ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
“究極の超人タッグ戦”二回戦第2試合。
“ザ・マシンガンズ”vs“ジ・アドレナリンズ”――開戦。
『さあ~~っ、たった今“ザ・マシンガンズ”vs“ジ・アドレナリンズ”の宿命の一戦のゴングがここ田園コロシアム内に響き渡りました! あの第20回超人オリンピック決勝で使われた因縁深いリングを舞台に、まずはマシンガンズの先鋒・テリーマンとアドレナリンズの先鋒・ロビンマスクが睨み合っている――っ』
立ち上がりは、テリーマンvsロビンマスク。
テリーマンは入場時のようなカウボーイ・スタイルではなく、彼の戦装束ともいえるスリースターパンツに着替えている。
対して、ロビンマスクは鎧姿。装着するのはロビン一族伝来の“
共に熟練の超人レスラー。ゴングと同時に突っ込むような真似はせず、じっくりと距離を詰めていった。
間合いの外から、テリーマンがファイティングポーズを取りながらも微かに口角を上げる。
ロビンマスクとの再戦を喜ぶかのような笑みだった。
「フッ……ロビンマスクよ。第20回超人オリンピックの準決勝ではキン骨マンから受けた銃撃による負傷が原因で、キミに反則攻撃を仕掛けるという醜態を見せてしまった。だが今は元の足と遜色ない素晴らしい義足を手に入れ、コンディションも最高だ。時間超人の成敗という使命は一旦棚に置き、ここは純粋にファイトを楽しむとしようじゃないか」
あのとき実現できなかった正々堂々の真っ向勝負を、今。
テリーマンは並々ならぬ想いを語るが、ロビンマスクは無反応だった。
返答もなければ頷きもしない。仮面の下は寝顔なのかと疑いたくなるほどの静けさだ。
「ロ……ロビン?」
テリーマンが怪訝に思った、次の瞬間。
ロビンマスクは身を翻し、回転の力を乗せてテリーマンの横っ腹を蹴りつける。
『あ――っとロビンマスク、テリーマンの呼びかけに応えず先制のソバットだ――っ』
不意を突かれたテリーマンは二歩、三歩後退。
距離が開いたのを利用し、ロビンマスクは腰を落として片手をキャンバスに突き立てる。
お得意のラグビー式タックルで、さらなる追撃に出た。
「タァ――ッ!」
咄嗟、テリーマンは両腕を盾のように構えガード。
暴走運転のごとく突っ込んできたロビンに備えるが、
『続けてライナー・タックル――ッ! テリーの体をふっ飛ばした――っ!』
衝撃を殺しきれず、今度は四歩、五歩と後退を強いられた。
さらなる隙が生じたところへ、ロビンマスクは次なる攻撃を繰り出していく。
攻め手は連続下段蹴りだ。
「タァ――ッ! タァ――ッ! タァ――ッ!」
『ロビンマスク、怯んだテリーマンにローキックの嵐! 問答無用と言わんばかりに序盤から攻めまくる――っ!』
ローキックには一撃で相手をKOするほどの派手さはないが、すべての格闘技において重要な“脚”を破壊する合理的
それを試合序盤から狙われてはたまったものではない。テリーマンは苦虫を噛み潰すような表情を見せた。
「ぐっ……調子に、乗るな!」
テリーマンは狙われている脚をわずかに上げ、ロビンの蹴り足に脛を合わせた。
脛で防がれたことによりロビンの攻撃が一瞬やみ、すかさずテリーマンがその蹴り足をキャッチ。掬うように持ち上げ転倒させる。
『これは上手い! テリーマン、ロビンマスクのローキックをカットし、そのまま蹴り足を取って転ばせた――っ! そして流れるように移行するこの技の体勢は……』
仰向けになっているロビンマスクの片脚を持ち、間に差し入れた自分の脚を軸に巻き付けるように捻り上げる。
テリーマンの代名詞ともいえるこの技の名は――
「スピニング・トゥホールドだ!」
早くもテリーマンの必殺技が炸裂し、客席のテリーマンファンが歓声を上げた。
一方、技をかけられているロビンマスクのファンは悲痛な叫びを上げる。
このまま観客のリアクションどおりの結果が訪れてしまうのだろうか?
「甘いぜテリーマン」
この世紀の一戦に、そんな早期決着はありえない。
ロビンマスクは冷静にテリーマンを諭し、技をかけられながらも一直線に手を伸ばす。
伸ばした手の先には、信頼を置けるパートナーの掌があった。
『あ~っとテリーマン、技を仕掛けたはいいがそこはコーナー端! ロビンマスクの手がテリー・ザ・キッドに触れる――っ』
ロープを飛び越えリングインするのは、テリー・ザ・キッド。
その方法は、両脚を前に突き出しテリーマンの体をぶっ飛ばす形で行われた。
『ドロップキックでロビン救出&キッド参戦――っ!』
スピニング・トゥホールドは強制的に解除され、ロビンマスクはリング外へ避難する。
代わりにリングに躍り出たキッドが、ドロップキックをくらわせた勢いのままテリーマンに殴りかかる。
「今さら挨拶はいらねぇ――っ」
小細工抜き、正面から顔面を狙い撃つパンチの連射砲。
テリー一族が得意とする伝統技、ナックルパートだ。
『あ――っとキッドがいった! キッドがいった! キッドがいった――っ! テリーマンのお株を奪うブロンコフィストの乱れ打ちだ――っ!』
テキサス流のナックルパートは荒々しさが命。相手にガードする隙を与えない。
テリーマンは防御のために腕を上げることすらできず、耐えるしかなかった。
「ドリャア――ッ!」
掛け声を大きくし、連打の締めくくりとして振りかぶった拳を叩き込む。
直撃をくらったテリーマンの体が浮き、キャンバスを滑った。
「かわれ――っ、テリ――ッ!」
パートナーのダメージを鑑み、手を伸ばしながら交代を進言するキン肉マン。
しかしテリーマンはそれに応えず、シニカルに笑った。
「ジョ……ジョークを言うなキン肉マン。目の前にいるのは未来からきたミーたちの息子を騙るペテン超人・ニュージェネレーションなんだぜ。特にあのキッドとかいうヤロウは、ミーの祖国の象徴である星条旗を掲げ闘っている……直々に成敗してやるのがアメリカ超人の務めってものだ~~っ」
キッドが身に纏うアメリカ国旗をイメージしたレスリングシングレットを忌々しげに睨むテリーマン。
そのテリーマンらしからぬ様子に、キン肉マンは戸惑った。
「お……おまえ、あやつのことは認めていたんじゃなかったのか?」
万太郎を始めとした
だが今のテリーマンはまるでキッドを憎き悪行超人のように敵視している。
そう思うことで無理やり闘争心を生み出そうとしているのか……キン肉マンにはそう思えてならなかった。
「タッチしないってんなら好都合! このテリー・ザ・キッド様の技をとくと味わえ――っ!」
キッドが体勢を低くし、ダメージを負ったテリーマンめがけて突っ込む。
『キッド、テリーマンにタックルを仕掛ける――っ』
正面からのタックル。
軌道は愚直だがスピードは充分。
あとは相手を掴みにかかるタイミングだが――そこが甘かった。
「半歩だが踏み込みがたりねえ!」
テリーマンはタイミングを見極め、キッドが掴もうとした脚を前に突き出す。
『テリーマン、キッドのタックルを切り膝蹴りで迎撃――っ』
キッドの顔面にテリーマンの膝が直撃し、タックルは失敗に終わった。
みっともなく動きを止める自称・息子に対し、テリーマンは辛辣な言葉を浴びせる。
「おまえがミーのレスリングキャンプにきたらハイスクールコース……いやキッズコースからやり直しだな」
厳しい父親のような罵声に、キッドの反骨心は燃え上がる。
認めさせてやる――そんな気概を脚に乗せ、再度タックルに挑む。
「くっそ――っ!」
「なんの――っ!」
先ほどと同じタイミングで膝を繰り出そうとするテリーマン。
しかしキッドの脳裏には「半歩だが踏み込みが足りない」の助言がよぎる。
結果、タックルは土壇場で加速し、膝蹴りの発動前にその身を抑え込むことに成功した。
「しゃああ――っ!」
『今度はタックル成功――っ、キッドがテリーの体を抱えあげる――っ!』
一瞬テリーマンの体が浮き、すぐにキャンバスに叩きつけられる。
タックル成功の証――テイクダウンの体勢。
ここから様々な技に繋げられるが、キッドがテリーマンに仕掛ける技は最初から決まっていた。
「今度はオレのスピニング・トゥホールドを食らってもらうぜ――っ!」
仰向けにしたテリーマンの片脚を持ち、間に自身の脚を差し入れ軸とする。
そこから捻りを入れることで相手の膝や足首を痛めつける、テリー一族伝家の宝刀。
『あ――っとこれは劇的! まさかテリーマンが自身の得意技であるスピニング・トゥホールドをかけられている姿を目の当たりにするとは――っ!』
超人の必殺技とは唯一無二。自身の必殺技を他の超人にくらわせられる機会などそうない。
珍しいシーンを前に観客が歓声を上げる。
その最中、テリーマンは苦悶の表情でキッドのスピニング・トゥホールドを見ていた。
「じ……自身の得意技であるからこそ……」
瞬時の観察。使い手の癖や呼吸。自身の技との相違点。
諸々を計算、分析し、脱出の足がかりとする。
「技のウィークポイントや外し方も知っている――っ」
テリーマンは大胆に脚を抜き、スピニング・トゥホールドから逃れた。
馬鹿な、あんなしっかりと掴んでいたのに――と驚愕するキッド。
その隙を狙い、テリーマンは仰向け体勢のままキッドに両足蹴りをくらわせる。
『目まぐるしい攻防! 今度はテリーマンのカンガルーキックだ――っ』
たたらを踏むキッド。立ち上がるテリーマン。
攻守逆転。今度はテリーマンが攻める番だ。
パンチの借りはパンチで返す。それがテキサス流。
『あ――っとテリーがいった――っ! テリーがいった! テリーがいった――っ! これが本家本元と言わんばかりの痛烈なナックルパートだ――っ!』
キッドの顔面を的にし、祭太鼓のように乱打していくテリーマン。
荒々しさ極まるブロンコフィストの連撃に、一部の観客が「あのときのテリーマンだ……」とつぶやいた。
「シャア――ッ! シャア――ッ!」
第20回超人オリンピック準決勝――負傷中の身でありながら、凶器を駆使してまでロビンマスクに勝とうとした悪魔のテリーマン。
勝つためには手段を選ばない、相手が使命を同じくする正義超人だろうがなんだろうが徹底的に破壊する。
そんな狂気じみた気迫が、このナックルパートには秘められていた。
(フォ……フォームはオレが使うそれと確かに似ているが、パンチの一発一発に込められた気迫とパワーはオレなんかを遥かに凌駕している……これが
技をくらいながら、キッドは戦慄した。
憧れだった父の若い姿、地味だ地味だと思っていたファイトスタイルの真の恐ろしさに。
「くらえ――っ! ブロンコ・フィスト――ッ!」
渾身の力を込めた一撃がキッドの体を吹っ飛ばす。
「グウウ~~ッ」
衝撃はキッドの身をロープ際まで運び、肉体と精神を大きく削ぎ落とした。
『テリー・ザ・キッド、ダメージが大きいのかロープにもたれかかった――っ』
そうしなければ立っていられないほどの悲痛な姿だった。
もはやキッドはこれまでか――シングルマッチならそう思う者も出てきただろう。
しかしこれはタッグマッチ。彼には手を差し伸べる仲間がいる。
そう、ロビンマスクという相棒が。
「タッチだキッド。パパへの逆襲は次の機会を待て!」
「ソ……ソーリー、ロビン。頼んだぜ」
キッドはロビンにあとを託し、リング外へ逃れる。
「見事だテリーマン。次はわたしが出よう」
「ああ。任せたぜキン肉マン」
敵対チームが交代したのを見て、テリーマンもまたキン肉マンに交代した。
テリーマンvsテリー・ザ・キッドの衝突は、テリーマンに軍配が上がった。
そして次に始まるマッチアップは――
『つ……ついに! リング上にこのふたりが出揃ってしまった~~っ! キン肉マンvsロビンマスク! 我々が密かに待望していた対戦カードが、ここ“究極の超人タッグ戦”にてとうとう実現――――っ!!』