ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第022話 必殺仕事人同盟!

 月明かりに照らされた、夜更けの公園。

 そこには場違いなリングが一つ置かれており、中央にはふたりの超人が立っていた。

 メキシカンレスラー風の出で立ちをした超人オルテガと、モアイ像の集合体のような超人モアイドンである。

 

「正義超人ブロッケンJrがなぜここに?」

 

 オルテガはたった今リングに乱入してきた軍服の超人、ブロッケンJrに問う。

 リングの外にはオルテガを闇討ちしようとした卑劣漢、ザ・ニンジャが驚愕の表情で固まっていた。

 このふたりが敵対関係であることは掴んでいる。よもやザ・ニンジャの加勢に来たなどということはないだろう。

 

「ドフィドフィ。そうか、宇宙超人委員会の差し金だな? トーナメントの合間を縫い闇討ちで出場枠を奪おうなどと考えるアシュラマンやネプチューンマンに制裁を与えるため動員されたってところか」

「モアモア。ハラボテもいい仕事をする。ちょうど妙ちくりんなジャパニーズニンジャ野郎に絡まれて迷惑していたんだ。ぜひとも助太刀を頼むぜ」

 

 つまり、2対1が3対1になるわけだ。

 ブロッケンJrは正義超人の中でも若手であり、だからこそ正義感も強い。

 ラーメンマンのように元残虐超人という経歴もなければ、ロビンマスクのように奇行に走るタイプでもなかった。

 

「ブロッケン、貴様……」

 

 かつての仇敵が現れ、闘志を燃やすザ・ニンジャ。

 ブロッケンもまた蘇った悪魔を退治するためこの地にやってきたのだろう。

 そう構えていたカーペット・ボミングスのふたりだったが、ブロッケンは意外にもザニンジャの敵意を手を向けて拒んだ。

 

「おっと、変な因縁をつけるのはやめてもらうか。オレはここへ仕事をしにきただけだ」

「仕事だと?」

 

 そして、ザ・ニンジャではなくカーペット・ボミングスのふたりに向き直る。

 軍帽の奥から覗く瞳には、若々しい闘志があふれていた。

 

「オレに与えられた仕事はただひとつ! “対時間超人包囲網”を完成させるため……ザ・ニンジャに協力しカーペット・ボミングスのふたりを闇討ちしろというな――っ!」

「な、なにぃ~~っ!?」

 

 その闘志の矛先が自分たちに向けられていると知り、驚愕するオルテガとモアイドン。

 驚きを示しているのはふたりだけではない、リング外のザ・ニンジャもだ。

 

「待て! そのようなこと、拙者はアシュラマンからは聞いておらぬぞ!」

「オレの依頼主はネプチューンマンだよ。アシュラマンとは話してすらいねえや」

 

 ブロッケンJrは一瞬だけ苦々しい表情を見せ、続ける。

 

「そもそもウォーズマンの体内でやり合った悪魔超人の手助けなんて、乗り気になれねえ。おまえがひとりで仕事を完遂できるなら、オレは黙って立ち去るつもりだったんだがな。カーペット・ボミングスのふたりが揃っちまった以上、静観しているわけにもいかなくなった」

 

 ブロッケンの言葉からは、できればこんなことはしたくないという思いがにじみ出ていた。

 しかし、仕事という発言。

 仕事には責任が伴う――やりたくはないが、やらなければならないのであればやる、そんな覚悟が読み取れる。

 

「ドフィ~~ッ、冗談だろう? 悪魔超人のザ・ニンジャはともかく、根っからの正義超人であるおまえがこんな卑怯な闇討ちに加担するというのか?」

「ああ、する」

「いったいなぜだ?」

 

 ブロッケンに強く問うオルテガ。

 ブロッケンもまた、強く答えを返す。

 

「言っただろう、対時間超人包囲網を完成させるためだと。お察しのとおりネプチューンマンの狙いは、リザーブ枠に入ったアシュラマンのチームを本戦に出場させること……そのためにはどうしても空きがひとつ必要になっちまう。そこでおまえたちだ」

 

 オルテガとモアイドンを交互に指差し、ブロッケンJrは計画の全容を説明する。

 

「おまえたちが脱落すれば、二回戦に進むのはマシンガンズ! 2000万パワーズ! ロビンにウォーズマンにアシュラマンにネプチューンマン! おまけで自称・キン肉マンの息子! いずれも悪衆・時間超人を敵対視するメンバーのみとなる! この7チーム、一致団結はできずとも時間超人憎しの心は同じ……さすれば、どのチームと当たっても時間超人の消耗は確実! ロビンマスクの妻、アリサさんを救う確率もグッと上がるって寸法だ~~っ!」

 

 カーペット・ボミングスのふたりを排除し、“究極の超人タッグ戦”を時間超人vsそれ以外という構図にする。

 それこそが対時間超人包囲網。トーナメントという形式を最大限利用した悪行超人対策だった。

 そのためにも、おまえたちは邪魔だから消えろ、と言われるとは。

 オルテガもモアイドンも唖然とするしかない。

 

「無茶苦茶言いやがるぜ、こいつ」

「だいたいロビンマスクやアシュラマンとつるんでる新世代超人(ニュージェネレーション)はどうする? キン肉マンはやつらが時間超人のお仲間だと言っていたぞ」

 

 モアイドンの指摘に、ブロッケンJrは「キン肉マンか……」と遠くを見つめる仕草をする。

 

「あいにくオレはキン肉マンほど頑固じゃねえのさ。直前にあんな試合を見ちまったあとだしな……」

 

 彼の脳裏に浮かぶのは――日中に行われた、スーパー・トリニティーズの奮戦。

 未来から来た己の弟子を自称し、その証としてベルリンの赤い雨まで使ってみせたジェイド。

 悪行の道に落ちようとしていた友を叱り、正義の道に引き戻した――そんな正義超人の在り方を見てしまっては、もはや疑いは持てない。

 

 ジェイドは……新世代超人と名乗る連中は、まさしく未来からやって来た正義超人だ。

 そんな後輩筋にあたるやつらが、骨身を削って友を救おうとしている。

 己は闘いの場に立ってすらいないというのにだ。

 

「オレは先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”における完璧超人退治では、なんの実績も残せなかった。続く“究極の超人タッグ戦”においては、そのときの闘いでの傷が響きエントリーすらできない始末……仲間の嫁さんが生死の境をさまよい、わざわざ未来から後輩たちが出張してきてるっていうのに、なんの仕事も任されちゃいねえんだ」

 

 ブロッケンJrにとっては、それがたまらなく悔しい。

 悔しくて悔しくてしょうがない。

 

「だからよぉ~~っ! 時間超人退治の助力になるっていうんならオレはなんだってするぜ! たとえそれが、闇討ちという正義超人の矜持に背く仕事だったとしてもな――っ!」

 

 汚れ仕事であろうと仕事は仕事。

 スーパー・トリニティーズ戦後、ネプチューンマンからもたらされた依頼はまさに千載一遇の機会。

 正義超人の先輩として、またロビンマスクの友として、いいところを見せなければ気がすまないのだ。

 

「ブロッケンJr……おぬし、そこまでの覚悟があってこの闘いに臨んでいるのか」

 

 予想だにしなかったブロッケンJrの想いに、ザ・ニンジャの闘志はすっかり鎮火していた。

 目の前にいるのは己を殺した男――だが、今は目的を同じくする同志。

 合理性を求める忍者としてのサガが、復讐の心を根絶やしにしてしまった。

 

「すまねえがザ・ニンジャ、オレは不器用でな。闇討ちといっても、暗闇に紛れて不意打ち……なんて真似はできねえ。オレができるのは、こんなふうに堂々と名乗りを上げて二対二の対等な条件で挑むことだけだ」

 

 二体二。

 ブロッケンJrが口にした言葉に、ザ・ニンジャも決意を固める。

 モアイドンがお誂え向きにリングまで持ってきてくれたことだし、ここは乗るしかないだろう。

 

「ドフィドフィ、おもしろい。ではザ・ニンジャとブロッケンJrのタッグで我らカーペット・ボミングスと闘うということだな?」

「モアモア、正義・悪魔の混成タッグとは。あの“四次元殺法コンビ”以来の変わり種タッグチームの誕生だ。ブン屋が泣いて喜ぶぜ」

「悪いが誰に知られるつもりもねえな。オレとニンジャのタッグは今夜限りこの一戦をもって解散する予定だ」

 

 対戦相手のカーペット・ボミングスもその気だというなら話は早い。

 ザ・ニンジャは軽い跳躍のあとリングに降り立ち、ブロッケンJrの隣に立った。

 

「委細承知した。タッグ戦は好みではないが、拙者にも仕事を果たさねばならぬ責任がある。ここは頼らせてもらうぞ、ブロッケンJr」

「任せとけ」

「して、チーム名はどうする? タッグ戦はチーム名で名乗りを上げるものと聞くが?」

「それについては、どういうわけかアシュラマンが考えた名をネプチューンマンがオレに寄越している」

 

 ブロッケンJrはザ・ニンジャと肩を並べ、高らかに宣言する。

 

「オレたちのチーム名は……“超人血盟コンビ”!」

 

 ブロッケンJr&ザ・ニンジャ――その名も超人血盟コンビ。

 今宵新結成されたタッグチームが、悪名高いカーペット・ボミングスに挑む。

 

「フッ、血盟とはまた大仰な……だが悪くはない。初手は任せるぞ!」

「オオ!」

 

 ザ・ニンジャは後方に下がり、同時にブロッケンJrが駆け出した。

 

「なっ、いきなりか!?」

「リングの上ではあるが正式な試合じゃねえんだ! ゴングなんて鳴らねえぜ――っ!」

 

 開戦の合図もなく突っ込んできたブロッケンに戸惑うオルテガとモアイドン。

 その間、ブロッケンJrは自慢の手刀を振りかぶっていた。

 

「“ベルリンの赤い雨”――っ!」

 

 不意打ち気味の一撃ではあったが、正面から来てくれるのであれば回避は容易。

 オルテガもモアイドンも後方に大きく跳び、ブロッケン一族伝統の手技を躱す。

 

「そうだな~~っ。こいつは試合じゃねえ」

「なら律儀にタッグ戦のルールなんて守らず、いきなりふたりがかりってのもアリってことだ――っ」

 

 言うや否や、オルテガは相棒であるモアイドンに向かってヒップアタックのような体勢で飛びかかる。

 

「イグアス・テラー!」

 

 続いてモアイドンの胴体、巨大なモアイ像の鼻部分が車輪のごとく縦に回転し、オルテガを空に弾き飛ばす。

 そうやって通常のジャンプでは稼げない高度を得たオルテガは、重力の赴くままブロッケンJrへと落下。

 

「グアッ!」

 

 痛烈なヘッドバットを食らわせ、ブロッケンJrの脳天に衝撃が走った。

 そんなパートナーの痛みを気遣う心は、悪魔には一切ない。

 

「うむ! 確かにタッグ戦の流儀に従う理由もなし!」

 

 ザ・ニンジャはブロッケンJrが反撃を食らっている間、リングのロープを掴んで中央に持っていく。

 

「ならば拙者は、いきなりこれでいかせてもらう――っ!」

 

 それを4×3の計12本、たった今ヘッドバットを決めたばかりで油断していたオルテガに引っ掛ける。

 リングという地の利を活かし相手の四肢を完全に封じ込めるこの技こそ、悪魔忍法の真骨頂だ。

 

「忍法クモ糸縛り――っ!」

 

 なすすべなくリング中央に捕らわれたオルテガ、その姿まさに蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のごとく。

 リングロープの強靭なワイヤーによりこのままでも四肢切断の恐れがある危険な技だが、今回はタッグマッチ。

 ザ・ニンジャお得意の拘束技は、パートナーの必殺技(フェイバリット)を誘発させる。

 

「身動きは封じたぞ! やれ、ブロッケン!」

「おお! ベルリンの赤い雨――っ!」

 

 今度こそ、と防御も回避もできなくなったオルテガに手刀を振りかざすブロッケンJr。

 唯一の懸念はモアイドンの横槍だが、どういうわけかその様子はない。

 決まった! ザ・ニンジャが未来像を想像しほくそ笑むが――

 

「し、しまった!」

 

 ブロッケンJrの口から間の抜けた声が出る。

 彼のベルリンの赤い雨が切断したのは、オルテガの身にあらず。

 目測を誤り、オルテガを拘束するリングロープを斬ってしまった。

 

「バカめ! タッグ戦のイロハもわかってないおまえらがオレたちに勝てると思うな――っ!」

 

 自由の身となったオルテガがドロップキックでブロッケンJrを蹴り飛ばす。

 その後即座に跳び、リング上からパートナーのモアイドンに呼びかけた。

 

「ようしモアイよ! “絨毯爆撃”殺法の真髄を見せてやろうぜ――っ!」

「おお! モアイドアイメリコフ、モアイドアリメリコフ」

 

 モアイドンは応え、なにやら呪文を唱え始める。

 するとモアイドン胴体のビッグ・フェイス――真一文字に結ばれた口の部分が円形に変化。

 円形部分はそのまま穴となり、上空にいたオルテガは体をねじりながらその穴に入っていく。

 

 ビッグマウスの奥深くまでねじ込まれたオルテガの身は、喩えるならば銃の弾丸。

 螺旋軌道で射出されれば、それこそ弾丸のごとき破壊力を身に纏う。

 これぞ、カーペット・ボミングスの絨毯爆撃殺法。

 

「くらえ! “贖罪の千枚通し”――っ!」

 

 モアイドンのビッグマウスからオルテガが発射された。

 きりもみ回転しながらの強烈なヘッドバットは、しかしブロッケンJrの横を素通り。

 狙いは彼の奥に控えていたザ・ニンジャである。

 

「ぐあああ――――っ!!」

 

 オルテガの頭部がザ・ニンジャの胸元に命中し、衝撃が四肢に伝わる。

 結果――爆発四散!

 ザ・ニンジャの首、両腕、両脚、関節のことごとくが千切れ、バラバラになってしまう。

 

「ニンジャ――ッ!」

 

 凄惨な姿に変わり果ててしまったパートナーを見て、ブロッケンJrが悲鳴を上げる。

 ツープラトンを成功させたカーペット・ボミングスは意気揚々と次のアクションに移ろうとしていた。

 

「モアッモアッ! 早くもひとり脱落だ!」

「待てモアイドン! 生意気なブロッケンはあの技で処刑しよう!」

 

 オルテガはブロッケンJrの顎先に蹴りを入れ、その体を宙に浮かせる。

 すかさず自身も上昇し、ブロッケンの両肩に両脚を引っ掛けロック。さらに両手も掴んで身動きを封じる。

 このまま空中でサブミッションを極めるつもりか? 否、これは次なるツープラトンの予備動作にすぎない。

 

「ホロンサカブ、ホロンサカブ」

 

 またもや怪しげな呪文を唱えるモアイドン。

 先ほど穴状に開いたビッグマウスが、今度は縦に割れてあんぐりと口を開く。

 その大きさは、ちょうどブロッケンJrの全身が入るほど大きかった。

 

「くらえ――っ! “虚言の口”~~っ」

 

 空中で固め技を仕掛けていたオルテガが、両脚の力でブロッケンJrを地上に投げ飛ばす。

 そこにはモアイドンの大口が待ち構えており、ガボッ、とブロッケンJrの体がジャストフィットした。

 ボールスポーツなら見事得点といったところだが、これは超人レスリング。技はここで終わらない。

 

「この“虚言の口”は真実や正直を大いに嫌う口! ここに捕らわれの身となった者が質問に対して真実の発言をすれば口が徐々に閉じられていき、やがては圧死してしまう!」

 

 古代にはスパイとして悪行超人の世界に潜り込んだ正義超人を燻り出すために使われたという“虚言の口”。

 曲がったことや不正を許さない正直で清廉潔白な正義超人では、我が身可愛さに嘘をつくことも容易ではない。

 ゆえにこの技は、純正正義超人特攻の拷問技として機能するのだ。

 正義超人という肩書きに誇りを持つブロッケンJrには、まさにうってつけと言える。

 

「ブロッケンJrよ、今からオレがおまえに質問をする……その質問に答えろ! 正直に答えてもいいが圧死したくなければ嘘をつくことだな!」

 

 一見簡単そうな攻略法が、しかし案外難しいということをモアイドンはよく知っている。

 それもそのはず、モアイドンはこの技で多くのバカ正直な正義超人を血祭りにしてきたのだから。

 

「ウウ~~ッ」

 

 圧死を免れようとなんとか腕を突っ張りビッグマウスを抑えるブロッケンJr。

 彼の窮地を救えるパートナーは、もういない。

 

「まず第一の質問!」

 

 モアイドンが問い、運命のジャッジが始まる。

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