ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第038話 “テキサス・フィスト・デスマッチ”!!

 ネプチューンマンが体験した“前回”のトーナメント。

 準決勝で行われた“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“ザ・マシンガンズ”の決着後、戦いを終えたテリーマンは観戦していたテリー・ザ・キッドにこうこぼしている。

 

 ――キン肉マンと万太郎のように、ミーもキッド、おまえと精も魂も尽きるまで戦いたかった!

 

 その願いが今、別の時間軸、別の歴史で実現されようとしている。

 精も魂も尽きるまで殴り合う、“テキサス・フィスト・デスマッチ”という形で。

 

『な、なんということでしょうか~~っ! リング上で突如として始まったのは、テリーマンとテリー・ザ・キッドによる壮絶な殴り合い! 互いにガードなんて知ったこっちゃねえと言わんばかりに、ノーガードで拳を叩きつけあっている~~っ!?』

 

“テキサス・フィスト・デスマッチ”。

 古来より伝わる、テキサスの男たちが己の強さを誇示し合うための試合方法。

 小賢しい投げ技を廃し、ひたすら殴る蹴るを繰り返して決着をつける極めて原始的な、だからこそ勇気が試される勝負。

 

 今より少し先の未来、キン肉マンは自分の結婚式当日に結婚プレゼントをもらうと称して友達にガチスパーリングを求めた。

 その中で、テリーマンはキン肉マンにこの“テキサス・フィスト・デスマッチ”を提案したのである。

 

 そんなことを知るのは、その場に居合わせたことがある21世紀の超人だけだろう。

 あいにくネプチューンマンは呼ばれなかった。

 だがこの男は――田園コロシアムの端から、遠目に試合観戦をするウォーズマンは知っている。

 

「懐かしいぜ。あのときテリーがキン肉マンに仕掛けた“テキサス・フィスト・デスマッチ”が、まさか息子であるキッドとこの20世紀の地で再現されるとは。テリーマン……おまえもまた、ラーメンマンのように新世代超人(ニュージェネレーション)の真贋を見極めようとしているのか」

 

 ウォーズマンはただ見守るのみ。

 それはふたりのアメリカ超人に最も近い位置にいるキン肉マンとロビンマスクも同じだった。

 

『パートナーのふたりが突如として始めたこの暴挙に、キン肉マンとロビンマスクは揃って沈黙! 両者ともエプロンサイドから各々のパートナーの行く末を見守っております!』

 

 共にロープを強く握り、ハラハラした表情を見せつつも決して声は上げない。

 どんな結果が訪れようとも最後まで見届ける構えだった。

 

“究極の超人タッグ戦”二回戦という大事な試合の最中に始まった私闘ともいえる殴り合いに、ライバル超人たちは様々な反応を見せた。

 

「ジョワジョワ、下等超人とはまったく度し難い」

「ヌワヌワ、やつら頭がおかしくなったんじゃねえか?」

 

 時間超人“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”は、ライトニングもサンダーも馬鹿馬鹿しいものを見るように笑う。

 

「カーカッカッ! おもしろくなってきた! もっと気合いを入れろ、テリーマン!」

 

 アシュラマンはこの殴り合いを心底楽しむように、贔屓のテリーマンに野次を飛ばす。

 

「気張るだキッド――ッ! ヘラクレス・ファクトリー出身超人の意地を見せてくれ――っ!」

 

 最初こそ戸惑っていたセイウチンは、いつしかキッドの応援をする側に変わっていた。

 

 リング上では、単調な殴り合いに少し変化が訪れる。

 

「ソリャ! ソイリャ――ッ!」

 

 キッドがテリーマンの顔面狙いをやめ、下半身に蹴りでの攻撃を放ち始めた。

 

『キッド、ローキックの連打! テリーマンの軸足を破壊しようとする――っ』

 

 テリー一族特有の粘り強い足腰でもって、父テリーマンの脚を痛めつける。

 原始的な殴る蹴るの攻防の中にも技術を忍ばせる余地はあるんだぜ、とキッドは言いたげだ。

 その小癪な態度が、テリーマンは気に入らなかった。

 

「ウッ!」

 

 キッドの繰り出したローキックがテリーの脛を叩き、ビクともしない。

 それどころか衝撃に脚が痺れ、攻撃の手が止まってしまう。

 

「なんだそれは~~っ?」

 

 テリーマンは鬼気迫る形相でキッドを睨みつける。

 まさしく第20回超人オリンピック準決勝でロビンマスクに凶器攻撃を仕掛けた悪魔のテリーマンの再来だ。

 

「おまえまさか、自分と瓜二つのハンサムフェイスが腫れ上がることに抵抗があるんじゃないのか――っ?」

 

 ローキックなどテキサス男らしさに欠けると言わんばかりに、テリーはキッドの土手っ腹にミドルキックを叩き込んだ。

 キッドが怯んだところに、今度はジャブ。狙いはもちろん顔面。

 

「だから顔面を殴るのに躊躇する! そうだろう!?」

 

 顔面、それも鼻っ面だ。

 鼻は人体急所のひとつ。テリーマンのジャブはキッドの端正な鼻を的確に潰し、呼吸を困難にさせる。

 さすがはパパ、テキサス・フィスト・デスマッチでは敵わないか――と、折れるキッドではない。

 

「自惚れんじゃねえ――っ!」

 

 ジャブの間隙を縫い、反撃のエルボー。

 テリーマンの耳が切れ、顎先まで血が滴った。

 

「あんたこそ! 見てくれは豪快なテキサスフィストだが……その実、後遺症が残るほどの致命的急所は的確に外している! 本心ではオレのことを可愛い息子と認め、必要以上に傷つけまいという優しさを発揮しているんじゃないのか――っ!?」

 

 右肘を入れてからの左肘。

 キッドの鋭利なエルボーはテリーのハンサムフェイスを切り裂き、使い込まれたキャンバスに血を落とす。

 肘打ちは強力な技ではあるが、それだけに隙も大きいのが難点だ。

 テリーは滅多打ちにされながらも、合間にチッチッチと指を振ってみせた。

 

「このテリーマンを……」

 

 右のエルボーに左のストレートパンチを合わせ、弾く。

 さらに右のアッパーブローでキッドの顎下を叩いた。

 

「なめるな――っ!」

 

 キッドの体が僅かに浮き、しかしダウンはせずすぐに着地。

 体勢を立て直しながら、揺れる脳を止めようと身を強張らせた。

 

「グウ~~ッ」

 

 グッと堪え、再始動。

 右腕を大きく振り上げ、テリーの左肩を狙って振り下ろす。

 

「デリャア――ッ!」

 

 作る手の形は、手刀。

 普段のファイトではあまり用いない攻撃方法だった。

 

『キッド、今度は空手チョップの連打だ――っ!』

 

 ブロッケンJrやジェロニモの魂が乗り移ったかのように手刀を乱れ撃つキッド。

 またもやテキサス男らしからぬ攻撃だ。同じアメリカ超人として許しがたし。

 

「そんなに侍を気取りたいなら……日本に帰化でもしたらどうだ――っ!」

 

 テリーはキッドの手刀に自らの額をぶつけにいく。

 強烈なヘッドバットがキッドの手刀を破壊し、しかしテリー自身の額からも出血が見られた。

 

「あいにくオレは日本の醤油(ソイソース)が大嫌い……」

 

 手刀が破壊された、だからなんだ。

 キッドはもはや手刀とも拳とも形容できない形になった手を、ただの鈍器として打ちつける。

 

BBQ(バーベキュー)ソースたっぷりのハンバーガーのない暮らしなんてごめんだね――っ!」

 

 その不格好な一撃はテリーの頬にヒットし、笑みを誘発させた。

 望んでいた一撃はこれだという意思を込めて、パンチをお返しする。

 

「それでこそテキサス男子だ――っ!」

 

 テリーのパンチはキッドの左目に当たり、まぶたが膨れ上がる。

 父譲りの美形を台無しにされながらも、闘志は収まるどころかますます燃え上がった。

 

「そんなにテキサスが好きなら、とっとと恋人を連れ帰って牧場でも経営したらどうだ――っ!」

 

 弓を引くように腕を振りかぶり、右拳でテリーの額を打つ。

 キッドのナックルアローはテリーを後退させ、それでもダウンには至らない。

 

「大人をからかうなよボーイ!」

 

 テリーもキッドを真似るように大振りの構えに入った。

 お返しのナックルアローで、キッドの顔面を穿つ。

 

「引退するにはまだ早い! ミーはまだまだヤングメンだ――っ!」

 

 衝撃に耐えられず後ずさるキッド。

 しかし、握った拳の握力は決して衰えない。

 

「若いやつらを認められないのは老害の始まり……」

 

 今度は助走をつけ、走り込みながらのスーパーマンパンチを繰り出す。

 

「とっとと後進に席を譲りやがれ――っ!」

 

 キッドの拳がテリーのこめかみをぶっ飛ばし、大きく仰け反らせる。

 だが耐える。耐えてみせる。

 テリーマンはほとんどブリッジ手前の体勢から両手を握り合わせ、起き上がると同時にジャンプ。

 

「席を譲られなければ上がってこれない後進などに……正義超人界は任せちゃおけねえ――っ!」

 

 キッドの頭上から鉄槌を振り下ろした。

 朝セットした金髪はもはやぐしゃぐしゃ、ヘアスタイルもなにもない状態でさらに激しく頭を振る。

 先ほどのお返しとばかりに、ヘッドバットでテリーマンの顔面に突っ込んだ。

 

「だいたいそんなガーリック臭いブタ野郎のどこがいい!? オレが親なら、友達は選べと言うところだ――っ!」

 

 反撃不可の一撃をお見舞いしたところで、追撃のマシンガンジャブ。

 テリーマンの整った鼻をキン肉マンのようなブタ鼻にしてやろうと滅多打ちにする。

 好き勝手させるか、とテリーはキッドの体を前蹴りで蹴り飛ばした。

 

「ガーリック臭さについては同感だが、その他の発言は許せん! ミーが親なら、他人の友達を侮辱するなと説教してやるところだ!」

 

 適度な距離が開いたところに、もう何度目かもわからない右ストレート。

 キッドはこれを正面から受け止め、血の唾を吐きながらもやり返す。

 

「説教してみせろよ! 目の前にいるのはあんたの息子だぜ!」

 

 父親の顎にアッパーカット。

 テリーは歯を食いしばって耐え、両腕を上げる。

 

「認めさせてみろ!」

 

 渾身の一撃を叩き込む前に行う、左腕を回す所作――アングリー・シャッフル。

 これで決めるという意思の現れは、しかし。

 

「言われなくとも!」

 

 息子のテリー・ザ・キッドにもしっかりと継承されている。

 鏡写しのようなアングリー・シャッフルが行われ、両者同時にブロンコ・フィストを撃ち出した。

 

『あ~~っと、これは――っ!?』

 

 それは、ボクシングで稀に見られるクロスカウンターの構図。

 しかしながら、あくまでも構図が似ているだけ――カウンターとしては成立していない。

 どちらの攻撃も相手に命中していたからだ。

 

 テリーの左拳はキッドの右頬にめり込み、

 キッドの右拳はテリーの左頬にめり込んでいた。

 

「さ……さすが全盛期バリバリ、キン肉マンとの友情を確かめ合い、も……最も輝いていた頃とされるテリーマン……パンチの一発一発が、ハ……ハンパじゃねえ」

 

 左頬にパンチをくらいながらも、キッドは目の前のテリーマンを称賛した。

 

「お……おまえこそ。こんなにテキサスブロンコ魂の乗ったパンチを受けるのは、う……生まれて初めてだ。まるで自分自身と闘っているみたいで……や、やりにくいったらありゃしねえ」

 

 テリーマンも右頬にパンチをくらった状態で、キッドに嫌味を言う。

 

「嬉しいぜ……20世紀くんだりまできた……か、甲斐があった……」

 

 喜びを噛み締めつつ、キッドのほうが先に拳を解いた。

 やや遅れてテリーも拳を解く。

 

 両者、力の抜けた様子で構えだけはファイティングポーズを維持。

 呼気は荒く、もはや倒れる寸前といった様相だった。

 

 まだ続けるのか――誰もがそう思った、そのとき。

 

「認めるよ……」

「え?」

 

 テリーマンが穏やかな表情を見せながら言う。

 目の前の超人、未来から来た新世代超人なる男に対して。

 

「テリー・ザ・キッド……おまえは紛れもなく、ミーの息子だ」

 

“テキサス・フィスト・デスマッチ”を経て、テリーマンにはもうキッドを疑う気持ちは残っていなかった。

 ラーメンマン風に言うならば、真贋見極めたり。

 パートナーとの友情を示すタッグマッチ、さらにテキサス男子の誇りを見せつける伝統の勝負法。

 ふたつの闘いの中で、キッドのアイデンティティは充分すぎるほどに証明されたのだ。

 

「サンキュー、パパ……」

 

 父からこれ以上ない言葉を贈られ、キッドは満足げな笑みを見せる。

 そして――

 

『あ――っと力尽きたかキッド!? 糸が切れたようにテリーマンにもたれかかる――っ!』

 

 前のめりに倒れたキッドをテリーマンが受け止める。

 といってもテリーとて限界だ。腕で抱き寄せることはできず、ただ支えになってやることしかできない。

 

「へへ……テキサス・フィスト・デスマッチはミーの勝ちだな。このテリーマンを超えるにゃ、まだまだ……」

 

 自身が認めた男と満足のいく勝負をやり遂げ、勝利まで得たのだ。

 テリーマンの胸に去来する幸福感は、蓄積していた疲労とダメージを一気に呼び寄せた。

 顔から血の気が引いていく。

 

「し……しかし、これはテリーマンvsテリー・ザ・キッドではなく、ザ・マシンガンズvsジ・アドレナリンズだ。この勝負に乗っちまった時点で、戦略的には敗けていた……」

 

 そう言って、キッドの体重に押し潰されるように倒れた。

 真っ白いキャンバスの上に、息子と共に。

 

『あ――っとテリーマン、支えていたキッドもろともリングに伏した――っ! これは……両者ともにダウンだ――っ!』

 

 ワ~ン。ツ~。スリ~。

 ダウンカウントが行われる間、観客は無言だった。

 キッドとテリーに起き上がる様子は欠片もない。ただテンカウントを待つ。

 

「ゴングじゃ」

 

 やがて、ハラボテが自身の右腕である宇宙超人委員会構成員ノックに指示を出す。

 決着のゴングを鳴らせ、と。

 

『なんという幕切れ! テリーマンとキッドの壮絶な殴り合いの結末は……キッドが先に力尽きたように思えましたが、直後にテリーマンも倒れダブルノックアウト! 引き分けに終わりました――っ!』

 

 ゴングが鳴り、実況アナウンスが告げ、そしてその後に万雷の拍手が巻き起こった。

 テリーマンとキッドの健闘を称える拍手。

 観戦していた者たちの興奮と感動を表現する拍手だった。

 

 しかし客席の中には、腕を六本も持ちながら一切拍手をする気がない者もいた。

 アシュラマンである。

 

「不器用な男だ。キッドの体を支えたりなどしなければ、わずかな差とはいえ勝ち名乗りを受けていたのはあいつだったろうに」

 

 ライバルの“らしい”幕切れを見て、アシュラマンは悔しそうに口を歪めた。

 

『さあ、テリーマンとキッドはKO……ここで脱落となりますが、今大会のルールでは試合はまだ終わりません。ザ・マシンガンズはキン肉マン、ジ・アドレナリンズはロビンマスクが残っております!』

 

 そう、ゴングが鳴りはしたが試合が終わったわけではない。

 動く者がいなくなったリングの中へ、テリーとキッドのファイトを最も近い場所で観戦していたふたりが入っていく。

 

『今、キン肉マンとロビンマスクが各々のパートナーをリングの外へ運び出します』

 

 キン肉マンはテリーマンの身を抱える。

 テリーの意識はしっかりしているようで、申し訳なさそうな顔でキン肉マンを見ていた。

 

「すまない……キン肉マン」

「謝るな。気にしちゃおらんわい」

 

 キン肉マンはテリーを安心させるためにも、ニカッと歯を見せて本心を語る。

 

「それにしてもすごい暴れっぷりだったのう。わたしはおまえが相棒で本当によかったと思うぞ」

 

 親友テリーマンがすべてを投げ売って挑んだ“テキサス・フィスト・デスマッチ”。

 その壮絶な殴り合いは確かにキン肉マンの心を揺さぶり、相手への心象も一変させた。

 

「そしてあのテリー・ザ・キッドという男も、テリーに負けず劣らずのテキサス魂を秘めていることはわかった」

 

 ロビンに連れられていくキッドを見つめ、キン肉マンは真剣な表情を見せる。

 あのテリーと対等にやり合ったテリー・ザ・キッドという男……もはや認めぬわけにはいかないだろう。

 

「キン肉マン、おまえ……」

「友が認めた相手だ。乱暴にペテン師呼ばわりはできないさ」

 

 続けて観客席のほうに目を向ける。

 

「もっとも、わたしそっくりのブサイク面は別だがな」

 

 自分と瓜二つのマスクを被った男はどこに座っていたか……見つけられないが、今はいい。

 いずれ自分自身でその真贋を見極めるときが来るだろう。

 ラーメンマンやテリーマンがそうしたように。

 

「すぐにでも病院に運んでやりたいところだが、まだ試合は続いている。わたしがロビンを倒すまで少し休んでいてくれ」

「ああ……キン肉マン」

 

 リングの外に寝かせられたテリーマンは、せめてこれだけでも、とキン肉マンに拳を突き出した。

 キン肉マンは相棒の意図を察し、自らの拳をガチリと合わせる。

 

「勝てよ」

「おう!」

 

 元気よく応え、キン肉マンは再びリングへと向かっていく。

 一方、ジ・アドレナリンズのほうは。

 

「ナイスファイトだったぞ、キッド」

 

 ロビンマスクが同じようにキッドをリング外へ寝かせ、その健闘を称えていた。

 皮肉でもなんでもない心からの称賛だったが、キッドは悪夢にうなされるような顔でロビンに言う。

 

「面目ねえ、ロビン……大事な試合だっていうのに、オレは……結局、自分の心情を優先させちまった。全力全開のパパと、真っ向から……一対一で闘いたいという欲に抗えなかった~~っ」

 

 タッグマッチというものの本質を無視し、私闘に興じてしまったことを悔い、詫びる。

 責任感の強いキッドらしい懺悔だったが、ロビンはその弱々しい手を握り強く言い放った。

 

「なにを言う! その結果、おまえはあのマシンガンズの片翼を落としたんだ! この結果は大きな意味を持つ……そう、あとは私がキン肉マンをくだせば、ジ・アドレナリンズはマシンガンズに勝利したことになる」

 

 キッドの私闘は決して無駄ではなく、むしろ戦略的にも意味のあるものになった。

 そしてなにより――このシチュエーションを作ってくれたことには感謝しかない。

 それこそ私闘だ。ロビンは出かかった言葉を飲み込み、リングに向き直る。

 

「ロビン……」

「待ってろキッド。おまえにマシンガンズ超えの栄光を持ち帰ってやる」

 

 ロビンは倒れたキッドに背中を見せ、颯爽とリングへ駆けていった。

 その頼もしい後ろ姿に、キッドは笑う。

 

「頼んだぜ、相棒……」

 

 そうして、リング上にはキン肉マンとロビンマスクのふたりが立った。

 

『さあ~~っ、リング上では再び、キン肉マンとロビンマスクのふたりが出揃いました! 先に倒れたパートナーの無念を受け継ぎ、万感の想いでこの因縁の対決に臨みます!』

 

 試合再開。

 ここからは共にパートナー不在、交代もツープラトンもなしのシングルマッチが行われる。

 

 キン肉マンvsロビンマスク。

 あの第20回超人オリンピック決勝と同じリング、同じマッチメイク。

 古参超人レスリングファンの興奮はピークに達し、歓声はもはや怒号と化していた。

 

「がんばってください、王子――っ!」

「敗けたら承知しないぞ、父上――っ!」

 

 キン肉マンと縁の深いミート、そして万太郎がそれぞれ声援を送る。

 

「頼みましたよ、ロビンマスク――ッ!」

「キッドに“マシンガンズを倒した男”っちゅー称号を与えてやってくれ――っ!」

 

 友としてキッドの無念を噛みしめるチェック・メイトとセイウチンは、ロビンに肩入れをしていた。

 

 様々な縁者、様々な友、またはライバルの声を受け、キン肉マンとロビンマスクは決戦に臨む。

 まずはキン肉マン。

 試合序盤を再現するかのように、両手を前に出した。

 

『お――っとキン肉マン、両手を差し出す! これは再び手四つか?』

 

 力比べを誘ってみるが、はたしてロビンはどう出るか。

 左腕の骨が再生しパワーアップしたことはすでに露見している。

 それでもこの手を掴む勇気があるか――と、そんな挑発を込めた仕掛けでもあった。

 

「ロビン戦法No.2」

 

 ロビンは言い、返答する。

 

「相手の誘いには絶対乗るな――っ」

 

 両手で両手を掴むという方法ではなく、キン肉マンの側頭部に上段蹴りを叩き込むという方法で。

 

『ハ、ハイキック一閃――っ!』

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