ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第012話 招聘の理由!!

 ――時は遡る。

 

 リザーブマッチの場に突如として現れたチェック・メイトとアシュラマン。

 このふたりはいかにしてタッグを組むに至ったのか、そのきっかけはひとりの男の采配にあった。

 

 その男とはほかでもない、“究極の超人タッグ戦”の先の展開を知る超人――ネプチューンマンである。

 

「そろそろ明かしてくれてもいいのではないですか? ネプチューンマン」

 

“究極の超人タッグ戦”参加チームに与えられた、とある練習用体育館。

 広い館内にぽつんと置かれたリングのそばで、ネプチューンマンはチェック・メイトからの質問を受けていた。

 

「ハラボテ委員長が秘密裏に計画しているというスペシャルリザーブマッチ……それにエントリーするため、わたしはあえてトーナメントへの参加を見送る……その計画には賛同しましたが、あなたが用意するといった肝心のタッグパートナーが未だに現れていない」

 

“究極の超人タッグ戦”開催にあたり、ネプチューンマンは自らの作戦を伝えチェック・メイトにはトーナメント参加を遠慮してもらった。

 それというのもハラボテがリザーブマッチの開催を計画しているため、そこに参戦するのが時間超人攻略の上でベストと判断したからである。

 そのために必要不可欠なタッグパートナーもこちらで用意すると言い……しかし、その超人は未だに現れてはいない。

 

「抽選会も終わり、一回戦はもう明日なのですよ――っ? リザーブマッチはそのどこかのタイミングで行われるのでしょう? なぜあなたがそんなことを知っているのかはわかりませんが、そろそろタッグを組む相手に会わせてくれないと……」

 

 このままでチェック・メイトはパートナー不在のまま、リザーブマッチに参加できなくなってしまう。

 いや、もしギリギリ間に合ったとしても、初めて出会う超人と十分な連携が取れる保障はない。それ相応の練習時間が必要だ。

 そもそも新世代超人(ニュージェネレーション)がペテン師扱いされている20世紀において、自分と組んでくれる超人などいるのだろうか……と、チェック・メイトは不安を抱えていた。

 

「……実を言うと、やつが来てくれる保証はない」

「な、なんですって?」

 

 ネプチューンマンはそんなチェック・メイトの不安を助長するようなことを言う。

 事実なのだから仕方がない。これはネプチューンマンにとっても賭けなのである。

 

「あやつの故郷に手紙を出しはしたが、話に乗ってくれるかどうかは未知数。もし約束したこの場所に来なければ、計画は大きく変更する羽目になる……」

 

 チェック・メイトのパートナーに足る超人、それをこの時代から発掘するとなれば……“やつ”しかいない。

 ネプチューンマンはそう考え参戦を要請したが、そもそも“やつ”とはそういったことを頼める間柄ではない。

 無視されても仕方がなかったが――体育館の扉を開け現れたのは、ネプチューンマンが期待したとおりの人物だった。

 

「来てくれたかぁ~~っ」

 

 チェック・メイトはその人物を見て驚愕する。

 

「ア……アシュラマン!?」

 

 六本の腕に三つの顔を持つ超人を、新世代超人の彼が知らぬはずはない。

 数日前、21世紀で超人界に大打撃を与えた悪魔超人の首領格――アシュラマンは険しい表情でそこに立っていた。

 

「嬉しいぜ~~っ、アシュラマン。魔界からはるばるご苦労だったな」

「そういうきさまは本当に未来から来たネプチューンマンのようだな。口元が老けているぞ」

 

 まるで旧知の友と再会したような態度で出迎えるネプチューンマン。

 アシュラマンの態度も馴れ馴れしさはないものの、歓待を無碍に扱う様子はない。

 

「ま……待ってください! まさか……ネプチューンマン! あなたが用意すると言っていたわたしのタッグパートナーとは、アシュラマンのことなのですか!?」

「そうだ。おまえの知る再生・アシュラマンではないぞ。キン肉マンやロビンマスクと同じ20世紀のアシュラマン……若さ満ち溢れる“魔界の王子(プリンス)”よ」

 

 チェック・メイトは引き続き驚愕する。

 無理もないだろう。チェック・メイトにとってアシュラマンは敵対する悪魔超人のトップオブトップ。

 そんな超人が自分のパートナー候補として現れたというのだから、開いた口が塞がらなくなるというものだ。

 

「“究極の超人タッグ戦”のことは把握しているな、アシュラマン?」

「フン、当然だ。食せば完全無比(コンプリート)超人になれるというトロフィー球根(バルブ)のことや、時間超人などといういけ好かない連中のことも含めてな」

「さすが、話が早い」

 

 アシュラマンの手には一通の手紙が握られていた。

 ネプチューンマンは“究極の超人タッグ戦”についての情報をその手紙に記し、あらかじめアシュラマンに伝えていたのである。

 

「しかしアシュラマン。おまえはオレが手紙を出さねばトーナメントには現れなかったな。それはなぜだ?」

 

 ネプチューンマンが経験した“前回”の“究極の超人タッグ戦”に、アシュラマンの姿はなかった。

 とはいえ、ウルフマンやサンシャインのように死んでいたわけではない。不参戦には理由があったはずだ。

 

「カーカッカ。よりにもよってそれをおまえが訊くのか? 私は先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”で敗退し、負傷した身……しかも絶対のパートナーであるサンシャインの命を奪われ、現在は独り身だ。身の程をわきまえ、療養に専念していただけのこと……そう遠くない未来、“キン肉星王位争奪サバイバル・マッチ”なんていう新たな闘いも控えているようだしな――っ」

 

 そう、アシュラマンの相棒であるサンシャインの命はネプチューンマンが奪った。

 いわばネプチューンマンはアシュラマンにとっての仇のような存在なのだ。

 そんな男の要請をなぜ受けてくれたのか、そのからくりはやはりネプチューンマンが出した手紙にあった。

 

「フフ……手紙の隅々まで読んでくれたようで感謝する」

「達筆なのはいいがもう少し読みやすく書け。気取った書体が気に食わん」

 

 アシュラマンはネプチューンマンの目の前で手紙を握り潰す。

 感情的には憎悪があるのだろう。だが構わない。彼がこの場にいる時点で、ネプチューンマンは賭けに勝ったのだから。

 

「キン肉星の王位争奪戦って……それはここから未来におこる出来事でしょう? なぜアシュラマンがそのことを? ネプチューンマン……あなたいったい、アシュラマンになにを伝えたんですか~~っ」

 

 ネプチューンマンとアシュラマンの会話から、なにかを察したチェック・メイト。

 確認のためにも、ネプチューンマンに問う。

 

「すべてだ」

 

 老獪な口元からは簡潔な答えが飛び出した。

 

「ここから先に起こる未来の出来事、アシュラマンという超人の歴史をすべて綴り、魔界で療養中の本人に送りつけた」

 

 それこそが、ネプチューンマンがアシュラマンを呼び寄せることに成功したからくり。

 未来の情報を教えてやるから見返りとして時間超人の討伐に協力せよ――と。

 よりにもよって、己を憎んでいるはずの悪魔を利用しようとしたのである。

 

「フン」

 

 アシュラマンは鼻を鳴らし、ネプチューンマンを睨みつけた。

 

「私が一時は正義超人に転身し、キン肉マンたちの味方をする……そこはまあいい。しかしそれより遥か先の未来、とうに現役を退いた年齢でありながら正義超人に反旗を翻し、暴虐を働いたうえでキン肉スグルの息子に成敗されるなど……作り話にしては悪趣味すぎるではないか~~っ」

 

 怨念たっぷりにそう言い捨て、アシュラマンは手中の手紙をもう一度握り潰す。

 対して、ネプチューンマンは冷静にその胸中を問うた。

 

「どう思った?」

「見苦しい」

 

 簡潔な返答に、アシュラマンはこう続ける。

 

「老後のことなどまだまだ考えちゃいないからな――っ。この手紙の中にあった未来のアシュラマンとやらは老醜を晒しているようで我慢ならん。年老いても正義超人を打倒せんとする悪魔超人魂は立派だが、未来の私を名乗るならもう少しスマートに事を運んでもらいたいものだ」

「フフ……若僧が。おまえも年齢を重ねればわかるときがくるさ」

 

 未来の自分の顛末を知る。

 眉唾としか言いようがないその内容は、しかしアシュラマンにとって無視することはできなかったようだ。

 なにが最も琴線に触れたのか、ネプチューンマンには察することしかできないが――

 

「それになにより、私がいずれ子育てに失敗し大後悔をするというのが腹立たしい」

 

 おそらくは、そこ、だろう。

 21世紀では正義超人として余生を過ごしていたアシュラマンが、悪魔超人にカムバックするに至った原因。

 ネプチューンマンも伝え聞いた内容でしかなかったが、本人に思うところはあったらしい。

 

「ネプチューンマンよ。この手紙の内容がすべて真実という可能性と、実はきさまが稀代の天才作家だったという可能性……一笑に付すべきは後者のほうであると思うのだが、はたしてどうかな?」

 

 ネプチューンマンは口元だけで笑う。

 

「あいにくペンで食っていくつもりはねぇな。年老いてもオレの商売道具はこれ一本よぉ――っ」

 

 屈強な筋肉のついた左腕を掲げてみせると、アシュラマンは再び鼻を鳴らした。

 

「いいだろう。おまえの話に乗ってやる」

 

 アシュラマンはそう言い、握り潰した手紙をネプチューンマンに投げよこす。

 

「“未来の情報を提供する代わりに、時間超人の討伐に協力しろ”……半ば押し売りのような手紙だったが、読んでしまったものは仕方がない。だが覚えておけよ。約束破りは悪魔の十八番(おはこ)だと」

「フフフッ、魔界から出ず無視もできただろうに義理堅い男だ」

「言ってろ」

 

 互いに怪しく笑むアシュラマンとネプチューンマン。

 こうして悪魔超人と元完璧超人の同盟は結ばれた――と、話を終えることはまだできない。

 

「だが」

 

 アシュラマンの眼光が次に射抜いたのは、ネプチューンマンの背後にいた正義超人。

 21世紀からやってきた新世代超人の一角、チェック・メイトである。

 

「こんなどこの馬の骨かもわからんチェスの駒を肩に載っけたような超人とタッグを組めというなら話は別だ――っ。あの“宇宙超人タッグ・トーナメント”よりさらにレベルの上がった“究極の超人タッグ戦”に挑むというのであれば、それ相応のパートナーでなくては――っ」

 

 ネプチューンマンがアシュラマンに要請したのは“究極の超人タッグ戦”への参加。

 タッグチームの結成は大前提であり、彼の一番の相棒であるサンシャインはこの場にいない。

 そこで温存していたチェック・メイトの出番というわけだが、アシュラマンのお眼鏡にはかなわなかったらしい。

 

「グゥゥ~~ッ」

 

 遠回しに実力を軽んじられ、しかしアシュラマンの驚異的な戦闘力が記憶に新しいチェック・メイトは唸ることしかできなかった。

 ネプチューンマンはフッと笑い、チェック・メイトのフォローに入る。

 

「それ相応のパートナーか……ならばアシュラマン。ここにいるチェック・メイトという超人ほど、おまえのパートナーとして相応しい男はいない」

「なに~~っ」

 

 疑わしさ満点といった感じに眉をひそめるアシュラマン。

 悪魔超人以外の者とつるむことを良しとしない彼がこうくるであろうことは想定内。

 だからこそ、ネプチューンマンはチェック・メイトを選んだ。

 なぜなら、チェック・メイトは――

 

「なんせこのチェック・メイトは……おまえの相棒、サンシャインの弟子だった男だ」

 

 ネプチューンマンの発言に、チェック・メイトとアシュラマンが揃って口を開ける。驚愕の開口だった。

 

「なっ……」

「サ……サンシャインの弟子!」

 

 アシュラマンのほうは、チェック・メイトのまさかの素性に。

 そしてチェック・メイトのほうは、まさかのタイミングで過去を掘り起こされたことによる驚きだった。

 

「待ってくださいよ、ネプチューンマン! 確かにわたしはサンシャインヘッドから師事を受けていましたが、今はもう袂を分かった身! その表現は適切ではない!」

「だがおまえの超人レスリングの技術はすべてサンシャインに叩き込まれたものだろう?」

 

 ネプチューンマンの言うとおり、チェック・メイトは幼い頃からd.M.p(デーモンプラント)のアジトでサンシャインに育てられてきた。

 それは教育とは名ばかりな、想像を絶する“しごき”であった。

 

「いかに対戦相手を深く恨み、憎み、それをパワーに変えるか……いかに効率よく対戦相手を殺せるか……あらゆる悪魔戦術を毎日のように叩き込まれたと聞く。痛い、苦しい、つらいなどのネガティブな概念を取り去るため。ありとあらゆる艱難辛苦を与えられ、デビューする頃には関節を破壊されても顔色ひとつ変えない完全なる悪魔超人となった。そうしてキン肉マンの息子、キン肉万太郎の前にサンシャインと共に立ちふさがったのだったな」

 

 ネプチューンマンの語る内容はすべて事実。

 しかしそれらはすべて、チェック・メイトにとっては捨て去った過去。

 万太郎との対戦をきっかけに正義超人の心の目覚めた彼にとって、サンシャインの弟子と紹介されるのは不服だった。

 

「ほう、それはおもしろいことを聞いた」

 

 一方で、興味を示したのはアシュラマンである。

 アシュラマンは右半身から生やした三本の腕を、毛糸を編むように束ね始める。

 そうして螺旋状に束ねられた三本腕は極太の一本腕となり、どんな巨漢超人のものよりも重厚な武器となった。

 

 そんな腕で繰り出すのは、超人レスリングにおいて最もシンプルな打撃技――ラリアット。

 標的はたった今パートナー候補として紹介された、チェック・メイトである。

 

「波羅密多ラリアット――ッ!」

 

 襲いかかるアシュラマン。

 チェック・メイトは咄嗟の判断で横に飛び退き、波羅密多ラリアットを回避した。

 

「な……なにを!?」

 

 問うも答えは返ってこず、アシュラマンは次なる攻撃の構えに入っている。

 

「阿修羅六道蓮華――っ!!」

 

 左右計六本の腕を駆使した、パンチの連続攻撃。

 ストレート、フック、アッパー――縦横無尽に繰り出される打撃を捌ける超人はそういない。

 チェック・メイトは今度は後ろに跳んで距離を取り、同時に右肩に備え付けられたボタンを押した。

 

「チェス・(ピース)・チェンジ!」

 

 右肩に携えた(ナイト)の駒と、チェック・メイトの首が体内に格納、それぞれの位置を入れ替えて再び出てくる。

 さらに下半身、両の脚が前後に分裂するように裂け、そのまま馬を思わせるような馬体となった。

 そう、まるでギリシャ神話における半人半獣の種――ケンタウロスのように。

 

「“ケンタウロスの黒い嘶き”――――っ!!」

 

 チェック・メイトは阿修羅六道蓮華のカウンターとして、馬体を駆使した連続蹴りを叩き込む。

 腕六本に対し前脚二本、本数ではアシュラマン有利だが、馬の脚力を得たチェック・メイトの蹴りはアシュラマンを退ける。

 

「こ、こやつ……!」

 

 手痛い反撃を食らってしまったアシュラマンはすぐに後退、ピタリと動きを止める。

 その口元は、誰かを思い浮かべるように笑んでいた。

 

「アシュラマン……?」

 

 怪訝な顔をするチェック・メイト。

 いきなりの攻撃はいったいなにが目的だったのか、理解が追いつかないのだろう。

 アシュラマンは、ククク、と声に出して笑い、チェック・メイトに熱い眼差しを向けた。

 

「今の攻防ですべてわかった……確かにこやつの超人格闘術にはサンシャインの面影がある。技の捌き方から仕掛け方……竹刀を持ち指導しているやつの姿が想像できるようだったぞ」

 

 横で傍観していたネプチューンマンはすでに察している。

 アシュラマンは試したのだ。

 チェック・メイトが己のパートナーに足る器かどうか。

 そしてなにより、チェック・メイトが本当にサンシャインの美学を受け継いでいるか否かを。

 

「気に入った」

 

 結果――どうやらチェック・メイトは魔界の王子のお眼鏡にかなったようだった。

 

「要求は時間超人討伐のアシストということだったが、遠慮をするな。私たちでその時間超人とやらを倒してやる」

「ほう、大したサービス精神だな。しかしできるのか?」

「できるさ。このチェック・メイトという超人にはそれだけの可能性を見た~~っ」

 

 チェック・メイトのパートナーとして誰が相応しいか、真っ先に頭に浮かんできたのがこのアシュラマンだった。

 前回の歴史では姿を現さなかったこの男を引っ張り出すのには苦労したが、どうやらその甲斐はあったらしい。

 チェック・メイトのことを思いのほか気に入ったらしいアシュラマン、そして自分の思惑通りに事が運べたネプチューンマン。

 

「わ、わたしはまだ一言も了解していないのに……伝説超人(レジェンド)とはなんて勝手な人たちなんだ~~っ」

 

 ただひとり、振り回されてばかりの若者は嘆きの声をあげるのだった。

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