ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
テリー・ザ・キッドのテキサス・コンドルキックがキン肉マンの頭部を穿つ。
『あ――っとテリーマンの得意技として知られる“禿鷲の一撃”がテリー・ザ・キッドより飛び出し……今、キン肉マンを捉えた――っ』
田園コロシアムでその試合を観ていた者の多くは、獰猛な禿鷲の姿を――そしてキッドと瓜二つなテキサス・コンドルキック本来の使い手、テリーマンの姿を幻視した。
「テキサス・コンドルキックってテリー一族の伝統技だけど……キッドが使う場面は初めて見たかも!」
客席のキン肉万太郎は、ヘラクレス・ファクトリーで苦楽を共にした友人の快進撃を見て手に汗を握る。
さすがのキン肉マンもこれに耐えることはできず、キャンバスに背中をつけた。
『キン肉マン、ダウーン!』
天空より飛来し着地したテリー・ザ・キッドが、即座の追撃に出る。
「オネンネがしたいなら手伝ってやるぜ――っ」
キン肉マンの体をうつ伏せに転がし、両脚を両手で絡め取る。
そのまま相手の背中に跨るようにし、絡め取った両脚を4の字に交差し固定。
スピニング・トゥホールド、テキサス・コンドルキックに並ぶ、テリー一族伝統の技――
「テキサス・クローバー・ホールド!」
別名、“テキサス四つ葉固め”がキン肉マンに炸裂した。
『ま、またもやテリーマンの得意技が炸裂――っ! キン肉マンの両足が四葉に締め上げられた――っ!」
この技はテリーマンが“宇宙超人タッグ・トーナメント”のために研究してきた
あの巨漢悪魔超人サンシャインをも追い込んだ強烈サブミッションが、キン肉マンを苦しめる。
「どうだ――っ! 古参超人レスリングファンがこの一戦に大注目してるとこ悪いが、キン肉マンはこのまま早々にギブアップだぜ――っ!」
グラウンドでの攻防はテリーマンの血を引くキッドにこそ分がある。
完璧なる絞め技にキン肉マンは手も足も出ず、されるがまま。
顔も苦しげで……だというのに、なぜか口元は笑っていた。
「フ、フフ……」
「な、なにがおかしい!?」
ダメージは入っている。技を解こうという気配も感じない。リング中央を陣取っているためテリーマンがカットに入ろうにも距離がある。
シチュエーションを加味してもパーフェクトなテキサス・クローバー・ホールドだ。なのにキン肉マンのこの余裕はなんなのか?
「こ……このテキサス・クローバー・ホールド……テリーマンの繰り出すそれとは一味違う。一概にどちらが上とは言い難いが、この両脚の固め方にはおまえ特有のこだわりみたいなものを感じるぜ……こりゃ一筋縄ではいかなそうだ……」
苦し紛れか? もしくは負け惜しみか?
冷静に分析などらしくないことをするキン肉マンに、キッドは威勢を強めた。
「あたりまえだ――っ! このテキサス・クローバー・ホールドは21世紀の未来でテリーマンが磨き上げ、このテリー・ザ・キッドがさらにバージョンアップを重ねた最新型! この時代のパパのものと同列に語ってもらっちゃ困るぜ――っ!」
さらに力を込めて絞め上げるキッド。
このままいけばキン肉マンの両脚の骨と腰骨は骨折間違いなし。
テリー・ザ・キッドのテキサス・クローバー・ホールドになにひとつ欠点はなかった。
「だ……だが、状況判断がまだまだ……」
「なんだと!?」
「少なくとも、今のこの状況……おまえがパパと仰ぐテリーマンなら、絶対にテキサス・クローバー・ホールドは仕掛けなかった……お、おまえは技の選択をミスしたんだ……」
「ぬかせ――っ! 激痛で今にも悲鳴をあげそうなくせして――っ!」
さらに、さらに強く絞め上げる。
もはやキン肉マンは限界寸前、顔を青くして両手の手先もピクピクと痙攣し始めた。
「ウ……ウウウ~~ッ」
悲鳴は出ずとも悲痛なうめき声は漏れる。
もう駄目だ――誰もがそう思ったとき、同じように顔を青くする超人がいた。
観客席のアレキサンドリア・ミートくんである。
「あ……あ、ああ~~っ! それはまずい!」
「ど、どうしたミート!?」
なにかを察知し警告を送るミート、わけがわからないといった様子の万太郎とカオス。
仕えるべきキン肉マンがKOされそうで顔を青くしているのか? いや違う。
ミートが心配しているのは、技をかけているキッドのほうだった。
ブホォッ!!!!!
突如、キン肉マンの尻から爆音が鳴り響き、強烈な刺激臭がすぐそばにいたキッドを襲った。
手も足も出ない――しかし、屁は出る。
特大の放屁で、キン肉マンはキッドのテキサス・クローバー・ホールドに抵抗したのである。
「く……くさぁ~~~~っ!?」
そのあまりの臭気に耐えられず、技を解いてキン肉マンから距離を取るキッド。
テキサス・クローバー・ホールドはその技の仕様上、どうしても相手の尻の近くに身を置かねばならない。
つまりキン肉マンのリーサル・ウェポンであるオナラを回避することができず、直撃をくらってしまうのだ。
「なはは~~っ! わかったか、テリーマンなら絶対にテキサス・クローバー・ホールドを選ばない理由を!」
「こ、このガーリック野郎~~っ」
げほげほと咳き込むキッド。前日にニンニクを食べたキン肉マンの放屁は、もはや毒ガスも同然の破壊力だ。
キン肉マンはチャンスとばかりにキッドとの距離を詰める。
キッドの背後から両腕を取り、さらに両脚も自身の両脚でクラッチ。
その体勢で仰向けに寝転がり相手の体を吊り上げれば、吊り天井固めと呼ばれる関節技の完成だ。
『キン肉マン、今にも悶絶しそうなキッドをロメロ・スペシャルに捉えた――っ』
激しいニンニク臭に襲われているキッドになんたる酷い仕打ちか。
キン肉マンは一切気にせず、リング外のパートナーに呼びかける。
「さあ、ここいらでタッグの本領発揮といこうぜテリー!」
「おう!」
合図に応え、テリーマンが大きく飛び上がった。
先ほどキッドが見せたようなテキサス・コンドルキックの体勢。
綺麗に揃えた両膝で降り、ロメロ・スペシャルで身動きが取れないキッドを狙い撃つつもりだ。
「させん」
しかし――テリーマンは技の威力を高めようとするあまり、高度を稼ぎすぎた。
キッドの窮地を救うべく、ロビンマスクがテリーよりも低い位置での跳躍で片脚を落としにいく。
標的はキッドをロメロ・スペシャルで苦しめているキン肉マン、その首だ。
『あ――っと! テリーに先んじてロビンマスクが乱入――っ! ギロチンドロップをキン肉マンの首に落とした――っ!』
喉元に片脚を叩きつけられ、キン肉マンはキッドを離してしまう。
ロメロ・スペシャルは解除されたが、キッドは屁のダメージが残っているのかその場からすぐには動けない。
「こっちの攻撃はまだ続いているぜ! テキサス・コンドルキック――ッ!」
『今度はテリー版コンドルキックがキッドを狙う――っ』
ツープラトンは失敗したが、一度発動させた
テリーマン執念の一撃がキッドに襲いかかった。
それを阻むのが、タッグパートナーの役目。
「スリャア――ッ」
ロビンマスクが片脚を上げ、上空の禿鷲を狙い撃つ。
その一撃はテリーマンのこめかみを的確に射抜き、ライフルで撃たれた禿鷲のようにキャンバスに叩き落とした。
『なんとロビンマスク、飛来するテリーマンの頭にハイキックを合わせた――っ! キッドの窮地を救う――っ!』
大立ち回りを見せるロビン。
相棒を助け起こし、ギロチンドロップとハイキックで隙を見せているマシンガンズに言う。
「この試合初のツープラトンを見せるのはおまえたちではない! 我々ジ・アドレナリンズだ!」
ロビンマスクはキン肉マン、キッドはテリーマンの背後に回り、まったく同じタイミングで腰に手を回した。
仕掛けるのは、共に後ろへの反り投げだ。
「ダブル・ジャーマン・スープレックス・ホールド!」
『キッドとロビンの鏡写しのようなジャーマン・スープレックスがマシンガンズに炸裂――っ』
ロビンマスクがまだウォーズマンと“超人師弟コンビ”を組んでいた頃、スカル・ボーズ&デビル・マジシャンの“宇宙一凶悪コンビ”を相手に繰り出したツープラトンだ。
シンプルゆえに必殺級の威力を誇るジャーマン・スープレックスを同時に仕掛けることで、パートナーの救援の余地なくふたりまとめてKOしてしまおうという早期決着を狙った技である。
『マシンガンズ、立ち上がれるか~~っ!?』
ダウン状態のキン肉マンとテリーマン。
ダウンカウントが始まり立ち上がろうとするが、その動作は緩慢ですぐに反撃とはいかない。
「キ……キッドの闘志あふれるファイトも恐ろしいものがあるが……それより空恐ろしいのはロビンマスクだ」
「あ、ああ……いつもの冷静沈着なロビンのものとは違う。テリーではないが、まるで暴れ馬とでも表現したくなるような荒々しさがある」
共にアドレナリンズへの認識をあらため、意思統一を図るマシンガンズ。
ファイティングポーズを取り、試合続行。
機を見たアドレナリンズも互いに目配せする。
「続けていくぞ」
「ああ!」
両者ともに腰を低く落とし、足もとに片手をつける。
ロビンが得意とするラグビー流タックルの同時攻撃を狙っていた。
『キッドとロビン、今度はダブルのライナー・タックルだ――っ』
正面からの突進。されど先ほどのダメージが残っているとしたら避けるのは容易ではない。
徹底した同時攻撃だ。
しかしそう何度もツープラトンをくらうようでは、タッグチャンピオンは務まらない。
「テリー!」
「おおよ!」
キン肉マンはなにを思ったか、回避を捨てテリーマンの両腕を持った。
テリーマンも抗うことなく、キン肉マンの行動に身を任せる。
そしてキン肉マンは――テリーマンの体を思い切りぶん回した。
『ああ――っとキン肉マン! テリーマンをジャイアント・スイング! なんと相棒の体を武器に、向かってきたアドレナリンズを薙ぎ払う――っ!』
その姿は雑兵を長槍で薙ぎ払う本多忠勝がごとく。
パートナーを武器にするという思いもせぬ反撃に、アドレナリンズのふたりは対応することができなかった。
「荒っぽいのがお好みならこっちも荒っぽくいかせてもらうぜ――っ」
猛々しく吠えるキン肉マン。
ロビンマスクは対抗意識を燃やすように、再び体勢を整え走り出した。
「ま……まだまだ――っ!」
『なんと、薙ぎ払われたロビンマスクがタックルをリトライ――ッ』
テリーマンから手を離すキン肉マン。
ロビンのターゲットが己と見極め、対処すべく正面に立つ。
「いい加減それは……」
タックルの処理の仕方は至極単純。
相手が下半身を狙ってくるのであれば、下半身を使って返り討ちにしてやれば良し。
ちょうど試合序盤、テリーマンがテリー・ザ・キッドにそうしたように。
「猪突猛進ってやつだぜロビン――ッ!」
『キン肉マンの膝蹴りが突っ込んできたロビンの顔面にヒット! 今大会最大級の交通事故発生だ――っ!』
なまじタックルの勢いがついていただけに、衝突によるダメージは計り知れない。
キン肉マンは膝に伝わるビリビリとした感覚から、ロビンの脳が揺れているだろうことを悟った。
「ロビンよ。思えば第20回超人オリンピックの頃のわたしは、他の超人と違いフィニッシュホールドを持たないことにコンプレックスを抱いていた。タワーブリッジという絶対的
昔を語りながら、ふらふらになっているロビンマスクへ接近。
超低空からのタックルでロビンの脚を取った。
「しかし今は、正義超人の仲間たちが! 悪魔超人たちとの闘いが! 多くの経験が授けてくれたこの技がある――っ」
タックルからテイクダウンに持っていくのではなく、担ぎ上げる。
次に目指す先はリングロープの上だ。
『あ――っとキン肉マン、ロビンマスクの体を肩車のようにして持ち上げ、ロープを使って上空へと舞い上がる――っ!』
ロープの反動を利用して大きく跳躍したキン肉マン。
肩車状態のロビンマスクを逆さに持ち直し、相手の両脇に自分の両足を引っ掛け固定。
その体勢でキャンバスへの降下を始める。
「今はタッグマッチの最中だが……いつかシングルでおまえと再戦するときは、と温めていたこの技を――っ!」
キン肉マンが編み出したその技は、後にキン肉族の中でこんなふうな言い回しで語られる。
“敵の両足首をわが手で捕らえ、敵の両腕を我が脚足で制すれば、迷うことなく動くこと
通称“疾風迅雷落とし”。
正式名称は――
「48の殺人技のひとつ……キン肉ドライバーじゃ――――っ!」