ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第029話 “新世代”ゆえの苦悩!

 都内某所の超人病院。

 そこには“究極の超人タッグ戦”本戦出場チーム、“スーパー・トリニティーズ”のジェイドとスカーフェイスが入院していた。

 共に一回戦の“ネオ・イクスパンションズ”戦で敗北し、大怪我を負った身。

 命に別状はなかったが、退院まではもう少しの時間が必要だった。

 

「ジェイド~、スカ~。具合はどうだ~~っ?」

 

 そんなふたりのもとに、フルーツバスケットを持って見舞いに訪れた超人がひとり。

 彼らを病院送りにした“ネオ・イクスパンションズ”の片割れ、セイウチンである。

 

「お、おまえ……」

「セイウチン!?」

 

 ベッドからわずかに身を起こし、驚きをあらわにするスカーとジェイド。

 一方のセイウチンはのほほんとした様子でカゴの中の果物を選別していた。

 

「見舞いにきただよ。リンゴでいいだか? オラ皮剥くだよ」

 

 ふたりは唖然とする。

 リンゴと果物ナイフを手にするその姿は、とても自分たちを倒した男とは思えない。

 

「おまえ……“究極の超人タッグ戦”二回戦が間近に控えてるってのに、なんだってこんなところに」

 

 そう問いかけるのはジェイド。純粋にセイウチンのことを心配しての発言だった。

“究極の超人タッグ戦”は強豪ひしめくトーナメントバトル。

 ライバルへの対策やダメージの回復は常の課題であり、敗者の見舞いなどに使う時間はないはずだ。

 しかしセイウチンは頭を掻きながら恥ずかしそうに語る。

 

「いやあ~~っ、実はネプチューンマンのおっちゃんが背中をやっちまって。オラたちの試合は翌々日だし、今日は完全休養日になっただよ。んだもんで、手持ち無沙汰になったからふたりのお見舞いに……」

 

 スカーフェイスとジェイドの脳裏に「イテテ……」と背中をさするネプチューンマンの姿が浮かんだ。

 年齢を考えればまったくもって冗談とは思えない事態だった。

 

「おいおい……大丈夫なのかよあのおっさん」

「オレたちに勝ったんだから、しっかりしてもらわないと困るぜ」

 

 直接の敗者として苦言を呈するスーパー・トリニティーズのふたり。

 

「ハハッ、まったくそのとおりだ……」

 

 セイウチンは笑いながらも肩を落とし、声を小さくした。

 その弱々しい雰囲気に、ジェイドは思う。

 

「セイウチン……おまえ、もしかして次の試合を不安に感じているんじゃないか?」

 

 不安。

 試合には不必要な荷物を抱えてしまい、気を紛らわせるために自分たちのところに来たのではないか。

 予想は当たっていたようで、セイウチンはうつむきながらぽつりとこぼす。

 

「わかっちまうだか……そんとおりだ」

 

 九段のホテル“グランデ・パレス”で行われた組み合わせ抽選会の模様はジェイドたちも把握している。

 セイウチンをこうも弱気にさせている原因は、おそらく次の対戦相手だ。

 

「なんせ相手は、伝説超人(レジェンド)ウォーズマン……オラたちにとっては、“超人オリンピック・ザ・レザレクション”であのケビンマスクを優勝に導いた敏腕セコンド超人クロエ……そんな強敵とやるだなんて、まだ実感がわかねえだよ」

 

 一回戦はスーパー・トリニティーズという、勝手知ったる友達が相手だった。

 しかし二回戦は打って変わって大先輩。セイウチンにとっては歴史上の偉人とも言える人物だ。

 

「セイウチン……」

「フン。オレたちだって強敵だったろうが」

 

 心中を思いやるジェイド、おもしろくなさそうに鼻を鳴らすスカー。

 セイウチンはふたりへの申し訳なさを感じつつも、憂いは消えない。

 

「ジェイドとスカーのふたりに勝てたことは、オラにとってとてつもない自信になった。ほんの数日間だけども、ネプチューンマンのおっちゃんに鍛えられた成果はちゃんと出てるんだって。万太郎のアニキやキッド、チェックたちと肩を並べても恥ずかしくない新世代超人(ニュージェネレーション)の一角に成長できたと……今なら誇りを持って言えるだ」

 

 ジェイドとスカーフェイス――セイウチンとこのふたりの縁は、ヘラクレス・ファクトリー一期生・二期生入れ替え戦の頃からだ。

 使命を忘れて遊び呆けていた一期生……キン肉万太郎、テリー・ザ・キッド、ガゼルマン、そしてセイウチンを日本駐屯超人の座から引きずり下ろすべく、二期生であるジェイドやスカーたちが挑戦状を叩きつけた。

 セイウチンはそこで、ふたりの同期であるクリオネマンに無念の敗北を喫している。

 そのときのことを思えば、二期生であるジェイドとスカーに勝てた事実はまるで二期生組にリベンジを果たせたようで……得られた自信はセイウチンにとって追い風となるはずだった。

 

「わからねぇな。ならなにをそんなに悩む?」

 

 問いかけるスカー。

 セイウチンが追い風を感じられないのは、次の対戦相手の立場を思えばこそ。

 対ウォーズマンへの不安は、単純な実力面の話ではないのだ。

 

「この“究極の超人タッグ戦”の火種となったのはふたりも知ってのとおりケビンマスクの消滅危機……あのウォーズマンの愛弟子だ。きっとオラたちとは比べもんになんねぇくらいの、並々ならぬ想いでこの闘いに臨んでるに違いねえだよ」

 

 ウォーズマンはきっと、愛弟子であるケビンマスクの命を救おうと躍起になっている。

 自分たちがその障害となって立ちはだかるのは、はたして正解と言えるのだろうか。

 

「スカーの言ってた戦略の話じゃねえだが……それを考えたら、オラたちよりもウォーズマンたち“ヘルズ・ベアーズ”が勝ち進んだほうがいいんでねえがって思っちまうだよ」

 

 実力だけでなく、想いの強さでも負けている気がするから。

 心優しいセイウチンならば、そう思ってしまうのは無理からぬこと。

 友人の心理を痛いほど察し、しかしそれでも、ジェイドは否定の言葉を投げかける。

 

「セイウチン……そんなことはない。オレたち新世代超人だって、友であるケビンマスクを救いたい一心でこの時代に来たはずだろう? その気持ちはきっと、ケビンの師匠であるウォーズマンにだって負けてはいない。気持ちが対等なら、実力が上のチームが勝ち進めばいいのさ。オレたち“スーパー・トリニティーズ”とおまえたち“ネオ・イクスパンションズ”がそうしたように」

「ジェ、ジェイド……」

 

 まっすぐな励ましに、セイウチンは救われるような思いだった。

 

「ケッ、おまえの弱気なんざ知ったこっちゃねえがな。そんな心配は杞憂に終わるかもしれないぜ」

 

 スカーフェイスもまた、ジェイドのような優しさを見せることはないが、彼なりのぶっきらぼうな言葉を放る。

 

「なんせ時間超人どもの次の相手は21世紀でこのオレを散々苦しめた、あのアシュラマンだ……しかもパートナーはオレたちもよく知る21世紀の実力派超人チェック・メイト。あのふたりなら“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”をストレートに倒しちまっても不思議じゃねえ」

 

 スカーの言うとおり、時間超人が先に倒れればケビンマスクは助かったも同然。

 最大の敵への挑戦は、セイウチンやウォーズマンより先にアシュラマンとチェック・メイトのふたりが務める。

 チェック・メイトの強さはもちろんのこと、そのパートナーとして現れたアシュラマンの存在には大いに期待が持てた。

 

「確かにな……アシュラマンがリザーブマッチに登場したときは、よもやネプチューンマンのように時空船に密航してきた未来のアシュラマンではないかと肝を冷やした。実際はそうではなくこの時代のアシュラマンだったが、実力はオレたちを震撼させた再生(リボーン)・アシュラマンのそれとなんら変わらない……カナディアンマン先生とスペシャルマン先生のツープラトンを腕組みしながら止めたときは怖気が走ったぜ」

 

 リザーブマッチの鮮烈な試合模様を思い出し身を震わせるジェイド。

 あの恐ろしいほどの実力が味方についたというのであれば、新世代超人としては願ってもないことだ。

 

「そういえば、万太郎は大丈夫なのか? アシュラマンの恐ろしさを一番よく知ってるのはあいつだろう?」

 

 なんせ新世代超人の代表として再生・アシュラマンと直接対決を行ったのは万太郎だ。

悪魔の胎内(デーモンウゥーム)”でのあの死闘とも呼ぶべき試合はまだ記憶に新しく、万太郎の心が折れかかったことをジェイドは覚えていた。

 あの闘いから成長し、もはやアシュラマン恐るるに足らずといった調子なのだろうか。

 

「ああ、万太郎のアニキなら……この前の抽選会のときにアシュラマンと対面したんだけども、ステージの隅でグレートⅢと一緒にガタガタ震えてただよ」

 

 そんなことはなかったらしい。

 

「でも終わる頃にはグレートⅢのほうはアシュラマンに慣れてきたみたいで、『やっぱりアシュラマンの六本腕は格好いいな~~っ』とかなんとか言って、大判の色紙にアシュラマンの“6連手形”をお願いしてアニキに叱られたりしてただな……」

 

 ……タッグ揃ってなにをやっているんだか。

 スカーとジェイドのふたりはベッド上で呆れ果ててしまう。

 

「こりゃ……“マッスルブラザーズ・ヌーボー”に期待するのはやめといたほうがよさそうだな……」

「ああ……次はバッファローマン先生&ラーメンマン先生の“2000万パワーズ”が相手だしな……」

 

 本人たちのいないところで散々な言われようのマッスルブラザーズ・ヌーボーだった。

 

 

 ◇

 

 

 その頃、実際のマッスルブラザーズ・ヌーボーはどうしていたかというと。

 対2000万パワーズを想定し猛特訓に励んでいた。

 

「くらえ――っ! 仮想・ロングホーントレイン――――ッ!!」

 

 場所は新宿、数年後には都庁が立つ予定の空き地。

 雨の降りしきる中そこにリングを置き、協力者の人間たちとスパーリングを繰り広げる。

 ビーフマン、一等マスク、湯麺男、カレー・ルー・テーズといった面々は、グレートⅢ――カオスが参加していた見世物プロレスショーの仲間たち。

 人間の身でありながら、ボロボロになってでも万太郎やカオスの力になろうとする姿は実に美しいものだった。 

 

「腕を上げたなあ、カオス……」

「とても人間とは思えねえ技のキレとパワーだ」

「ああ……おまえならタッグのイットウショウになれるぜ!」

 

 友人たちの助力の甲斐あり、マッスルブラザーズ・ヌーボーもなにかを掴んだようだ。

 

「あ……ありがとう、みんな! こんなに傷だらけになって練習に付き合ってくれて! み……みんなの気持ちに応えるためにも、ワ……ワチキは絶対に万太郎とのコンビで“究極の超人タッグ戦”を優勝してみせる!」

 

 カオスは友人たちの献身に感涙し、明日の2000万パワーズ戦必勝を誓った。

 超人と人間の絆。

 これもまた一種の友情パワーか……と、ネプチューンマンは物陰からカオスたちの特訓を覗きつつ思うのだった。

 

(万太郎とカオスは心配なさそうだな……)

 

 変わりつつある歴史の中で、カオスが前回のように正義・時間超人として覚醒できるかは懸念点のひとつだった。

 その懸念点が解消されたのを確信し、ネプチューンマンは空き地から立ち去ろうとする。

 

「いてて」

 

 軽く振り返っただけで、背中に微痛が走る。

 原因は先日、ロビンマスクにやられた新型タワーブリッジの後遺症によるものだ。

 

(それにしてもロビンマスクめ。スパーリングであんな技を放とうとしてくるとは。キッドが止めに入ってくれなければ危なかった……明後日の試合には間に合うだろうが、今は安静にしておく必要があるか)

 

 あの技は未完成。

 ロビン自身も無意識に放ったものらしく再現は難しいとのことだが、現時点でも老体にダメージを追わせるだけの威力はあった。

 ロビンを気に掛けるあまり自分が負けていては間抜けにもほどがある。

 帰って休もうとしたネプチューンマンだったが、ふと脳裏にある男のアホ面が浮かび上がった。

 

「いや……今日はまだもう一仕事あるのだったな。おそらくはロビンマスクのケツを叩くことなどよりも、よっぽど困難な仕事が」

 

 ネプチューンマンは進路を変え、その男のもとへ向かう。

“究極の超人タッグ戦”二回戦の結果を理想のものとするためには、事前にあの男の抱える問題をクリアしなければならない。

 今頃は左腕の骨の除去手術を行うためバッファローマンのもとへ向かっているであろう――キン肉マンのもとへ。

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