ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第011話 “前回”にはいなかった男!!

「ジョワジョワ」

「ヌワヌワ」

 

 蔵前国技館の屋根の上から、中の様子を窺う不審な影がふたつある。

 その正体は“究極の超人タッグ戦”開催のきっかけとなった未来からの来訪者、時間超人コンビ“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”――ライトニング&サンダーである。

 

「グゥ~~ッ。リザーブマッチ開催の報を聞きつけ、せっかくなら肩慣らしに暴れてやろうかと思ったが――っ」

「まさかエントリー開始と同時にビッグ・ボンバーズのようなヘタレチームが名乗りを上げ、続けざまに新世代超人(ニュージェネレーション)チェック・メイトが現れやがるとは――っ」

 

 トーナメントのシード枠に置かれたふたりは大胆にも相撲の殿堂たる蔵前国技館の屋根に穴を開け、他者に気づかれぬよう中の様子を窺っていた。

 それというのもリザーブマッチに乱入するためだったが、ビッグ・ボンバーズの思わぬ即決、そして矢継ぎ早にチェック・メイトが対戦者に名乗りを上げたことでタイミングを逸してしまった。

 

「どうするライトニング? ハラボテ委員長は何組名乗りを上げてもいいと言っている。今からビッグ・ボンバーズのふたりを蹴散らし、目障りな新世代超人を始末するか?」

「いや、待て。あのチェック・メイトのパートナーらしき外套を纏った男……正体に見当がつかん。やつが何者か、もう少し様子を見よう」

 

 シード枠という厚遇を受けながらも闘いを欲するライトニング。正義超人はすべからく敵であるからして、ビッグ・ボンバーズもチェック・メイトも蹴散らしたいところではある。

 そんなライトニングにブレーキをかけたのは、チェック・メイトの相方らしき男。事前の下調べでは、この時代にタイムワープしてきた新世代超人はもう残っていないはずだ。

 テリー・ザ・キッドのように、この時代の伝説超人(レジェンド)と組んだのか? だとすればあの外套男はブロッケンJrかジェロニモか……ライトニングはまずそれを見極めようとしていた。

 

「――ム!?」

 

 そのとき、高みの見物を決め込むふたり目掛けて一本の槍が飛来する。

 

「ジョワ!」

「ヌワ!」

 

 ライトニングもサンダーもこれを素早く回避し、槍は蔵前国技館の屋根に突き刺さった。

 ふたりはすぐに槍が投げ放たれた方角を見やる。

 その方角にある建物の上に、槍を投擲した人物がいた。

 

「な……何奴!?」

 

 奇しくもチェック・メイトが引き連れている人物と瓜二つ、全身を外套で覆った男である。

 いや……この場合は“フードの男”とでも言うべきか。

 蔵前国技館の屋根まで槍を投擲するほどのパワー、超人であることは間違いない。

 

「…………」

 

 ライトニングたちと対面したフードの男は一言も発さず、すぐに背を向けた。

 奇襲を仕掛けてからの即逃走。この行為がサンダーの怒りを買った。

 

「待ちやがれ――っ!」

「落ち着けサンダー」

 

 ライトニングはそんなサンダーを冷静に諌める。

 

「何者かは知らんが、こんなおかしなタイミングでオレたちにちょっかいをかけてくるようなやつだ。おそらくは中で行われているリザーブマッチを邪魔されたくないんだろう」

「では、チェック・メイトの仲間の正義超人の連中か?」

「いや……21世紀から来た新世代超人はもう他にいないはず。それに、品行方正で売っている21世紀の正義超人にこんな搦め手が使えるとは考え難い……となると、あやつの正体にこそ興味が湧いてくるな――っ」

 

 はたして自分たちを襲撃したフードの男は何者なのか。

 ライトニングはその謎を解明すべく、サンダーを先導する。

 

「チェック・メイトの相方はいずれわかる。今はあの外套男を追うぞサンダー」

「おお――っ!」

 

 そうして、時間超人たちはリザーブマッチの場から去っていく。

 その頃、蔵前国技館の中では――

 

 

 ◇

 

 

 突如蔵前国技館に現れた、両肩にチェスの駒を携えた超人。

 

「チェック・メイト!」

 

 懐かしき友の姿を見たテリー・ザ・キッドは、“鬼哭愚連隊”戦を終えたばかりだというのに疲労が吹き飛ぶほどの嬉しさを覚えた。

 傍ら、同じく疲労困憊状態のロビンマスクが話しかける。

 

「たしか……キッド、おまえと同じ21世紀から来たという新世代超人のひとりだったな?」

 

 キッドは首肯した。

 

「ああ。早くにロビンとのタッグを決めたオレとは違い、チェック・メイトは“究極の超人タッグ戦”にはエントリーしてこなかった。てっきり相手が見つからず、オレたちトーナメント参加組の闘いを陰ながらサポートしてくれているのかと思ったが……まさかリザーブマッチにエントリーしてくるとは」

 

 万太郎への対抗心から、半ば離反するような形で他の新世代超人と連携を取ることをやめてしまったキッド。

 ただひとり姿を見せていなかったチェック・メイトのことはずっと気がかりだったのだが……まさかこんな場面で現れるとは。

 

「信頼できる仲間のようだな」

「自慢の友達だよ」

 

 誇らしげに言うキッドに、ロビンマスクも嬉しそうな眼差しを向けた。

 ロビンへの紹介もそこそこに、キッドは花道に立つ友に声を掛ける。

 

「ヘイ! チェック――ッ! おまえ、今までどこでなにやってたんだ――っ!? いやそれよりも、その隣にいるパートナーらしき男は誰なんだ――っ!?」

 

 キッドの溌剌とした声は騒然とする蔵前国技館内においてもよく通ったが、チェック・メイトの反応は渋かった。

 キッドのほうへ一瞬だけ視線をやったあと、すぐにバツが悪そうに顔を背けてしまう。

 

「チェ……チェック?」

 

 怪訝に思うキッドに対し、チェック・メイトは伏し目がちに口を開いた。

 

「キッド……あらかじめ断っておきますが、わたしは大事な友であるケビンマスクを救うためにここにきました。トロフィー球根(バルブ)を手に入れ、完全無比(コンプリート)超人になるためではなく……そこを重々理解しておいてもらいたい」

「あ、ああ……あたりまえだろう。今さらなんの確認だ――っ?」

 

 チェック・メイトの言いたいことがわからないキッドは、ただただ首を傾げる。

 一方、リザーブマッチを取り仕切る立場のハラボテ・マッスルがマイクを取った。

 

『えー、チェック・メイトくんだったかな? では君たちふたりがリザーブマッチにエントリーし、目の前にいるビッグ・ボンバーズと闘うということでよろしいかな?』

「ええ。よろしくお願いします」

 

 あらためてリザーブマッチ参戦の名乗りを上げるチェック・メイト。

 ところが、ハラボテはうーむと唸り思案顔になる。

 

『しかしのう、このリザーブマッチの目的はウォーズマンが現れた川崎球場に客を取られんようにと……ゲフンゲフン。い、いや……名だたる有名超人たちが揃っているこの中で、無名ともいえる君や、ましてやそのように姿を隠した超人をエントリーさせるわけにはいかんのじゃ。せめて相方が誰なのかを明かしてくれんか?』

 

 集客のためネームバリューを求めたいのが見え見えの、しかし大会運営委員長としては至極当然の判断だった。

 チェック・メイトは外套を纏ったパートナーに視線を向ける。

 

「だ、そうですよ」

「よかろう」

 

 謎のパートナーは短く答え、纏っていた外套を自ら脱ぎ去った。

 

「あ……あああ~~~~っ!?」

 

 それを見たキッドから、驚愕の声が漏れる。

 

 現れたのは――“六本の腕”に“三つの顔”を持った特異な外見の超人である。

 そう、まるで仏教における阿修羅像のような――事実その名を冠する男の正体は。

 

『あ――――っと! な、なななんと! リザーブマッチに名乗りを上げたチェック・メイトがパートナーとして引き連れていた超人の正体は、“魔界の王子(プリンス)”アシュラマンだ――っ!』

 

 悪魔超人アシュラマンである。

 

「ア、ア……」

「……アシュラマン!?」

 

 キッド、そしてパートナーのロビンマスクも揃って驚く。

 もちろん、他の観客たちもまた同様だ。

 

「カーカッカ。久しぶりだな皆の衆」

 

 当のアシュラマンはキッドたちの驚きを愉悦とするように笑う。

 

『記憶に新しい方も多いでしょう。アシュラマンといえば、先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”ではサンシャインとのチーム“はぐれ悪魔超人コンビ”として参戦……見事セミファイナルまで進出しましたが、惜しくもキン肉マン&グレートの“マッスル・ブラザーズ”に敗れたのであります。サンシャインはその後“ヘル・ミッショネルズ”による制裁を受け死亡……パートナーを失い、今回の“究極の超人タッグ戦”では今まで姿を見せませんでしたが、まさかこんなところで登場するとは――――っ』

 

 蔵前国技館に流れるアシュラマンについての解説。

 一方、未来からやってきたキッドは20世紀の面々とはまた違った理由で愕然としていた。

 

「あ、ああ~~っ」

「どうしたというのだキッド。なにをそんなにうろたえている」

 

 驚きは驚きだが、さすがにキッドの反応は常軌を逸している。

 事情を知らぬロビンマスクに、キッドは冷や汗を垂らしながら語り始めた。

 

「う……うろたえもするさ。オレたち21世紀の超人にとって、アシュラマンといえば恐怖の代名詞なんだから」

「確かにアシュラマンは“魔界の王子”と恐れられた悪魔超人だが……21世紀ではそんなにもやつの名が残っているのか?」

「ち……違う――っ。アシュラマンが恐怖を植え付けていったのは、オレたちの感覚ではつい先日のことなんだ――っ」

「せ……先日!?」

 

 キッドの言わんとすることがわからず、ロビンマスクは戸惑いを見せた。

 そんなロビンに対し、キッドは深呼吸をしてから落ち着いて説明する。

 

「確かにアシュラマンは“宇宙超人タッグ・トーナメント”以降、悪魔超人としての活動は鳴りを潜める……それどころか一時は正義超人に転向し、キン肉マンたちに味方をしたほどだ。だが時代が変わり、オレたち新世代超人が台頭するようになった頃、恐怖の将がもたらしたジェネラル・ストーンによって老いた肉体を再生……新生悪魔超人軍団“悪魔の種子(デーモンシード)”のリーダー格としてカムバックを果たしている~~っ」

 

 そうなのである。

 キッドたち21世紀からの使者にとって、アシュラマンが起こした暴虐はつい数日前の出来事。

 スカーフェイスを葬り、キン肉万太郎やケビンマスクに深手を負わせた圧倒的な強さは、まだ鮮明に記憶に残っている。

 

「若返った肉体と経験豊富な頭脳による悪魔殺法はオレたち新世代超人を苦しめ、人々に多大なる恐怖を植え付けた……最終的にはキン肉マンの息子、キン肉万太郎がやつを倒し平和を取り戻したが……あの六本腕を見ると今でも全身の産毛が逆立ってきやがる~~っ」

 

 21世紀でのアシュラマンを知り、ロビンマスクは驚きつつも納得したふうに言う。

 

「では……あのアシュラマンは21世紀から来た再生(リボーン)・アシュラマンなのか?」

 

 見た目には若々しいアシュラマン。

 ネプチューンマンのように肉体の端々に年季が入っているわけではないが……。

 

「やいチェック・メイト! なんでおまえがあのアシュラマンと一緒にいるんだ!? 今すぐ説明してくれ――っ!」

 

 わけのわからないキッドは、事情を知っているのであろう友に叫んだ。

 チェック・メイトは信念の感じられる目で言う。

 

「もちろん、ケビンマスクを救うためですよ」

 

 いかにもチェック・メイトらしい、誠実な瞳だった。

 しかしそれならなぜ、とキッドの中の困惑は深まるばかりだ。

 

「カーカッカ。どうやら未来の私はたいそう嫌われているようだな――っ。それでこそ悪魔超人冥利に尽きるってものよ――っ」

 

 そのとき、アシュラマンがキッドの疑問を氷解させる一言を口にした。

 未来の私、と。

 まるで21世紀の再生・アシュラマンを噂程度にしか知らぬように。

 

「ってことは、そこにいるアシュラマンは21世紀から来たわけではなく……」

「ええ。あなたのパートナーであるロビンマスク同様、20世紀のアシュラマンですよ」

 

 チェック・メイトが言い切り、キッドの中に蟠っていた不安はわずかばかり解消される。

 その正体が判明し、会場内も一気に沸いた。

 

『ああ――っと! 新世代超人チェック・メイトと共にいることから、ネプチューンマンと同じく21世紀の未来よりやってきたアシュラマンではないかと思われましたが……どうやらこの場にいるアシュラマンは我々の知る現代のアシュラマンのようだ――っ!』

 

 かつて“はぐれ悪魔超人コンビ”を推していたファンたちが、アシュラマンの復活に歓声を上げる。

 目の前にいる男があの恐ろしき再生・アシュラマンでないことは朗報といえたが、キッドの困惑は完全に消えたわけではなかった。

 

「だ……だがわからない。なんだってアシュラマンが、チェック・メイトとタッグを組んで現れたんだ?」

 

 片や未来から来た新世代超人、片や20世紀の悪魔超人だ。

 接点などないように思えるし、目的が一致するとも思い難い。

 

 ふたりの関係性を探ろうとするキッドに、アシュラマンは鋭き眼光でもって睨みつけてくる。

 再生・アシュラマンを想起させる威容に、キッドは射竦められた。

 

「カッカッカ。テリー・ザ・キッド……テリーマンの息子か」

「ウウッ」

「おまえの親父にはたいそう苦しめられた……あいつも同じように思っているだろうがな」

 

 恨みつらみの籠もった言霊が、テリーマンの息子であるキッドへと向けられる。

 アシュラマンは父テリーマンが最大のライバルと語ったことがあるともいわれる超人だ。

 21世紀では直接対決の機会はなかったが、よもやこの20世紀の舞台で対アシュラマンが実現するのでは――と、キッドは身を固くする。

 

「完全無比超人になれるというトロフィー球根……」

 

 アシュラマンは時間超人を始めとした、トーナメント参加者の悪行超人が垂涎する宝の名を口にする。

 やはり、目的はそれなのか?

 

「……も捨てがたいが、今の私にはそれよりも優先したい事柄がある」

 

 しかしアシュラマンはすぐに頭を振り、蔵前国技館の面々に向けてこう言い放った。

 

「それは、未来の私のことを“悪行超人界では実力がずっと下のほう”などとのたまった時間超人共の粛清よ――っ!」

 

 時間超人の粛清!

 耳を疑いたくなるような、しかしどこかで期待していた発言。

 それが間違いなく、悪魔超人であるアシュラマンの口から飛び出した。

 

「まさか……味方なのか!? アシュラマンが!?」

 

 キッドとロビンはアシュラマンを、そしてそのパートナーであるチェック・メイトの動向を窺う。

 もしもふたりが志を同じくする同志であるならば、このリザーブマッチへの参戦は願ってもない。

 

「アシュラマン、あなた……」

 

 一方、チェック・メイトはどこか不安げな眼差しでアシュラマンを見た。

 

「みなまで言うな。わかっている」

 

 アシュラマンは短くそう返す。

 そして、こう続けた。

 

「ネプチューンマンへの義理は果たす。そのためにはまず……」

 

 視線を向ける先は、先にリザーブマッチ参戦への名乗りを上げたふたり。

 カナディアンマン&スペシャルマンのビッグ・ボンバーズだ。

 このふたりにとって、アシュラマンは因縁浅からぬ相手なのである。

 

「弱体チームには大会参加をご遠慮願おうか! ねえスペシャルマンさんにカナディアンマンさん!」

 

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