ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

105 / 106
第105話 我ら、“間隙の救世主”!!

“究極の超人タッグ戦”から数十年後の未来。

 キン肉マン、テリーマン、ロビンマスクといった正義超人たちが現役を引退し、闘う者がいなくなった……否、闘う必要がなくなった“正義の安息(ジャスティスレスト)”と呼ばれる期間。

 姑息な悪行超人はその間隙を狙い、人類を恐怖のどん底に叩き落すべく襲来した。

 

「ヒャアヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

 下卑た笑い声を上げながら、複数の悪行超人たちが平和な日本の街を襲撃する。

 かつてこの国を守っていた正義超人キン肉マンは今やキン肉星の大王。

 当然ここには居らず、彼を慕い集まっていた仲間たちも今頃は母国で暮らしているだろう。

 

「よおしゃ~~~っ! やはり正義超人はいないようだ――っ!」

 

 見るからに悪党といった感じの強面超人たちが空から下りてきて、街にいた人々は散り散りになって逃げていった。

 焦らずともヒーロー不在は変わらない。

 建物を破壊し、逃げ惑う人間を追い回し悪虐の限りを尽くしてやる――人々が忘れていた狂気が、平和なこの時代に今もたらされようとしていた。

 

「……ン!?」

 

 しかし、悪行超人たちは気づく。

 背中を向けて逃げていく人間たちの中に、ひとりこちらを睨みつけてくる者がいた。

 

「正義超人たちが故郷に戻り、それぞれの日常を送る正義の安息……伝説超人(レジェンド)新世代超人(ニュージェネレーション)の全盛期、その間隙を狙い残虐の雨を降らそうとする姑息な悪行超人どもよ。おまえたちの野望はこのオレが挫く」

 

 その者は赤い肌に白いタンクトップを着込み、額に“肉”の文字を宿したマスクを被っている。

 

「この……キン肉マングレートⅢがな!」

 

 堂々名乗りを上げたその男は、威勢に足るだけの屈強な肉体を誇示していた。

 悪行超人たちは目の前の男が名乗った名に畏怖を覚える。

 

「キン肉マン!? キン肉マンだと!?」

「正義超人の筆頭格! だがやつはキン肉星の政務に追われていると聞く!」

「よく見ろ、キン肉マンのモノマネ超人だ! 本物じゃねえ!」

「フェニックスとかゼブラとかマリポーサとかなら聞いたことがあるが……」

「おい、おまえ知ってるか?」

「グレートマジンガーとかウルトラマングレートなら……」

「グレートなんてありきたりな名前のパチモン、オレたちの敵じゃねえぜ!」

 

 キン肉マンという名に驚きはすれど、それだけで退散するほどの小物はいない。

 しかしせっかく名乗ったのに注目するのはそこだけなのかと、キン肉マングレートⅢは嘆かわしく思う。

 

「“究極の超人タッグ戦”、そしてキン肉星王位争奪サバイバルマッチからすでに20年……今どきの悪行超人はグレートマスクのことすら知らないのか。その程度の知識で正義超人に喧嘩を売ろうなんざ、へそで茶が沸かせるぜ!」

 

 退かぬならそれも良し。

 かつて未来からやってきた友たちが教えてくれたとおりに……グレートⅢが“間隙の救世主”としてこの者たちを成敗するまで!

 

「おもしろい! キン肉マングレートⅢとやら! おまえの相手はこのザ・神社マンが務めてやろう!」

 

 グレートⅢに対抗するべく前に出たのは、両肩の上に鳥居を生やした頭が鈴になっている超人だ。

 名はザ・神社マン(埼玉県・海老名正歳さん考案)。

 グレートⅢはしかしその異様に臆すことなく、勢いよくジャンプした。

 

「トアア――ッ!」

 

 高い跳躍力でもって宙を舞い、初代グレートを思わせるアクロバティック・ムーブでザ・神社マンの背後に下りた。

 

「なっ!? 一瞬で後ろに……」

 

 ザ・神社マンが回り込まれたと思う頃にはもう遅い。

 グレートⅢはザ・神社マンの胴を後ろから両腕でクラッチし、そのまま豪快に反り投げた。

 

「キングジャーマンスープレックス――ッ!」

 

 ザ・神社マンの肩から生えていた鳥居は粉砕、鈴の形をしていた頭部は大地に突き刺さった。

 

「ゴロゴロ――ッ! 次はこのクレーンマンが相手だ! オレのパワーでどんな超人であろうと吊り上げてやるぜ――っ!」

 

 仲間のひとりが秒殺されても怯むことなく出てきたのは、クレーンマン(愛知県・尾野和幸さん考案)。

 その名のとおり上半身がクレーン車のようになっている巨漢超人だが――

 

「ゴロッ!?」

 

 グレートⅢはクレーンマンの頭部から放たれるワイヤーフックをあっさり躱し、懐に潜り込む。

 

「おまえのようなギミック超人にバカ正直につきあってやる義理はない」

 

 そのままクレーンマンの体に覆いかぶさり、背中側からくの字の形に抱えて飛んだ。

 空中で持ち上げたクレーンマンの体を逆さに反転、肩の上に首を乗せ、開脚させた両大腿部は左右の手で掴む。

 その体勢で勢いよく大地に叩きつければ、五所蹂躙絡みの別名を持つ伝説的必殺技(フェイバリット)の完成だ。

 

「キン肉バスタ――ッ!」

 

 グレートⅢがキン肉バスターを炸裂させ、クレーンマンの首、背骨、腰骨、左右の大腿骨が粉砕。

 口から盛大に血反吐を吐き、ザ・神社マン同様に倒れ伏した。

 

「キ……キン肉バスター!」

「こいつ、ただのキン肉マン好きのモノマネ野郎じゃねえ!」

 

 あっという間にふたりの仲間がやられ、他の悪行超人たちもさすがに警戒心を強める。

 キン肉マングレートⅢは……あのキン肉マンに勝るとも劣らない強豪正義超人だと!

 

「いや……ワチキはただのキン肉マン好きのモノマネ野郎さ」

 

 そんな悪行超人たちの反応を前に、グレートⅢは昔を思い出し静かに笑う。

 オタクは死ぬまでオタク。友人の川崎くんに眼窩底骨折を負わせてまで手に入れたグレートマスクはこの歳になっても捨てられなかった。

 だがそんなことはどうでもいい。

 今ここに立つのは悪を許せぬ正義のオタク……プラモデルや松田聖子ちゃんをこよなく愛する、まさに“カオス”な趣味の正義超人だ!

 

「こいつは拙僧に任せろ! ザ・コムソウ流……呪怨尺八!」

 

 前に出てきたのは、編笠を被った古風な出で立ちの超人ザ・コムソウ(大阪府・吉田大錫さん考案)。

 彼はグレートⅢの目の前で虚無僧らしく尺八を吹くが――

 

「闘いの最中に笛を吹くなど――っ!」

「ゾエ――ッ!?」

 

 グレートⅢはその効果が発揮される前に尺八ごとザ・コムソウの顔面を蹴り飛ばした。

 倒れた悪行超人はこれで3人目。

 グレートⅢは次の相手に仕掛けるべく体の向きを変えるが、

 

「グウ!?」

 

 その足首をたった今KOされたはずのザ・コムソウが掴む。

 

「拙僧も悪行超人の端くれ……た、ただではやられん」

 

 一瞬だが身動きを封じられたグレートⅢ。

 ザ・コムソウを引き剥がせぬうちに、他の悪行超人が迫る。

 目の前にやってきたのは、迷彩服を着込みガスマスクを付けたオクトパス・アーミー(茨城県・武藤成紀さん考案)だ。

 

「ヒャヒャヒャ! でかしたぞザ・コムソウ! 受けてみろグレートⅢ! このオクトパス・アーミー様の……狂乱の触手を~~っ!」

 

 オクトパス・アーミーの右手はまさしくオクトパス――タコのような触手となっており、相手超人の顔面に絡みつかせることで狂乱状態に陥れる。

 そのままアイアン・クローのごとくグレートⅢの体を持ち上げ、さらに絞め上げる。

 

「ガアアッ!」

 

 触手の中で悲痛な叫びを上げるグレートⅢ。

 その声はおぞましいものを見ているようでもあり、精神面にかなりの負担を強いられていることがわかる。

 このまま絞め落としてしまってもいいが、状況は多対一。

 オクトパス・アーミーは仲間のキラーシールド(大阪府・米倉一敦さん考案)――人の顔のようなデザインをした巨大盾を持ち、同デザインの仮面を付けた超人を見やる。

 

「そおら~~っ! そっちへパスだキラーシールド!」

「任せろオクトパス・アーミー! キラーシールド・バイト――ッ!」

 

 仲間が投げ放ったグレートⅢに左手の盾を向けるキラーシールド。

 するとただの模様かと思われた顔の口部分があんぐりと開き、グレートⅢの頭部を噛んで捕らえた。

 

「捕まえたぜ~~っ。さあ、さらなる連携攻撃といこうじゃないか。誰が仕掛ける?」

「オレが立候補するぜ――っ!」

 

 拘束状態のグレートⅢに追撃を加えるべく、ひとりの超人が飛び出した。

 縄文土器のような意匠の装具を纏うのは、アラハバキ(広島県・PAKIさん考案)と呼ばれる超人だ。

 

「オレは“足の神”の異名をとる超人、アラハバキ! オレの蹴り技を受けて生きていられた超人はいねえ! くらえ、縄文ドロップキック――ッ!」

 

 身動きが取れないでいるグレートⅢの腹部めがけて、アラハバキが痛烈なドロップキックを突き刺した。

 

「ゴハッ!」

 

 グレートⅢは盾の中で吐血。地面に血が滴り落ちる。

 

「おっと、正義超人ってやつはどいつもこいつもしぶといのが特徴……追い打ちに手は抜けん。お次はこのスタンガン様の技をくらってもらおうか」

 

 続いて躍り出たのは、胸に雷のマークを刻む超人スタンガン(大阪府・坂本健太郎さん考案)。

 彼の両肩にはまさしくスタンガンが生えており、ちょうど頭部の上で電流を放出していた。

 バチバチと音を立てながら、スタンガンは盾からグレートⅢを引き抜き自身の頭上に担ぎ上げる。

 

「スタンショック・バックブリーカー!」

 

 ちょうど肩の上のスタンガンに通す形で、バックブリーカーと共に電撃をくらわせた。

 

「グギャアアァ――ッ!」

 

 たまらず絶叫し、黒煙を上げるグレートⅢ。

 確かな手応えを感じたスタンガンは動かなくなったグレートⅢを地面に落とす。

 

「くたばったか」

 

 周囲の悪行超人たちが這いつくばるグレートⅢを囲み、生意気な正義超人の死を確認しようとする。

 

「ウウ……」

 

 しかしグレートⅢの手足はまだ微かに動いている。

 瞳の色は消えず、今にも立ち上がってきそうな雰囲気だ。

 

「ま、まだ動けるのか」

 

 連携で技を仕掛けた悪行超人たちはその凄まじい闘志に圧倒される。

 彼らが二の足を踏んでいるところに、新たな悪行超人が一歩前に出た。

 

「どけ。トドメはこのハンマーマンがさしてやるぜ」

 

 金槌のような形をした巨漢超人、ハンマーマン(岡山県・菅俊史さん考案)である。

 ハンマーマンは巨大な釘になっている左腕を天に翳し、足元で倒れているグレートⅢに突き刺そうとした。

 

「この左腕の釘でこいつを串刺しにし、今日という日を“残虐の雨が降った日”と歴史に残してやる――っ!」

 

 さすがのキン肉マングレートⅢも多勢に無勢、ここで終わりか。

 そう思われた、そのときだった。

 

「ドドア~~~~ッ!?」

 

 ハンマーマンの頸動脈と胸が突如、噴水のように鮮血を撒き散らす。

 頸動脈は鎌でぱっくり切られたような、胸は獣の爪で裂かれたような傷だった。

 

「ハ……ハンマーマン!」

「だ、誰だテメーら!?」

 

 仲間の悪行超人たちはしっかりと見ていた。

 ハンマーマンがいきなり乱入してきたこの二人組に攻撃された瞬間を。

 

「ジョワジョワ……オレたちのことを知らんとは、救いようのない雑魚ばかり」

「ヌワヌワ……姑息な奇襲作戦を考えるやつらだ。実力もたかが知れている」

 

 その二人組――死神のような相貌を持った細身の超人と、獅子の仮面をつけた巨漢の超人。

 死神の左腕から飛び出した鎌――ボイリング・シックルと、獅子の左肩に備えられた爪――リオン・フィンガーはハンマーマンの血で濡れている。

 

「教えてやるぜ、木っ端し超人ども」

「オレたちこそ、本当ならこの時代を牛耳るはずだった超人よ」

 

 彼らの名は、悪行・時間超人コンビ――“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”。

 20年前に超人タッグの聖地“トーナメント・マウンテン”に現れ、20世紀の超人史を大きく変えたふたりである。

 

「ライトニング……サンダー……おまえたち、来てくれたのか」

 

 グレートⅢは目の前に現れた懐かしき同胞を前に、それぞれの名前を呼ぶ。

 死神ライトニングと獅子王サンダーは、ボロボロのグレートⅢに優しい言葉などかけない。

 

「20年前の借りを返しに来ただけのこと」

「いらん言葉を吐くなよ」

 

 かつて敵対していた者同士、交わす言葉などそれだけでいい。

 グレートⅢもそれでこそ、と口元で笑みを作った。

 

「何者かは知らねえが、グレートⅢに味方するってことは正義超人だな!?」

「たったふたり増えたところで変わりゃしねえ! やっちまおうぜ!」

 

 数の上ではまだまだ悪行超人軍団のほうが有利。

 構わず袋叩きにしてしまおうと複数人で前に出ていくが――

 

「待て!」

 

 彼らの後ろから、ひとりの超人が待ったをかけた。

 礼儀知らずの悪行超人集団が思わず足を止めるほどの人物。

 彼はこの軍団の中でも異質な存在……“昔”を知る、悪のベテランだった。

 

「まさかあんたたちが出てくるとは……この奇襲に参加した甲斐があるというものでごんす」

 

 その姿は――階段だ。

 段数にして3段。階段に人の顔が浮かび、生腕生足が生えた、奇妙な姿の超人だった。

 

「オレたちを知っているようだぜ兄弟」

「ジョワ~~ッ、あいにくこっちは知らねえなあ」

 

 ライトニングとサンダーに覚えはない。

 それもそのはず、ふたりのことは彼――ステップマン(東京都・濱口優さん考案)が一方的に知っているだけだ。

 

「われこそはステップマン! 20年前の“究極の超人タッグ戦”……私は密かにあんたたち“世界五大厄”を応援していた! あんたたちふたりが決勝に進んだら、私の体を上ってもらい花道に登場してもらおうと……そう考えていたのに! 結果は正義超人のロートルコンビに敗れ、準決勝敗退……このライトニングとサンダーのふたりは悪行超人の面汚しでごんす!」

 

 ライトニングとサンダーがかつて参加した超人タッグ・トーナメント、“究極の超人タッグ戦”。

 若かった頃のステップマンは彼らふたりを陰ながら応援し、そして失望した過去を持っていた。

 

「あんたたちがあのとき“究極の超人タッグ戦”を制していれば、正義超人の時代はとっくに終わり……今は悪行超人の天下だったはずでごんす! そしてあんたたちを花道に導いた私もそれ相応のポストにつき甘い汁を啜っていたはず……あのときの恨みを今ここで晴らしてやる~~っ!」

 

 ステップマンから放たれる20年ものの恨みを受けて、しかし“世界五大厄”のふたりは涼しい顔をしていた。

 

「なんでえ、オレたちのファンか」

「なら丁重にファンサービスしてやらんとな」

 

 余裕ぶった態度で時間超人のキーアイテムたる“エヴォリューション・マウスピース”を取り出し、口内に装着。

 

「アクセレレイション!」

 

 強く噛みしめることで起動。

 ライトニングは側頭部から、サンダーは額から、鍵穴のような傷跡から黒い煙――エキゾチック物質を噴出し、全身を液状化させる。

 その後すぐに全身が消え、コンマ1秒先の未来へ飛んだ。

 

「ごすっ!?」

 

 ステップマンがまばたきした、そのわずかな間。

 彼の身は逆さまに抱えられ、いつの間にか天高く上昇していた。

 右半身はライトニングが、左半身はサンダーががっちり掴み捕らえている。

 そしてそのまま勢いよく地面に落下すれば、逆さになっているステップマンは脳天激突の大打撃をくらうだろう。

 

「ディザスターズドライバ――ッ!」

「ウギャア――ッ!」

 

 正確無比な合体技が、ステップマンの脳天のみならず全身を粉々に砕いた。

 

「相変わらずの容赦のなさ……これほど心強い援軍はない」

 

 久しぶりに見た宿敵の恐ろしいまでのパワーに、グレートⅢは身を震わせる。

 されど恐怖ではない。この震えは武者震いにも似た、闘志によるもの。

 このふたりの前で情けない姿は見せられないと、軋む体に鞭を打ち立ち上がった。

 

「おまえたちふたりが闘うというのであれば、オレもいつまでもキン肉マングレートの威光に頼ってばかりではいられない!」

 

 そう言って、グレートⅢは自らのマスクに手をかける。

 

「ここからは正義・時間超人のカオス・アヴェニールとして闘わせてもらうぜ――っ!」

 

 マスク超人の象徴たるマスクを豪快に取り払い、その素顔を衆目に晒した。

 カオス・アヴェニール。

“究極の超人タッグ戦”で“マッスルブラザーズ・ヌーボー”としてリングに立ったあの頃は14歳……それから長い年月が立ち、若かった容貌は年相応のものに変化している。

 

「ジョワジョワ。初めて会ったときはあんなに小さいガキだったカオスがどうしてどうして……」

「ヌワ~~ッ。今じゃ顔も老け込み、けっこうなおっさんじゃねえか。時の流れを感じるぜ」

 

 容姿イジリをしてくるライトニングとサンダーに、カオスは笑みを見せる。

 

「そりゃおまえらも同じだろ」

 

 以前は殺してやりたいほど憎んでいた相手――しかし今は、頼りがいのある仲間であり、たったふたりの同胞。

 背中を預けるには申し分ない。

 

「合わせろスタンガン! まずはこのカオスとかいう野郎を血祭りにあげる!」

「おうよアラハバキ!」

 

 正体を晒したカオスを仕留めるべく、スタンガンとアラハバキが仕掛ける。

 背後からの奇襲だったが、カオスは即座に反応し宙を舞った。

 

「ホワ~~イ!」

 

 珍妙な掛け声で相手の虚を突き、軽やかなジャンプで逆に背後を取る。

 着地と同時に両者の首を脇で挟み、一息にひっくり返した。

 

「見てるか、一等マスクにロビンマウス! それにビーフマン! 湯麺男! ザ・天むすにカレー・ルー・テーズ! 昔はプロレスショーのみんなにしか成功しなかったこの技……悪行超人退治に有効活用させてもらうぜ!」

 

 両肩にふたりの超人の首を乗せ、それぞれ右大腿部と左大腿部を掴んでクラッチするこの体勢。

 超人レスリングをよく知る者ならばこう思うだろう。

 まさか、たったひとりでふたりを相手にキン肉バスターをかけるなど――と。

 

(ダブル)・キン肉バスタ――ッ!」

 

 しかして、そのとおり。

 カオスは相手をキン肉バスターに固めた状態で豪快に飛び、尻もち体勢で着地。

 首、腰骨、背骨、片方の大腿骨の四箇所を粉砕し、スタンガンとアラハバキをKOしてみせた。

 

「こっちも負けてられねえぜ、兄弟!」

「ああ! 時間超人はカオスだけじゃねえ!」

 

 カオスにばかりおいしい思いはさせられないとばかりに、サンダーとライトニングも仕掛ける。

 

「獅子のひと撫ぜ――っ!」

 

 サンダーは左肩のリオン・フィンガーでオクトパス・アーミーの胸に深々とした切創を作り、

 

煮えたぎる鎌(ボイリング・シックル)――っ!」

 

 ライトニングは左腕のボイリング・シックルでキラーシールドの頸動脈を掻っ切った。

 

「ゲゲハッ」

 

 最後のふたりが断末魔の声を上げ、ついに倒れた。

 立っている悪行超人はもういない。

 カオス、ライトニング、サンダーの時間超人トリオが、“残虐の雨が降った日”を回避した瞬間であった。

 

「どうにか全員倒せたか」

「ジョワジョワ、呆気なかったな」

「ヌワヌワ、オレたちが出るまでもなかったか」

 

 未来の平和は守ったぞ、万太郎――と、今頃はキン肉星でハイハイでもしているであろう友を思うカオス。

 感慨深く空を眺める彼に対し、しかしまだ息のある悪行超人たちが声を絞り出す。

 

「あ……安心するのは……まだ早いぜ。オレたちは……ただの先遣隊……」

「この奇襲作戦に乗った悪行超人は……まだたくさんいるんだ……ヒャハハ」

 

 事切れる直前に言い放った言葉は、負け惜しみなどではない。

 3人はすぐにその気配を察知し、彼方の空を見やった。

 雲の向こう側からは、たった今倒した悪行超人軍団とは比較にならない数の軍勢が迫っていた。

 

「ま、まだあれだけの数の悪行超人が……」

 

 予想以上の人数に、カオスがゴクリと息を呑む。

 

「これは……ロートルになってきてるオレたちにはちとキツそうだな」

「ヌゥ……20年前のネプチューンマンの気持ちが今になって理解できるぜ」

 

 若い頃は怖いもの知らずだったライトニングとサンダーも、体力を気にするような素振りを見せた。

 やはり生きて万太郎と再会することは厳しいのか――情けなくもそんなふうに考えてしまった、そのとき。

 

「あいや待たれい!」

 

 古風な言い回しと共に、カオスたちの背後にひとりの超人が現れた。

 

「あ……あなたは」

 

 カオスはその姿を見て、以前送った“手紙”が効力を発揮してくれたのだと悟った。

 その超人は侍のような装束を着て、三度笠で素顔を隠していたが――わずかに金色の髪と口ひげが覗いている。

 

「拙者の名はザ・サムライ! 義によって助太刀いたす!」

 

 かつて“救いの神”と呼ばれた、知る人ぞ知る謎の侍超人。

 幼き頃のカオスが父に聞かされ憧れを抱いていたヒーローの登場だ。

 彼が味方してくれるなら、もはや負ける要素などない……待っていてくれ、未来の友たちよ!

 

「いこうぜみんな! 歴史は変わる……オレたち4人が、新たな時代の“間隙の救世主”だ!」

 

 

 

 ネプチューンマン・リビルド“間隙の救世主編”――完。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。