ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
“2000万パワーズ”が拠点としている中華風の道場。
朝日も近い深夜、ネプチューンマンとモンゴルマンのふたりはその道場の中央に腰を下ろし、盃を交わしていた。
「
モンゴルマンが用意したぐい呑の中身は、酒。
用意したのはふたり分。
共に飲もうという意思表示に、ネプチューンマンは問う。
「いいのか? 試合の前日に酒など飲んだりして」
モンゴルマンはその問いに対し薄く笑い、先んじてぐい呑を取った。
「フッ……数日前に死闘を演じ、最後は爆発して死んだはずの男が目の前にいるのだ……それも30年余りの歳を重ねた姿でな。
そう言って、ぐいっと酒を煽るモンゴルマン。
「そうかい」
ネプチューンマンは短く言い、モンゴルマンに倣って酒を煽った。
お互いにぐい呑を置き、あらためて顔を向け合う。
「ネプチューンマンよ。私はこの場ではっきりおまえに告げておきたい」
先陣を切ったのは、この場に誘ったモンゴルマンだった。
用件はたったひとつ、言うべきことを言うため。
「私はおまえや
真っ向からの存在否定。
キン肉マンのようないちゃもんじみたものではない、信念のようなものを感じる否定の仕方だった。
「いかに新世代超人の顔つきにキン肉マンやテリーマンの面影を感じようとも……」
モンゴルマンは眼光鋭くネプチューンマンを睨みつける。
「いかにおまえの人相が老け込んでいようとも……」
敵意にも似た――否、正真正銘の敵意を、その眼力に宿す。
「いかに死した仲間が戻ってこようとも……」
新世代超人の存在も、ネプチューンマンやウォーズマンの復活も、この男にとっては些細なこと。
「我らは正義超人。事の真贋を見極めるならば闘いの中で……それしかあるまい」
真実を確かめるなら拳を合わせる以外に方法などない――そう言わんばかりの迫力があった。
争う気など欠片もなかったネプチューンマンだったが、ここまで言われては黙ってはいられない。
すみやかに立ち上がり、モンゴルマンを睨み返しながら言う。
「今ここでオレとやろうってのか~~っ」
二回戦前日だが、モンゴルマンの返答しだいでは――と覚悟を決めるネプチューンマン。
が、モンゴルマンは早くも酔ったかのように乾いた笑いを飛ばした。
「ははっ、私とて“ヘル・ミッショネルズ”だったおまえにリベンジを果たしたい気持ちはある。だがそう
……どうやらモンゴルマンなりのジョークだったらしい。
「もっとも、その相手はおまえではなくウォーズマンになるかもしれないがな」
しかし、ただの笑い話にするつもりはないようで、しっかりと挑発を添える。
「言いやがる」
この男との心理戦は一筋縄ではいかない。
ネプチューンマンはそう実感しながら、あらためて腰を下ろした。
「まったく
モンゴルマンを言葉で説き伏せるのは不可能だろう。
本人が先ほど言ったとおり、彼には試合の中で理解してもらうしかない。
そしてその役割は明日、モンゴルマンと直に闘うキン肉万太郎とグレートⅢにある。
「というか、なんだ。わざわざそんなことを言うためにオレを誘ったのか?」
「我が友バッファローマンの帰りが遅かったのでな。よもや甘言で惑わす輩がいるのではないかと……心配してみれば案の定だ。パートナーとしては悪い虫に釘を差しておきたくもなる」
「オレには2000万パワーズをハメるつもりなんてねえよ」
「どうだかな」
ネプチューンマンとしては嘘偽りない本心なのだが、信じてはもらえまい。
なんせ2000万パワーズは先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”でネプチューンマンの“ヘル・ミッショネルズ”に敗北している。
ウォーズマン同様、そのときの恨みから必要以上に警戒されていることが考えられた。
まあ、それならそれでいい。
ネプチューンマンも己の目的を果たすために行動を起こすだけだ。
「オレからもひとつ、次の試合の前におまえに言っておきたいことがある」
「なんだ」
上手い方法は、この瞬間に至るまで思いつかなかった。
だからストレートに、言葉で己の要求を突きつける。
「死ぬな」
百戦錬磨のモンゴルマンを前にして、死ぬな――と。
同じトーナメントを闘うライバル超人として、命を心配する。
これにはさすがのモンゴルマンも怒りをあらわにした。
「それは私が、マッスルブラザーズ・ヌーボーに敗れ、無惨に殺されると言いたいのか~~っ」
ネプチューンマンの言葉は己の実力が軽んじられているも同義。
モンゴルマンは挑発と受けったようだが、発言者の真意は異なる。
「違う。この場合の死ぬなとは、命を自ら投げ捨てるなという意味だ」
ネプチューンマンは知っている――明日行われる“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“2000万パワーズ”の結末を。
それは“前回”の記憶の話ではあるが、ネプチューンマンはこの一戦に関しては今回も同じ道をたどるだろうと予測していた。
「モンゴルマン……いや、ラーメンマン。おまえはかつてウォーズマンとの闘いで頭部に重傷を負い、再起不能を言い渡された。しかしそのモンゴルマスクを被ることで選手生命を取り戻し、蒙古の超人モンゴルマンとして復活を果たした。だがその傷は癒えたわけではない……モンゴルマスクを取れば、おまえはたちまち植物超人へと逆戻りしてしまうだろう」
モンゴルマンの正体であるラーメンマンの名を呼び、真剣な面持ちで語る。
モンゴルマンもその真剣さを感じ取ったのか、真摯に答えてくれた。
「そのとおりだ……このモンゴルマンの仮面は、私にとっての生命線。ゆえにどこぞの誰にも剥がされるわけにはいかない……なあ、ネプチューンマン」
「睨むな。これでも悪かったと思っている」
“宇宙超人タッグ”準決勝のマスク狩りのことを言っているのはすぐにわかった。やはり根に持っているのか?
ネプチューンマンは気を取り直し問う。
「しかし場合によっては、おまえはその生命線を自ら手放してしまうこともあるのではないか?」
モンゴルマンの反応は薄い。
質問の意図が読み取れていないようだ。
「たとえば……明日の試合でおまえが万太郎たちを未来ある正義超人だと認め始め、より確実にその実力を推し量るためにモンゴルマンではなく“
モンゴルマンはハッとし、思わず立ち上がった。
「バ……バカな!」
「絶対にないと断言できるか?」
ネプチューンマンの追い打ちのような問いに、モンゴルマンは考え込んでしまう。
やや間を置いて、言葉を絞り出した。
「グ……グム~~ッ。確かに、もしそのような状況になれば……私は自らモンゴルマスクを取り去ってしまうかもしれん。そうなれば私の命が尽きてしまうのは必定……だ、だが! キン肉万太郎にグレートⅢはそれほどの男たちだというのか~~っ!?」
一笑に付すのではなく、問う。
現時点のモンゴルマンがあのふたりに可能性を感じている証拠だ。
だからこそ、危うい――と、ネプチューンマンはそう感じてしまう。
「それは明日、おまえが試合の中で見極めればいいさ」
モンゴルマンに無茶をさせないための策はついぞ思いつかなかった。
できることといえば、こうやって言葉で釘を刺すことだけだ。
「だがこれだけは覚えておけ……おまえは21世紀の正義超人界に必要不可欠な男。軽はずみな自己犠牲などに走らないことだ」
ネプチューンマンは立ち上がり、モンゴルマンに難題を押しつけ道場を去ろうとする。
去り際、さらに追い詰めるようにこう言い残す。
「万太郎はおまえのことをラーメンマン先生と呼び慕っていたぜ」
キン肉万太郎が正義超人としてデビューするきっかけとなった人物は、父キン肉マンではなくラーメンマンだったと聞く。
なればこそ、この男には生きてもらわねばならない――未来に生まれてくる多くの後輩正義超人たちのために。
◇
時刻はもはや、朝を迎えようとしていた。
帰路につくネプチューンマンは徹夜の気だるさを背負いながら、人通りの少ない街路を行く。
宿に戻り、一眠りしたら二回戦の始まりだ。
帰るまでの間にあらためて今後の方針をまとめておこう。
(今回の“究極の超人タッグ戦”、時間超人を倒すことはもちろんとして、正義超人側の被害も最小限に抑えたい)
ネプチューンマンは道すがら“前回”の闘いを振り返る。
時間超人コンビ“
今回は、そうはいかない。
(オレとセイウチンが正義超人として立ち回ることによって、チェック・メイト、スカーフェイス、ジェイドの再起不能は免れた。イリューヒンとバリアフリーマンを救えなかったことだけは無念だが、新世代超人にとっては確実に前回よりも状況が好転している)
といっても、“前回”新世代超人の面々を再起不能にしたのは他でもない己自身。
被害を食い止めたなど、偉そうなことは言えない。
それに、イリューヒンとバリアフリーマンを救えなかった悔恨は今も胸に残り続けている。
(伝説超人側も、ブロッケンJrとジェロニモを守ることができた。オレの忠告がうまく働いてくれれば、ラーメンマンも明日の試合で命を落とすほどの無茶はしないだろう……これについては、どこまでいっても本人次第だがな)
明日のマッスルブラザーズ・ヌーボーvs2000万パワーズ戦。
理想としては、ラーメンマンが命を落とさず、カオスも成長を遂げた上で、伝説超人が新世代超人を認めるような結果となってくれれば最上だ。
(ザ・マシンガンズvsジ・アドレナリンズの試合は、正直オレにもどっちに転ぶかわからん。だが現状のキン肉マンやキッドたちなら、たとえ新旧超人対決となっても怨念めいた闘いにはならないはずだ。あいつらには純粋に力を競い合ってほしくもあるしな)
時間超人攻略の観点から見れば、どちらが勝ち上がったとしても悪い結果にはならないだろう。
問題はやはりキン肉マンと万太郎の関係だが、できれば“前回”のマスク剥ぎ対決の再現は避けたいところだ。
(アシュラマンはオレが想定していた以上に義理堅い。未来のことを伝えたのがそんなに効いたか? 事前に対策も伝えておいたし、理想は二回戦であのふたりが時間超人を倒してくれることだ……もしそれが叶わずとも、やつらを死なせるわけにはいかん。もしものときは……)
時間超人の手の内を事前に把握しているというアドバンテージがどう活きるか、それは“ザ・ナイトメアズ”のふたりしだい。
アシュラマンの自信が慢心からくるものでないことを願うばかりだ。
(今の一番の懸念は、やはりウォーズマンか……あの熊野郎、ついにこの3日間じゃ姿を見せなかった。人里離れた場所でマイケルを調教しているのか。いずれにしても、やつとは本番で一度ぶつかりあわなきゃならないようだな)
完全なる誤解からネプチューンマンを敵視しているウォーズマン。もはや彼との真っ向勝負は避けられないだろう。
懸念があるとすれば、マイケルの存在だが……それは明日、二回戦の前半二試合の結果を踏まえて対策するとしよう。
(まずは明日、マッスルブラザーズ・ヌーボーvs2000万パワーズ、そしてザ・マシンガンズvsジ・アドレナリンズがどんな顛末をたどるか……見届けさせてもらうぜ)
朝焼けを眺めながら、ネプチューンマンは運命の日を迎える。
“究極の超人タッグ戦”二回戦初日――本格的に歴史が変わるその日を。