ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第035話 “復活の左腕”対“乱暴者の精神”!

 キン肉マンvsロビンマスク。

“ザ・マシンガンズ”vs“ジ・アドレナリンズ”の試合は因縁深いふたりの超人の対決に移り、多くの観客が息を呑んだ。

 互いにパートナーから交代する形での参戦、初手はどちらからか――

 

『キン肉マンにロビンマスク、互いに真っ向から仕掛けていく――っ』

 

 ふたり同時に仕掛け、ふたり同時に両手を繰り出す。

 キン肉マンはロビンの手を、ロビンはキン肉マンの手を掴んだ。

 

『手四つに組んだ~~っ』

 

 プロレスで頻繁に行われる力比べの構図。

 パワーといえばやはりキン肉マンの印象が強いが、すぐにロビンがねじ伏せられるようなことはなかった。

 むしろこの手四つは拮抗している。

 

「フフフ……いいのかキン肉マン? 力比べなどして」

「な、なんのこっちゃい」

 

 冷や汗を流すキン肉マンに対し、ロビンマスクは涼しい顔で笑っていた。

 不気味なほどの余裕。その理由を語る。

 

「とぼけるな。先ほどのマッスルブラザーズ・ヌーボーvs2000万パワーズの一戦で、おまえの左腕に宿っていたロングホーン・ボーンがバッファローマンに返却されたことは知っている。あれはこの大会の前身である“宇宙超人タッグ戦”で、ヘル・ミッショネルズに切断されたおまえの左腕を繋ぐために提供されたもの……それがなくなったということはつまり、おまえの左腕の骨は今や空っぽということだ!」

 

 バッファローマンへの友情を優先した結果、キン肉マンは左腕の骨を失った。

 骨のない筋肉などこんにゃくも同然。

 本来のパフォーマンスは発揮できず、同じ土俵にすら立てないのだ。

 

「そんな状況でこのロビンマスクと力比べをしようなど、片腹痛い!」

「ヌ、ヌググ~~ッ」

 

『あ――っとロビンが押している! キン肉マン苦しいか――っ』

 

 ロビンマスクのパワーに圧倒され、姿勢が低くなるキン肉マン。

 苦しそうな表情で歯を噛み締め、そのまま潰され――ると思いきや、ぺろりと舌を出した。

 

「なんちゃって~~っ」

 

 おちゃらけた声を出しつつ、一気に腰を上げるキン肉マン。

 反対にロビンマスクの姿勢が低くなった。

 

『キ……キン肉マンが押し返した――っ』

 

 キン肉マンはその勢いのままロビンの体を前に押し出す。

 距離が開いたところで、その間合いに最適な技を“左腕”で繰り出した。

 

「マッスル・ラリアット――ッ!」

 

 骨がなくなっていると指摘を受けた左腕でのラリアット。

 まさかの一撃はロビンマスクを盛大にふっ飛ばした。

 

『す……凄まじい一撃! ただのラリアットの一発が、ロビンマスクをコーナーポストまで追いやりました!』

 

 衝撃的な光景にどよめく観衆。

 ロビンマスクと同じくキン肉マンが骨を失い弱体化していると予想していた者は多く、だからこその驚きだった。

 キン肉マンはイタズラが成功したワルガキのように笑み、得意げに語る。

 

「確かにわたしの左腕はバッファローマンにロングホーン・ボーンを返却したことで一時的に骨なしの状態になった……しかしある人物から提供された未来の技術により、より強固なナチュラル・ボーンとして再生を果たしたのだ――っ!」

 

 衝撃の告白に、田園コロシアム中の人々が驚きの声を上げた。

 なくなった骨を再生させる、それもさらにパワーアップさせて蘇らせる技術など、20世紀では考えられない。

 未来技術への憧れが強い1980年代、キン肉マンの発言により多くの人々が思いを馳せた。

 

 一方で、この発言に怒り心頭、思わず大声で野次を飛ばす超人がいた。

 キン肉マンの息子のキン肉万太郎である。

 

「み、未来の技術だって~~っ!? やいアホ親父! あんたボクたちニュージェネレーションのことは毛嫌いしているくせにそんなもんに頼ったのか!?」

「う、うっさいアホ――ッ! それとこれとは話が別じゃ――っ!」

 

 息子の指摘に対して自分勝手な反論をするキン肉マン。まるで子供の喧嘩だった。

 

 万太郎とはまた別の位置、“ネオ・イクスパンションズ”と“ザ・ナイトメアズ”の席では、アシュラマンがネプチューンマンを胡乱な目で見ていた。

 

「どうせおまえの仕業だろう。あちこち根回しして節操のない男だぜ」

「オレは使えるものならなんでも使う主義でな」

 

 アシュラマンの推察どおり、キン肉マンの左腕の骨が再生したからくりはネプチューンマンが昨夜勧めた加圧トレーニングにある。

 これは別に21世紀の医療技術が万能というわけではなく、キン肉マンの火事場のクソ力とキン肉族特有の優れた身体機能があってこそ。そう簡単に骨の再生などできるはずがないのだ。

 

 しかし結果は結果。

 ネプチューンマンがもたらした技術はキン肉マンを助け、ロビンを窮地に追い込んだ。

 

「あ……安心したぞキン肉マン。おまえが万全の状態でいてくれて。こ……これで私も気兼ねなくおまえを叩き潰せる」

「効いてるくせに粋がりおって――っ! もう一発くらえ――っ!」

 

 ロビンの態度を強がりと捉えたキン肉マンは、またもや左腕のラリアットを仕掛けに行く。

 ロビンマスクはロープを背に動かず、真っ向から受け止める構えを取った。

 しかし、キン肉マンは駆けながら笑む。

 ラリアットのための左腕を急に下げ、ロビンの目の前で跳んだのである。

 

「なんちゃって~~っ、パート2――ッ」

 

『あ――っとキン肉マン、ラリアットにいくと見せけてそのままリング外に飛び出した――っ』

 

 ロビンマスクの頭上を通り過ぎ、そのまま上下逆さになり頭からリングの外へ落下――すると思いきや、なんと外側からロープを挟んでロビンの両手首をキャッチ、首を両足で挟み込み、ぶら下がるような形で体重をかけた。

 のけぞるような体勢になったロビンは、ロープがあるおかげでリング外へ落ちるようなことはない。いや、“おかげ”ではなく“せい”だ。リングへ落ちることが許されないからこそ、キン肉マンの両足がじわじわと首を絞めつける。

 これぞ、キン肉マンの代表的ロープワーク・サブミッション。

 

「48の殺人技のひとつ! 超人絞殺刑だ――っ!」

 

『こ、これは~~っ! 宇宙超人タッグ決勝のリングでネプチューンマンに繰り出した“超人絞殺刑”だ――っ!!』

 

 フィニッシュ・ホールドがないと散々馬鹿にされた第20回超人オリンピックの頃のキン肉マンからは、想像もできないような妙技である。

 師カメハメの魂が乗り移ったかのような技巧に、ロビンマスクは悶絶しそうになる。

 

「へへ~ん、悠長にロープ際で休んでるから悪いんじゃ――っ!」

 

 技の精度もさることながら、見事にロビンの裏をかいてみせたキン肉マン。

 強くなっている――そして、上手くなっている。

 超人レスラーとしての試合運びの練度があの頃とは雲泥の差だ。

 キン肉マンのダメ超人時代をよく知るロビンとしては、嬉しさが込み上げてくる。

 

「こ……これが超人絞殺刑。キン肉マンの全体重が首にかかり、今にもへし折れそうだ~~っ」

 

 そういった喜の感情とは別に、苦しいものは苦しい。

 ロビンマスクは頚椎にかかる負荷を実感しながら、未だかつてない窮地を味わっていた。

 

「ロビン、今助ける!」

 

 相棒のピンチを救おうと駆け寄るキッド。

 しかしロビンは、

 

「不要だ、キッド……」

「!?」

 

 今にも酸素の供給が絶たれそうなくぐもった声で救援を制した。

 

「本来はシングル戦でこそ有用であろうこの技を、あえてこのタッグマッチで出してきたのだ……相手パートナーにカットされることを承知の上でな。ならばここは、是が非でも私ひとりの力で破ってみせる~~っ」

 

 ロビンマスクの言うとおり、これはタッグマッチ。

 技をかけられているロビンマスクは身動きが取れないが、技をかけている側のキン肉マンとて身動きは取れない。

 タッグパートナーが助けに入れば容易く解除できるというのに……それを拒むなど非合理だ。

 

「バカヤロー! キン肉マンの狙いはおまえのその対抗意識だ! ここは意地を張る場面じゃねえ!」

「意地などではない……これは誇りだよ、キッド」

 

 信念の籠もった声で言うロビンマスク。

 キッドもロビンの覚悟を感じ取ったのか、救援を強行するような真似はしない。

 

「ウグググ~~ッ」

 

 ロビンマスクは力を振り絞り、キン肉マンの全体重がかかった首を持ち上げようとする。

 

『な、なんということだ――っ!? ロビンマスク、首の力だけでキン肉マンを持ち上げようとしている――っ』

 

 想定外の対応に驚きを見せたのは、今も超人絞殺刑を続行しているキン肉マンだ。

 

「私ひとりの力で破るって……ま、まさかロビンがこんな力技を……?」

「“乱暴者の精神(ランペイジ・スピリット)”を身に着けた今の私ならば、このくらいやってのける――っ」

 

 ロビンマスクという超人はキン肉マン以上の試合巧者。

 どんな強力な必殺技(フェイバリット)も、蓄積された経験と培ってきた技の知識でスマートに対応してきた。

 それがまさか、こんな脳筋とでも言いたくなるような力技に出るなど――

 

「ドリャ――ッ!」

 

『あ――っとロビンマスク、キン肉マンを力尽くでリングに戻した――っ』

 

 キン肉マンを首の力だけで投げ飛ばしたロビン。戦場は再びリング内に戻る。

 思わぬ反撃をくらい、キン肉マンはキャンバスの上での仰向けに倒れている。

 ロビンマスクはそこへ飛びかかった。

 

「スリャア――ッ!」

 

 膝を突き出し、キン肉マンの腹部めがけて降下する。

 

『ロビンマスク、反撃のニードロップ――ッ!』

 

 キン肉マンの腹にロビンの膝がめり込み、その表情が激痛に歪む。

 ニードロップ成功後、ロビンは即座に立ち上がり、再び飛び上がる。

 

「おまえは一発では大したダメージにもなるまい! だから何度でも――っ!」

 

 ジャンプで高度を稼ぎ、落下速度と体重をかけ合わせた二発目のニードロップを放つ。

 単純な連続攻撃に、しかし黙って見ているキン肉マンではない。

 

「フン――ッ!」

 

 降ってくるロビンの膝に両手を合わせ、受け止めた。

 

『しかしキン肉マン、二発目のニードロップは被弾ギリギリでキャッチ!』

 

 続けざまにロビンの片脚を両腕で抱え込み、ぐるりと身を反転して投げ飛ばす。

 

『そのままドラゴンスクリューでひねり投げた――っ!」

 

 ロビンがキャンバスに激突――ならず。

 片手で受け身を取り、そのまま体重をコントロールして投げの威力を分散、全身を使って豪快に回ってみせた。

 

『あ~っとしかし、さすがはロビンマスク! 華麗な側転でダウンを拒否――っ』

 

 ロビンが側転で離れたことにより、再び両者の間に距離が生まれた。

 だがしかし、今のキン肉マンにすぐさま追撃を仕掛ける意思はなかった。

 ニードロップのダメージで余裕がなかったのもあるが、それ以上に、今のロビンからは深追いをためらわれるような得体の知れなさを感じてしまったからだ。

 

 ロビンマスクはキン肉マンが仕掛けてこないのをいいことに、超人絞殺刑で痛めつけられた首の具合を確かめる。

 問題ない。

 口にせずとも明白な余裕っぷりが、その佇まいにはあった。

 

「オ……オレにもいかせてくれ、ロビン!」

「キッド」

 

 そんなロビンを羨むように手を伸ばしたのが、先ほど救援を拒まれたテリー・ザ・キッドであった。

 

「あのパパが彼こそナンバーワンと認める絶対的存在……その実力を実際に肌で感じてみたいんだ――っ!」

 

 父テリーマンを意識していたキッドが、今度は父の相棒であるキン肉マンとの闘いを求めている。

 そう、キッドにとってキン肉マンは父を永遠のナンバーツーに仕立て上げた忌むべき相手。

 ライバル歴はロビンのほうが長いとはいえ、そんな相手にパートナーが好闘を演じていては黙ってはいられないだろう。

 

「いいだろ――っ」

 

 ロビンはその意気込みを買い、快くリングに立つ権利を譲った。

 キッドが意気揚々とロープをくぐる。

 

『アドレナリンズ、ここでテリー・ザ・キッドにチェンジ――ッ』

 

 現れたキッドに、キン肉マンは一瞬だけホッとした表情を見せた。

 今日のロビンはなにかが違う。そのなにかが不明瞭なまま試合を続けたくないというのが彼の本音だった。

 とはいえ、このテリー・ザ・キッドも先のテリーマンとの交戦で一筋縄ではいかないことがわかっている。

 

「テリーマンの自称息子、テリー・ザ・キッドか。おまえはロビンがパートナーに選ぶだけあって、同じニュージェネレーションでもあのアホの万太郎とは一味違うと思っていたが……」

 

 相手を見定めるように、じりじりと距離を詰めていくキン肉マン。

 テリー・ザ・キッドは嬉しそうに口角を上げる。

 

「光栄だね。ところでキン肉マン、今日はパパからもらったバンダナを持ち込んでいないのかい?」

「なぬ?」

 

 なにを言われたのかわからず、キン肉マンは怪訝な顔をする。

 テリー・ザ・キッドは知っているのだ。

 キン肉マンとテリーマン、ふたりの友情の印ともいえるエピソードを。

 

「未来の超人レスラー養成学校、ヘラクレス・ファクトリーで教えてくれたもんな……大事な試合のときは必ず、親友から友情の証にもらったバンダナを持ち込んでいると。それともあれはシングルマッチのとき限定で、今日みたいなすぐ隣に本人がいるタッグマッチでは大事にロッカーに入れていたりするのか?」

 

 思い出すのは、ヘラクレス・ファクトリーに入学して間もない頃。

 悪行超人アナコンダの襲撃で負傷したキッドの脚に、未来のキン肉マンは友からもらった大切なバンダナを巻いてくれた。

 こいつを胸に忍ばせておくとテリーが一緒に闘ってくれているみたいで勇気がわいてきた、これがなければおそらくほとんどの試合に勝つことはできなかっただろう、本当のナンバーワンは君のパパだ――と。

 

「お、おまえ……」

 

 キン肉マンは思った。

 テリーとのプライベートなやり取りを知る目の前の男は、まさか本当に親友の息子なのかと。

 キッドはへへっと笑い、ロープのほうへ走る。

 そしてそのままロープをジャンプ台として使い、キン肉マンの頭上を取った。

 

「“真の勇気ある超人とは、自分自身のことは一番最後に考えられる者”! これは親愛なるパパと敬愛するスグルおじさんに教えてもらったことだが……今この瞬間だけは忘れさせてもらう! ナンバーワンになるのはおまえたちザ・マシンガンズじゃない! オレたちジ・アドレナリンズだ――っ!」

 

 充分に高度を稼いだ上で、天空より膝蹴りの体勢で降下する。

 テキサスの禿鷲が地表の獲物を狙うがごとく――その技の名は。

 

「テキサス・コンドルキック――――ッ!」

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