ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第104話 伝説超人と新世代超人!別れのとき!!

 ――“究極の超人タッグ戦”閉幕から数日後。

 

 富士樹海に位置するトーナメント・マウンテンの麓では、休眠状態にあった時空船(タイムシップ)が再起動を果たしていた。

 枯渇した反物質エネルギーを復活したカオス・アヴェニールのエキゾチック物質で充填し、未来へ帰還するための運転を再開したのである。

 

 そして今日は、ついに21世紀からの使者たちが元の時代に帰る日。

 伝説超人(レジェンド)新世代超人(ニュージェネレーション)、人間の関係者たち……各々が別れを告げるべく、時空船のもとに集結していた。

 

「ようやく20世紀の古くせえ空気ともおさらばか。清々するぜ」

 

 新世代超人のスカーフェイスは荘厳なるトーナメント・マウンテンを見上げ、感慨深くつぶやいた。

 

「オレは少し名残惜しくもある。師匠(レーラァ)が技を磨いた激動の時代……叶うものならもう少しこの場に留まり、共に闘いたかった」

 

 この地でスカーのパートナーを務めたジェイドには、帰ることに少し未練があるようだった。

 なにせ20世紀は師匠であるブロッケンJrの全盛期。そばに居続ければ学べることは多くあるだろう。

 

「ホエホエ……しかしそういうわけにもいかん。あまり過去に干渉しすぎては、ワシらのいる21世紀の歴史が変わってしまう」

 

 一度は死するもトロフィー球根(バルブ)で復活した老超人、バリアフリーマンがジェイドに言う。

 傍らでは同じく復活した彼のパートナー、イリューヒンがこれから乗り込むことになる時空船を眺めていた。

 

「ラーメンマンが一度死しても“美来斗利偉(ビクトリー)・武芸伝”を残し万太郎たちに技を伝えたように、歴史にはある程度の修正力が働くはずだが……実際のところ、オレたちが帰還する21世紀の世は“究極の超人タッグ戦”を経てどうなっているんだろうな」

 

“究極の超人タッグ戦”という、本来ありえなかったはずの闘いを経た歴史。

 未来に帰ったそのとき、ひょっとしたらその影響によりなにかが変わっているかもしれない。

 しかしどんな形であれ、正義超人界にとって悪い方向には傾いていないはずだ――なぜだかそれだけは安心できる。

 

 

 

「ヘイ、チェック。アシュラマンはどうしたんだ?」

 

 新世代超人テリー・ザ・キッドが、同じく新世代超人チェックメイトに話しかける。

 この場には“究極の超人タッグ戦”に関わったほとんどの正義超人が来ていたが、チェック・メイトのパートナーを務めた悪魔超人アシュラマンの姿は見当たらなかった。

 チェック・メイトは首を横に振り答える。

 

「トロフィー球根で怪我が治ったら即魔界に帰りましたよ」

「帰ったって……おまえという、共に悪行・時間超人と闘ったパートナーが元の時代に帰るっていうのにか?」

「この時代の彼の心は未だ悪魔超人……正義超人との馴れ合いなどまっぴらごめん、わたしたち新世代超人の見送りなどもってのほかだそうです」

 

 この時代のアシュラマンは悪魔超人のトップ、魔界の王子(プリンス)だ。

 一時的に共闘を果たしたとはいえ、やはり正義超人とは相容れないということなのだろう。

 

「ただ……去り際、“おまえと組んでのタッグマッチはなかなか有益な時間だったぞ”と、そう言い残していきましたがね」

 

 だが、それでいい。

 チェック・メイトはこの地で巡り会えた素晴らしきパートナーの姿に思いを馳せ、傍らにいたテリー・ザ・キッドも満足げなチェックの様子に笑みを見せるのだった。

 

 

 

 キッドとチェックが噂していた人物――アシュラマンは、実のところこの場を訪れていた。

 しかし正義超人たちの輪に加わることはせず、時空船が見渡せるほどの小高い丘に立ち遠目で眺めているだけだった。

 

「アシュラよ。餞別の言葉でもくれてやったらどうだ?」

 

 どこか寂しそうにも思えるアシュラマンの背中に語りかけるのは、忍び装束を纏った悪魔超人の同胞――ザ・ニンジャである。

 アシュラマンは常の笑い面のまま、背後のザ・ニンジャに振り返る。

 

「カーカッカ。悪魔であるこの私が、未来の正義超人に餞別だと? おかしなことを言うやつだ。ブロッケンJrとタッグを組んだことで友情にでも目覚めたか?」

「異なことを」

 

 ニンジャは鼻を鳴らし、こう続ける。

 

「あのチェック・メイトとやらは我らが同胞、サンシャインの弟子なのだろう? おぬしたちの試合は拙者も見せてもらったが、なかなかに見込みのある男だ。現在は正義超人の一員というが……おぬしが魔の道へ上手く誘導すれば、21世紀の悪魔超人界を背負って立たせることも可能なのではないかと思ってな」

 

 これより34年後の未来……悪魔超人は残虐超人や完璧(パーフェクト)超人と一緒くたにされ、悪行超人という総称で呼ばれる。

 悪魔超人として高いプライドを持つザ・ニンジャとしては、腹立たしいことのこのうえない。

 その頃の己がどうなっているかは知らないが、おそらく一線は退いているのだろう。

 だが目の前に立つ20世紀アシュラマンのように、悪魔超人軍の柱となる存在がいれば未来は変わってくるはず――ゆえにザ・ニンジャは奸計を巡らせたのだが、

 

「くだらん、くだらーん」

 

 アシュラマンはまたもや「カーカッカ」と笑い飛ばす。

 

「あんなクソ真面目な男に未来の悪魔超人界を任せてなどいられるか。なにが新世代超人だ、なーにが悪行超人だ。チェック・メイトになど頼らずとも、我々に都合のいい未来を作るのは今を生きる我々だ。やつらが帰り着く地は平和な正義超人の天下などではない……私たち悪魔超人のお膝元だろうぜ」

 

 歴史などいくらでも変えられる――それはこの“究極の超人タッグ戦”という形で、ネプチューンマンや新世代超人、そして時間超人が証明してみせた。

 ならば、アシュラマンにだってやってやれないことはない。そのために必要な情報は、ネプチューンマンがわざわざ提供してくれている……自らの首を絞めることに繋がるとも思わずに。

 

「だが、そうだな……34年後、いやもう少し早いか……遠くない未来にやつが我々悪魔超人軍の門を叩いたときには、サンシャインと共にしごいてやるとしよう」

 

 アシュラマンの不敵な表情を見て、ザ・ニンジャは口元だけで笑む。

 密かに、アシュラマンこそ正義超人に絆されてしまったのでは不安視していたが……どうやら杞憂だったようだ。

 

「フッ……では帰るか。我らが悪魔超人軍現頭目よ」

「フン。いいや、せっかくだ。タイムマシーンとかいう夢物語が飛び立つ姿は見物していこうではないか」

 

 決して別れを惜しんでいるわけではない。

 アシュラマンもザ・ニンジャも、そういう体裁でトーナメント・マウンテンの近くに居座り続けた。

 

 

 

 そして再び、時空船のそば。

 万太郎が船体にソースせんべい用のソースで書いた“ケビンマスク号”のサインの前では、重体から元通りの元気な姿になったセイウチンとウォーズマンが話していた。

 

「未来に帰る前にあらためて礼を言いてえだよ、ウォーズマン。あんたがいてくれたおかげでケビンを救えたし、21世紀の正義超人界を守り通すこともできた。なにより、ネプチューンマンのおっちゃんの面倒を見てくれてあんがとう」

 

 イクスパンションズの初代パートナーとして、二代目パートナーであるウォーズマンに感謝を述べるセイウチン。

 自身がこれ以上は闘えないと悟り、彼にバトンを託したのは間違いではなかった。さすがは伝説超人中の伝説超人だと、セイウチンは尊敬の念を抱く。

 ウォーズマンはそんなセイウチンからの敬意をむず痒く思い、言う。

 

「礼には及ばんさ。やつが素直にオレと共闘する意思を示してくれたのはおまえからの指名があったというところが大きい。セイウチン……おまえの存在はずっと、ネプチューンマンの精神的支柱となっていた。なにせやつは口々におまえを一番にしてやりたかったと言っていたからな」

 

 本人から聞いた“前回”では、セイウチンのことを駒としか考えていなかったというネプチューンマン。

 だが今回はセイウチンを対等な弟子として見ることで、ネプチューンマン自身の成長にも繋がったようだった。

 カオスが願ったという後進の育成。ネプチューンマンはその第一歩を無事に果たしたと言えよう。

 

「悪いけども、オラはもうネプチューンマンのおっちゃんに引っ張り上げてもらうほど弱くねえ。21世紀に帰ったら……ウォーズマン、あんた共々チャレンジャーとして挑ませてもらうから覚悟しといてほしいだ」

 

 セイウチンは自信満々に胸を張り、他の超人たちと同様に挑戦者の表情を見せた。

 油断すればその鋭き牙で寝首をかかれるだろう……そんな頼もしさがある。

 

「フッ。望むところだ」

 

 ウォーズマンはいずれ訪れるであろう未来を思い、笑みをほころばせた。

 

 

 

 また別の場所では、この闘いの最大の功労者であるふたりが手を取り合っていた。

 正義・時間超人の生き残りとして闘い抜いたカオス・アヴェニール、そして彼のおかげで最上の結果にたどり着くことができた正義超人ネプチューンマンである。

 

「本当にありがとう、ネプチューンマン。あなたのおかげで20世紀と21世紀の正義超人界は救われた。後世に語り継ぎたいほどの英雄だよ」

 

 握る手に尊敬と感謝を込めるカオスだったが、ネプチューンマンはその手をぶっきらぼうに振り払った。

 

「よしてくれや。オレはそんな立派なもんじゃねえ」

 

 無事に闘いを終えれど、ネプチューンマンには“前回”老醜を晒しまくった記憶がある。

 後ろめたさは完全には消えず、大恩人に面と向かってありがとうと言われても素直に喜ぶことはできなかった。

 だが、そばで見ていたふたり――ロビンマスクとテリーマンは単なる照れ隠しと受け取ったのか、ニマニマした表情でちょっかいをかけてくる。

 

「そうだな。こいつはいつまで経っても若い頃の栄光が忘れられないただの見苦しいおっさんだ」

「未来じゃちょい悪オヤジとか言うんだろ? 今からでも遅くないから嫁さんでももらって落ち着いたらどうだ」

「ロビン……テリー……てめーら」

 

 共に人生のパートナーを見つけているふたりだからこその軽口が、独り身のネプチューンマンをチクチクとつつく。

 倍以上生きてる者としてひとつぶん殴ってやろうかとも思ったが、大恩人の前でそんなおとなげない真似は見せられない。

 拳を震わせるだけにとどめ、フゥーと息をついてからカオスに向き直る。

 

「しかしカオス、本当にいいのか? おまえは元は21世紀からやってきた正義・時間超人。しかもまだ幼い子供だった。このままオレたちと一緒に未来に帰るという選択肢だってあるんだぞ」

 

 問うのはカオスの今後についてだ。

 彼はこのまま20世紀の地に残ることを決めた。

 だが彼は元々21世紀の住人であり、このままネプチューンマンたちと共に未来へ渡っても問題はない。

 ネプチューンマンと同じく、カオスの身を按じるふたり――トロフィー球根で復活したラーメンマンとバッファローマンが言う。

 

「カオスよ。ネプチューンマンの言うとおりだ。もしおまえが“間隙の救世主”になるために残ろうとしているなら無用な心配だ」

「なにせここにいるオレたち全員、誰かさんのおかげで生涯現役を目指しているからな。悪行超人に都合のいい間隙なんて訪れねえさ」

 

“間隙の救世主”。

 伝説超人たちが長き闘いから開放され、新世代超人たちがデビューする空白の期間を狙おうとする悪行超人……彼らを人知れず退治したとされる超人の通り名だ。

“究極の超人タッグ戦”を経て、その正体はほぼ間違いなくカオスであることがわかっている。

 もしカオスが歴史通り使命を果たすために自らを犠牲にしようとしているならば、2000万パワーズのふたりとしては黙ってはいられない。

 だが、カオスはさっぱりとした顔で言う。

 

「気を使ってくれるのはありがたいけど、オレはやっぱりこの時代に骨を埋めるよ。シスターやがきんちょハウスのみんな、超人レスリングショーのみんな、オタク仲間の川崎くん……なんだかんだ多くの友達がいる、この時代にね」

 

 7歳でこの時代にタイムワープしてきたカオスは、すでに人生の半分をこの時代で生きてきた。

 正義・時間超人としての使命感だけではなく、残る決断をするに足る愛着があるのだ。

 

「それに……ライトニングとサンダーのこともある」

 

 カオスは表情を変え、戦士としての眼差しを空に向けた。

 思うのは、先日入院先の病院から忽然と姿を消したふたり……“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”のことである。

 

「“究極の超人タッグ戦”が終わった直後、あのふたりは姿を消した。トロフィー球根を手に入れられなかった以上もう時間移動することはできないだろうけど……逆に言えばこの時代でなにをしでかすかもわからない。伝説超人たちはこのあとに大きな闘いが控えていることだし、せめてオレが目を光らせておかないとな」

 

 完全無比(コンプリート)超人にならずとも、あのふたりの実力ならば悪行超人として再起を果たす可能性とてありうる。

 それでなくともそう遠くない未来に動き出す邪悪神たちに目をつけられないかが気がかりだ。

 そして今となっては……彼らふたりはカオスの数少ない同胞。放ってはおけない。

 

「カオス」

 

 ひとり密かに決意するカオスに、ふたりの超人が歩み寄る。

 相棒として“究極の超人タッグ戦”を共に歩いたキン肉万太郎、そして志を受け継いでくれたケビンマスクだった。

 ふたりを前にすると、カオスの表情はさすがに名残惜しそうになる。

 

「万太郎……ケビン……おまえたちふたりとはもっと語らいたかった。カッコよくこの時代に残ると言った矢先にアレだけど、それだけは少し残念だよ」

 

 それは万太郎とケビンも同じ。

 特に万太郎はまだ諦めることができない様子で、カオスの腕を掴み必死の形相で言葉を投げる。

 

「な、なあカオス。やっぱり考え直さないか? “間隙の救世主”のことは心配ないとラーメンマンやバッファローマンも言ってくれていることだし……ボクはおまえの今後の人生が心配でたまらないよ」

「ま、万太郎……」

 

 弱々しく眉根を下げた万太郎は、今にも泣き出しそうだった。

 

「ボクにとっては2週間前……お台場より時空船で21世紀から旅立つとき、誰かの墓標を蹴っ飛ばしたんだ。今を思えばあれにはカオスの名前が書いてあった気がする……34年後の世になってもカオスが表舞台にいなかったのは、“間隙の救世主”としての闘いで傷つき死してしまっていたからなんじゃないか。そう思えてならないんだよ~~っ」

 

 カオスの寿命を蝕んでいたエキゾチック物質欠乏症はトロフィー球根のおかげで完治している。

 しかし戦場に身を置き続けるのであれば絶対はない。

 健康を維持できても、悪行超人との闘いで討ち死にしてしまっては元も子もないのだ。

 

「カオス。オレだっておまえとはもっと語らいたい。いくら正義超人だからって、ひとりだけ犠牲になる必要はないんだぜ」

「ケビン」

 

 ケビンマスクも万太郎と同じくカオスを心配してくれていた。

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”の絆を継いでくれたふたりにこうまで言われては、カオスの心はどうしようもなく揺らいでしまう。

 だが――そんなときはキン肉マンがよく口にしていたあの言葉が思い浮かぶのだ。

 

「へのつっぱりはいらんですよ!」

 

 カオスは突然そう叫び、前のめりになっていた万太郎とケビンが思わず退いた。

 

「こ、言葉の意味はよくわからないが……」

「とにかくすごい自信を感じる……」

 

 憧れの超人から借り受けたセリフは、カオスなりの説得だったのだろう。

 機先を制したところで、カオスは未来について語り始める。

 

「万太郎、ケビン。未来から歴史を変えに来たおまえたちがそんな心配をするなよ。仮に万太郎の予感が的中していたとしても、未来は頑張りしだいでいくらでも変えられるさ。現にオレは、子供時代に魔時角を折って長くは生きられない運命だったのにこうして生きながらえている。34年後の未来まで、他の伝説超人と一緒に現役のまま長生きしてみせるぜ!」

 

 空元気ではない。

 カオスは“究極の超人タッグ戦”を立派に闘い抜いた者として、本心からそう思っていた。

 かと思えばフッと微笑み、遠くを見るような目でこう続ける。

 

「いや、それか案外……オレにも将来、万太郎やケビンと同じくらいの歳の子供が生まれ、おまえたちのライバルとして立ちふさがっているかもな」

 

 万太郎とケビンは確かに、と思う。

 カオスの年齢を考えれば全然ありえる話だ。

 もしかしたら21世紀の未来、カオスは伝説超人と呼ばれ、その息子は新世代超人として共にいるかもしれない。

 

「ハハハ……なんだか」

「未来が楽しみになってきやがったぜ」

 

 万太郎とケビンは笑い、ようやくカオスの覚悟を受け入れることができたようだった。

 そばで見守っていたネプチューンマンは若者たちのやり取りを輝しく思い、懐から一通の手紙を取り出す。

 

「カオス。もしものときはこれを出せ」

「これは?」

 

 カオスの手にその手紙を握らせ、ネプチューンマンは説明する。

 

「どこぞの山ん中でくすぶってるオヤジを引っ張り出す魔法の手紙だ。正義の安息(ジャスティスレスト)なんて柄じゃねえからな。暴れられると知ればすぐにでも飛んでくるぜ」

 

 カオスへの恩はいくら返しても返し足りない。

 なればこそ、ネプチューンマンは己が去ったあとの間隙にも手を打つ。

 

「ネプチューンマン……重ね重ねありがとう」

 

 幼き頃、父が語ってくれた高潔な超人の気遣いを嬉しく思い、カオスはネプチューンマンの手紙を胸に抱いた。

 そうこうしている間に、別れのときが訪れる――

 

 

 

「みなさーん! そろそろ時空船に乗り込んでください!」

 

 タイム・シップの調整をしていた20世紀ミートが、21世紀に帰る予定のメンバーに声を掛ける。

 新世代超人と呼ばれる若者たちに、付き添いの面々、そしてネプチューンマンとウォーズマン。

 続々と乗り込んでいく中で、ひとり悩ましげな表情をしている伝説超人がいた。

 キン肉マンだ。

 ブロッケンJrは彼の心情を察し、乱暴にその背中を押した。

 

「ほらキン肉マン。最後なんだから万太郎になにか言ってやったらどうだ」

「ウオッ……」

 

 急に背中を押されたキン肉マンは危うく転びそうになったものの、片足で何歩か進みどうにかバランスを保つ。

 しかし、目の前にはあれだけ毛嫌いしていたキン肉万太郎が立っていた。

 ブロッケンめ――と恨み言を言う暇もない。キン肉マンは未来の息子と視線を合わせる。

 

「父上……」

 

 万太郎は名残惜しそうに若き父を見つめていた。

 

「万太郎……」

 

 シャネルマンの姿を借りて特訓したりはしたものの、キン肉マンとして語り合うことはついにしなかった。

 このまま別れてしまってよいものか――そんな葛藤がキン肉マンの中にあったのは事実。

 だからキン肉マンは、友がせっかく気を利かせてくれたこの機会に、ある言葉を送る。

 

「“ふたりというのはいいものだ。楽しい時は2倍楽しめる。そして苦しい時は半分で済む”」

 

 それはネプチューンマンが体験した“前回”――彼がいなくなった後の“究極の超人タッグ戦”での締め括りとなった言葉。

 今回においても、キン肉万太郎という超人の中に深く刻みつけられることとなった言葉だ。

 

「正義超人の……友との絆はどんな悪にも断ち切ることはできない。だから友達を大切にしろ。今のわたしがおまえに伝えられるのはそれくらいだ」

 

 それがまさか、ずっと語り合いたいと思っていた父から伝えられるとは。

 万太郎は目尻に涙を浮かべ、キン肉マンはそんな涙など吹き飛ばすように、大笑いしながら嘲てみせた。

 

「なんせ父上父上と言われても、わたしは結婚もまだならキン肉星の王位を継いですらいないからの~~っ。親の自覚なんぞあるわけない。よって万太郎、わたしはおまえを息子とは認めんぞ! だははは!」

 

 万太郎は苦笑する。

 いかなるときも笑いを忘れない、なんともキン肉マンらしい餞別だった。

 

「だが、次世代の正義超人としてなら文句なしの合格だ。未来でも頑張ってくれよ、新世代超人」

「ウン」

 

 そうやって、キン肉族の親子は固い握手を交わす。

 伝説超人と新世代超人。

 過去も未来も関係ない、共通する正義を掲げるヒーローとして。

 

「キン肉マン……テメ~~ッ」

 

 なんともいい雰囲気で終わりそうなところだったが、キン肉マンの背後ではブロッケンJrが怒った顔をしていた。

 理由はキン肉マンがいい感じに口にしたセリフ。あれが自身から引用したものだったからだ。

 

「そりゃオレがジェイドに言ったドイツの諺じゃねえか! このヤロー、おいしいところでパクりやがって!」

「ヒエ~~ッ! いいじゃないか減るもんじゃあるまいし!」

 

 逃げるキン肉マンを追い回すブロッケンJr。

 周囲の者たちはドッと笑い、別れは和やかな形で訪れようとしていた。

 そして――

 

「さらば20世紀! ありがとう伝説超人!」

「21世紀でまた会おう! 新世代超人!」

 

 21世紀の新世代超人、20世紀の伝説超人が感謝と再会を伝え合い、時空船は未来へと出航していった。

 

 

 

 未来への航行中、時空船の通路でふたりきりになった“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”――ウォーズマンとネプチューンマンが語り合う。

 

「ケビンの肉体消滅から始まった此度の騒動……タイムスリップという稀有な体験をし、正義超人としての使命を果たせただけでなく、すでに諦めていた己の栄冠すら掴むことができるとは。超人の人生ってのはなにが起こるかわからないものだな」

 

 感慨深く言うウォーズマンを、ネプチューンマンは鼻で笑った。

 

「まさか、という驚きならオレのが数段上だぜ。なんせそのタイムスリップを2回も経験しているわけだからな。しかもオレは本来、完璧超人に返り咲こうと老醜を晒し無様に死んだ身……それが今となってはチャンピオンだ。どんなどんでん返しだよ」

 

 まったく馬鹿げた話だ。

 結局、真相も自分に近しい立場のウォーズマンと知恵者のミートにしか伝えることができなかった。

 だが結果的にはこれでよかったのだろう。

 言葉だけの謝罪などなんの意味もない……真の正義超人、真のヒーローならば、行動で示すべきだ。

 

「ネプチューンマン。おまえの贖罪は果たせたか?」

「まだまだこれからさ。今度は21世紀で後進の育成に励まねばな」

 

 そう言って、ネプチューンマンは時空船の通路を歩み出す。

 ウォーズマンもその隣に立ち、歩幅を合わせた。

 チャンピオンの称号を持つタッグチームとして、こいつとはまだまだ語り合うことが山ほどある――互いにそう感じながら、数奇な運命で結成されたイクスパンションズの名を未来まで持っていく。

 

 

 

「ところで、先ほどセイウチンに挑戦状を叩きつけられた。“第2回究極の超人タッグ戦”でオレたちに挑みたいとよ」

 

「望むところだ。弟子はいずれ師の手から離れていくもの……おまえにとってのケビンがそうだったようにな。オレたちはどっしり構えて挑戦を受けてやろうぜ」

 

「いいのか? タッグパートナーが耐久年数の過ぎたこのオレで」

 

「オレだっておっさんよ。だが断言できるぜ。全盛期は“今”だ」

 

「コーホー」

 

「テメー、そりゃどういう感情の“コーホー”だ」

 

「いいだろう。ならば21世紀のやつらにも見せてやろうぜ。初代究極の超人タッグ戦チャンピオンタッグ“ザ・おっちゃんズ”の実力を」

 

「チーム名は引き続き“新星・ネオ・イクスパンションズ”だ」

 

 

 

 ネプチューンマン・リビルド“究極の超人タッグ編II”――完。

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