ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第033話 開幕!歴史改変の末の一戦!

『さあ~~っ、2000万パワーズvsマッスルブラザーズ・ヌーボーの激闘の興奮冷めやらぬ中、ここ田園コロシアムでは早くも二回戦Aブロック第2試合が行われようとしております!』

 

 舞台は変わらず、田園コロシアム。

 客席は1万人の超人レスリングファンで埋まり、次の試合を今か今かと待ちわびていた。

 

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“2000万パワーズ”戦で使用されたバーニングコート(火刑法廷)・ケージリングはすでに撤去されており、代わりのリングが設営されている。

 見た目はなんの変哲もない、それでいてどこか古ぼけたリングだった。

 ハラボテの興行を知るものからしてみれば、このシンプルさが逆に不気味……なにか仕掛けがあるのでは、と思わずにはいられないだろう。

 

 まもなくこのリングに立つ超人は、4人。

 

『次なる対戦カードは、皆さんご存じキン肉マン&テリーマンによる“ザ・マシンガンズ”と……ロビンマスク&テリー・ザ・キッドによる“ジ・アドレナリンズ”の正義超人対決であります!』

 

 キン肉マン&テリーマンと、ロビンマスク&テリー・ザ・キッド。

“ザ・マシンガンズ”vs“ジ・アドレナリンズ”。

 正義超人対決であり、ライバル対決であり、先輩後輩対決であり、親子対決でもある。

 因縁がありすぎるこの一戦は、二回戦の中でも最注目カードといえた。

 

『古参超人レスリングファンの方はさらによくご存じでしょう! キン肉マン、テリーマン、ロビンマスクの3人は過去に行われた第20回超人オリンピックにおいて優勝を競い合った間柄。その準決勝ではテリーマンとロビンマスクが対戦するも、テリーマンは試合直前のアクシデントで脚を負傷……反則攻撃を駆使し貪欲に勝ちを狙いにいきましたが、惜しくも敗退。負傷の身でありながらライバルとの闘いに臨むその姿に、勝者であるロビンマスクは賛辞を送りました』

 

 往年のテリーマンファンは、あの一戦を悔しく思っていることだろう。

 もしテリーが万全の状態であったなら――そんな妄想が、今日現実のものとなる。

 

『続く決勝戦はキン肉マンvsロビンマスクのまさに世紀の一戦。キン肉マンの提案した敗者が国外追放されるという特殊ルールのもと、一進一退の好試合が繰り広げられました。最終的にはロビンマスクがキン肉マンに必殺のタワーブリッジを仕掛けるも、それで相手をKOしたと誤認し直後の隙を突かれ逆転負け……かくしてチャンピオンベルトはキン肉マンの手に渡ったのであります!』

 

 あの頃のキン肉マンはまだダメ超人の印象が強く、それだけにロビンマスクの敗北は誰にとっても衝撃の結果だった。

 当時はキン肉マンの代名詞であるキン肉バスターも生まれていなかった。

 もし、今のふたりが再戦したとしたらどんな闘いが観られるのか――双方のファンが期待に胸を躍らせる。

 

「敗けたら国外追放って、あのアホ父上はそんな悪行超人みたいなルールを提案してたのか~~っ?」

 

 信じられないといった表情でそう口にするのは、キン肉マンの未来の息子であるキン肉万太郎だ。

 彼は2000万パワーズとの激闘を終えた直後でありながら、実の父の試合を近くで見るため客席に座っていた。

 もちろん傍らには素顔を隠す必要がなくなったカオス、そしてキン肉マンに三下り半を突きつけられたミートくんがいる。

 

「まあまあ……あの頃の王子は今より輪をかけてアホ……いえ、血気盛んでしたから」

 

 と、ミートは昔を懐かしむように語る。

 コンプライアンスという言葉が定着しつつある21世紀とはいろいろと時代が違ったのだ。

 

『テリーマンはもちろん、万全のコンディションでロビンマスクに再戦を挑みたいでしょう! ロビンマスクもまた、キン肉マンへのリベンジを標榜しております! キン肉マンは超人オリンピックチャンピオンの名にかけて、その挑戦を阻むものであります! そして、さらに~~っ』

 

 実況担当の人物もこの世紀の一戦に興奮しているのか、選手紹介に熱が入る。

 

『ロビンマスクのパートナーを務めるのは、対戦チームの一角であるテリーマンの息子を自称するテリー・ザ・キッド! その真贋のほどは未だ定かではありませんが、一回戦の“鬼哭愚連隊”戦で見せたガッツあふれるファイトは、まさにテリーマンの生き写しと言っても過言ではありません! 言うなればこの2チーム四者、全員が宿命のライバル同士! 白熱する試合になること請け合いです!』

 

 そう、テリーマンファンとしてはロビンマスクのパートナーであるテリー・ザ・キッドも無視できない存在だろう。

 容姿からファイトスタイルまで、ありとあらゆる要素がテリーマンを思わせるヤンキー超人。

 一回戦の“鬼哭愚連隊”戦でファンになった者も多く、因縁の対決の不確定要素として大いに存在感を示していた。

 

 田園コロシアムの客席は広い。

 キン肉万太郎やカオスが座る席とはまた離れた位置に、ネプチューンマンとセイウチンもいた。

 ラーメンマン消滅の喪失感は癒えていないが、この一戦を見逃すわけにはいかないとおとなしくそのときを待っている。

 

 そんなふたりのもとに、怪しげな六本腕のシルエットが忍び寄る。

 

「おまえはどちらに勝ってほしいのだ?」

 

 その質問を挨拶代わりとし、ネプチューンマンの隣の席に座ったのは――悪魔超人アシュラマンであった。

 

「アシュラマン」

「ひえぇ~~っ、ア……アシュラマン」

 

 冷静に対応するネプチューンマンに対し、“悪魔の種子”との闘いの記憶が新しいセイウチンはややビビっていた。

 アシュラマンの傍らには相方のチェック・メイトもいる。どうやら“ザ・ナイトメアズ”も近くで観戦するつもりらしい。

 ネプチューンマンはアシュラマンの問いに答える。

 

「妙なことを訊くな。オレの目的は時間超人の討伐……マシンガンズもアドレナリンズも正義超人タッグであるならば、どちらが勝ち進んだとて不満はない。心情的にはどちらにも勝ち進んでほしいくらいだ」

 

 偽らざる本心を真面目に伝えるが、アシュラマンはどう受け取ったのか高笑いをしてみせた。

 

「カーカッカ。時間超人どもはこの私とチェック・メイトに倒されるというのに要らん願望を抱くな。では訊き方を変えるが、勝つのはどちらだと思う?」

 

 問うたのは、願望ではなく予想。

 ネプチューンマンの答えを待たず、アシュラマンは己の考えを述べた。

 

「私は断然、マシンガンズだ」

 

 キン肉マンとテリーマンが、ロビンマスクとキッドを倒すだろうと。

 その予想は、ネプチューンマンとしても大いに頷ける。

 なにせアシュラマンほどザ・マシンガンズの強さを知る超人はいないのだから。

 

「フッ……それはやはり、あのふたりがおまえを下した相手だからか?」

「まあな。あのふたりの実力はよーく知っている。ジ・アドレナリンズもなかなかに実力のあるチームのようだが、ロビンマスクのメンタル面に若干の不安が見られる……まあ妻子が命の危機にあるというのであれば仕方あるまい。もっとも、そんな状態で勝てるほどマシンガンズは甘くないと思うがな」

 

 実際、この会場にいる超人レスリングファン全員にアンケートを取ったとしてもザ・マシンガンズ勝利の予想が多いだろう。

 あのふたりは幻となってしまった“宇宙超人タッグ・トーナメント”チャンピオン。二回戦で消える器ではない。

 だが、ネプチューンマンの考えは少し違った。

 

「大した観察眼だが、“男子三日会わざれば刮目してみよ”……抽選会から二回戦が始まるまでのこの3日間で、ロビンマスクの精神は大きく変わっているかもしれないぜ」

「ほう? というと」

「ああ。おまえがマシンガンズなら、オレはジ・アドレナリンズの勝利を予想させてもらおう」

 

 ネプチューンマンは知っている。ロビンマスクとキッドの並々ならぬ想いを。

 特にロビンマスクは“乱暴者の精神(ランペイジ・スピリット)”を掴み取り、アシュラマンのいうメンタル面の不調は改善されたはずだ。

 あのスパーリングのときのようなポテンシャルが発揮できれば、相手がマシンガンズであろうと遅れは取らない。

 

「カッカッカ。なるほどなるほど。ではチェック・メイトにセイウチン。おまえたちはどうだ?」

「え?」

「オラたちだか?」

 

 話を振られたそれぞれのパートナーが戸惑いを見せる。

 

「テリー・ザ・キッドという超人についてはおまえたちのほうがよく理解しているだろう? 私やネプチューンマンはどうしてもキン肉マン、テリーマン、ロビンマスクの三人のみで勝敗を考えてしまうからな。特に私は20世紀の超人だから、やつのことをよく知らん」

 

 アシュラマンはネプチューンマンから未来の情報を教えてもらったが、そこにテリー・ザ・キッドに関わるものはほぼない。

 ネプチューンマンもタイムスリップ前まではイギリスの山中に籠もっていた身。キッドについては、さすがにふたりほど詳しくはない。

 対して、チェック・メイトとセイウチンは同じ新世代超人(ニュージェネレーション)

 悪行超人と闘う仲間というだけでなく、共に遊び歩く友達同士でもある。

 

「う~ん、キッドは確かに新世代超人の中でも実力者ですが、勝ち星にはあまり恵まれていないタイプの超人であることも確か……相手が伝説のマシンガンズともなると、やや不利に感じてしまうのは否めませんね……」

 

 チェック・メイトは厳し目な意見を口にし、

 

「そうだな……悪行超人退治ならともかく、正義超人同士の闘いっていうのも懸念材料だ。オラたちヘラクレス・ファクトリー出身の超人は仲間同士で闘う経験に乏しいし、本音を言っちまうとキッドには荷が重いような気がするだよ……」

 

 チェック以上にキッドと付き合いの長いセイウチンも同じ意見だった。

 

「なんだなんだ、新世代超人のお仲間から見てもマシンガンズ優勢か――っ?」

 

 期待していた反応と違っていたのか、アシュラマンはつまらなそうに言った。

 アドレナリンズを推すネプチューンマンは、キッドをフォローするように己の考えを述べる。

 

「だが今のキッドにはロビンマスクがついている。それに、相手がただの伝説超人(レジェンド)ではなくマシンガンズというのはやつにとって追い風だ。常日頃からああはなりたくないと対抗意識を燃やしていた親父のテリーマン、親父嫌いの一因であるナンバー2思考の原因ともなったキン肉マン……このふたりを同時に倒せれば、キッドのアイデンティティは証明されたも同然」

 

 闘いに臨むためのモチベーションは十分。そこは疑いようがない。

 だがアシュラマンは小気味よく笑う。

 

「カカカ、そうか? 私にはその気負いっぷりが、追い風ではなく逆風になりそうに思えるがな――っ?」

「それもありうる……予想の難しいところだ」

 

 ネプチューンマン自身、そこは判断しきれない。

 キッドの執念はストロングポイントでもあり、ウィークポイントでもある。

 鍵となるのは――現段階でのテリーマンからキッドへの心象、そしてスタンスだろうか。

 

“前回”では実現しなかったテリー一族の親子対決。

 キン肉マンのように存在を全否定するほどではなく、かといってすでに息子と認めているかといえばそうとも言い切れない。

 はたしてテリーがキッドに対してどのような行動に出るか、そこがこの試合の命運を握る鍵となるような気がした。

 

「そろそろ始まるぞ」

 

 田園コロシアム全域に音楽が響き渡り、歓声が上がる。

 これから超人レスリングの試合が始まるぞ、という期待を高まらせる独特の雰囲気。

 宇宙超人委員会のリングアナがマイクを取り、入場ゲートの入口を指し示した。

 

『ゲートより、キン肉マン&テリーマン“ザ・マシンガンズ”の入場です!』

 

 そこには抽選会の時のようなトーナメントボックスがふたつ置かれている。

 超人レスリングはお決まりの入場演出。

 特にザ・マシンガンズの入場ともなれば、ファンの熱狂は凄まじい。

 

『さあゲート入口にある巨大なトーナメント舞台……その左側のボックスが降下してきた――っ!』

 

 リングへと続く花道に降り立ったトーナメント・ボックス。

 登場したのは、まずテリーマンである。

 

『ああ~っとボックスの中からは“テキサスの暴れ馬(ブロンコ)”テリーマンが、テンガロンハットとローハイドのカウボーイ・スタイルで出てきた――っ』

 

 アメリカはテキサスを拠点とする超人らしい、伝統的なスタイルで入場を果たすテリーマン。

 その容姿端麗な出で立ち、20世紀風に言えばハンサムなビジュアルに多くの女性ファンが黄色い声を上げた。

 

『そしてその後を……“奇蹟の逆転ファイター”キン肉マン、あいも変わらずアホなコスチュームでの入場であります!』

 

 それに対し、キン肉マンはこれからサンバカーニバルにでも参加するかのような巨大な羽飾りをつけての入場。

 黄色い声は爆笑に変わり、田園コロシアムは吉本新喜劇の劇場のような空気に一変した。

 

『さあ~~~~っ超人界最高のデュオの登場だ――っ! 1980年にはアメリカで行われた“世界超人タッグ戦”においてタイトル奪取、そして先の“宇宙超人タッグ戦”では非公式で幻となってしまいましたが優勝とまさにタイトルコレクタ――ッ! 宝石、ワイン、クルマの中にも“珠玉の逸品”と呼ばれるものがありますが、超人タッグ界の“珠玉の逸品”とはまさにこのザ・マシンガンズのことだ――っ! キン肉マンの95万パワープラステリーマンの95万パワーは、まさに最強タッグの黄金律――っ!』

 

 ザ・マシンガンズはまさに王者の風格を放ちながら颯爽とリングイン。

 テリーマンがテンガロンハットを手で回し、キン肉マンが投げキッスを連発する。

 

『続きまして、テリー・ザ・キッド&ロビンマスク“ジ・アドレナンズ”の入場です!」

 

 マシンガンズと逆方向の入場ゲートにも、同じようにトーナメント・ボックスが置かれていた。

 リングアナの紹介に合わせてボックスが降り、中からアドレナリンズのふたりが――現れない。

 開かれたボックスには、誰もいなかったのだ。

 

『ああ~っとこれはどうしたことだ――っ? マシンガンズ同様、反対側のトーナメント・ボックスから出てくることが予想されたアドレナリンズですが、そこはもぬけの殻……いったいテリー・ザ・キッドとロビンマスクのふたりはどこへ消えてしまったというのか~~っ』

 

 ざわつく会場内。

 対戦チームが消え、マシンガンズも気が気でなかった。

 

「あのふたりが臆して逃げたなど考えられないが……」

「トイレなんじゃないの?」

 

 相手の狙いを探ろうとするテリーマン、のんきに構えるキン肉マン。

 敵前逃亡はありえないとして、はたしてジ・アドレナリンズはどこへ行ってしまったのか――

 

「オレたちならここにいるぜ――っ!」

 

 どこからかテリー・ザ・キッドの声が聞こえ、田園コロシアムにいる人々が揃って視線を傾ける。

 方向は皆同じ――上。

 キッドの声は空から聞こえてきた。

 

『な、なんだ――っ!? 田園コロシアム上空に、謎の飛翔物体がふたつ――っ!?』

 

 屋外スタジアムである田園コロシアムの上空を、飛行機のようなシルエットがふたつ飛んでいる。

 否。それは飛行機にあらず。

 正体は、ジ・アドレナリンズが搭乗するハンググライダーである。

 

『あ――っと謎の飛翔物体の正体はテリー・ザ・キッドとロビンマスクだ――っ! なんとジ・アドレナリンズ、ハンググライダーを使って空から入場してきました――っ!』

 

 キン肉マンのハデハデコスチュームが霞むほどの大胆な入場に、観客は大興奮。

 会場内はキッドとロビンの名を呼ぶ歓声で満たされた。

 

「なんだ~~っ? アホの父上ならともかく、ロビンマスクってこんなに派手な入場を好むタイプだったの~~っ」

 

 意外に思った万太郎がそう言うと、傍らのミートがやはり興奮した様子で解説する。

 

「違いますよ! これはロビンマスクが王子に敗れた第20回超人オリンピック決勝のときの入場の再現……きっとあのときのような意気込みを見せつけようとしているんです!」

 

 元々は当時のロビンマスクのトレーナーであったガニア・マスクが派手好きのキン肉マンに対抗するために考案したもの。

 この入場スタイルは、ロビンマスクの熱意のあらわれに違いない。

 

「ふん、ロビンのやつめ。格好つけおって」

 

 それを肌で実感しているのか、リング上のキン肉マンは負け惜しみのようにそう口にした。

 そうこうしている間に、一対のハンググライダーが田園コロシアム中央のリングに着地しようとする。

 

『ジ・アドレナリンズ、いま上空より降り立ち、マシンガンズの待つ地上へリングイン――ッ』

 

 ふたりのコスチュームは一回戦の“鬼哭愚連隊”戦と同様。

 ロビンマスクはいつもの鎧姿、テリー・ザ・キッドはアメリカ国旗を思わせるようなレスリングシングレット。

 入場用コスチュームを着てきたマシンガンズとは対照的に、衣装からして臨戦態勢だった。

 

『さあ~~っ、一回戦は“鬼哭愚連隊”の中国秘術に手こずったジ・アドレナリンズでありましたが……そこはニュージェネレーションとアイドル超人の“雄”同士の合体チーム。呼吸があえばこっちのものとオリジナルのツープラトンで激勝! 見事二回戦進出を決めました! 若さと経験のチームがコンビの息も万全となって、この因縁の一戦に挑むわけであります!』

 

 リング上であらためて向かい合う4人の超人。

 ゴングまでのわずかな猶予、マシンガンズはこれから自分たちが激闘を繰り広げるリングをしげしげと眺めた。

 

「それにしても……さっきの2000万パワーズvsマッスルブラザーズ・ヌーボー戦で使われた“バーニングコート(火刑法廷)・ケージリング”に比べると、今度のリングはずいぶん平凡だな。見たところなんの仕掛けもないようだが……」

「平凡どころか、オンボロもオンボロ……ところどころに血とか汗の染みっぽいものがついているし、もしかしてハラボテのやつが予算をケチったんじゃないのか~~っ?」

 

 宇宙超人委員会のやり方をよく知るテリーマンとキン肉マンは拍子抜けしたように言う。

 ふたりのその様子を見て、ロビンマスクは失笑した。

 

「フッ……キン肉マンにテリーマン。おまえたちふたりにはこのリングの正体がわからないか」

「なぬ?」

 

 ロビンは意味深長につぶやき、続けざまにハラボテが解説を始める。

 

『皆様にご説明しましょう。我々宇宙超人委員会はこの“究極の超人タッグ戦”を盛り上げるため、様々な特設リング、様々な特殊ルールを考案してまいりましたが……キン肉マン、テリーマン、ロビンマスクの三者が集うこの試合に創意工夫を凝らすのは逆に無粋と判断。かつて国立競技場に置かれていたこのリングを復活させることによって、彼らへの最大限の敬意を示させていただきました』

 

 ハラボテの口から飛び出たワードに、テリーマンとキン肉マンはハッとする。

 

「国立競技場……」

「ま、まさかこのリングは……」

 

 ニヤリと笑うハラボテ。

 ふたりが考えもしなかったサプライズ、その正体は――

 

『そう! このリングは第20回超人オリンピック決勝……キン肉マン対ロビンマスクの一戦に使用されたリングであります!』

 

 田園コロシアムの観客、特にあの世紀の一戦を知る古参ファンから驚嘆の声が上がる。

 テリーマンもヒューと口笛を吹き、キン肉マンは複雑そうな表情を作った。

 

「ハラボテ委員長も粋なことをするじゃないか。なあキン肉マン」

「ふ、ふん! 予算をケチってることにはかわりないではないか」

 

 かつてキン肉マンをダメ超人と揶揄し、目の敵にしていたハラボテの仕事とは思えない。

 最大限のリスペクトを受けながらも、素直に喜べない気持ちがマシンガンズのふたりにはあった。

 

「しかし、注目すべきはそんな些細な点にいち早く気づいたロビンマスクだ」

 

 テリーマンにとってもキン肉マンにとっても因縁深いリングだが、その事実にすぐ気づけたのはロビンマスクただひとり。

 それがなにを意味するのか……その答えに気づき、同時に“怖さ”を感じてしまったからだ。

 

「あいつはそれだけ、おまえとの一戦を根強く覚えている。輝かしい思い出か、忌まわしい記憶としてかはわからないが……こうやってリング上で対面してみると、まるで悪魔超人や完璧超人と相対したときのような怨念めいた威圧感を感じるぜ」

 

 ロビンマスクへの警戒心を強めるテリーマン。

 その視線は表情を悟らせぬ鉄仮面へ。

 そこから流れるように、隣の超人を見る。

 

「それに……キッド……」

 

 己と瓜二つな容姿を見て、テリーマンはつぶやく。

 息子を名乗る人物になにを思うか、それは本人以外にはわからない。

 

「ロビン……」

 

 一方、キン肉マンはまっすぐにロビンマスクを見ていた。

 あるときは日本で、あるときはアメリカで、幾度強さを競い合った友人に思いを馳せる。

 

「パパ……そして、キン肉マン」

 

 テリー・ザ・キッドは若い頃の父とその親友を前にし、闘志をみなぎらせる。

 勝利を渇望する気持ちは三人の先輩にも負けていない。

 

「マシンガンズ……」

 

 そしてロビンマスクは、不気味なほどに落ち着いた様子を見せていた。

 三者三様、それぞれの意地と執念と誇りを懸けた試合がいよいよ始まる。

 

『さあ~~っ、世紀の一戦、まもなくゴングです!』

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