ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第017話 タッグマッチ中のシングル戦!?

『な、な、な、なんと……“ネオ・イクスパンションズ”のチームリーダー・ネプチューンマン、タッグマッチ戦の最中にシングルマッチをやると宣言した――っ』

 

 突如ネプチューンマンから飛び出した、驚きの発言。

 蔵前国技館の観衆は大いに戸惑い、リング上の推移を見守った。

 

「なにを言っとるんじゃネプチューンマンは~~っ」

 

 キン肉マンを筆頭に、試合を観戦している“究極の超人タッグ戦”参加超人たちも戸惑いを口にしている。

 それだけ、ネプチューンマンの言い出したことは前代未聞だったのだ。

 

『もちろんこの“究極の超人タッグ戦”においてそのようなルールは認められません! しかし現在、リングに立っているのはネプチューンマンとスカーフェイスのふたり! 各々が各々のパートナーにタッチして交代するのも自由なら……リング外にいるセイウチンやジェイドがそれを拒み、試合を傍観するのもまた自由! つまりルールがどうであれ、リングにいる4人の意向しだいではタッグマッチ中のシングルマッチも成立してしまうのであります――っ』

 

 ルールとしてのシングルマッチは不可能だが、実質シングルマッチという形は実現できる。

 それには対戦資格を持つ4人全員の意思統一が必要だが、はたしてどうなるか。

 

「ハハハ――ッ。おもしろいことをぬかすオッサンだぜ。オレは別に構わねえが、お友達思いなジェイドやセイウチンはどうかな?」

 

 一対一を提案された張本人であるスカーフェイスは、これを余裕綽々の態度で受け入れた。

 そして現在リングサイドに控えているジェイドとセイウチンは、

 

「ウウ~~ッ」

「オ、オラは……」

 

 承服することはできず、されど完全に拒否することもできなかった。

 それぞれパートナーとしてどうするべきか、迷いがあったのである。

 

「おお~~っ、薄情なやつらだ。大事なパートナーがひとりで闘うと言ってんのにだんまりとは」

 

 スカーはそれならそれで、とふたりの懊悩を無視してネプチューンマンに向き合う。

 

「だが好都合。20世紀のボンクラどもにこのスカーフェイス様の恐ろしさを植え付ける絶好の機会だ~~っ」

 

 今からこのリングは、オレのワンマンステージだ――と。

 スカーフェイスはほくそ笑み、ネプチューンマンもそれを見てフッと笑った。

 

『おお――っとネプチューンマンのリクエストどおり、手出し無用の変則シングルマッチが行われる模様です!』

 

 セイウチンはパートナーの意図がわからず、しかし黙っていることもできないので、ただ不安を口にする。

 

「ネプチューンマン、あんたのことは信頼してるだが……」

「心配するなセイウチン。若僧の天狗っ鼻をへし折ってやるのも先達の務め……カオスとの約束を果たすためにも、ここはオレが奮起せねばな」

「カ、カオス?」

 

 ネプチューンマンがこぼしたその名は、それ以上言及されることはなく。

 止まっていた試合が動き出す。

 

「いくぜ――っ!」

 

『ネプチューンマンにスカーフェイス、両者突っ込んだ――っ!』

 

 ネプチューンマンは両腕を突き出し、ジェイド同様に“審判のロックアップ”でスカーフェイスの品定めを試みる。

 だがスカーは滑り込み、ネプチューンマンの足を狙った。

 

『あ――っとスカーフェイス、ネプチューンマンの審判のロックアップを拒否し、スライディングで足を掬う!』

 

 足を取られ転ばされるネプチューンマン。

 スカーはすかさず、スタンディング状態でネプチューンマンの両脚を自らの両脚で挟み込み、その脚を軸に回転。

 挟み込まれたネプチューンマンの両脚は盛大に捻じれ、激痛を生み出す。

 

「スピニング・ダブル・トゥホールド!」

 

『なんだこの技は――っ!?』

 

 20世紀では誰も見たことのない技に、観客は大いにどよめいた。

 

「通常のスピニング・トゥホールドは片脚を極める技だが……!」

「あれは両脚を同時に極めている!」

 

 類似技――実は派生元であるスピニング・トゥホールドの使い手であるテリーマンと、その相棒のキン肉マンが大きく反応する。

 これぞ、スカーフェイスがかつてテリー・ザ・キッド戦で使用したスピニング・トゥホールドの進化系。

 その威力をよく知る張本人は、過去の敗戦を思い出し顔を青くした。

 

「どうだ――っ! 進化したスピニング・トゥホールドの味は――っ!」

 

 意気揚々と技の感想を問うスカーフェイス。

 

「なんでも進化させればいいってもんじゃねえ~~っ」

 

 ネプチューンマンは苦悶の声で答えながら、しかしまだ屈しはしない。

 

「この技は相手の両脚をいっぺんに極めようと欲張るあまり、安定性に欠ける――っ!」

 

 クラッチされているのはあくまでも両脚。仰向け状態とはいえ上半身は問題なく動く。

 ネプチューンマンはキャンバスの上で左右転がるように動き、連動する下半身に勢いをつけた。

 

『これは上手い! ネプチューンマン、上半身を大きく捻り、反動を利用してスカーフェイスの技を振りほどいた――っ!』

 

 ネプチューンマンが言ったとおり、安定性に欠ける技ゆえに振りほどかれた際の隙も大きい。

 今度はスカーフェイスが体勢を崩し、転びそうになったところをなんとか踏みとどまる。

 その間にネプチューンマンは背後へと回り、両大腿部を持ち上げ後ろへ投げた。

 

「ダブルレッグ・スープレックス!」

 

『ここでネプチューンマンの代名詞的技が発動――っ!』

 

 脳天から落とされたスカーフェイスが悶絶する。

 しかし、ダブルレッグ・スープレックスの真価は相手をロープに振り反動をつけてこそ。

 今の技はあくまでも繋ぎ、相手が起き上がるこの隙を生み出すためのものにすぎない。

 

「さーてそろそろ伝家の宝刀を抜くとするか――っ」

 

 ネプチューンマンが左腕を構える。

 放つのはもちろん、誰もが知るネプチューンマンの必殺技(フェイバリット)だ。

 

喧嘩(クォーラル)ボンバー!」

 

『スープレックスでダメージを負ったスカーフェイスを喧嘩ボンバーが襲う――っ!』

 

 ネプチューンマン謹製のスペシャル・アックス。

 その脅威を前にしたとき、多くの超人は身を強張らせ直撃を余儀なくされる。

 だが、このスカーフェイスという超人は違った。

 

『な、なんとスカーフェイス、大ジャンプでこれを回避――っ!」

 

 向かってきた喧嘩ボンバーを遊園地のアトラクションかになにかとでも思うように、両脚を高く上げるジャンプで避けた。

 そして上空、自らの背中に備えられた燕の尾のような形状の突起を突き出す。

 

「スワロウ・テール――ッ!」

 

 それは凶悪な刃となり、喧嘩ボンバーを外し隙だらけのネプチューンマンに襲いかかる。

 

『鋭く変化したスカーフェイスの燕尾がネプチューンマンの背中を切り裂いた――っ!』

 

 痛烈なる斬撃に、血しぶきが飛ぶ。

 観客から悲鳴が上がる中、スカーフェイスはさらなる血を求めるように舌なめずりした。

 

「さあ、ここから一気に畳み掛けるぜ――っ!」

 

 そう言って、スカーフェイスは自身の額に装着されている仮面を目元まで下ろした。

 

狂乱の仮面(マッドネスマスク)――っ!」

 

 ただ仮面を装着しただけ――しかしどういうわけか、スカーフェイスの容貌はより凶悪な印象を放つようになった。

 この変化に誰よりも早く反応してみせたのは、この試合の直前に川崎球場から駆けつけたばかりのキン肉万太郎である。

 

「スカー……おまえ! それは悪行超人から正義超人に転向する際に封印したはずだ――っ!」

 

 悪行超人時代のスカーフェイスと対戦経験のある万太郎はよく知っている。

 あの仮面は“狂乱の仮面”。スカーフェイスの残虐性と凶暴性を増強させるアイテムだ。

 しかしそれは悪行超人としての力であり、正義超人の一員となった今のスカーフェイスには相応しくない。

 

「甘いこと言ってんじゃねえよ万太郎! オレたちはこれからあの“悪魔の種子(デーモンシード)”より凶悪な悪衆・時間超人に挑もうっていうんだぜ! 悪を制するには悪をぶつけるのもまたひとつの戦略……今のうちに残虐ファイトの勘を取り戻しておかねえとな――――っ!」

 

 スカーフェイスは正当性があるような返答を口にするが、それは彼にとって建前だった。

 今はなにより、目の前の対戦相手であるネプチューンマンをけちょんけちょんに蹂躙したい。

 そういった欲が垣間見える瞳を携え、ネプチューンマンに攻撃を仕掛ける。

 

「そらそらそら――っ!」

 

 正面からのパンチのラッシュ。

 それも顎、レバー、睾丸、鳩尾など急所を執拗に狙う連打だ。

 

『スカーフェイス、鬼気迫る形相で深手を負ったネプチューンマンをタコ殴りにする――っ』

 

 ネプチューンマンはダメージを負った体でなんとか防御をするが、スカーフェイスの攻撃速度はそれを上回る。

 とはいえ、急所攻めが狙いであるならば対処はしやすい。

 

「調子に乗るな~~っ」

 

 そこに攻撃が来ると読み、ネプチューンマンはスカーフェイスの左腕を掴んだ。

 左腕を両手で締め上げることで体勢を崩し、スカーの右腕に左脚をロック。

 相手の上半身を完璧に封じ込めるこの技こそ、ネプチューンマンのフェイバリット・ホールドのひとつ。

 

喧嘩(クォーラル)スペシャル!」

 

 あのロビンをして、「この技を使える奴はこの世にひとりしかいない」と言わしめた技である。

 

『ネプチューンマン、お得意の立ち関節でスカーフェイスの左腕を締め上げる――っ!』

 

 猛攻を続けていた“マッドネス”スカーフェイスも、これにはさすがに停止。

 両腕を締め上げられている痛みに耐えることしかできない。

 

「タッグマッチでは対戦相手のパートナーにカットされることが必定のこの技だが……ことシングルマッチにおいては効果は絶大! パワーだけでどうこうできると思わんことだ!」

 

 この技が真の力を発揮したとき、相手超人の体は真っ二つになる。

 知識としてその恐ろしさを知っているであろうスカーフェイスは、しかし。

 

「パワーだけでどうこうできねえだと~~っ」

 

 不敵に笑み、締め上げられている両腕にさらなる力を込めた。

 

「こ……こいつ!」

 

 驚愕するネプチューンマン、

 スカーが見せた抵抗は、それだけ予想外のものだった。

 

『ま、まさか……スカーフェイス、ネプチューンマンの難攻不落の喧嘩スペシャルを力尽くで外そうとしている――っ』

 

 20世紀の観衆たちは先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”で喧嘩スペシャルの威力を目の当たりにしている。

 だからこそ、それを力尽くで外そうなどという行為が信じられなかったのだ。

 

「ネプチューンマンよ。あんたは長年の山ごもりで全盛期にも負けない屈強な肉体を手に入れたらしいが、そんな原始的なトレーニングで得た肉体でオレのパワーを凌駕できると思ってんのか?」

「ウッ……」

「こちとら21世紀の最先端トレーニングで作り上げた若々しい肉体を持っている! パワーはもちろん、タフネスだって雲泥の差だ! こんな古臭い関節技が外せねえなんて幻想を見るのはやめてもらおうか――っ!」

 

 スカーフェイスは高らかに叫び、その21世紀式のパワーでネプチューンマンの両腕と左脚を振り払った。

 素早くネプチューンマンの背後に回り、フルネルソン――羽交い締めの形に固める。

 そのまま大きく後方に反り投げれば、飛龍原爆固めと呼ばれる技の完成だ。

 

『喧嘩スペシャルから脱出したスカーフェイス、すかさずネプチューンマンをドラゴン・スープレックスで投げる――っ』

 

 首と腕を極められながらの投げ。

 単純ゆえに強力、ゆえにネプチューンマンは受け身を取ることもできない。

 

『ネプチューンマン、ダウーン!』

 

 ダメージは大きく、ネプチューンマンはキャンバスの上で大の字になってしまう。

 

「おっと、オネンネするなら……」

 

 仰向け状態で倒れるネプチューンマンを睥睨し、スカーフェイスはまたもや悪い笑みを浮かべた。

 

「しっかり瞼は閉じておかねえとな――っ!」

 

 ネプチューンマンが付ける仮面の目元を狙い、踏みつける。

 それも一度だけではなく、二度、三度と、繰り返し足裏を落とし続けた。

 

『こ、これは酷い! スカーフェイス、ネプチューンマンの顔面めがけてストンピングの嵐だ――っ』

 

 踏みつけという、これまた単純ながら強力無比な攻撃を、人体急所の集まる顔面に放つ。

 正義超人のファイトとしては悪辣極まりない所業。

 スカーたちの疑似シングルマッチを静観していたジェイドも、さすがに声を荒げた。

 

「やめろスカー! ネプチューンマンは伝説超人(レジェンド)……オレたち新世代超人(ニュージェネレーション)にとって敬うべき大先輩なんだぞ――っ!」

 

 スカーフェイスはリングの外にいるジェイドを一瞥することもなく、ストンピングを続けながら反論する。

 

「違うなあ――っ! ネプチューンマンもセイウチンも、等しくオレさまがトロフィー球根(バルブ)を手に入れるための邪魔者でしかねえ――っ! その球根を口にする者はあらゆる存在を超越した史上最強の“完全無比(コンプリート)超人”になれるという蠱惑の宝……それを手にするためならば、伝説超人だろうがなんだろうが、邪魔者は排除するのみだ――っ!」

 

 とうとう暴露されたスカーフェイスの目的に、タッグパートナーのジェイドは愕然とする。

 

「ト……トロフィー球根はロビンマスクの妻、危篤のアリサさんを救うためのものだろう!?」

「悪いなあ~ジェイド! オレの心に潜む最強の超人になりてえって欲望には抗いきれねえ!」

「ふ、ふざけるな! そんなことはタッグパートナーであるオレが認めねえぞ!」

「ならテメーも敵だ! タッグは解消し、スーパー・トリニティーズはこのオレのワンマンチームでやらせてもらう!」

 

 実質的な絶縁宣言。

 ショックの大きいジェイドは力なく膝を折った。

 

「グオオオ――ッ」

 

 トリニティーズのふたりが会話をしているそのわずかな隙を狙い、ネプチューンマンが反撃に転じる。

 スカーフェイスの脚を掴み、そのまま捻るように回転、キャンバスに叩きつける。

 

『ネプチューンマン、スカーフェイスの蹴り足を取って反撃のドラゴンスクリュー!』

 

 スカーフェイスはなんとか受け身を取り、一旦ネプチューンマンから距離を取った。

 ネプチューンマン側も追撃はしない。いや、できない。

 

『猛攻からなんとか逃れたネプチューンマン。しかしその姿は息も絶え絶えだ――っ』

 

 先ほどのストンピングの嵐は相当効いた。

 ただでさえ加齢が気になるネプチューンマンである。

 いかに伝説超人、いかに元完璧超人とはいえ、耐久力は全盛期より落ちているのだ。

 

「ギャハハハ~~ッ、スタミナ不足がモロに出ているじゃねえか――っ! ロートル老害ジジイは大人しく隠居してりゃいいんだよ!」

「ロ……ロートル老害ジジイだと~~っ」

 

 スカーフェイス今日一番の罵詈雑言が飛び出し、ネプチューンマンの怒りはマックスまで引き上げられた。

 だがその怒りは悲しいかな、反撃のためのパワーにはなりえない。

 

「さあ――っ、さっそくこのスカーフェイス様による“ひとりトリニティーズ”のひとりツープラトンを拝ませてやるとするか!」

 

 スカーフェイスが大きく跳躍し、ネプチューンマンに飛びかかる。

 その技はボディアタックの類ではない。

 21世紀の超人であれば誰もが知る、スカーフェイス最大の技への予備動作だった。

 

『スカーフェイス、ネプチューンマンの頭上を飛び越し、逆向きに背中へしがみつく――っ』

 

 組み付いたネプチューンマンの体を逆さにするため、自身は一度着地、そしてすぐに飛び上がる。

 

「セイラ――ッ!」

 

『そのまま身体を上下反転、飛び上がった――っ』

 

 よりパーフェクトなクラッチを完成させるため、上空でネプチューンマンの体を離すスカーフェイス。

 両腕で逆さになったネプチューンマンの両脚を掴み、首は肩に載せる。

 観戦している誰もがキン肉マンのキン肉バスターを連想した。

 エプロンサイドのジェイドやセイウチン、客席のキン肉万太郎やテリー・ザ・キッドを除いて。

 

「波、逆巻け――っ! 岩、崩れろ~~っ! 空、斬り裂けよ――っ! 20世紀のやつらよ、よくその目で見ておけ~~っ! これぞキン肉マンのキン肉バスター、アシュラマンの阿修羅バスターをも遥かに凌駕する……究極のバスター!」

 

 それは、かつてキン肉万太郎が「バスター中のバスター」と太鼓判を押したスカーのオリジナル・フィニッシュ・ホールド。

 首のフックの甘さが弱点であるキン肉バスターを完璧なものに仕上げるため、肩に載せるのではなく両脚で挟み込む。

 その体勢のまま臀部から落とせば、背骨折りや股裂きに加え、三角絞めの効果も発動する。

 人呼んで究極。

 正式名称は――

 

「アルティメット・スカー・バスターだ!!」

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