ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第028話 “乱暴者の精神”!!

「Mr.バラクーダ!?」

 

 テリー・ザ・キッドは変身したロビンマスクを見てその名を叫んだ。

 

「さ……先のロビンの話にも少し出ていた。第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトにおいて、前大会でキン肉マンに敗北したロビンマスクが、捲土重来を期しセコンドとしてソ連の新鋭・ウォーズマンを送り出したときの姿……仮面を取りモップを被っただけだってのに、見ていると煮えたぎるような勝ちへの執念を感じるぜ……」

 

 なぜ、今そんな昔の姿に……いや、キッドにはもう見当がついていた。

 ロビンはネプチューンマンのスパーリングを受けて立つつもりだ。

 だが“究極の超人タッグ戦”参戦超人である両者が試合前にスパーリングを行うのはいろいろと問題がある。

 だからネプチューンマンは喧嘩男(ケンカマン)、ロビンマスクはバラクーダというもうひとつの姿を利用することで体裁を整えようとしているのだ。

 

「ウォーズマンの調教師だったザ・バラクーダか……対面するのは初めてだな」

 

 バラクーダは再びリングに上がり、ふたりのやる気を察したキッドがリングを下りる。

 喧嘩男vsザ・バラクーダ。

 古参超人レスリングファンでも想像すらしたことがなかったであろうマッチメイクがここに実現した。

 

「フフッ……マスクを取った素顔を見てみるとなかなかどうして、老け込んでいるのが如実にわかってしまうな」

「覚悟しておけよ色男。おまえもいずれはこうなる」

 

 お互いに軽口を言い合い、腰を深く落として臨戦態勢を取る。

 

「このバラクーダ、目上の者が相手だとしても容赦はしない。喧嘩男、おまえには第20回超人オリンピックのイギリス国内予選で受けた借りがある……そのときのお返しをさせてもらうぞ」

「あのときの私は若かった。しかしもし私があの予選を棄権しなかったら、第20回超人オリンピックのチャンピオンはキン肉マンではなくこの喧嘩男になっていただろうぜ」

 

 あの頃の因縁に今、決着を。

 スパーリングとは思えない覇気をまとい、両者同時に掴みかかった。

 低い姿勢から相手の肩に組みつくこの構図は、先日の“ネオ・イクスパンションズ”vs“スーパー・トリニティーズ”戦でも見たシーン。

 

「おおっ! “審判のロックアップ”!」

 

 夢の対決を前に、観客のように声を張り上げてしまうキッド。

 パートナーのロビンは渾身の力を込め、喧嘩男のフィジカルに対抗していた。

 

「どうだ――っ! これでもあのときのように組み合っただけで私の敗けだと判断できるか――っ!?」

 

 あの頃とは違う――そんなメッセージを秘めたパワーに、しかし喧嘩男はビクともしない。

 おまえの力はこんなものかと言わんばかりに、バラクーダの身を振った。

 

「うおっ!?」

 

 キャンバスに軽く叩きつけられたものの、すぐに起き上がるバラクーダ。

 喧嘩男に追撃の意思はなく、バラクーダを手招きし「もっと来い」と挑発していた。

 

「くっ……もう一丁――っ!」

 

 再びロックアップの体勢で組み合う両者。

 今度はふたりともこの力比べを楽しむように口元で笑んでいた。 

 

「ククク……思い出すなあ。大昔、私がビッグ・ザ・武道と組んでおまえとウォーズマンの“超人師弟コンビ”と闘ったときのことを」

「大昔などと言うな。おまえにとっては34年も前の出来事かもしれないが、私にとってはまだ数日前の出来事……忌まわしい記憶として残っている」

 

 アイドル超人軍の中では年長組といえるバラクーダだったが、この21世紀から来た喧嘩男と比べればひよっこも同然。

 だからこそ、若さゆえの過ちというのも見えてくる。

 

「だろうな。あのときのおまえは私の正体暴きに躍起になり、試合をおろそかにしてしまっていた。そのせいでパートナーであるウォーズマンの負担が増し、クロス・ボンバーによってマスクを剥がされてしまったのだったな……」

 

 苦い記憶を掘り起こされ、顔をしかめるバラクーダ。

 同時に、このまま言われてばかりでいられるかという対抗心も芽生えてくる。

 

「おまえはあの試合のときからなにも変わっちゃいない! 時間超人どもが抱えるケビンマスク入りのクリアベッドに気を取られ、同じ過ちを繰り返してしまった!」

「夢の中の私の行いで説教をされるとは! だが悔しいことに理不尽とは感じない! なぜなら実際の私もその状況ならケビンを優先してしまっただろうからだ――っ!」

 

 体を大きく振り、組みついていた喧嘩男をロープ際まで突き飛ばす。

 距離が空いたところで、腰を落とし片手をキャンバスにつけたタックルの姿勢になった。

 

「さあ受けてみろ! 超人レスラーとしてのデビュー前、大学時代にラグビーで鍛えた……ライナータックル――――ッ!」

 

 重機関車の如き突進力を持ったタックルが喧嘩男を襲う。

 喧嘩男は両腕を前に出したガードポジションでそれを防ぐが、衝撃を受けきれず数歩ほど後退を余儀なくされた。

 

「グゥゥ~~ッ、これこれ……こういうのがほしかったんだよロビンマスク。まさしく“狂乱の貴公子”の面目躍如といった乱暴者っぷりが~~っ」

 

 全身にビリビリと伝わる感覚を楽しむように、喧嘩男は笑みを作る。

 

「お望みとあらばもっと見せてやるぜ!」

 

 バラクーダの次なる手は、超低空サブマリンタックル。

 喧嘩男の両脚が持ち上げられ、体が宙を浮く。

 

「うおおおおおお!!」

 

 バラクーダの咆哮と共に繰り出されるのは、豪快という言葉を体現したかのようなぶん回し。

 目を回すことなど一切考慮していない大回転に、キッドは驚き目を見開いた。

 

「試合運びはいつもスマートなロビンが、あんななりふり構わない豪快なジャイアント・スイングを!?」

 

 そのままの勢いで放り投げられる喧嘩男。

 コーナーポストに激突し、背中を強く打った。

 

「ヌゥ~~ッ」

 

 これ以上調子づかせてなるものか、と喧嘩男はすぐに立ち上がり、左腕を掲げて挑みかかる。

 

「そのモップヘアーをふっ飛ばしてやる! 喧嘩(クォーラル)ボンバ――ッ!」

 

 喧嘩男の象徴ともいえるオリジナル・アックスボンバーが、バラクーダの首を狙う。

 電光石火の反撃――しかし、バラクーダはこれをバック転で回避した。

 

「くらうか――っ!」

 

 そこから倒立状態でのキックを放つ。

 その一撃は喧嘩男の顎をふっ飛ばし、屈強な彼の肉体を大きくよろめかせた。

 大技に繋げるチャンス――バラクーダは仕掛けに入る。

 喧嘩男に両脚を上げさせた体勢で逆さまにし、さらに両腕も交差させて手を掴む。

 

「おりゃああ――――っ!」

 

 そうやってロックした状態で回転、遠心力をつけて喧嘩男を空中へ放り投げた。

 すぐにバラクーダもジャンプし、喧嘩男を追う。

 喧嘩男に加えられた回転の力は凄まじく、上半身と下半身が雑巾を絞ったように逆方向を向いた。

 そんな捻じれた体勢のまま、喧嘩男はバラクーダに首と脚を掴まれ肩に載せられた。

 

「こ……これはタワーブリッジなのか!?」

 

 形はまさしくロビンマスクの伝家の宝刀“タワーブリッジ”。

 しかしながら上半身と下半身が捻じれた状態でかけられるこの技が成功すれば、おそらく被害は背骨折りだけにとどまらない。

 

「ハアアア――ッ!」

 

 空中で喧嘩男を捕らえたまま、勢いよく降下を始めるバラクーダ。

 万事休すか、喧嘩男。

 

「ストップだ――っ!」

 

 キッドが飛び、降下するバラクーダに体当たりをくらわせる。

 その衝撃で喧嘩男はタワーブリッジのロックから解放され、三人バラバラにリングへと着地した。

 

「やりすぎだぜロビン! ネプチューンマンもだ! あんたたちふたりとも間近に試合を控えた身……これ以上はガチスパーの範囲を超えている!」

「あ、ああ……キッド。すまない。止めてくれてありがとう」

 

 厳しく叱りつけるキッドに、さすがのバラクーダも反省の色を見せた。

 素直に頭を下げ、危うく胴体真っ二つにしてしまうところだった友に向き直る。

 

「そして……喧嘩男。君にも感謝を述べたい」

 

 かつての知己には、謝罪ではなく感謝を。

 このスパーリングでバラクーダ……いや、ロビンが得たものは大きい。

 

「今の一連の攻防……私の中で燻っていたなにかが燃え上がるようだった。“乱暴者の精神(ランペイジ・スピリット)”とやらはまだよくわからんが、不思議なことに今は、キン肉マンと闘うことへの迷いやアリサへの申し訳なさなどを微塵も感じない……ありとあらゆる負の感情のすべてが闘志へと変換されていくようだ~~っ」

 

 そう言って、ロビンマスクは頭からモップを取り払った。

 装着し直した鉄仮面に迷いはない。

 目論見がハマったのを実感し、喧嘩男はほくそ笑んだ。

 

「クク……そうかい」

 

 ロビンマスクは、もう大丈夫だ。

 喧嘩男はそう確信し、今度は彼のパートナーへと目を向る。

 

「よし! ではキッド、次はおまえの番だ」

「オレが?」

 

 ご指名があると思っていなかったキッドは間の抜けた返事をしてしまう。

 

「私は期待しているのさ。もしもジ・アドレナリンズがマシンガンズをくだすことができたのならば……その実力は時間超人を討つ最強の牙になりうると」

 

 まるで一端の教育者のように、喧嘩男は言う。

 

「それに、ある男に“後進の指導をせよ”と託されている。テリー・ザ・キッド、おまえにはまだそれらしいことはなにもできちゃいないからな。大いに胸を貸すぜ!」

 

 厚い胸板をドンと叩き、頼もしさを見せる喧嘩男。

 キッドは戸惑い、答えを求めるように傍らのパートナーを見た。

 

「借りてこい、キッド」

 

 ロビンマスクはそう言っている。

 喧嘩男――いやネプチューンマンは、キッドとは縁の薄い超人である。

 しかしこのときばかりは父テリーマンのような、直々の師匠のような存在感を感じてならなかった。

 

「まったく、自分も試合があるってのにとんでもねえおっさんだ。ヘラクレス・ファクトリーに入らず田舎で隠居してたってのが不思議なくらいだぜ」

 

 そうして、喧嘩男を交えた“ジ・アドレナリンズ”のトレーニングは続いていく。

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