ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第018話 師に見せよ!正義超人の“友情”を!

『なんだぁ~~っ!? スカーフェイス、見たこともないバスター技でネプチューンマンを固めた――っ』

 

 スカーフェイスが発動した新世代の必殺技“アルティメット・スカー・バスター”。

 そのキン肉バスターや阿修羅バスターとは似て非なる技に、20世紀の超人たちは衝撃を受けた。

 

「なんじゃありゃ~~っ、通常のキン肉バスターに加えて脚で首をクラッチしておる~~っ」

 

 特に大きな反応を見せたのは、やはりキン肉バスターの真の使い手であるキン肉マン。

 

「阿修羅バスターやキン肉バスターの弱所を改善したバスター……ゆえに究極か!」

 

 そのパートナーのテリーマンは冷静に分析をし、

 

「我々の技のことごとくを改良してみせる……スカーフェイスとはまさに21世紀の超人だ!」

 

 ありとあらゆる超人レスリングの技を知るロビンマスクはスカーフェイスの技量を素直に褒め称えた。

 

「グウウ~~ッ!」

 

 そして、今現在技をかけられている張本人。

 20世紀の超人であると同時に21世紀の超人でもあるネプチューンマンは、必死だった。

 

(ご、誤算だった……よもや“マッドネス”スカーフェイスがこれほどの実力だったとは~~っ)

 

 もちろんスカーフェイスの奥の手は把握していた。狂乱の仮面(マッドネスマスク)もアルティメット・スカー・バスターもだ。

 だが、そのことごとくがネプチューンマンの予想の範疇を超えていった。

 

(思い返してみれば、前回の“究極の超人タッグ”でも……オレとセイウチンの“ヘル・イクスパンションズ”に対して、“マッドネス”スカーのひとりトリニティーズは猛威を振るっていた。一対二という逆境をものともせずだ。最終的にはスカーの残虐性にあてられたセイウチンが獣性を全開放しそれを圧倒したが……考えようによってはスカーフェイス打倒はセイウチンに助けられたとも言える。シングルでは最初から、オレはスカーフェイスには勝てなかったというのか~~っ?)

 

 持ち前のパワーを活かしてアルティメット・スカー・バスターから逃れようともがくネプチューンマン。

 スカーフェイスはそれを嘲笑うかのような完璧なフックでネプチューンマンを封殺していた。

 老兵には、その現実が受け入れられない。

 

(そんなことはねえ~~っ! あの試合はセイウチンの獣性を解き放つため、あえて劣勢を演じてやったんだ~~っ! こんな小癪な若僧に、いいようにされてたまるか~~っ!)

 

 逆転を試みるが、もはやネプチューンマンひとりの力ではどうすることもできない。

 そう――ネプチューンマン“ひとり”の力だけでは。

 

 異変が起こったのは、そのときであった。

 

『な、なんだ~~っ!? スカーフェイスの放つアルティメット・スカー・バスターの軌道が、少しずつ左にそれていく――っ』

 

 本来なら上空から真下のキャンバスへ、重力の赴くまままっすぐ落ちるはずのバスターが、斜めになっていく。

 同時に、固められているネプチューンマンの左腕から光の管のようなものが迸り、リングの外側へ伸びていた。

 

(光の管……まさか、セイウチン!)

 

 光の管のたどり着く先には、セイウチンがいた。

 より厳密には、セイウチンの牙に繋がっている。

 

「バ……バスターの軌道が保てない! なにか強烈な力に引っ張られる!」

 

 軌道が斜めになってしまっては、究極のフックも維持することが困難になる。

 両大腿部を捕らえる両腕、首を三角絞めにする両脚、揃って外れてしまう。

 

『あ――っとスカーフェイス、アルティメット・スカー・バスター失敗! 技が崩れ、不格好な形で落下してしまう――っ』

 

 スカーフェイスとネプチューンマンはリング端に落下。

 もちろんバスターは成立せず、ふたりとも受け身をミスしてのちょっとしたダメージを負っただけだ。

 ネプチューンマンは起き上がり際、エプロンサイドで困惑している様子のセイウチンを見やる。

 

「セイウチン、おまえ……まさか控室に置いてあったアレを……」

 

 問いたい気持ちはあった――控室に置いてあったアレ。

 すなわち、光ファイバーパワーの根源である蛍石を勝手に食ったのではないかと。

 だが今はまだ試合中だ。悠長にそんな質問を投げている場合ではない。

 

「不本意だが……この状況、最大限利用させてもらう~~っ」

 

『ネプチューンマン、再び左腕を高々と掲げた――っ』

 

 狙うは、必殺技失敗によるダウンから復帰しようとしているスカーフェイス。

 そのスカーの向こう側、エプロンサイドにはパートナーのセイウチンが立っている。

 彼の牙と連結された光ファイバーのレールは、スカーフェイスの体を透過しネプチューンマンの左腕と繋がっていた。

 

「オプティカル・ファイバー・喧嘩(クォーラル)ボンバー!」

 

 技名と共に駆け出し、スカーフェイスの喉元に自慢の剛腕を叩きつける。

 どういうわけか一歩も回避することができなかったスカーは、衝撃のあまりぶっ飛ばされた。

 

『ネプチューンマン必殺の一撃、今度こそスカーフェイスに命中――っ! その威力は絶大だ――っ!』

 

 再びのダウン。

 自身の代名詞ともいえる必殺技を決めたネプチューンマンだったが、この一撃で攻勢を終えるつもりはない。

 即座にスカーフェイスの体に覆いかぶさり、相手を逆さの状態で持ち上げ、空高く放った。

 

完璧(パーフェクト)超人時代は他の弱小超人の技など使わねえと息巻いていたが、ここは先輩超人の技をリスペクト・改良して使うスカーフェイスに敬意を表し、これで決めさせてもらうぜ」

 

 自身も飛び上がり、空中で逆さになったスカーの身を固めていく。

 両腕で両大腿部を掴み、首は両脚でクラッチ、その体勢のまま落とせば究極の名を冠するバスターが再び蔵前国技館に降臨する。

 

「掟破りのアルティメット・スカー・バスター!」

 

『なんということだ――っ! 今度はネプチューンマンがスカーフェイスにアルティメット・スカー・バスターを仕掛ける――っ!』

 

 対戦相手の必殺技を、それもたった今自身が食らわされようとしていた技を、そっくりそのままやり返す。

 ネプチューンマンのまさかの行動にギャラリーは揃って驚嘆、歓声を上げた。

 

「ス……スカー」

 

 一転して劣勢になってしまったパートナーの名を力なく呼んだのは、三下り半を突きつけられたジェイドである。

 スカーは自身最大の決め技を失敗した。この劣勢は致し方ないこと。このまま決着となっても文句のつけようがない。

 そんな諦めにも似たような態度が、ある男の琴線に触れた。

 

「おい! なにをやってやがる――っ!」

 

 その男はジェイドの背中に大声をぶつける。

 ジェイドにとっては、幼い頃からよく聞いてきた声。

 振り向き、そこにいたのは、客席から飛び出してきた軍服の超人。

 

師匠(レーラァ)!」

 

 ジェイドが21世紀の未来で師匠と仰ぐブロッケンJrだった。

 

「タッグパートナーのピンチだってのになにをぼーっとしてやがるんだ! とっとと救出にいかねえか――っ!」

「し、しかし今は手出し無用の変則シングルマッチ中で……」

「そんなルール誰が決めた!? 相棒がやられるのを黙って見ているほどの理由になるのか!? 新世代超人(ニュージェネレーション)ってのはそんなに薄情なのかよ!」

 

 ブロッケンJrは、ジェイドの諦観が気に入らない。

 胡散臭い未来からの使者だとか、ブロッケン一族の至宝であるベルリンの赤い雨を使う謎だとか、今はどうでもいい。

 とにかく言ってやらねば気がすまない――そんな思いから、叫ぶ。

 

「スカーフェイスはおまえの友達なんじゃないのか……ジェイド!」

「……ッ!」

 

 スーパー・トリニティーズは正義超人のタッグチーム。

 だとすればジェイドとスカーフェイスの関係は、“友情”という絆で結ばれた友人同士のはずだ。

 だから。

 

「友達が道を踏み外そうとしてるってんなら、ぶん殴ってでも止めてみせやがれ――っ!」

「はい、師匠(レーラァ)!」

 

 ブロッケンJrはまさしく師匠のようにジェイドを叱咤し、ジェイドもまた弟子(シューラァ)のようにその教えに従った。

 リング内に飛び出し、今まさにキャンバスへ着弾しようとしているアルティメット・スカー・バスターに突撃する。

 衝撃音はすぐだった。

 

『こ、これは~~っ!?』

 

 アルティメット・スカー・バスターは、確かに着弾した。

 しかしながら、ネプチューンマンの臀部を受け止めたのは固いキャンバスではない。

 技の衝撃を少しでも逃がそうと割って入った――ジェイドの背中である。

 

『なんと、ネプチューンマンとスカーフェイスの変則シングルマッチを傍観していたジェイドがリングに乱入し……パートナーの窮地を救うべく身を盾にして掟破りのアルティメット・スカー・バスターを妨害した――っ!』

 

 アルティメット・スカー・バスターはジェイドの体を下敷きにする形でリングに落ちた。

 これでは落下時の衝撃が分散してしまい、スカーの背骨や首を完全破壊することはできない。

 だがその代わりに、クッション役のジェイドへのダメージは甚大だ。

 

「ジェ……ジェイド、おめー……」

「ざ……ざまあねえな……スカー」

 

 ネプチューンマンはそこでスカーフェイスを解放。

 アルティメット・スカー・バスターが解かれ、ひとり静かにリングに立つ。

 

『技が解かれ、リングに立っているのはネプチューンマンただひとり! トリニティーズのふたりはリング上に伏している――っ』

 

 不完全とはいえバスターの衝撃を受けてしまったスカーフェイスに、その威力を肩代わりしてしまったジェイド。

 ふたりのダウンは無理からぬことであったが、互いに意識はまだ消えていない。

 うつ伏せの姿勢のまま、スカーフェイスがジェイドを睨みつける。

 

「てめえ~~っ、タッグは解消だと言ったはずだ。あともうちょっとで技を返せたところだってのに邪魔しやがって~~っ」

「強がり言ってんじゃねえ。相手の都合に関係なくズカズカとお節介をやくのがオレの流儀……このままでは相棒が惨めに敗れ去ると判断したまでだ」

「シングルじゃオレがネプチューンマンに勝てねえって言いてえのか~~っ」

「その前にこれはタッグマッチなんだよ。いつも冷静なおまえが、ロートル老害ジジイの口車に乗せられてんじゃねえ」

 

 罵り合いながらも、その関係性が確かに修復されようとしている。

 前回の“究極の超人タッグ戦”をなぞるようなシーンを見て、ネプチューンマンはニヤリと笑った。

 

「ハッ、スカーの口の悪さがジェイドに伝播してやがる」

 

 悪行超人に戻りつつあるスカーフェイスの暴走を食い止める。

 ネプチューンマンがこの試合に課した個人的なミッションは、失敗したと言うべきだろう。

 傲慢な友を正せるのは――やはり友だけなのだ。

 

(オレが一度見た歴史とは形が違うが……いいもんだな、正義超人の友情ってやつは)

 

 スーパー・トリニティーズの片翼にしてスカーフェイスの相棒、ジェイド。

 この男こそが、スカーフェイス更正のためのなによりのキーマンだった。

 

(スペシャルリザーブマッチに参加せず、ブロッケンJrが健在のままこの試合が始まった結果……ジェイドの“ベルリンの赤い雨”消失阻止の他にも、大きな恩恵がもたらされたようだ)

 

 ネプチューンマンは若者たちの動向を暖かく見守る。

 以前、己の命を救ってくれたカオスが後進の育成に努めよと願いを託してくれたことを思い出しながら。

 

『あ――っと“スーパー・トリニティーズ”のふたり、言い争いの末に立ち上がった! どうやらここからは元通りのタッグマッチに戻るようであります!』

 

 立ち上がったふたりの瞳からは、戦意が消えていない。

 むしろ先ほどより燃え上がっているようだった。

 

(さて、ここからが本番。万全となったスーパー・トリニティーズに、オレとセイウチンのネオ・イクスパンションズが勝てるか否か)

 

 戦力的な不安はあるが、余計なことを考えなくてもよくなったと思えば、むしろやりやすくなった。

 ネプチューンマンは構え、後ろに控えていた相棒も闘志をみなぎらせる。

 

「おめーらがそうくるってんなら、オラも黙って見ている理由はねえ――っ!」

 

 彼らと同じ新世代超人の一角、セイウチンだ。

 やる気満々の相棒の姿を嬉しく思い、ネプチューンマンは指示を出す。

 

「おうよ! 合わせろセイウチン!」

「おお――っ!」

 

 ネプチューンマンとセイウチンは揃ってトップロープの上に立ち、たわむロープの反動を利用して飛んだ。

 向かう先は、もちろんリング上のライバルふたりだ。

 

『ネオ・イクスパンションズ、スーパー・トリニティーズのふたりにフライング・ボディアタックだ――っ』

 

 来るとわかっていてもなぜか避けられない、それがロープ上段からの攻撃というもの。

 ジェイドもスカーフェイスもこれを正面からくらってしまい、せっかく立ち上がったばかりなのにまたもやダウンしてしまう。

 

「やつらはオレの“掟破りのアルティメット・スカー・バスター”のダメージが残っている! ここで畳み掛けるぞ!」

「わかっただ!」

 

 カウント前になんとか立ち上がるスーパー・トリニティーズ。

 一方、ネオ・イクスパンションズはそれぞれ相手の背後に回り込んでいた。

 

 ネプチューンマンがジェイドを脚から持ち上げ反り投げるダブルレッグ・スープレックス。

 セイウチンがスカーフェイスの腰回りを掴んで反り投げるジャーマン・スープレックス。

 それらを背中合わせに繰り出すことで、ジェイドとスカーの頭部が正面衝突を起こす。

 

「レインボーブリッジ・スープレックス!」

 

 ダブルの反り投げが合わさったとき、蔵前国技館に虹の橋がかかった。

 

『ネオ・イクスパンションズのツープラトンが炸裂~~っ! 虹を描くような軌道で互いのスープレックスを衝突させた――っ!』

 

 頭部に大ダメージを負い、キャンバスに伏すトリニティーズのふたり。

 

「グゥ~~ッ」

 

 特に、直前で掟破りのアルティメット・スカー・バスターを食らっていたスカーフェイスの消耗は激しかった。

 ジェイドはそんなパートナーの悲痛な姿を見て、己が奮起せねばと気合いを入れる。

 

「スカー、おまえは少し休んでろ!」

 

 スカーを庇うように立ち上がり、ひとり勇敢にネオ・イクスパンションズと対峙する。

 

「ネプチューンマン、ここはオラが!」

 

 対し、ネオ・イクスパンションズ側はセイウチンが前に出た。

 試合序盤に展開されたジェイドvsセイウチンのマッチアップ再び。

 しかしながら試合終盤となる今、リングに立つジェイドの心境は大きく様変わりしていた。

 

「セイウチン、オレはもう手加減などしねえ。おまえのことは倒すべきライバルとして立ち向かう」

 

 右手を構え、油断も容赦も躊躇も捨てた踏み込みで、友に自慢の技を発動させる。

 

「ベルリンの赤い雨――っ!」

 

 炎をまとった手刀を正面から、袈裟斬りの要領で繰り出した。

 セイウチンは手も足も動かさず、ただじっと構えてその攻撃を待つ。

 馬鹿な、それでは必殺は必定――その一瞬、誰もがセイウチンの敗北をイメージした。

 だが、結果は異なる。

 

『な、なんということだ――っ! セイウチン、ジェイド必殺の“ベルリンの赤い雨”を牙で受け止めた――っ!』

 

 ジェイド必殺の“ベルリンの赤い雨”は、手でも足でもなく、セイウチンの牙によって受け止められていた。

 この驚きの結果に、ふたりのことをよく知るテリー・ザ・キッドとキン肉万太郎が揃って声を上げる。

 

「ウソだろ!? 一歩間違えれば顔面から真っ二つなんだぞ!?」

「セイウチンの牙ってそんなに強かったか~~っ!?」

 

 以前の――20世紀にタイムワープしてくる前のセイウチンでは、間違いなく不可能だった芸当だ。

 これはネプチューンマンとの鍛錬の結果なのか、それとも彼の秘められたポテンシャルか、もしくはジェイドの不調か。

 答えはどれでもない。唯一、ネプチューンマンだけがそのことを知っている。

 

「この試合が始まってから、左の牙が疼いて仕方がねえだ~~っ。まるでとんでもねえパワーが宿っているかのような……オラの超人レスラーとしての本能が、こいつを使えと訴えかけてくる――っ」

 

 力の正体を知らずとも、セイウチンは自身に宿ったパワーを本能で理解し始めていた。

 ネプチューンマンはその頼りになる背中を見て、自分の中の仮説を確信に導く。

 

(や、やはりセイウチンはオレが控室に置いていたアレを……フッ素をふんだんに含んだ“蛍石”を食ったに違いない。おそらくはオレがビッグ・ボンバーズに発破をかけにいくため留守にしたときか……だとすればセイウチンの牙は、完璧(パーフェクト)オプティカル・パワーを手に入れ強化されているはず)

 

 ネプチューンマンが体験した、忌まわしき前回の“究極の超人タッグ戦”と同様に。

 そこが唯一最大の懸念点であはったが、現在のセイウチンに獣性による暴走は見られない。

 ここはパートナーを信じ、任せるべきだと判断した。

 

「ウ、ウウ~~ッ。まさか師匠から託されたベルリンの赤い雨が……」

 

 ベルリンの赤い雨を思わぬ方法で防がれたジェイドは、隙を見せている。

 セイウチンはその隙に乗じて、正面から相手の両腕を両脇で抱え込む形でクラッチ、閂状態から後ろへ反り投げた。

 

『セイウチン、ジェイドをかんぬきスープレックスで投げた――っ』

 

 執拗なスープレックス攻撃。

 立て続けに頭部を痛めつけられたジェイドは、いかにヘルメットをしていようとも脳へのダメージを防ぎきれない。

 

「だらしねえぞ、ジェイド――ッ!」

 

 不甲斐ないパートナーを叱責する声が、リング端のトップロープから響き渡った。

 スカーフェイスである。

 彼はロープの上にのぼり、逆転の光を渇望をする眼差しでジェイドを見ていた。

 

「スカー! 休んでいろと……」

「うるせえ! これがタッグマッチだと言ったのはおめーだろうが! シングルの“ベル赤”が通用しねえなら、ここはオレたちが練習した“あの技”を使うときだろう!?」

 

 詳細は告げず、遠回しに目で合図する。

 オレたちなら、真の絆で繋がったタッグチームならそれで十分だと言わんばかりに。

 

「そ……そうか――っ!」

 

 ジェイドはスカーの意図を正しく汲み取り、確かなる逆転の光を見た。

 すぐさま駆け出す。

 

『お――っとジェイド、ロープに飛んだ――っ』

 

 リング外に飛び出しながらもロープを引っ張り、その勢いを活かしてリングに舞い戻る。

 

「森の木の葉の如くに……体、軽やかに!」

「トリャタァ――ッ!」

 

 そのまま上空へ。

 同タイミングで、スカーもトップロープの反動を活かして大きく跳躍した。

 

「腕を弓の如くに引き、流れ星の如くに振り下ろす!」

 

 大きく振るった右腕が空気を斬り、摩擦を生む。

 

「その時、手刀……筋骨“壮”となる!」

 

 変化が現れたのは右腕の先端部分である右手。

 その開掌はもはや一振りの刃と言っても過言ではない。

 

「その壮拳もって風擦れば炎立つ――!」

 

 摩擦が刃に炎を宿し、ドラゴンブレスが如き勢いで上空へと放たれた。

 

「スワロウ・テール!」

 

 炎が放たれた先には、宙で静止し背面のスワロウ・テールを向けていたスカーフェイスがいる。

 ジェイドの右手から、スカーの燕尾へ。

 継承されし炎はネオ・イクスパンションズを打倒する必殺の刃へと成長を果たした。

 

「敵の懐に深く入り肉斬り骨断てば、ベルリンに赤い雨が降る……任せたぞ、スカー!」

 

 炎をまとったスカーフェイスが、炎刃と化したスワロウ・テールが、直下のセイウチンを狙う。

 これぞ、リハーサルでは廃ビルを一刀両断してみせたスーパー・トリニティーズ必殺のツープラトン。

 名を――

 

「レッド・レインテイル――ッ!!」

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