ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第026話 時間超人対策のスペシャル・テキスト!

 二回戦の組み合わせ抽選会が明けて、次の日。

 ネプチューンマンは“ザ・ナイトメアズ”が本拠地とする練習用の体育館を訪れていた。

 

「なんだこれは?」

 

 分厚い書類の束を持ち、ナイトメアズのアシュラマンが憮然とした表情を浮かべる。

 その正面にはネプチューンマンがいた。

 

「オレが知りうる、時間超人の手の内……そのすべてだ」

 

 アシュラマンが手にする書類はネプチューンマンが制作し渡した。

 他でもないザ・ナイトメアズのため、アシュラマンとチェック・メイトの勝利に貢献できればと。

 対戦相手の時間超人――“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”の戦術やツープラトン技、保有する特殊能力を書き記したのだ。

 

「そんなことはこの“ネプチューンマン・テキスト”などと銘打たれた気取った書類を見れば理解できる。私が言いたいのは、どうしておまえがそんな情報を知っているのかということだ」

 

 与えられた有益な情報を手放しで喜ぶ。そんな愚行を、魔界の王子(プリンス)は犯さない。

 ネプチューンマンは虚空を見つめ、昔を懐かしむように言う。

 

「昔取った杵柄だ……やつらとは因縁浅からぬ仲でな」

「誤魔化すな。詳しく語れ」

 

 さすがはアシュラマン。雰囲気で話を有耶無耶にするのは無理そうだ。

 

「私の知る完璧(パーフェクト)超人ネプチューンマンは、後に行われる“キン肉星王位争奪サバイバル・マッチ”以降、イギリスの山中にこもり隠居生活を送っていた。新たに出現するだろう悪行超人との闘いに備え、日々鍛錬を積みながらな」

 

 アシュラマンはさらに不可解な点を指摘する。

 

「加えて、時間超人たちは今から34年後の未来、チェック・メイトら新世代超人(ニュージェネレーション)が荒川土手で練習中に姿を現すまで表舞台に出てくることはなかったと聞く。おまえがやつらのことを知る機会などなかったように思えるがな」

 

 思わず口笛でも吹きたくなるような丁寧な指摘だった。

 

「オレが語らなかった部分までよく知ってやがる。チェック・メイトに聞いたな」

「カカカ、私はおまえの話のすべてを信用したわけではない。もし悪魔をいいように使おうという魂胆であるならば、即座に切り捨ててやるところだ」

 

 アシュラマンはネプチューンマンと契約を交わし、彼の協力者となったが……そこに絶対の信頼関係はない。

 不義理を見せれば即敵に回ることは明らか。だからといって媚びへつらって機嫌が取れる相手でもなかった。

 だからこそ扱いは慎重に、下手な言い訳は厳禁だ。ネプチューンマンは気を引き締めて言葉を選ぶ。

 

「怖い怖い。だがオレにそんな腹づもりはないから安心しろ。オレの目的は端から時間超人の討伐だけよ。そのためなら未来ある魔界の王子(プリンス)を捨て駒にしてもいいなど思っちゃいないし、もちろん完全無比(コンプリート)超人にも興味はない」

 

 とりあえずのスタンスを口にするが、肝心なところには触れていない。

 そこが気に入らなかったのか、アシュラマンは「チッ」と舌打ちをしあらためて問う。

 

「ではどうやって時間超人の手の内など知った?」

 

 やはり誤魔化すことはできないか……ネプチューンマンは心中で思い、覚悟を決めた。

 だが、真実を話すことはできない。

 ネプチューンマンがすでに時間超人に敗北し、一度死んでやり直しているなど。

 だから口にするのは、限りなく信憑性のある“嘘”だ。

 

「オレは過去、時間超人と闘ったことがある」

 

 ネプチューンマンの告白に、アシュラマンと、彼の傍らで話を聞いていたチェック・メイトが驚いた表情を見せる。

 

「なっ……」

「なんですって!?」

 

 時間超人と闘った――これは半分は本当で、半分は嘘。

“前回”のことを話すことができない以上、エピソードを捏造する必要があった。

 

「チェック・メイト、おそらくはおまえがまだ“d・M・p(デーモンプラント)”でサンシャインに悪行超人としての指導を受けていた頃のことだ。d・M・pとは別方向で暗躍を始めつつあったやつらを撃退すべく、オレはイギリスの山を下りたことがあったのだ……」

 

 チェック・メイトたちの認識では、その頃のネプチューンマンは山奥に引きこもり表舞台から姿を消していた。

 だからこそその間になにをしていたかは捏造し放題なのである。

 

「しかし……オレはそのとき時間超人を倒すことができなかった。いくつかの隠し技や能力を暴くのが精一杯で、どうにか命だけは繋がんと逃げ延びた。その後、幸いにもやつらは目立った行動を起こさず、本格的に動き出したのは“悪魔の種子(デーモンシード)”壊滅後……つまり今というわけだ」

 

 今明かされる驚愕の真実。

 チェック・メイトはあんぐりと口を開け、言う。

 

「あなた、そんなことは今まで一言も……」

 

 ネプチューンマンはまた虚空を見つめ、己を恥じるように表情を作り演出した。

 

「ちょい悪オヤジってのはプライドが高いのさ。よほどの理由がなければ恥は語らん」

 

 スカーフェイスに散々おっさんと揶揄された身の上を利用する。

 おっさんというのは便利なものだ。

 不可解な行動をしても、老いゆえのあやまちということで説明ができてしまう。

 もちろん、それも万能というわけではないが。

 

「待て待て、な~んか話がおかしいぞ。だったら時間超人どもはおまえのことを知っているはずだろう? しかし今のところそんな素振りは見られないぞ」

 

 アシュラマンは毛ほども信じていないようで、胡乱な眼差しでネプチューンマンを見た。

 慌てることはない。

 こんなときこそ、アシュラマンを招聘する際に渡した未来の情報が役に立つ。

 

「オレはそのとき、侍に扮して闘っていたのだ」

「侍……ザ・サムライか!」

 

 侍。

 そのワードになにか思い至る部分があったのか、アシュラマンはハッとした様子を見せた。

 一方で、チェック・メイトは首を傾げる。

 

「なんですか? それは」

「こやつは少々、和風趣味なところがあるようでな。後の王位争奪戦とやらで、侍の格好をしてキン肉マンに加勢したことがあるそうだ」

 

 本来ならこの“究極の超人タッグ戦”のあとに行われる“キン肉星王位争奪サバイバルマッチ”。

 その闘いで、ネプチューンマンはザ・サムライという侍の姿をした超人に変装しキン肉マンチームに加勢した。

 和風趣味と思われているのは予想外だったが、ネプチューンマンが別の姿を持っているという情報は上手くノイズになってくれたようだ。

 

「なるほど、つまり……ライトニングとサンダーのふたりはネプチューンマン、おまえとの因縁に気づいてないってことか」

「そういうことだ」

 

 アシュラマンの指摘する『ライトニングとサンダーが一度闘ったことがあるはずのネプチューンマンに気づいていない謎』の理由付けは完了した。

 わずかばかりの信憑性を得たところで、ネプチューンマンはさらに畳み掛ける。

 

「アシュラマン……やつらを野放しにしておくことは、正義超人界はもちろん悪魔超人界にとっても大痛手となるだろう。だからこそオレはおまえに協力を要請し、この20世紀で完璧に葬ると誓ったのだ。しかし……後の未来に影響を及ぼさないためにも、玉砕覚悟で挑めとは言わない。次の二回戦、ザ・ナイトメアズのふたりにはどうにか世界五大厄を削ることに力を尽くしてほしい」

 

 弱みを見せず、誠意を見せる。

 同時に、挑発という名のスパイスも。

 

「ほう……それはつまり、私たちでは削りをいれるのが関の山だと? 私とチェック・メイトのザ・ナイトメアズでは、世界五大厄には勝てないと言いたいのか――っ?」

 

 プライトの高いアシュラマンには効果てきめん。

 ネプチューンマンは口角を上げこの問いに答える。

 

「もちろんおまえたちが勝ってくれることを祈っている。だからこその“ネプチューンマン・テキスト”だ。やつらの力……特に加速能力(アクセレレイション)はインチキもいいところだからな。知っているといないとでは大きく違う」

 

 これは本心――というより、最大の目的だ。

 打倒・時間超人を達成する上で一番の重要事項がアクセレレイション対策。

 エヴォリューション・マウスピースというアイテムを用いることにより、数コンマ先の未来へ跳躍するライトニングとサンダーの奥の手。

 ブロッケンJr&ジェロニモとのリザーブマッチが行われなかった今回の“究極の超人タッグ戦”では、まだ誰も見たことのない未知の能力でもあった。

 

 ネプチューンマン自身、“前回”の闘いでも完全攻略は成し遂げられなかった厄介極まりない異能だ。

 現在書き記せる情報を元にアシュラマンが攻略法を編み出してくれればベスト。

 削りを入れるなどという控えめな夢など見ず、本当に目の前のふたりが時間超人を倒してくれれば願ってもない。

 

「ふん、よかろう。引き続き貴様の策に乗ってやる。この書類の内容が真実であるならば、さっそくいくつかの対策が思い浮かんだことだしな。半信半疑ながら、せいぜい利用させてもらうとしよう」

 

 そう言うアシュラマンの顔からは、すっかり警戒心が薄れているようだった。

 ひとまずは信用を得られたらしい。

 

「ああ、そうしてくれ。おまえたちが世界五大厄をくだし準決勝にコマを進めれば、残るのは伝説超人(レジェンド)と新世代超人の顔ぶればかり……オレにとっては同窓会にも等しいその面子で、真の“究極の超人タッグ戦”を行うとしようぜ」

 

 言いながら拳を突き出すネプチューンマン。

 アシュラマンは黙ってその拳に自身の拳を突き合わせた。

 

 

 ◇

 

 

「ジョワジョワ」

「ヌワヌワ」

 

 ネプチューンマンたちが密談を交わす体育館の屋根の上。

 以前蔵前国技館でそうしていたように、ライトニングとサンダーは屋根に穴を開け中の様子を窺っていた。

 なにやら怪しいとマークしていたネプチューンマンだったが――今の話で、アシュラマンと秘密裏に繋がっていることが発覚した。

 しかも、“世界五大厄”の戦法に関する情報を持っているというおまけ付きで。

 

「聞いたか兄弟。ネプチューンマンの野郎、オレたちに喧嘩を売ったことがあるってよ」

「嘘だな」

「やはりか? あいにくオレも記憶にない」

 

 一部始終を耳にし、ライトニングもサンダーもネプチューンマンが嘘を言っていると判断した。

 

「ジョワジョワ……いちいち雑魚の顔など覚えていないが、そもそもオレたちから命からがら逃げ延びたというのがおかしな話。これまでオレたちに敵対した超人は、すべからく死に追いやっているのだからな~~っ」

「ヌワヌワ……違えねえ。逆にそれだけのしぶとさがある超人なら覚えていそうなもんだ。となれば、やはりネプチューンマンの目的はアシュラマンを利用し、オレたちを消耗させるための捨て駒にすることか?」

 

 ネプチューンマンはなんらかの事情でアシュラマンとチェック・メイトを騙している。

 それは間違いないのだろうが、ライトニングにはいまいち解せない点があった。

 

「そうとも限らん……やつのアシュラマン、そしてチェック・メイトに対する態度には、どこか誠意のようなものを感じる。どうやってオレたちの手の内を知ったのかという謎は明かされぬままだが、その手段はおそらく仲間にも知られるとまずいものなのだろう。正義超人はおろか悪魔超人の倫理観にも反する得体のしれない所業だったりするのかもしれないな――っ」

 

 ネプチューンマンの保有する情報は単なる諜報の結果とは思えない。

 

「それを暴いてやるのもまた一興だが、目下の敵はザ・ナイトメアズ……特に伝説超人の一角であるアシュラマンだ」

 

 要警戒対象ではあるものの……所詮は全盛期をとっくに過ぎたロートル超人の小細工。

 ライトニングはそんなおっさんよりも、先日の抽選会で因縁をつけてきた悪魔超人を目障りと感じていた。

 

「だが伝説超人といっても、やつは21世紀では悪行超人として万太郎たちに立ちはだかっている。ここで始末するのはオレたちにとって損じゃないか?」

「関係ねえな~~っ。やつを含めた“悪魔の種子(デーモンシード)”は結局、正義超人どもに敗れて壊滅したんだ。ここはオレたちの恐ろしさを知らしめる生贄となってもらおうぜ」

「そうだな~~っ、兄弟。オレたちの圧倒的なパワーの前では対策など役に立たないことを教えてやらなきゃならねえ~~っ」

 

 マシンガンズが黄金のトロフィーを抜くのを妨害し、トーナメントマウンテンの頂きで大立ち回りをしてのけた“世界五大厄”。

“究極の超人タッグ戦”前日には弱小超人たちが大会に参加してこないよう裏で間引きを繰り返したりもした。

 だが20世紀の人間たちはまだ知らない……時間超人という種の絶対的な強さを。

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