名は欠かせない! 届いているかセイウチン――ッ』

 

 人間の観客たちが大歓声をあげる中、観戦していた正義超人の面々も様々な顔を見せる。

 

「すっげ~~っ! あのおっさん連中、本当に優勝しちまいやがったぜ!」

「それも相手は新世代超人(ニュージェネレーション)最強タッグといわれる万太郎とケビンだ! とんでもねえよ!」

 

 体力面で劣っていたロートル超人コンビの激勝。

 この結末には、ネプチューンマンをライバル視していた“スーパー・トリニティーズ”、スカーフェイスとジェイドも大盛り上がりだった。 

 

「ウオー! マッスル・ドッキングを決め技にするとは、あいつら粋なことしおって~~っ!」

「コングラチュレーション! 文句のつけようのない、完璧に息のあったツープラトンだった!」

 

 未来から来ていたふたりを対等な友達として推していた“ザ・マシンガンズ”、キン肉マン&テリーマンももちろん大興奮。

 互いに肩を抱き合い、我がことのように喜んでいる。

 

 一方、敗者たちに寄り添っていた者――“ジ・アドレナリンズ”のテリー・ザ・キッドは一筋の涙を流していた。

 

「泣いているのか、キッド」

 

 ロビンマスクが気づき、パートナーとして声をかける。

 たしかにキッドは涙を流している……が、泣いているとは言いがたい。

 その口元ははっきりと笑みを浮かべていたためだ。

 

「ふたりの悔しさが伝わってくるのさ。師匠超えを果たせなかったケビン、超人オリンピックに引き続き大一番でウォーズマンの戦略の前に敗れてしまった万太郎……カオスに勝利を贈ることができなかった申し訳なさも手伝って、とても晴れやかな気分じゃいられねぇ……だから涙が出てくる。だってのに、顔は不思議と笑っちまうんだ。すげぇおもしろい試合を見ちまった、大満足だ、ってな」

 

 ロビンはキッドが語る心中に若さを感じ、フッと微笑んだ。

 

「敗北は明日の自分を作る。心配することなどなにもないさ……ケビンも万太郎も。もちろん、キッドやこの私もな」

 

 未来から過去に来て約2週間。苦楽を共にした偉大なる伝説超人(レジェンド)の言葉は胸に染みる。

 キッドは涙を拭い、力強く頷いてみせた。

 

 悔し涙を見せる者もいれば、感動の涙を流す者もいる。

 大号泣しているのがブロッケンJrだった。

 

「ウォワアアアア――ッ! すげえ! すげえよふたりとも!」

「ブ、ブロッケンさん……意外なことにあんたが一番泣いてるだな」

 

 若干引き気味のジェロニモに、ブロッケンJrは胸の内を語る。

 

「だってよぉ……新世代超人のやつらから、34年後の未来ではオレたち現役バリバリの正義超人がほとんど引退しちまってると聞いて、正直悔しい思いだったんだ。こんなに活躍してるキン肉マンやテリーマン、まだまだこれからってつもりのオレが、寄る年波には勝てず一線を退いちまうのかってな。だが……唯一現役を続けているネプチューンマンとウォーズマンが、若いやつらに混じって闘い、最強の称号を得たんだぜ。あのふたりの戦いぶりを見ていると、34年経ったって全然やれる……負けてらんねえって情熱が込み上げてくるんだ」

 

 ズビッ!と勢いよく鼻をすすり、ブロッケンJrは決意する。

 自分もネプチューンマンやウォーズマンになろう。

 引退などという未来は変えてやろう、と。

 

「決めたぜジェロ! オレは21世紀になったって隠居なんてしてやらねえ! あのふたりのように、生涯現役だ――っ!」

「んだな!」

 

 若き超人ふたりが肩を寄せ合う横で、ミートはひとり誰にも話せぬ感慨にふけっていた。

 

「おめでとうございます、ネプチューンマンにウォーズマン。特にネプチューンマン……孤独な使命を帯びたあなたの奮闘、ボクは同じ正義超人として尊敬します」

 

 罪を背負いながらの闘いは、きっと辛く苦しいものだっただろう。

 だがネプチューンマンはそれをやり遂げ、成し遂げた。

 正義超人としての使命を果たし、自身の栄光すら掴むという、これ以上ないくらいの形で……彼こそ最強の欲張りキングだ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!」

 

『ネプチューンマン、雄叫びが止まらない~~ッ! 勝利の興奮から大粒の涙を流している~~っ!』

 

 トーナメント・マウンテンに歓喜の咆哮を轟かせるネプチューンマン。

 喜びの表現方法は超人によって十人十色。

 傍らのウォーズマンはネプチューンマンとは対照的に、静かだった。

 

『一方のウォーズマンは感慨のあまり言葉が出ないのか~~っ! 片膝立ちの状態で、なにかに感謝するかの如く頭を下げている~~っ!』

 

 形は違えど、勝者に相応しき立ち振舞をするネプチューンマンとウォーズマン――彼らふたりのそばには、今も敗者が倒れたままでいる。

 

「い……意識はあるか、万太郎……」

「ああ……ケビン。負けたんだね、ボクら……」

 

ザ・坊っちゃんズ(ヤングマスターズ)”、ケビンマスクとキン肉万太郎は仰向けで天を仰いでいた。

“新星・ネオ・イクスパンションズ”の放ったマッスル・ドッキングの余波でウォーキューブの天井が吹っ飛んだため、空がよく見える。雲も疎らな気持ちのいい青空だ。

 

「万太郎」

「ケビン」

 

 ネプチューンマンとウォーズマンは激闘を繰り広げたふたりの囁くような声を耳にしそばに駆け寄った。

 ケビンと万太郎は起き上がることができず、視線だけをふたりに向け言う。

 

「同じ正義超人同士……本来なら相手チームの勝利を称えるのが正解なんだろうが、あいにくそんな気になれねえ。い、今すぐにでもリベンジしてやりてぇところだ……」

「ボ……ボクも同じだよ、ケビン。超人オリンピックでおまえに負けたときはもうちょっと清々しい気持ちだったけど……今は相手への憎たらしさすらある」

 

 たとえ相手が敬うべき伝説超人であったとしても、ケビンと万太郎は悔しさを隠そうともしない。

 後輩としての謙虚さが足りんと叱ることはできるが、ネプチューンマンもウォーズマンもそんなことをするタイプではなかった。

 

「それでこそだぜ。若者はそうでなくちゃいけねえ」

「悔しかろう、おっさんに負けるのは」

 

 なので、煽る。

 反骨心上等。

 若者は大いに悔しがり、泥をすすってでも這い上がってくるべきだ。

 

「グム~~ッ」

 

 耳に手を翳すポーズで“ザ・坊っちゃんズ”の唸り声を聞く“新星・ネオ・イクスパンションズ”。

 そうこうしている間に、大会運営委員長を務めるハラボテ・マッスルがマイクを取った。

 

『“究極の超人タッグ戦”優勝チーム、“新星・ネオ・イクスパンションズ”よ!』

 

 優勝者が決定したのであるならば、段取りを次に勧めなければならない。

 全選手、全観客が待ち望んだ、あの瞬間を迎えるために。

 

『覇者の権利じゃ! トーナメント・マウンテンの頂に刺さる優勝トロフィーを引き抜くがいい!』

 

 ハラボテの言葉を受け、ネプチューンマンとウォーズマンは揃って真上のほうを見た。

 おあつらえ向きに天井が開いている。ウォーキューブからトーナメント・マウンテンの頂上まではひとっ飛びだ。

 

「ウォーズマン」

「ああ、ネプチューンマン」

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”が互いに目配せし、頷き合う。

 

「トア――ッ!」

「テ――イ!」

 

 掛け声と共に跳躍し、ウォーキューブからトーナメント・マウンテンの頂上に躍り出た。

 

「これが1億4000万年にわたる宇宙超人タッグの戦いの歴史を刻んだ」

「超人タッグトロフィー……」

 

 ネプチューンマンとウォーズマンの足元には、地面に半分ほど埋まった黄金のトロフィーがある。

 

『さて、いくら優勝を決めたとはいえ、この超人タッグトロフィーは真の強さと真のコンビネーションを備えたタッグチームでなければ引き抜かれるのを拒否することもあります』

 

“究極の超人タッグ戦”開始前、これを無理やり抜こうとした“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”がまさに拒まれたことがある。

 もしネプチューンマンたちがそうなってしまえば、すべては水の泡。

 命を懸けて闘った仲間の超人たちに報いることもできず、また未来にも帰れず……歴史は最悪の方向へ転がり落ちてしまうだろう。

 

『さあ~~っ、ネプチューンマンとウォーズマン、“新星・ネオ・イクスパンションズ”のふたりが、トロフィーに真のタッグチャンピオンと認められるか~~っ!?』

 

 しかしながら、不思議とふたりに不安はなかった。

 隣に立つこいつとならば、引き抜けないはずがない――そんな自信が湧いてくる。

 ネプチューンマンとウォーズマンが、それぞれトロフィーの左右の取っ手を掴んだ。

 

「フン~~ッ」

「ウオオ~~ッ」

 

 イクスパンションズはグイッと力を込め、トロフィーを見事に引き抜いてみせた。

 

『あ――っと今、黄金のトロフィーがふたりを祝福するかの如く! トーナメント・マウンテンの頂きから引き抜かれた~~っ!』

 

 何事もなく引き抜かれた黄金のトロフィー。

 それを左右から高々と掲げる“新星・ネオ・イクスパンションズ”。

“究極の超人タッグ戦”における決定的瞬間を目の当たりにし、観客たちは再度熱狂した。

 

 そして――伝説のとおり、トロフィーの下部には植物の根のようなものが生えている。

 

「これが……食らえば全超人界を超越した史上最強の完全無比(コンプリート)超人になることができるという……トロフィー球根(バルブ)

 

 あの悪行・時間超人コンビが垂涎した、超人界の歴史を変えうる完全無比の球根(コンプリートバルブ)

 いや、垂涎したのはライトニングとサンダーのふたりだけではない。

 彼らと肩を並べた悪行超人――“前回”のネプチューンマンもまた、この球根を狙っていた。

 あのときは手にすることができなかったが、リベンジを果たした今ようやくこの手に巡ってきた。

 

 感慨深い。

 感慨深すぎて――涎が垂れてくる。

 

「グフフ……グヘヘ……」

「ネ……ネプチューンマン?」

 

 まるで腹ペコ小僧がごちそうを前にしたかのような笑みを浮かべるネプチューンマン。

 相棒が見せる異変に、ウォーズマンも戸惑う様子を見せていた。

 

「ついに……ついに手に入れたぜ~~っ。古今東西ありとあらゆる悪行超人が恋い焦がれたトロフィー球根……こ、これさえ食えば……オレはより完璧なパワーを得ることができる~~っ」

 

 ネプチューンマンは口元の涎を拭こうともせず、意味深な言葉を口にする。

 その顔はもはや腹ペコ小僧などという表現では足りないほど、醜悪なものに成り果てていた。

 

「な……なにを言ってるんじゃネプチューンマンは……」

「ミ、ミーにはなにか嫌な予感がする……」

 

 麓のキン肉マンやテリーマンも、トロフィーを引き抜いたネプチューンマンの様子がおかしいことに気づき始める。

 周りにいる他の正義超人たちも同様。皆、心の中で「ま、まさか……」という懸念を抱き始める。

 ネプチューンマンは彼らの懸念に対する答えとして、言葉を続けた。

 

「そうなればもはや、完璧(パーフェクト)超人の再興は叶ったも同然! 20世紀の有象無象どもよ、超人界はこの蘇った完璧超人・ネプチューンマンが牛耳らせてもらうぜ――っ!」

 

 完璧超人・ネプチューンマン――!

 すでに捨てたはずの肩書きを名乗り、ネプチューンマンは20世紀の超人界に対し宣戦布告した。

 

『あ――っとなんたることだ~~っ!? ネプチューンマン、完璧超人としての支配宣言! まさかこの場で完全無比の球根を食らい、完全無比超人となって世に混沌をもたらすつもりか~~っ』

 

 実況がネプチューンマンの目論見を言語化し、祝勝ムードだった観衆が一斉にざわめき始める。

 

「な、なんじゃと――っ!?」

「やつは正義超人として闘っていたはずだ――っ!」

「私たちはネプチューンマンに騙されていたというのか――っ!?」

 

 キン肉マンは驚き、テリーマンは憤慨、ロビンマスクは大混乱に陥った。

 正義超人を騙すのはお手の物――“前回”でも、ネプチューンマンはセイウチンを騙し血も涙もない獣に仕立て上げた。

 しかしやはり、種明かしをするなら最後の最後、取り返しのつかないところまで来てからに限る。

 

「グヘヘ」

 

 ネプチューンマンは慌てふためく大観衆を前に愉悦に興じていた。

 豹変した相棒を前に、ウォーズマンは「コーホー」と機械的な呼吸音を発する。

 

「グヘヘじゃねえ」

 

 トロフィーから手を離し、速やかにネプチューンマンのそばに移動。

 背後から相手の左脚に自分の左脚を絡めるようにフックし、相手の右脇から左腕を首の後ろに回し、右腕とジョイント。

 

『お――っとウォーズマン、ネプチューンマンをコブラツイストで締め上げる――っ』

 

 本性を表した悪行超人にお灸を据えるべく、情け容赦ない関節技を繰り出したのである。

 これにはたまらずネプチューンマンも正気を取り戻し、空いている左手でウォーズマンの体をタップした。

 

「ま、待て待て。ちょっとしたジョークだよ。本気じゃねえから許してくれ」

 

 パッ、と拘束を解くウォーズマン。

 そんなことは最初からわかっていた。完璧超人の再興発言が相棒の悪ふざけだということは。

 ウォーズマンとしては「やれやれ」で済む話だったが、頭に来たのが仲間の正義超人を含む観客たちである。

 

「ふざけんな――っ!」

「空気読め――っ!」

「つまんねえぞジジイ――ッ!」

 

 祝福を受けていた男が一転、罵詈雑言を浴びせられる。

 

『あ~~っと物を投げないでください! 物を投げないでくださーい!』

 

 トーナメント・マウンテンの頂上に向かって投げられる空き缶、漫画雑誌、靴、ビール瓶等……もちろん届きはしないが、せっかくの優勝セレモニーは台無しとなってしまった。

 

「つくづくとんでもねえおっさんだぜ」

「歳をとってもああはなりたくないな」

 

 後輩であるスカーフェイスとジェイドからもこの評価だ。

 悪ふざけなどせず含蓄のあるセリフのひとつでも言えば尊敬されていただろうに、もったいないことである。

 

「まったく……せっかく盛り上がってた観客が呆れているぜ」

 

 ウォーズマンはため息をつく。

 ネプチューンマンはこほん、と咳払いをし、正義超人の顔つきを取り戻してから言う。

 

「悪かったよ。だがオレも元はワル……素直に歓声を受け取るってのはむず痒くていけねえ。茶化したくもなる」

「おっさん特有の照れ隠しか。わからんでもないが……まずは仕事を終えるのが先だろう」

「わかってらぁ」

 

 イクスパンションズのふたりは再度トロフィーを持ち直し、その下部に生えているトロフィー球根を何本かむしり取る。

 ふざけて食べたりなどはしない。この球根は真にそれを必要としている者たちのところへ届けられるべきだ。

 

「さあ、トロフィー球根よ! この“究極の超人タッグ戦”で傷つき倒れていった者たちのもとへ飛んでいけ~~っ!」

 

 そう言って、ネプチューンマンとウォーズマンは手中のトロフィー球根を投げ放つ。

 球根はまるで意思を持つかのごとく、様々な方向に散っていった。

 

「伝説超人……新世代超人……これでみんな復活するはずだ。もちろん、カオスもな」

 

 この闘いで傷つき倒れていった仲間たちを蘇らせ、未来への希望をつなぐ。

 これで後の“キン肉星王位争奪サバイバルマッチ”はもちろん、21世紀の正義超人界にも悪影響は出ないはずだ。

 

「そして残りは……」

 

 トロフィーの底にはまだ球根が残っている。

 ネプチューンマンはそれを見つめ、怪しげな笑みを浮かべた。

 即座にウォーズマンがギランと目を光らせる。

 

「コーホー」

「わ、わかってるって。睨むなよ」

 

 ネプチューンマンは懐からマッチを取り出し、トロフィーに擦って着火。

 それをトロフィー球根のそばまで持っていくと、すぐに火が燃え移る。

 

『あ~~っとネプチューンマン、トロフィー球根の残りに火を放った――っ!』

 

 全超人の夢、コンプリートバルブが炎に焼かれ燃えカスとなっていく。

 イクスパンションズの突然の奇行に、観客たちはどよめきの声を上げた。

 

「な、なんということを~~っ!」

 

 もったいないという想いから嘆くキン肉マン。

 しかしネプチューンマンとウォーズマンにトロフィー球根を惜しむ気持ちはない。

 

「このトロフィー球根は、本来は“夢の超人タッグ戦”優勝者であるキン肉マンがトロフィーを水洗いした際に下水に流れ落ちてしまったもの。歴史上は存在すべきではない」

「完全無比超人遺伝子(ゲノム)……そのパワーは凄まじいが、残しておけば新たな争いの火種となるだろう。なにより、オレたち超人はこんなものに頼らずとも十分に強くなることができる」

 

 ウォーズマンは麓にいるキン肉マンやロビンマスク、リング上にいる万太郎やケビンマスク、そして隣に立つネプチューンマンを順に見回し、言う。

 

「親子……師弟……そして友達。超人としての真の強さとは、多くのライバルと競い合うことで得られるものなんだ」

 

 完全無比の力などいらない。

 ウォーズマンにとっての“かつて”、この時代の皆にとっての未来――キン肉星第58代大王キン肉スグルは言った。

 

『友情は成長のおそい植物である。それが友情という名の花を咲かすまでは幾度かの試練・困難の打撃を受けて堪えねばならぬ――』

 

 トロフィー球根のような即効性はないかもしれないが、それはきっとコンプリートをも超越した大いなる力となるだろう。

 

「ウォーズマン……」

 

 ケビンマスクはウォーズマンの言葉を受け、感激の涙を流した。

 本当に、相棒と共に彼らふたりと闘えてよかった。

 感謝の念を胸に、リング上から偉大なる師の姿を見上げる。

 

「こいつめ、いいとこ持っていきやがって」

 

 あの無愛想な機械ヤロウがずいぶん饒舌になったものだ、とネプチューンマンは愉快げに笑う。

 

「さあネプチューンマン、最後の仕事だ」

「ああ」

 

 イクスパンションズのふたりは頷き合い、トロフィーを持ったままトーナメント・マウンテンの頂上から飛び下りた。

 

『あ――っとネプチューンマンとウォーズマン、タッグトロフィーを手にトーナメント・マウンテン頂上より下りてきた――っ!』

 

 超人は飛べる。

 高所から飛び降りたとしても落下激突死とはならず、ネプチューンマンもウォーズマンも綺麗に着地した。

 

「おめでとう、ネプチューンマン」

「おめでとう、ウォーズマン」

 

 地上に下りてきたチャンピオンを拍手で迎えるのは、前チャンピオンのザ・マシンガンズだ。

 キン肉マンとテリーマンは“宇宙超人タッグ・トーナメント”でネプチューンマン率いる“ヘル・ミッショネルズ”を倒し覇者の栄冠を掴んだ。

 だが、この“究極の超人タッグ戦”では2回戦敗退。掴み損ねたトロフィーを羨む気持ちはあるだろう。

 

「こいつは返すぜ、ザ・マシンガンズ」

 

 だからネプチューンマンとウォーズマンは、初めからこうすると決めていた。

 トロフィーを手に入れた暁には、マシンガンズに返却すると。

 おそらくは万太郎とケビンが勝っても同じようにしたことだろう。

 

「なっ……なにを言う。これはおまえたちが勝ち取ったものだろう」

 

 トロフィーを差し出されたキン肉マンは呆然と言う。

 黄金のトロフィーは優勝者の特権。受け取れないというキン肉マンの気持ちも理解できた。

 しかしネプチューンマンとウォーズマンはこう返す。

 

「悪行・時間超人がこの時代に現れなければ、このトロフィーは前大会でオレと武道のヘル・ミッショネルズを破ったおまえたちのものだったんだ。元の鞘に収めるだけさ」

「本来“究極の超人タッグ戦”なんて闘いは起こりすらしなかったんだ。オレたちは所詮外様。20世紀の最強タッグチームはザ・マシンガンズ、それでいいじゃないか」

 

 本来ありえないはずだった歴史を修正するためにも、このトロフィーはマシンガンズが持つべきだ。

 イクスパンションズのふたりはそう告げるのだが、

 

「グ……グムー」

 

 キン肉マンもテリーマンも難しい表情を浮かべ、一向にトロフィーに手を出してこなかった。

 

「納得がいかねえか」

 

 ネプチューンマンはこのまま押し付けるのも後味が悪い、とアプローチを変えることにした。

 

「ならこうしよう。ハラボテ! それにイケメンよ!」

「へ?」

 

 視線を転じた先は、宇宙超人委員会委員長のハラボテ・マッスル、そして新世代超人と共に過去へタイムワープし、ずっと彼らに帯同していたやたら濃い顔の男……ハラボテの実子、イケメン・マッスルだ。

 

「オレたち“新星・ネオ・イクスパンションズ”は“究極の超人タッグ戦”初代チャンピオンとして……34年後に第2回“究極の超人タッグ・トーナメント”の開催を提案するぜ!」

 

 突然の提案に、二代に渡って宇宙超人委員会の最高責任者を務める親子は驚愕の反応を示す。

 

「なっ……」

「なんじゃと~~っ!?」

 

 驚愕はハラボテたちだけではなく、その場で話を聞いていた他の超人たちにも表れていた。

 ネプチューンマンはいずれライバルになるであろう全員に向かって語りかける。

 

「オレとウォーズマンは間もなく時空船(タイムシップ)で未来に帰らねばならぬ身。トロフィーは荷物になる。だからこの場はマシンガンズ、おまえたちふたりにトロフィーを預け、34年後……“第2回究極の超人タッグ戦”開催の折に返してくれ。それならいいだろう」

 

 いいだろう、と言われてもキン肉マンまだ納得することができない。

 

「しょ、正気かおまえ。今さっきあんな激闘の数々を終えたばかりだというのに」

 

 本来なら引退している年齢のロートルコンビが優勝という快挙を成し遂げたのも束の間、すぐに新たな超人タッグ・トーナメントに参戦など正気の沙汰とは思えない。

 懐疑的な眼差しを向けるキン肉マンに対し、ウォーズマンとネプチューンマンは余裕のある笑みを見せつける。

 

「さっきの試合がオレたちの引退試合だとでも思ったか?」

「寝ぼけたことを言うな。オレたちはまだまだ上り調子よ~~っ」

 

 ネプチューンマンが誇示するのは、屈強な筋肉を付けた左腕。

 まさしく名刀と呼ぶに相応しい豪腕は、加齢など感じさせないほどパンパンに膨れ上がっている。

 

「20世紀の伝説超人ども! そして21世紀の新世代超人たちよ! オレたちのようなおっさんコンビに優勝を掻っ攫われ、さぞや悔しい思いをしているだろう! そんなおまえたちにリベンジの機会をやる! 34年後、新たに開かれる“究極の超人タッグ戦”にエントリーし……オレとウォーズマンからトロフィーを奪い取ってみせろ!」

 

 ライバルたちを煽り、現チャンピオンとして挑戦状を募集する。

 ネプチューンマンたちに煮え湯を飲まされた者、直接対決を願うも叶わなかった者、その強さに憧れていた者……全員が等しく、その提案に魅力を感じてしまっていた。

 

「特にマシンガンズ。忘れてもらっちゃ困るが、オレは一度おまえらに負けてるんだ。チャンピオン同士、34年後に真の決着をつけるとしようじゃねえか」

 

 そう、チャンピオンになったとはいえ、ネプチューンマンはマシンガンズへ直接リベンジを果たせたわけではない。

 最強を名乗るならやはりこのふたりを倒してこそ。超人オリンピック・ザ・ビッグファイトでキン肉マンに敗れたままのウォーズマンも想いは同じだった。

 

「万太郎が生まれ、こんなにも立派に成長を遂げるほど先の未来……テリーはともかく、将来リウマチやヘルニアに悩まされるらしいわたしに、超人タッグの大会に出てこいと……現役で在り続けろというのかおまえ~~っ」

 

 34年後に開催するということはつまりそういうこと。

 将来キン肉星の大王に即位し、若い頃に体を酷使した反動で年齢以上にヨボヨボになってしまうキン肉マン……本来の歴史であれば無理を通り越して老人虐待ものの話だが、未来は変えられる。

 

「オレやネプチューンマンにできたんだ。おまえにできないとは思えない」

「気張ってみせろ、奇跡の逆転ファイター」

 

 ウォーズマンとネプチューンマンはキン肉マンの可能性を信じ、激励した。

 キン肉マンはゴクリと唾を飲み、ドンと自らの胸を叩く。

 最高の友達ふたりにこうまで言わせてしまっては、引き下がることなどできない。

 

「や……やったるわい!」

「キン肉マンがやるならミーも異存はないぜ!」

 

 キン肉マンは覚悟を決め、永遠の相棒であるテリーマンもまたそれに付き合う決心をした。

 その横から、闘魂燃える瞳を携えロビンマスクが躍り出る。

 

「無論、私も参加させてもらう! 今度こそウォーズマンとの約束を果たし、同時にネプチューンマン、貴様にもリベンジをさせてもらおうじゃないか!」

 

 ロビンに続くように、ブロッケンJrとジェロニモも前に出てきた。

 

「今度はオレやジェロも挑ませてもらうぜ! なんせあんたたちに比べてオレらは若いからな!」

「現役を続けられている可能性も高いはず! オラももっともっと超人として成長してみせる~~っ」

 

 血気盛んな伝説超人たちを前に、もちろん新世代超人も黙ってはいられない。

 スカーフェイス、ジェイド、テリー・ザ・キッドが続けて参戦表明をする。

 

「オレたちにとっては時空船で未来に帰ってすぐのことだ! 早々に逆襲のチャンスが巡ってくるとはありがてえ!」

「新世代超人はこの時代にきたやつらだけじゃない! あんたら全員トーナメント参加の枠がもらえると思わないことだぜ!」

「ジェイドの言うとおりだ! ここにはいないセイウチンやチェック・メイトも想いは同じ……新世代超人の底力はまだまだこんなもんじゃねえ~~っ!」

 

 ウォーキューブ決勝リング上、未だにダウンしたままのケビンマスクと万太郎は、麓のやり取りを耳にしながら静かに語り合う。

 

「万太郎……またオレと組んでくれるか?」

「あたりまえだろ……相棒」

 

 21世紀の最強タッグ、ザ・坊っちゃんズも決意を新たにする。

 

 ――“ザ・マシンガンズ”は“新星・ネオ・イクスパンションズ”から優勝トロフィーを預かり、こうして“究極の超人タッグ戦”は幕を閉じる。

 

 次は34年後に。

 そう約束を交わし、超人タッグの歴史は紡がれていくのだった。

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