ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第021話 “絨毯爆撃”暗殺指令!!

 カーペット・ボミングスの片割れ、モアイドンの姿に扮していた謎の超人。

 正体を表したその男は忍び装束に忍び頭巾という、まさに“忍者”としか言い表せない風貌をしていた。

 

「おまえは……悪魔超人、ザ・ニンジャ!」

 

 初対面ではあるものの、その存在を知っていたオルテガは宙に浮かぶ超人の属性と名を正しく口にする。

 

 悪魔超人ザ・ニンジャ。

“究極の超人タッグ戦”の前進“宇宙超人タッグ・トーナメント”よりさらに前。

 悪魔六騎士として正義超人軍に勝負を仕掛けた集団、そのひとりであった。

 

「ほう! 拙者のことを知っていてくれているとは恐悦至極! 正体を明かした甲斐があるというもの」

 

 上空のザ・ニンジャは溌剌とした声で言う。

 対し、地上のオルテガは怪訝な眼差しを向けていた。

 

「悪魔六騎士とアイドル超人軍の闘いはオレも耳にしている……まったくくだらないという感想しか出てこない、どうでもいいものだがな。しかし解せないのはおまえが生きてここにいることだ。たしかおまえは、正義超人ブロッケンJrとの闘いに敗れ死んだのではなかったか?」

 

 ウォーズマンの体内で行われた五重のリング決戦において、ザ・ニンジャはブロッケンJrと対戦。

 忍法を駆使した多彩な攻めで優勢を手繰り寄せるも、最終的にはブロッケンJrの執念に敗れ死に追いやられた。

“宇宙超人タッグ・トーナメント”では同胞であるアシュラマンが地獄のキャンバスにより召喚。

 亡霊となった姿でマッスル・ブラザーズを苦しめるという悪行を働いていた。

 

 正義超人との闘いで死亡し、亡霊となってまで悪魔の手助けをした男が、目の前にいる。

 オルテガは自身に霊感が目覚めた線を疑っていたが、事実は異なるらしい。

 

「フッ……言っただろう。忍びとは闇に消え、闇に生まれるもの……“宇宙超人タッグ・トーナメント”の直後に理由(ワケ)あって復活したのだ。まさか亡霊を相手に話をしているとでも思ったか?」

 

 一度死んだ超人がそう簡単に蘇ってたまるか。オルテガはそう言いたかった。

 だがそんなどうでもいいことをつついても意味はない。ここは話を進めよう。

 

「解せんのはもうひとつある。悪魔超人であるおまえが、なぜオレの目の前に現れた。それもパートナーであるモアイドンの姿に扮し……“究極の超人タッグ戦”二回戦の抽選会を控えたこの前夜に」

 

 このふたりに接点などなにもない。まさか暴風雨隊(トルメンターズ)時代のファンというわけでもあるまいに。

 ファンでなければその逆、どこかで恨みを買ったという線も考えてみるが思い当たるところはない。

 考え込むオルテガに、ザ・ニンジャは答えを返さずただ不敵に笑った。

 

「フフフ……」

「ま……まさか!」

 

 その笑みを見て、ひとつの可能性に思い至るオルテガ。

 ザ・ニンジャは彼の胸中を知ってか知らずか、己の目的を語り始める。

 

「拙者はシングルマッチ専門。タッグマッチの大会などに興味はない……宇宙超人委員会が主催し、観衆の見世物になるような大会ならなおさらだ。ここへは悪魔超人として――否。悪魔六騎士の一員として任を果たしに来たまでのこと」

 

 悪魔六騎士の一員として任を果たす。

 オルテガの脳裏には、ザ・ニンジャが亡霊となってアシュラマンの手助けをしていたシーンが浮かんでいた。

 

「任務だと~~っ? なんだそれは」

「知れたこと……今宵は月夜」

 

 空を見上げるザ・ニンジャ。月の美しさに酔いしれるような、陶酔した表情を覗かせる。

 しかしそれも一瞬。すぐに視線を戻し、殺意みなぎる形相でオルテガを射竦めた。

 

「……闇討ち! “カーペット・ボミングス”がひとり、オルテガよ! 我が同胞アシュラマンの依頼により、お命頂戴いたす!」

 

 宣言と同時に、身にまとった忍び装束の懐に手を伸ばす。

 取り出したるは数枚の手裏剣。

 忍者御用達の投擲武器でもって、オルテガの命を狙った。

 

「てやぁ――っ!」

「ドフィドフィ――ッ!」

 

 投げ放たれた手裏剣に対し、オルテガは連続のバック転で回避。

 手裏剣は公園の地面に突き刺さり、翌朝近隣住民に通報される未来が予想された。

 オルテガは怒りをあらわにしながらザ・ニンジャを睨みつける。

 

「アシュラマンだと~~っ。そうかテメー、リザーバーになったアシュラマン&チェック・メイトをトーナメントの本戦に参加させるためにオレたちの枠を狙ってやがるんだな~~っ?」

「得心がいったか」

 

 アシュラマンは今日行われたスペシャルリザーブマッチでリザーブ枠に入った超人だ。

 リザーバーが本戦に参加するためには、他の本戦参加チームが席を譲る必要がある。

 たとえば怪我によるドクターストップ、たとえば謎の失踪――などだ。

 

「拙者が受けた依頼は時間超人のリザーブマッチ参加妨害……そしてトーナメントの枠にひとつ空席を設けること! そのための生贄には、アシュラマンの協力者であるネプチューンマンがおぬしたち“カーペット・ボミングス”を指名した!」

 

 オルテガにとっては関係ないことだが、リザーブマッチの際“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”にちょっかいをかけたフードの男の正体もこのザ・ニンジャである。

 この襲撃にアシュラマンが絡んでいることには納得のいったオルテガだったが、もうひとつの名は予想外だった。

 

「ネプチューンマンまで絡んでやがるのか。しかしなんだってオレたちを」

「おぬしたちが一番邪魔で、かつ間引きやすいからとのことだ。さらにもう一点、間引きバトルロイヤルでの恨みも理由に挙げていたな。おぬしたちに止められなければ、イリューヒン&バリアフリーマンを時間超人たちから救えたかもしれんと」

「ナメやがって、あのジジイ~~ッ。とんだ逆恨みだぜ――っ」

 

 間引きバトルロイヤルでキン肉万太郎が時間超人の“死時計の刻印(デスウォッチ・ブランディング)”の餌食になろうとした際、救出に向かおうとしたネプチューンマンをオルテガとモアイドンが止めたことがあった。

 結果的に万太郎は助かったが、身代わりにイリューヒンとバリアフリーマンが技をくらい退場。ネプチューンマンはそのことを根に持っているのだろう。

 オルテガの怒りのボルテージはどんどん上昇していき、狙い通りと言わんばかりにザ・ニンジャが笑った。

 そして、おもむろに口元を布で覆う。

 

「おしゃべりはここまでだ。受けよ! 三猿暗黒の術――っ!」

 

 続いて、地上めがけて煙玉を投げ入れた。

 公園があっという間に黒い煙に覆われ、オルテガはザ・ニンジャの姿を見失う。

 

「ドフィ~~ッ。ただでさえ夜闇で暗いってのに、これではなにも見えん」

「それが拙者の狙いよ。“無重力ファンタジスタ”と呼ばれるおぬしの空中殺法も、この暗闇では繰り出せまい」

 

 視覚、聴覚、言語機能を遮断する悪魔忍法“三猿暗黒の術”。

 見ざる言わざる聞かざるの言葉を連想させる術技に、オルテガはただ棒立ちになるしかなかった。

 その隙を突くのが、ザ・ニンジャの狙いである。

 

「オリャアア――ッ」

「ドフィ~~ッ!」

 

 煙幕に紛れ、ザ・ニンジャがオルテガの腹にミドルキックを叩き込む。

 攻撃タイミングがわからなければ防御はままならず、オルテガは痛みに悶絶するしかない。

 

「リャッ! リャッ! リャッ!」

 

 そのさらなる隙に乗じ、ザ・ニンジャが掌底の連打を見舞う。

 狙いどころはオルテガの顔面、頬や鼻っ面、顎に目と、人体急所が集まる箇所を執拗に攻め続ける。

 顔面狙いというなら敵は正面にいるはず。

 オルテガは乱雑に腕を振るい、目の前にいるザ・ニンジャを遠ざけた。

 

「オルテガよ! おぬしたちカーペット・ボミングスはかつて“暴風雨隊(トルメンターズ)”の名で残虐ファイトの限りを尽くしたようだが……そんなものは本職の悪魔である拙者にとっては生ぬるい! 本当の悪魔は……」

 

 言いながら、ザ・ニンジャは懐から手裏剣を取り出した。

 

「ここまでする――っ!」

 

 忍者御用達の鉄製手裏剣による投擲。

 超人レスリングに用いれば即刻反則となるであろう投擲武器に、オルテガは対処を迷った。

 

「ド、ドフィ~~ッ」

 

 結果、計三つの手裏剣はオルテガの胸元に命中。

 鮮血が飛び散るも幸いにして傷は深くない。

 即座に抜き取り、怒りをぶつけるように地面に叩きつけた。

 

「て、てめえ……煙玉に加えて手裏剣なんて古風な凶器まで使いやがるとは……超人レスラーの風上にもおけねえ~~っ」

「フッ、愚か者め。おぬしは今、超人レスリングをしているつもりだったのか? 悪魔超人を相手にする意味がわかっていないようだな」

 

 ようやくザ・ニンジャの張った煙幕が晴れようとしていたが、すでにオルテガのダメージは大きい。

 このまま忍者殺法の餌食になるのかと思われたが、意外にもオルテガの口元は笑っていた。

 

「おまえこそ、カーペット・ボミングスを相手にする意味がよくわかっていないようだ。オレたちのタッグ名の意味は“絨緞爆撃”……闘いが終わったあとはいっぺんの塵も残さない、完璧なる破壊と殺戮を完遂させる」

 

 威勢を強くするオルテガを、ザ・ニンジャは鼻で笑う。

 

「御大層な名だが、おぬしは今ひとりではないか。“究極の超人タッグ戦”はチームのひとりでも欠ければエントリー不可能……絨毯爆撃とやらの真価が発揮されることはない」

 

 オルテガのそれは負け惜しみとしか思えない虚勢だ。もはや趨勢は決したと言っても過言ではない。

 勝利を確信するザ・ニンジャだったが、オルテガはなおも笑みを崩さなかった。

 

「いや……ある!」

 

 自信たっぷりに言い、次の瞬間。

 空からなにかが降ってくる音が聞こえてきた。

 

 リングだ。

 

 超人レスラーなら慣れ親しんでいるであろう四角形のリングが、町の公園に落ちてくる。

 そのリングをここまで運んできたのであろう、ひとりの超人の掛け声と共に。

 

「モア――――ッ!」

 

 リングを上空高く持ち上げ、たった今公園の地面に叩きつけるようにして投げ落とした超人は、モアイ像の姿をしていた。

 彼こそ、カーペット・ボミングスの片翼にして南太平洋超人スーパーヘビー級チャンピオン。

 

「貴様は……モアイドン」

 

 リング投下という絨毯爆撃を回避してみせたザ・ニンジャは顔に焦りの色をにじませていた。

 なぜなら、眼前にいるモアイドンはここにいるはずがない超人だからだ。

 オルテガへの闇討ちを確実にするため、シャワー中のやつを襲い捕らえていたというのに。

 

「バ……バカな、おまえは拘束しておいたはず!」

「バカはおまえだ忍者野郎~~っ。このオレをオルテガのおまけとでも思ったか」

 

 公園リングの中央で堂々と殺意をみなぎらせるモアイドン。

 オルテガはその隣に立ち、腕組みをしてザ・ニンジャを睥睨した。

 

「悪いなあ、ザ・ニンジャよ。形成が逆転してしまった。まさか尻尾を巻いて逃げるとは言わんよな?」

「モアモア、意地悪なことを言うなオルテガ。誇り高い悪魔騎士様がそんな真似をするわけないだろう」

 

 当初の予定は崩れ、戦況は2対1。

 それも相手は2人で闘うことを得意とする名タッグチームだ。

 

(クッ……多勢に無勢か。しかし任を果たせぬまま退いたとあっては忍びの名折れ。すでにアシュラマンやネプチューンマンの名を出してしまった以上、こやつらの口を封じる以外に道はない。たとえ拙者ひとりでも……っ!)

 

 ザ・ニンジャにはこの苦境で命をかけて闘うほど、アシュラマンへの恩や友情があるわけではない。

 だが、代わりに義理とプライドがある。

 義理堅い性格と忍びとしての高い尊厳を持つ彼に撤退の二文字はないのだ。

 

 絨毯爆撃隊(カーペット・ボミングス)vs悪魔六騎士ザ・ニンジャ。

 レフェリーも観客もいない夜の公園リングで、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 そのとき――

 

「オルテガにモアイドンよ! その闘い、このオレも混ぜてもらうぜ――っ!」

 

 リングに上がろうとしたザ・ニンジャより先に、威勢の良い言葉と共にリングインを果たした男がいた。

 その予期せぬ闖入者に、ザ・ニンジャは驚く。

 

「お……おまえは!」

 

 軍服を着込み、軍帽を目深に被った、おおよそレスラーらしくはない格好の超人。

 ザ・ニンジャにとっては因縁深い男でもある。

 なにせつい最近まで、彼はこの男に殺され超人墓場にいたのだから。

 

「ブロッケンJr!?」

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