ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第023話 歴史激変!今こそ未来が変わるとき!

「まず第一の質問! おまえの父、ブロッケンマン……モアガ~~ッ!?」

 

 モアイドンの顔面に謎の飛来物が襲いかかり、質問をしようとしていた口が強制的に歪められる。

 圧殺の危機にあったブロッケンJrはその隙にビッグマウスから脱出、窮地から逃れた。

 

 カーペット・ボミングスが仕掛けたツープラトン“虚言の口”。

 数度の質問を繰り返すことで段階的に口が閉じていく拷問技だったのだが、結果は第一段階から失敗となってしまう。

 

「命を懸けた勝負の最中にクイズ大会とは……おぬしたちの言うタッグ戦とは子供のお遊戯なのか?」

「ク、クイズじゃねえ~~っ! いったい誰だ……新手か!?」

 

 ザ・ニンジャはすでに殺し、ブロッケンJrは反撃できる状態ではなかった。

 ならばモアイドンの顔面を打ちブロッケンJrを助けたのは誰なのか。

 悪魔超人か正義超人の増援を考えたカーペット・ボミングスだったが、正解は違った。

 

 手が。

 足が。

 首が。

 

 人体のあらゆるパーツが、ふよふよと宙に浮かんでいる。

 それらは忍び装束の切れ端を纏っており、先ほどバラバラに破壊したザ・ニンジャの死体ということがわかった。

 

「なっ……バラバラになったニンジャの体!」

「手足や頭がひとりで動いていやがるだと!?」

 

 信じられないといった形相のオルテガとモアイドン。

 どんな超人であろうと、体がバラバラに千切れれば死ぬ。

 それが存命どころか元気に動いて反撃を仕掛けてくるなど、ありえるはずがない。

 

「これぞ身体あやつりの術! テレパシー操作による不規則な乱撃、とくと味わえ!」

 

 分離したザ・ニンジャの頭部が高らかに技名を口にする。

 身体あやつりの術――その極意は敵の撹乱にあり。

 テレパシー操作というのはブラフ。

 実際は作り物の胴体部分に隠れたザ・ニンジャが、同じく作り物の各部位を糸で操っているにすぎない。

 

 だがカーペット・ボミングスのふたりにそんなことは気づけなかった。

 自由自在に宙を舞うザ・ニンジャの手足が、オルテガとモアイドンを滅多打ちにする。

 

「ドフィ――ッ」

「モア~~ッ」

 

 殺した超人がバラバラになって襲いかかる。

 衝撃のあまりカーペット・ボミングスは常の冷静さを失い、防戦一方となった。

 その隙を見逃すザ・ニンジャ――そしてブロッケンJrではない。

 

「いけ――っ、ブロッケン!」

「おうよ!」

 

 空高く舞うブロッケンJr。

 軽やかに体を翻し、蹴りを放つ。

 蹴るべき対象は、ザ・ニンジャの頭部。

 

「ニンジャヘッドボール・キック――ッ!」

 

 逆転のゴールを狙うエースストライカーのごとく。

 ブロッケンJrの必殺シュート、ザ・ニンジャのヘッドボールは、カーペット・ボミングスのふたりに放たれた。

 

「ドフィ~~ッ!?」

「モア――ッ!?」

 

 ニンジャヘッドボールはオルテガの腹にめり込み、その身を吹き飛ばす。

 そしてオルテガの体はモアイドンにぶつかり、ふたりまとめてリングコーナーの鉄柱まで打ち付けた。

 

「か、数多くのタッグマッチを……経験してきたが……」

「パートナーの頭を蹴ってぶつけてくるチームは……初めて出会った……っ」

 

 奇想天外極まる忍者殺法に疲労困憊のカーペット・ボミングス。

 頃合いと見て、ザ・ニンジャは身体あやつりの術を解除。

 作り物の胴体から本体を現し、自身が着ている忍び装束に手をかけた。

 

「そろそろ黄泉路へと旅立ってもらうとしよう。転所自在の術――っ!」

 

 装束の上着を脱ぎ、それをリングキャンバスめがけてシーツのように振り下ろす。

 するとザ・ニンジャの忍び装束が一面に敷き詰められ、キャンバスの中央に火山の噴火口が出現した。

 

「リ、リングの中に……」

「火山だと!?」

 

 突如として足のつくキャンバスがなくなり、火山の噴火口へ落ちていくオルテガとモアイドン。

 しかも火山は噴火寸前、落ちれば命はない。

 

「モア~~ッ! 飛べ、オルテガ!」

「言われなくとも! ドフィ――ッ!」

 

 だがしかし、超人は飛べる。

 オルテガとモアイドンは浮力を得て上昇していくが、それを阻む影が躍り出た。

 ブロッケンJrである。

 

「殺超人ミスト――ッ!」

 

 口から謎のガスを吹き出しオルテガとモアイドンに浴びせるブロッケンJr。

 そのガスを吸ってしまったふたりは呼吸がままならなくなり、上昇が止まってしまう。

 

「ゲホッ、ゴホッ……こ、このナ●野郎~~ッ。毒ガスなんて使いやがって~~ッ」

「殺超人ミストだ」

 

 殺超人ミストである。

 

「仕上げだブロッケン! こやつらを叩き落とす!」

「おう!」

 

 火口の入口あたりでむせているオルテガとモアイドンに対し、ザ・ニンジャとブロッケンJrが飛びかかった。

 ザ・ニンジャは正面に置いたオルテガに背中を向け、後方に回転。

 ブロッケンJrはモアイドンの頭部を両手で掴み、勢いをつけて両足を蹴り出すセットアップ。

 

「背転田楽刺し――っ!」

「ハンブルグの黒い霧――っ!」

 

 ザ・ニンジャの後方回転蹴りがオルテガの脳天を穿ち、火口に叩き落とす。

 続けてブロッケンJrの両足蹴りがモアイドンの顔面を打ち、同じく火口に叩き落とす。

 

 落下先はもちろん、マグマ煮えたぎる火山の底。

 超人であっても耐えられる温度ではない。

 

「ド……フィ……このインチキ野郎どもが~~っ」

「モガハァ~~ッ、この恨み忘れんぞ~~っ」

 

 怨念めいた言葉を口にしながら、マグマに沈んでいくオルテガとモアイドン。

 その身が完全に飲み込まれて消えるのを確認し、ザ・ニンジャは転所自在の術の布を回収。

 再び忍び装束として身にまとい、オルテガとモアイドンの痕跡は闇に消えた。

 

「“カーペット・ボミングス”、始末完了」

 

 それは、ゴングの代わりとなる勝利宣言だった。

 仲間の祝福はなく、歓声を上げる観客や、実況のコールもない。

 ならばせめて、とブロッケンJrは言葉をかける。

 

「やったな、ニンジャ」

 

 開いた掌を、苦闘を共にしたザ・ニンジャに差し出す。

 

「なんのつもりだ、ブロッケンJr」

 

 ザ・ニンジャは表情ひとつ変えず、ただ問うた。

 

「なんのつもりって……握手だよ。闇討ちだから勝利を告げるゴングは鳴らねえが、喜びを分かち合うくらいはいいだろうが。祝おうぜ、オレたち“超人血盟コンビ”の初勝利をよ」

 

 ブロッケンJrの意図を読み取ったザ・ニンジャは、差し出された掌に己の手を伸ばした。

 そして――パンッ。

 握手を期待する掌を、掴むのではなく乱暴に払う。

 悪魔超人としてその手を取るわけにはいかないという意思表示だった。

 

「勘違いするな。拙者はあくまでも同胞より託された任を果たすため、おぬしを利用したまでのこと。正義超人……それも一度殺された相手と馴れ合うことなど、誰ができようか」

 

 決して照れ隠しなどではない、悪魔としての矜持からくる拒絶。

 バッファローマンのような例外がないわけではないが、やはり正義と悪魔は相容れないのだとブロッケンJrは思い知った。

 

「ケッ、そうかよ」

 

 悔しそうに吐き捨て、拒まれた掌を引っ込める。

 そして――ザ・ニンジャが立つその奥の風景に、怪しい人影を見た。

 

「ウン!?」

 

 公園の出入り口付近に立つのは、全身を外套で覆いフードで頭部を隠した男。

 一目で只者ではないとわかる大柄な体躯、姿勢の良さは、もしや“究極の超人タッグ戦”にエントリーしている超人レスラーか!?

 と、警戒したブロッケンJrがまばたきの後により注意深く目を凝らしたのだが……次の瞬間にはもう、その男の姿は消えていた。

 

「どうした?」

「い、いや……今そこに誰か、フードを被った男がいたように見えた」

 

 目を擦りながら再度確認するブロッケンJr。

 しかし何度見てもそんな男の姿はない。

 ザ・ニンジャはブロッケンを嘲笑するように鼻を鳴らした。

 

「幻であろう。忍びである拙者が気配を悟れなかったのだ」

「しかし、確かに……」

「ブロッケンよ、おぬしも早々に立ち去れ。こんなところを誰かに見られでもしたら、すべては水の泡。仕事を完遂させた男は余韻に浸らずすみやかに帰陣すべし」

「グゥ~~ッ」

 

 ブロッケンJrは口喧嘩に負けた子供のように悔しがり、それを見てザ・ニンジャは勝ち誇った。

 

「ではまた縁があったらな。御免!」

 

 健闘を称える握手はせずとも、せめて別れの言葉を送ろう。

 ザ・ニンジャは闇に消え、夜の公園には若き正義超人ただひとりが取り残された。

 

「ねーよ、このさき悪魔との縁なんざ」

 

 ブロッケンJrはふてくされるように吐き捨てた。

 

 

 ◇

 

 

 一夜明け――

 

 東京は九段に位置するホテル“グランデ・パレス”。

 記者会見会場やパーティー会場として人気のそのホテルで今回行われるのは、名だたる超人タッグチームの趨勢を決める大事な催しだ。

 

『只今より“究極の超人タッグ戦”第二回戦組み合わせ抽選会を行います!』

 

 宇宙超人委員会委員長ハラボテ・マッスルがマイクを取り、報道陣の注目を誘う。

 

『見事一回戦の激闘を勝ち抜いた計8チームの強者たちです!』

 

 ライトアップされた壇上には、“究極の超人タッグ戦”第二回に駒を進めた8組の超人タッグチームが並ぶ。

 それぞれ自分の名前が書かれたタスキを掛け、さらにタッグの片方がハラボテの指示により風船を持っている。

 集まった記者たちは超人たちの姿をカメラに収めんとシャッターを切るが、一部で戸惑いの声が上がった。

 

「あれ、オルテガとモアイドンは?」

「カーペット・ボミングスの姿がないぞ」

「代わりにアシュラマン&チェック・メイトのザ・ナイトメアズが」

 

 シード枠に収まり一回戦を免除されていたチーム“カーペット・ボミングス”。

 オルテガとモアイドンのふたりによるタッグチームだが、壇上にその姿はなかった。

 そのふたりに代わるように、昨日リザーバーとなったばかりのアシュラマン&チェック・メイトが立っている。

 混乱する記者たちに対し、大会運営委員長のハラボテが説明を始めた。

 

『えー、皆さんご静粛に。本来ここにいるべきは“究極の超人タッグ戦”第一回戦シード枠であったオルテガ&モアイドンの“カーペット・ボミングス”のふたりでありますが、彼らは今朝より音信不通……抽選会開始となる午後3時をもっても現れなかったため……』

 

 室内ライトがアシュラマンとチェック・メイトのふたりを輝かしく照らす。

 

『“究極の超人タッグ戦”を試合放棄したものと見なし、代わりにリザーブ枠であったアシュラマン&チェック・メイトの“ザ・ナイトメアズ”を二回戦へ進出させるものとします!』

 

 ハラボテがそう宣言したことで、晴れてアシュラマンとチェック・メイトは“究極の超人タッグ戦”本戦出場チームとなった。

 あらかじめこういった事態を想定してのリザーブ枠だったが、まさか本当にお鉢が回ってくるとは。

 観衆が驚く一方で、壇上の超人たちは様々な反応を見せていた。

 

「ジョワジョワ、一回戦のレベルの高さを見て尻尾を巻いて逃げたか」

「ヌワヌワ、所詮は21世紀に名も残せていない弱小チーム……取るに足らねえ出来事さ」

 

 どこぞへ消えたカーペット・ボミングスを軽んじ、大物感を漂わせる“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”。

 

「えー。急におなかでも痛くなったんじゃないの~?」

「ワ、ワチキたちもそうだったからわかる……」

 

 どこか緊張感に欠けた発言をする“マッスルブラザーズ・ヌーボー”。

 

「待てば甘露の日和あり……二回戦ではまだ我々の出番はないだろうと思っていましたが、まさかこんなアクシデントが起こるとは」

 

 そしてオルテガとモアイドンの失踪により本戦出場の資格を得た“ザ・ナイトメアズ”。

 そのひとり、チェック・メイトは思わぬ急展開に気持ちが追いついていない部分があった。

 

「わたしたちにとっては好都合ですが、カーペット・ボミングスのふたりはいったいどうしたのでしょうか?」

「カカカ、さてな~~っ? やつらもそれなりの悪行超人だったようだし、忍者に天誅でもくらったのかもしれんな~~っ」

「忍者?」

 

 意味深なことを言うアシュラマン。

 彼がカーペット・ボミングスの失踪に関与していることを、チェック・メイトは知らない。

 

 さらにアシュラマン以外にも、事の裏側を知る人物がひとり。

 怪しげに口角を上げているネプチューンマンである。

 

(グフフ……ザ・ニンジャとブロッケンJrは無事に仕事を果たしてくれたか~~っ)

 

 ふたりからの連絡はもらっていない。

 だがデキる男は結果で仕事ぶりを示すもの。

 オルテガとモアイドンの不在が、彼らの勝利のなによりの証明だった。

 

(これで対時間超人包囲網は完成した。この二回戦、やつらは誰と当たっても敵だらけ。そして同時に、オレはいよいよ本格的に歴史の改変に成功したわけだ。対戦カードがまったく変わらなかった一回戦とは違い、カーペット・ボミングスの枠にはアシュラマンたちが入っている。そしてこれから行われる抽選会は、各々のタッグチームが順番に、自由意志で対戦相手を決める選択制。こうなった時点で、もはや元の歴史通りにはならねえ~~っ)

 

 壇上にいる超人16名、そのうち14名の敵意は時間超人2名に向けられている。

 このやり直しの“究極の超人タッグ戦”、一回戦は前回の歴史をなぞるような形に終わったが、ここからは違う。

 誰が準決勝に進み、誰が時間超人を倒し、誰が黄金のトロフィーを抜くことになるかは――ネプチューンマンにもわからない。

 

(動くぞ……“究極の超人タッグ戦”の歴史が~~っ)

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