ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第020話 闇夜に暗躍するのは…!?

 すっかり日も落ちた夜。

 場所は蔵前国技館から移り、明日の抽選会場であるホテル、グランデ・パレスがある九段周辺。

 数々の目撃情報をもとにようやく探し人の姿を捉えたネプチューンマンは、ひとけのない路地でそのふたりの前に立ちふさがった。

 

「よお、大将」

 

 ネプチューンマンの眼前に立つのは、黒尽くめのボディを持った超人とクマのヌイグルミを着た巨漢。

 ウォーズマン&マイケルのヘルズ・ベアーズである。

 

「コーホー」

 

 機械的な呼吸音で応えつつ、しかしそれだけ。

 ウォーズマンはネプチューンマンに一瞥もくれず、横を素通りしようとしていた。

 

「おいおい、無視か? オレはこの20世紀で唯一“ヘルズ・ベアーズ”2号・ベルモンドの正体を看破した男だぞ? クイズに正解したご褒美にファンサービスのひとつでもくれたっていいじゃねえか~~っ」

 

 冗談めいた口調でそう言うネプチューンマン。

 ウォーズマンは感情なさげに顔を向け、この言葉を放つ。

 

「“人の振り見て我が振り直せ”」

 

 言われたネプチューンマンは、肩を竦めた。

 ウォーズマンは続ける。

 

「ネプチューンマン……おまえは我がパートナー、マイケルの危険性を忠告した身でありながら、先の“スーパー・トリニティーズ”戦では人のことを言えないようなファイトをしたな」

「なんのことだ?」

「とぼけるな。あの21世紀のテクノロジーを利用したオプティカルファイバー・パワーとやら……とても同じ正義超人であるスカーフェイスとジェイドに振るっていい力ではない。一歩間違えれば、おまえは未来ある若者たちを死に至らしめるところだったんだぞ」

 

 先刻、蔵前国技館で行われたネオ・イクスパンションズvsスーパー・トリニティーズの一戦。

 そのフィニッシュ・ホールドとなった技は、対戦相手の命を刈り取ることも容易な威力だった。

 ウォーズマンはそんな技を仲間の新世代超人(ニュージェネレーション)に振るったことに対して怒りを覚えていたのだ。

 さすがは伝説超人(レジェンド)の中でもひときわ友情に熱く心根の優しい男。ネプチューンマンは背筋を正す。

 

「それについては反省している。言い訳になるが、トリニティーズ戦でオプティカルファイバー・パワーを使う予定はなかった……すべてはセイウチンの想定外の行動によるもの。いや、それも言い訳だな。原因はオレの管理不行き届きだ」

 

 危険性があったのは確かだが、己に仲間を害するような意図はなかった。

 そう伝えたかったのだが、ウォーズマンの反応は芳しくない。

 

「どうだかな。オレにはおまえが、セイウチンを(てい)よく利用しているようにしか思えん」

「おいおい、ケビンマスクを救うためにわざわざ21世紀のイギリスから出張(でば)ってきたオレを疑うってのか?」

「おまえが出てきたのはここが“宇宙超人タッグ・トーナメント”の時代だったからだろう。“d.M.p(デーモンプラント)”や“悪魔の種子(デーモンシード)”の事件でも一切姿を見せなかったおまえが、今さら正義超人面をするな」

「耳が痛い……と言いてえところだが、そんなのはおめーも同じだろ。まだバリバリの全盛期として闘えるロボ超人のくせして」

 

 加齢による肉体の衰え。

 ネプチューンマンはそれを徹底した山籠りトレーニングで打ち消していたが、他の伝説超人は皆一線を退いている。

 だが唯一、機械の体を持つウォーズマンはそういった問題から縁遠いところにいた。

 いざとなれば若手の新世代超人と混じって最前線で悪行超人と闘うことだってできる。

 実際にそれをやってみせているのがこの“究極の超人タッグ戦”だ。

 

「クゥゥ~~ン」

 

 腹でも空いているのか、マイケルがウォーズマンの後ろで早く帰ろうよとでも言いたげな鳴き声を出す。

 ウォーズマンはそんな相棒をなだめながら、ネプチューンマンを牽制した。

 

「明日の抽選会について、なにか企てがあるようだが……あいにくオレたちはおまえのプランに乗るつもりはない。ヘルズ・ベアーズは好きにやらせてもらう」

「チッ、わかったよ。手間を取らせて悪かったな」

 

 そのやり取りを最後に、ヘルズ・ベアーズは別れの挨拶もなく立ち去った。

 ネプチューンマンは離れていくウォーズマンの背を見ながら、苦々しく思う。

 

「ここでウォーズマンの協力が得られれば計画は万全だったが……あの野郎、“宇宙超人タッグ・トーナメント”のときの恨みか? オレのことをやたら嫌ってやがる」

 

 お互い時空船(タイム・シップ)に密航してきた身、そしてお互い現役にしがみつこうとするおっさん伝説超人。

 かつては命のやり取りをした間柄ではあるが、立場が近しいからこそ協力できると思ったのだが……どうやら難しいようだ。

 

「まあいいさ。勝負は今日の夜……悪事が闇夜に隠される時だ」

 

 その勝負に挑むのは、ネプチューンマン本人ではない。

 ある男の伝手で仕事を依頼した“やつ”と――そしてつい先ほど、保険として新たに依頼した“やつ”。

 

「邪法を使うって意味なら、ウォーズマン……おまえのオレへの警戒心は大正解かもしれないぜ~~っ」

 

 ネプチューンマンは完璧(パーフェクト)超人時代のような悪い笑みを浮かべ、吉報を待ち望んだ。

 

 

 ◇

 

 

 都内某所。

 日付がそろそろ変わろうかという時刻、煌々と照明が灯る体育館施設の外で、ひとりの超人が立っていた。

 メキシカン・レスラー風の出で立ちをしたマスクマンの名は、オルテガ。

“究極の超人タッグ戦”本戦出場チームであるカーペット・ボミングスの一員だ。

 

 オルテガはつい先ほどまで、パートナーのモアイドンとこの体育館施設で練習をしていた。

 それを終え、今は相棒の身支度が整うのを外で待っているところである。

 

 待っている間に考えるのは、明日行われる“究極の超人タッグ戦”二回戦の組み合わせ抽選会のこと。

 伝説超人だの新世代超人だのと呼ばれる人気超人が集う祭典の中で、カーペット・ボミングスは異質な存在だった。

 多くの超人レスリングファンは「そんな奴らは聞いたことがない」――そう言うだろうが、それもそのはず。

 彼らの真の名は“暴風雨隊(トルメンターズ)”。

 今大会参加にあたり改名せざるをえないほどの悪名を持っていたふたりなのだ。

 

 先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”では中南米予選に参加し見事快勝。

 本来ならビッグ・ボンバーズあたりと代わってキン肉マンたちのライバルになるはずだった。

 だが予選トーナメントの際、相手のチームを惨殺。

 セコンドについていた相手超人の師匠まで殺してしまい、投獄のうえ一大会の謹慎を言い渡された。

 

 晴れて野に放たれた今、オルテガとモアイドンが欲するのは自分たちの存在感を知らしめるためのインパクト。

 そのためには誰を狙うのが最適か――獲物を厳選する肉食獣のように、オルテガはマスクの下で舌なめずりした。

 

「待たせた~~っ」

 

 そうこうしている内に、パートナーであるモアイドンが体育館から出てくる。

 モアイドンはその名のとおり、イースター島のモアイ像を組み合わせたような巨漢超人だ。

 

「ドフィドフィ……シャワーが長いぞモアイドン。明日は“究極の超人タッグ戦”二回戦の組み合わせカードを決める重要な抽選会。しっかり休んで臨まねえとな」

「モアモア……悪かったな~~っ」

 

 オルテガとモアイドンは軽く言葉を交わし、今晩の宿へ移動するため歩き出す。

 モアイドンの身長は270センチ、体重は980キロ。

 超人としても超重量級。夜間に街を歩くだけでも騒音となるのは必定だ。

 もちろん、そんなことを悪びれるふたりではない。

 

「ところでモアイドン、オレたちの標的はわかっているな?」

「今さらなんの確認だ?」

「モチベーションを高めるためだよ。宇宙超人委員会の用意する抽選会なんてどうせろくなもんじゃねえ。意思統一は大事だろう?」

「あ、ああ……」

 

 モアイドンは歯切れの悪い返事をする。

 考える時間は長く、不自然な沈黙が続いた。

 ほどなくして、モアイドンが口を開く。

 

「もちろん、知られざる強豪チームであるオレたちの存在感を知らしめるためには、とんでもなくインパクトのあるやつらを殺るべきだ。となれば、ここはやはり頂点……前“宇宙超人タッグ・トーナメント”の覇者である“ザ・マシンガンズ”だろうぜ――っ」

 

“究極の超人タッグ戦”の頂点に立つためには、やはりザ・マシンガンズの打倒は避けれない道である。

 他のタッグチームに倒してもらおうなどという軟弱な考えはカーペット・ボミングスのふたりにはない。

 模範解答とも言えるモアイドンの言葉に、オルテガは小気味よく笑った。

 

「ドフィドフィ、わかってるじゃねえか。今回のトーナメントの火付け役でもある“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”や、まさかの正体で注目を浴びてる“ヘルズ・ベアーズ”も悪くねえが……シード枠のマシンガンズが一勝もできずオレたちに敗れ去ったとあってはメディアは大騒ぎだろうからな――っ」

 

 それを受けて、モアイドンも笑い返す。

 

「モア~~ッ。それに、マシンガンズには他のチームにはない明確な弱点があるしなあ――っ」

 

 モアイドンがそう答え、オルテガは足を止めた。

 

「弱点? なんだそれは」

「え? 知らんのか? いや……」

 

 再びの沈黙。

 モアイドンはその弱点とやらを言語化できぬまま、しびれを切らしたオルテガが歩き出した。

 

 ふたりの間に妙な空気が流れる。

 長年連れ添ったタッグとは思えないような、倦怠期の夫婦のような空気感だ。

 別段、仲違いをしたというわけではない。ではこの空気感の正体はなんなのか?

 オルテガはすでにその正体に気づいていた。

 

 宿への道のりの途中、開けた公園に入ったところでオルテガは足を止める。

 遊具は少ない。早朝には近隣に住む老人がゲートボールでもしていそうな広い公園だ。

 オルテガに続くモアイドンも足を止めた。表情からは相棒が足を止めたことを訝る様子が窺える。

 

「ところでモアイドン、先日のムショ暮らしで少し痩せたか?」

「モア?」

 

 唐突な質問に、冷や汗を流すモアイドン。

 オルテガはそんなモアイドンに向き直り、マスクの奥から覗く眼光を鋭くさせた。

 

「巨漢のおまえが歩くときのズシズシとした重量たっぷりの音……どうにも物足りねえ。まるで姿だけ変えた別人のようだぜ――っ」

 

 放たれるのは、敵意。

 オルテガはパートナーであるはずのモアイドンに対し、今にも襲いかからんほどの殺気を浴びせた。

 

「モア……ッ! なにをバカなことを言ってやがる!?」

「とぼけやがって~~っ。おまえが我がパートナー、モアイドンでないことはもう見抜いている――っ」

 

 そして、実際に襲いかかった。

“無重力ファンタジスタ”という異名が納得できるほどの軽やかなジャンプ。

 そこから繰り出される高い打点の飛び蹴りは、巨漢超人モアイドンの顔面まで届くだろう。

 

「正体を現せ! ドフィ――ッ!」

 

 オルテガの蹴りがモアイドンの顔面を穿った。

 と同時に、モアイドンの巨体が木っ端微塵に粉砕――しかしこれは、オルテガの蹴りの威力によるものではない。

 最初からハリボテだったのだ。

 モアイドンの“中”にいた超人は、オルテガの上空より声を落とす。

 

「オルテガよ! よくぞ我が擬態を見破った!」

 

 首を上に傾けるオルテガ。

 空に浮かぶは白い月――それを背景に、声を発した何者かの影。

 その超人はオルテガの攻撃を避けたあと、宙に浮いていた。

 

「お……おまえは!?」

 

 オルテガはそのまさかの正体に瞠目する。

 

 夜の闇に溶け込む濃い色の装束。

 頭部まで頭巾で覆い、左目には黒い影。

 首に巻いた襟巻きは夜風に揺れ、存在感を示す。

 

「闇に消え、闇に生まれる。ザ・ニンジャ、ここに参上!」

 

“究極の超人タッグ戦”には影も形もなかったはずの超人。

 悪魔超人ザ・ニンジャがそこにいた。

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