ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
スペシャルリザーブマッチ、決着。
捲土重来を期したカナディアンマンとスペシャルマンは病院に搬送され、リングにはふたりの超人が残った。
悪魔超人アシュラマンと、
『それでは、宇宙超人委員会タッグ特別ルール第一条四項に則り、スペシャルリザーブマッチの勝利チームであるアシュラマン&チェック・メイトの……』
ハラボテは勝利チームの名をコールしようとし、しかし直前でそれに相応しい名を知らぬことに気づいた。
「あー、君たち。そういえばタッグチーム名はなんというのかね?」
本人たちに問うハラボテ。
チェック・メイトとアシュラマンも「あっ」という表情を浮かべていた。
「そういえば決めていませんでしたね」
「待て。私に任せろ」
顎に手を当てチーム名を思案するアシュラマン。
「そうだな……」
この時代では“はぐれ悪魔超人コンビ”、未来では“ザ・デモリッションズ”といくつかのタッグを築いてきた彼だ。
タッグチームの命名はお手の物。即座にチェック・メイトとのコンビに相応しい名を思いついた。
「ナイトメア……そうだ、我々は“ザ・ナイトメアズ”とさせていただこうか――っ!」
ナイトメア――悪夢を意味するチーム名を高らかに宣言する。
『あ――っとここでチームリーダー・アシュラマンからタッグチーム“ザ・ナイトメアズ”の名が告げられた――っ! 彼らと闘い敗れたカナディアンマン&スペシャルマンのふたりにとってはまさに
この発表に、蔵前国技館の観客たちが歓声を上げる。
アシュラマンの名を、チェック・メイトの名を、そしてザ・ナイトメアズの名を、高らかに唱えていた。
ところが、アシュラマンの隣に立っていたチェック・メイトが不服の声を上げる。
「ちょっと待ってくださいよ――っ! アシュラマンがチームリーダーだなんてわたしたちは一言も言っていませんよ! それにわたしは正義超人で……まるで悪魔超人の片割れみたいな扱いはやめていただきたい!」
パートナーの身勝手に憤るチェック・メイト。
それに戸惑ったのは盛り上がっていた観客たちだ。
「でも……ねえ?」
「さっきの技も魔界式って言ってたし……」
「アシュラマンのほうが引っ張っていってる感じだしなぁ」
20世紀の超人レスリングファンからすれば、アシュラマンは誰もが認める実力派の人気超人。
一方で、チェック・メイトのことはまだよく知らないし、アシュラマンと並ぶとどうしても後輩感が否めない。
実況と同じく、チームリーダーがアシュラマンと思ってしまうのは無理からぬことであった。
「おや~~っ? 悪魔扱いされるのは不服かチェック・メイト?」
「不服に決まっているでしょう! だいたいナイトメアズだなんて……それはかつて、サンシャインヘッドがわたしを含めた弟子たちに付けていた名称ですよ! それを引っ張り出し、今は正義超人であるわたしに名乗らせるだなんて、悪趣味にもほどがある!」
そう、チェック・メイトが憤っている最大のポイントはそこなのである。
チェック・メイトがまだ
彼は悪魔超人の首領サンシャインの弟子として、“ナイトメアズ”の看板を背負っていた。
「カカカ、そうなのか? だがあいにく、ザ・ナイトメアズは私がたった今即興で思いついたチーム名だ。この偶然も悪魔の……いや、サンシャインの導きというもの。潔く受け入れろ」
「な、なんて無茶苦茶な……」
悪魔超人であった過去とはとっくに決別したつもりのチェック・メイトだが、よもや20世紀でこんな扱いを受けるとは。
言っても聞かなそうなアシュラマンの傲慢さ、そして盛り上がる観客たちを前に、理不尽さを感じつつも押し黙ってしまう。
『ともあれ! アシュラマン&チェック・メイトの“ザ・ナイトメアズ”は“究極の超人タッグ戦”のリザーブ枠として仮エントリーされます! 正式エントリーされているいずれかのチームが負傷、またはそれに類するアクシデントにより試合続行不可能と判断された場合、リザーブ枠である“ザ・ナイトメアズ”が本戦出場となりますのでご理解を願います!』
ハラボテがそうアナウンスし、蔵前国技館の観客たちは拍手喝采。
「おまえたちふたりなら大歓迎だ――っ!」
「リザーブ枠と言わずそのまま本戦にも出ちまえ――っ!」
もっと“ザ・ナイトメアズ”の試合を見せろと、大歓声を上げる。
どうやら川崎球場に現れたウォーズマンのことなどすっかり忘れてくれたようだ。
目論見が上手くハマったことで、ハラボテはほくほく顔を見せるのだった。
◇
リザーブマッチを遠巻きに眺めていた超人がひとりいた。
このあとに対スーパー・トリニティーズ戦を控えている、ネプチューンマンである。
「ククク……早くも人気者じゃないか、アシュラマンにチェック・メイト」
悪い笑みを浮かべるネプチューンマン。
このリザーブマッチの結果は、彼にとってベストと言って過言でないものとなった。
「すべては計画通り……本来の歴史ではこのオレに顔面の皮を剥がされ、一切の活躍もなくリタイアしてしまったチェック・メイトを対時間超人のためのリザーバーとして起用し……魔界に引きこもっていたアシュラマンを招聘、チェックのパートナーに据えるという目論見は大成功を収めた~~っ」
たった今、鮮烈なデビューを果たしたザ・ナイトメアズ。そのプロデュースをしたのがネプチューンマンだ。
彼らの参戦を仕組んだ目的は多々あるが、一番は仲間の命を救うことであった。
「リザーブマッチに時間超人が参戦しなければ、ブロッケンJrとジェロニモの“テガタナーズ”がリングに上がることもない……ということはつまり、ブロッケンJrが片腕を失うこともなく、その弟子であるジェイドが“ベルリンの赤い雨”を忘れてしまうということもなくなる。ジェロニモも重傷を負わず、引き続きキン肉マンやテリーマンのサポートに回れるわけだ……」
ネプチューンマンが体験した前回の“究極の超人タッグ戦”では、このリザーブマッチで多くの悲劇が生まれた。
アシュラマンとチェック・メイトの活躍はその悲劇を回避するきっかけとなり、後々にも大きく影響を及ぼすだろう。
「時間超人の乱入を防ぐため、そしてザ・ナイトメアズの当て馬になってもらうため、カナディアンマンとスペシャルマンのふたりには少々貧乏くじを引いてもらうことになってしまったが……まあ別にいいか。むしろ本来の歴史よりも観衆にガッツのあるところを見せられたのだから、あのふたりにとってはプラスの結果になったかもしれないぜ――っ」
別段あのふたりに特別な感情はないし、戦局的に見てもいてもいなくても変わらない。
計算外の新参タッグチームが登場し計画が狂うのも困るので、あのふたりをおだててアシュラマンたちの対戦相手としてリングに上がるよう扇動してみたが……期待どおりの動きをしてくれたものだ。
「さて、時間超人の横槍が入らなかったところを見るに、“やつ”もしっかり仕事を果たしてくれたか」
最大の懸念であった、ライトニング&サンダーの乱入もなかった。
これはネプチューンマンが秘密裏に進めていた“もうひとつの仕掛け”が機能したということだろう。
裏で暗躍していたもうひとりの影――これは、まだ語るべき時ではない。
「まだまだ働いてもらうぞ、アシュラマンにチェック・メイト。おまえたちはただのリザーブ枠で終わらせるつもりはねぇ――っ」
なにはともあれ、アシュラマンとチェック・メイトは見事リザーブ枠を勝ち取った。
この勝利は大きい。時間超人攻略のピースとして、大いに役割を持つはずだ。
だが、彼らの勝利によって別の心配事が増えた側面はある。
「……唯一の懸念は、やはり“ベル赤”の復活か」
ネプチューンマンがこれから闘う相手、スーパー・トリニティーズのジェイド。
前回の“究極の超人タッグ戦”では、彼は最大の必殺技であるベル赤――“ベルリンの赤い雨”を失っていた。
それは直前のリザーブマッチで彼の師であるブロッケンJrが右手を落とされ、弟子にベルリンの赤い雨を伝える歴史が抹消されたためだ。
しかし今回、ブロッケンJrが時間超人と闘う機会は失われたため、当然彼の右手も無事。
ジェイドのベル赤も失われることはなく、次戦にて猛威を振るうだろうことが予測できる。
「スーパー・トリニティーズ戦……あるいはあいつらに道を譲ることになってしまうかもしれんな」
大局を見据えての采配は、しかしネプチューンマン自身の試合をより厳しいものへと仕立て上げてしまったのだ。