ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第015話 “ベルリンの赤い雨”は死なず!

『大変長らくお待たせいたしました。只今より本日のメインイベント~~ッ、究極の超人タッグ・トーナメントAブロック一回戦第2試合を行います~~っ! 青コーナーより“スーパー・トリニティーズ”ジェイド&スカーフェイスの入場です!』

 

 ザ・ナイトメアズvsビッグ・ボンバーズのスペシャルリザーブマッチの興奮冷めやらぬ中、当初予定されていた対戦カードがついに始まる。

 まず現れたのは、21世紀からやってきた若手正義超人コンビ。

 ジェイドとスカーフェイスの“スーパー・トリニティーズ”である。

 

『さあ~~~~っ、究極の超人タッグもいよいよ一回戦最終試合に相応しい超ド級のカードの実現だ――っ! まずは青コーナー、“オレたちが未来から来た正義超人と証明するためには勝って勝って勝ちまくるしかねえ”顔・技・力の三位一体王道コンビ、スーパー・トリニティーズが今、蔵前に降臨だ――――っ!』

 

 新世代超人(ニュージェネレーション)という眉唾物の存在でありながら、その端正なビジュアルで多くのファンを獲得しているふたり。

 蔵前国技館の歓声は伝説超人(レジェンド)に送られるそれと遜色なく、堂々とした足取りでリングへ向かう。

 

『続きまして赤コーナーより、ネプチューンマン&セイウチンの“ネオ・イクスパンションズ”の入場です――っ!』

 

 反対側から現れたのは、ネプチューンマンとセイウチンのコンビ“ネオ・イクスパンションズ”。

 片や20世紀の観衆もよく知る元完璧超人、片やジェイドらと同じ21世紀の新鋭超人。

“究極の超人タッグ戦”エントリーチームの中でも、ひときわ異質な組み合わせのタッグである。

 

「ナンバーワーン!」

 

 リングに上がったネプチューンマンは、お気に入りのイチバンポーズで会場のボルテージを上げる。

 そして、これから闘う四者が睨み合った。

 

『リング上に4選手がリングイン! 決戦の舞台は整った――っ!』

 

 実況がそうアナウンスし、まずネプチューンマンがリングアウト。セイウチンがその場に残る。

 

『赤コーナー“ネオ・イクスパンションズ”、どうやら先発はセイウチンのようです。そして青コーナーは……』

 

 対して、スーパー・トリニティーズはジェイドが前に出る。

 しかし――

 

「どけ! オレがいく!」

 

 スカーフェイスはそんなジェイドの体をドンッと手で押し、自らが後方に下がらせた。

 

『お――っと“スーパー・トリニティーズ”、ジェイドが先発かと思われましたがスカーフェイスが前に出た――っ』

 

 その様子を見て、ネプチューンマンは内心思う。

 

(今のやり取り……ブロッケンJrの片腕が無事なことでジェイドの“ベルリンの赤い雨”が失われることは防げたが、代償としてジェイドのモチベーションが著しく落ちているようだ。無理もねえか……相手は悪行化していないお友達のセイウチンに、敬うべき目上のオレ。直前にブロッケンJrのガッツに満ちた試合を観戦し奮起したわけでもない今のジェイドでは、本来の実力を出すのは厳しいか……)

 

 スカーに押しのけられたジェイドの瞳には、闘志というものが欠けているように見えた。

 

(加えて、パートナーのスカーがあれではな……)

 

 一方で、ブロッケンJrの奮起があろうとなかろうとスカーフェイスの態度に変化はないようだった。

 一言で言って、傲岸不遜。

 目の前のセイウチンを小馬鹿にするような様子で薄ら笑う。

 

「クク……先発がセイちゃんでいいのか? ここは実力上位のネプチューンマンに任せたほうが懸命だと思うがな――っ」

「ぐぬぬ……っ」

 

 挑発も超人レスリングのテクニックのひとつ。だがスカーフェイスの場合、駆け引き抜きにセイウチンをナメている。

 そしてそのまま試合開始のゴング。

 そこで、事件が起こった。

 

『あ――っとジェイド、ゴングとともにスカーの頭を飛び越え、我先にとリングに降り立った――っ』

 

 一旦は後ろに下がったジェイドが、スカーフェイスを跳び箱のようにし前に躍り出たのである。

 後ろに下がらされたスカーはジェイドに文句をぶつける。

 

「ジェイド、テメーなんのつもりだ!」

「悪いなスカー。今のおまえにトリニティーズの先発は任せられん」

 

 ジェイドは冷静にそう返し、譲る様子を見せない。

 

「それに向こうも初めからスイッチするつもりだったようだぜ」

 

 ネオ・イクスパンションズはゴング早々にタッチ、セイウチンが後ろに下がりネプチューンマンが前に出た。

 

『ネオ・イクスパンションズ、先発で出たのはネプチューンマンです! 波乱が予想されるこの一戦、ファーストコンタクトはジェイドvsネプチューンマンとなるようだ――っ』

 

 このマッチアップはネプチューンマンにとって好都合。

 ベル赤を失っていないジェイドの実力がいかほどのものか、試合最序盤の今、確かめておく必要がある。

 

「ジェイド~~ッ、おまえが本当にオレと闘う実力があるかどうか、今から確かめてやるぜ――っ」

 

 そう言い、ジェイドに掴みかかった。

 ジェイドもそれに応えるように、ネプチューンマンに掴みかかる。

 お互いに両腕で組み合い、力比べの構図になった。

 

「これは、ネプチューンマン得意の超人実力判定法“審判のロックアップ”!」

 

 観戦していたロビンマスクが大きな反応を見せる。

 それもそのはず、ロビンはこの“審判のロックアップ”という技をどの超人よりもよく知っていた。

 

 組み合うことで対戦相手の力量を測定してしまうネプチューンマン独自の技法。

 彼がまだイギリスの強豪超人・喧嘩男(ケンカマン)を名乗っていた頃、ロビンマスクはこの審判のロックアップで『闘うに値しない』という烙印を押され、屈辱を与えられた過去がある。

 それが今回、新世代超人の中でも実力派として知られるジェイドに繰り出された。

 

「グウウ~~ッ、渾身のパワーを込めて潰しにかかっているのにビクともしない」

 

 初めて体験する“審判のロックアップ”に険しい表情を浮かべるジェイド。

 どうにか攻略法を模索しようとする中、

 

「ジェイドよ。おまえはスカーフェイスの変調に気づいているか?」

「ッ!?」

 

 急接近しているネプチューンマンの口から、思いもよらぬささやき声が聞こえてきた。

 その声は小さく、おそらくは密着しているジェイドにしか聞こえていないだろう。

 

「力比べをしているフリを続けながら聞け。やつはケビンマスクの救命という使命を忘れ、完全無比の球根(コンプリートバルブ)を我が物とすることに躍起になっている……すべては完全無比(コンプリート)超人になるためにな。その野望はまさしく悪行超人時代のもの……このまま放っておけばパートナーであるおまえはもちろん、他の新世代超人たちにも牙を剥くぞ」

 

 審判のロックアップを利用しての、忠告。

 パートナーであるスカーフェイスが危険な思想を抱いているということを、ネプチューンマンは伝えようとしていた。

 

「う、薄々感づいてはいた。粗野で粗暴なのはスカーのウリみたいなところがあるが、20世紀に来てからのあいつはどうにも様子がおかしい。なにか腹に一物抱えているのではと……オレも疑っていた」

 

 ネプチューンマンの忠告には、ジェイドも思うところがあった。

 

「さすがはタッグパートナーだ。では……」

「~~ッ、だがよぉネプチューンマン」

 

 ネプチューンマンの意図は正しく伝わった。

 しかし、だ。

 だから闘いをやめるかといえば、ジェイドはそんな腑抜けた超人ではない。

 

「すでにゴングの鳴ったリングの上で、対戦相手とおしゃべりをする趣味はオレにはねえ~~っ」

 

 両腕に力を込め、フィジカルで勝るはずのネプチューンマンを押していく。

 ネプチューンマンの足が僅かに後退。その様子はギャラリーからも見て取れた。

 

『あ――っとさすがは若さで勝るジェイド! ネプチューンマンの“審判のロックアップ”をパワーで押し返す――っ!』

 

 両の腕を通して伝わってくるジェイドのパワー。

 審判のロックアップを何十年も使い続けてきたネプチューンマンは震撼する。

 

(ち……違う。ブロッケンJrが右腕を失い、そのせいで“ベルリンの赤い雨”を失ったあのときのジェイドとは……ドイツの強豪、“緑の闘い人(グリーン・ケンファー)”ジェイドとはこれほどの実力だったのか~~っ)

 

 その、一瞬の隙。

 ジェイドは審判のロックアップを振り払った。

 そして即座に体を反転、軽くジャンプしてから後ろ蹴りを放つ。

 

『ジェイド、ローリング・ソバットを繰り出す――っ』

 

 ジェイドの右足がネプチューンマンの胸元を穿つ。

 

「フン――ッ!」

 

 しかしネプチューンマンは胸板に力を込め、蹴りの衝撃を分散させる。

 

『ネプチューンマン、自らの強靭な肉体を誇示するかのごとく、胸で受け止め弾き返した――っ!』

 

 蹴りを弾き返されたジェイドはやや崩れた体勢で着地。

 齢50過ぎの大ベテランはその隙を見逃さない。

 

『そして体勢の崩れたジェイドの腕を取り……』

 

 ジェイドの右腕を掴み、技に入ろうとするが――

 

『……い、いや! 取らせない! ジェイド、腕を取りに来たネプチューンマンを華麗に躱し……』

 

 ジェイドは上半身を倒してネプチューンマンのキャッチングを回避。

 同時に右脚を後ろ側に上げ、掴みに来たネプチューンマンを蹴り上げる。

 

『ギャロップ・キックでふっ飛ばした――っ!』

 

 それはまさに、気性の荒い馬が自身の後ろに来た人間を蹴り飛ばすがごとく。

 不意の一撃にネプチューンマンは今度は防ぐこと叶わず、リングの端まで追いやられた。

 

「代わるだ、ネプチューンマン」

「セイウチン」

 

 その先で待っていたパートナー、セイウチンが掌を差し出す。

 

「ジェイドの技や動きなら、オラのがよく知ってる! ネオ・イクスパンションズの一員として、きっと役に立って見せるだ――っ!」

 

 闘志みなぎる言葉を放つセイウチン。

 やる気満々のパートナーを見て、ネプチューンマンは黙って掌を合わせた。

 

『お――っとネオ・イクスパンションズ、ここでネプチューンマンに代わりセイウチンがリングイン!』

 

 リングに立ち、同胞にして友人であるジェイドの前に立つセイウチン。

 常の彼ならば、決して友と闘うことを良しとしなかっただろう。

 だが、ネオ・イクスパンションズの一員として立つこのニュー・セイウチンは違う。

 

「セイウチン……オレはスカーほどおまえを過小評価しちゃいない」

 

 それを十分にわかっているからこそ、ジェイドは右手を構えた。

 

「だからここは出し惜しみせず、いきなりこれでいかせてもらう――っ!」

 

 ジェイドが右腕を振りかぶり、その右手から炎が噴出される。

 闘気を宿した振り抜きにより、炎を纏わせるブロッケン一族秘伝の手刀。

 その名は――

 

「“ベルリンの赤い雨”――ッ!」

 

 ブロッケンJrから引き継がれしジェイド最大の必殺技が、友であるセイウチンに襲いかかる。

 

 

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