ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
『ロビンマスク、手四つを拒否しキン肉マンの側頭部へハイキック一閃――っ!』
力比べを誘っていたキン肉マンの側頭部に、問答無用で上段蹴りを叩き込んだロビンマスク。
挑発を無視した罪悪感など微塵もなく、自身がかつて打ち立てた勝利への方程式“ロビン戦法”に則り試合を運ぶ。
「ロビン戦法No.1! 獲物は逃がすな!」
低空タックルで揺れるキン肉マンの下半身を捕らえた。
『ロビン、キン肉マンをテイクダウーン!』
キン肉マンをうつ伏せに倒し、相手の両足を交差させ自分の片脚を入れ交差した部分を挟み込む。
その体勢で後ろに体重を傾ければ、地獄固めと呼ばれる関節技の完成だ。
『そのままキン肉マンの足を取り、インディアン・デスロックに固めていく――っ』
深く極まればギブアップでの決着もおかしくないこの技。
ロビンの仕掛けは早業だったが、キン肉マンの対処もまた早業だった。
「こなくそ!」
『お――っとキン肉マン、上体をそらして無理やり技を解いた――っ』
インディアン・デスロックを解かれ、体勢が崩れるロビンマスク。
キン肉マンはそんなロビンの背後に躍り出て、両手で首と脚を捕らえる。
その状態で仰向けに寝転がり、両脚の脛部分でロビンの背中を弓なりに反らせれば、弓矢固めと呼ばれる技の完成だ。
『反撃のボー・アンド・アロー! ロビンマスクの体が弓のようにしなる――っ!』
ロビンマスクは身動きが取れない。
タッグマッチにおけるツープラトン発動のチャンスが到来した。
「今だ、テリー!」
好機と見るや否や、キン肉マンは控えているはずのパートナーに呼びかける。
だが、すぐにハッとした。
相棒のテリーマンはつい先ほど相手チームのキッドと激闘を演じ戦線離脱したばかり。
もはやツープラトン発動の機会は訪れない。
「フフ……キン肉マン。どうやらおまえはまだこの試合がタッグマッチだと思っているようだ……」
「な……なにがおかしい!」
「キッドとテリーマンがリタイアしたこの試合はもはや、シングルマッチも同然! タッグマッチ思考は捨て、シングルマッチ用に闘い方をアップデートするべきなんだ――っ!」
キン肉マンの隙を突き、ボー・アンド・アローから逃れるロビンマスク。
グラウンドにこだわるわけにいかない、とキン肉マンは反撃が来る前に立ち上がった。
「あっぷでーと~~っ? 意味わからん未来の言葉なんぞ使いおって~~っ」
キン肉マンが立ち上がることを見越していたロビンマスクは、すでに手を伸ばしていた――キン肉マンのマスクへ。
頭頂部のトサカとでもいうべき部分、古くはキン肉カッターと呼ばれる部分を掴み、ターゲットを固定。
空いているほうの手で拳を作り、パンチの連射砲を叩き込む。
「タァ――ッ! タァ――ッ! タァ――ッ!」
『こ、これは~~っ!? ロビンマスク、まるでキッドのテキサス魂が乗り移ったかのようなナックル・パートだ――っ!』
ロビンがナックル・パートを仕掛けてくるとは思わなかったのか、キン肉マンはされるがままに打ち込まれる。
猛烈なラッシュは口内から血を吐き出させ、心身ともにダメージを与えるのだ。
何度か打ち込んだあとロビンは手を離し、キッドやテリーのように左腕を回す所作、アングリー・シャッフルで勢いをつける。
「ロビン流ブロンコ・フィスト――ッ!」
そして、渾身の一撃でキン肉マンの顔面を殴りつけた。
ダウンは必至――と、思いきや。
『あ――っとしかしキン肉マン、持ちこたえる!』
キン肉マンは二歩ほど後退したくらいで、まるで効いていないように唾を吐き捨てた。
「さ……さっきのテリーやキッドが見せてくれたパンチに比べれば~~っ」
この程度のパンチで倒れたらあの親子に笑われてしまう。
意地を見せつけるために、バッファローマンとネプチューンマンが作り上げてくれたナチュラル・ボーン搭載の左腕を構える。
「ヘソで茶がわかせるわ――っ!」
『左腕のラリアットがロビンの首元を刈った――っ』
ラリアットによる反撃を受け、ぐらつくロビンマスク。
キン肉マンはロビンの懐に入り、上から覆いかぶさるように胴を抱え込んだ。
『キン肉マン、怯んだロビンを逆さに抱え上げ……大きく跳んだ――っ!』
客席のキン肉万太郎と、相棒のカオスがいち早く反応する。
「これは……!」
「まさか!」
キン肉マンが発動しようとしている技の正体はよく知っている。
いや、マッスルブラザーズ・ヌーボーだけでなく、多くの観客がそれに気づいた。
相手の左肩下に頭を潜り込ませ、両腕は両内腿を押さえ完全に身動きを封じる。
その体勢で尻からキャンバスに着地すれば、捕らえた相手の首・背骨・腰骨・左右の大腿骨の五箇所が粉砕される。
これぞキン肉族48の殺人技のひとつ“五所蹂躙絡み”。
またの名を――
「キン肉バスター!」
キン肉マンの代表的フェイバリット・ホールドが、完璧なセットアップでロビンを捕らえていた。
両者の姿はすでにリング上空、あとはキャンバスに叩きつけるだけで技は成立してしまう。
「こちらも初体験だろう! キン肉ドライバーは破られてしまったが、これはどうかな!?」
試すように言うキン肉マン。
ロビンは苦しげな表情で反論する。
「こ……こんなものはバッファローマンの考案した6を9にするキン肉バスター返しで……」
キン肉バスターは誕生当初こそ猛威を振るったが、あまりにも暴れすぎたため多くの対抗策が考案された。
バッファローマンの6を9にするキン肉バスター返し、通称“リベンジ・バスター”はその筆頭。
ロビンの技量ならまさに数字の6を9にするかのように体勢をひっくり返せるが――
「なめるな! このキン肉バスターはテリーの魂を受け継いだ“あっぷでーと版”キン肉バスターだ! そう簡単に返せはしない――っ!」
この日、この瞬間のキン肉バスターはひと味もふた味も違う。
キン肉マンのフックはビクともせず、ロビンマスクの抵抗はかなわない。
ふたりがキャンバスへ降下するその瞬間、客席の万太郎はありえないものを見た。
「あ……ああ~~っ! み、見える! 父上の姿に重なって、キン肉バスターをかけるテリーマンの姿が――っ!?」
人それを幻視という。
あるいは、キン肉マンとテリーマンの友情パワーがそんな幻を見せたのか。
理屈はどうであれ、アップデートされたキン肉マンの
『キン肉バスターが決まった――っ!』
ズガド~~ンという盛大な衝撃音が響き、キャンバスが波打つ。
確かな手応えを感じたキン肉マンは両腕のフックを外し、固められていたロビンが解放された。
ロビンは静かにキャンバスに倒れ……キン肉マンは悠々と立ち上がった。
「ウググ……」
うつ伏せになりながらキン肉マンの立ち姿を見上げるロビンマスク。
キン肉マンに追撃の意思はない。
キン肉バスターが決まったことで、勝負は決した――自信に満ちた表情がそう語っていた。
愚か者め、とロビンは両足に力を込める。
『あ――っとしかしロビンが立ち上がろうとする!』
破壊された両大腿部を震わせ、オレはまだやれるぜとファイティングポーズを取り――
「ガハッ」
吐血した。
両脚はガクリと折れ、膝がキャンバスにつく。
もはや全身を支えることかなわず、上半身もキャンバスに崩れ伏した。
『再びダウン! やはりマシンガンズふたり分の魂が乗ったハイブリッド・キン肉バスターの破壊力は絶大だ――っ!』
このまま決着してしまうのか?
観客の誰もがそう思い、ダウンカウントが進んでいく。
「な、なんの~~っ」
しかし、ロビンは死に物狂いで腕を伸ばした。
足で立てぬなら腕の力で立ち上がるまで。
ロープを掴み、腕力で自身を持ち上げる。
「わ……私とて、キッドの想いを背負いこのリングにいる……まだまだ倒れるわけには~~っ」
自分が倒れるということはすなわち、アドレナリンズの敗北。
ほとんど執念で立ち上がった、そのときだった。
ドン!!!
リングの外側で、大きな音が響く。
ロビンは反射的に目を向けた。
入場用の花道に、なにか巨大な物体が突き刺さっている。
あれは――
「ケ……ケビン!」
消滅の危機にあるケビンマスクが入ったX形クリアベッド。
それが時間超人ライトニングとサンダーの手により、ロビンの眼前に突き立てられていた。
「なんのつもりだ時間超人! ケビンマスクのクリアベッドをそんなところに持ってきたりして――っ!」
時間超人を強く敵対視するカオスが声を荒げる。
ライトニングとサンダーはケビンの両脇で下卑た笑みを浮かべていた。
「ジョワジョワ……なに、せっかくなら親父の試合を特等席で見せてやろうと思ってな」
「ヌワヌワ……もっとも、それは負け試合になるかもしれねえがな」
まるで親切のように言うふたりだったが、その真意は嫌がらせ以外のなにものでもない。
ロビンは狼狽し、ケビンに手を伸ばす。
「おお、ケビン……ケビン~~ッ」
命を賭してでも救いたいと願った我が子が、目の前で苦しそうな姿を晒している。
今すぐにでもリングを下り、その消えそうな体を抱きしめてやりたい。
だが今はまだ試合中。リングを下りることは試合放棄を意味する。
「ヌワッヌワッ」
仮面の貴公子の滑稽な様を見て、サンダーは愉しむように肩を震わせた。
ライトニングは観衆に向けて声を張り上げる。
「20世紀のボンクラどもに教えてやる! このロビンマスクはキン肉マンのことを終生のライバルなどと謳っているが……34年後の未来にいたっても、ロビンマスクがキン肉マンに勝てた試合など一戦たりとも存在しない!」
この時代のロビンファンはこう思っているかもしれない――いつかロビンがキン肉マンにリベンジを果たしてくれる、と。
未来の歴史を知る時間超人は、その淡い願望を打ち砕く。
「つまりここにいる仮面の貴公子は……永遠の負け犬ってことだ――っ!」
ロビンはこの先、一生キン肉マンに負けたままなのか――ロビンファンの顔色が絶望に染まる。
反論したくとも、現に今キン肉マンと闘っているロビンはご覧の有様だ。
試合中のライバルから視線を外し、未来の息子を前にうわ言をつぶやくばかり。
醜態は観客の諦観を誘い、本来超人のパワーとなるはずの声援をピタリと止めた。
「え、えげつねぇ」
カオスが時間超人の狡猾なやり口を前に戦慄する。
静まり返る会場内。声を発する者はわずか。
そんな中、ひとりの若き超人が叫ぶ。
「そんなことはない!」
トサカや分厚い唇が目立つマスクを被り、前髪だけを外に出した容貌。
キン肉マンと瓜二つの容姿を持ちながら、21世紀からの使者を名乗り一部では狂人扱いを受けている若者。
その超人の名は――キン肉万太郎。
彼もまた、ライトニングやサンダーと同じく未来を知る超人のひとりなのだ。
「確かにロビンマスクがキン肉マンに勝てた試合は一度たりともないかもしれないが……ずっと先の未来で開かれる“超人オリンピック・ザ・レザレクション”では、彼の息子であるケビンマスクがこのボク、キン肉万太郎を破りチャンピオンベルトをキン肉マンから奪還している――っ!」
ロビンマスクという超人の恐ろしさは、彼の血を引くケビンマスクとの対戦で嫌というほどわからされている。
本人たちの直接対決でこそなかったが、あの一戦の結果は明確にロビン王朝がキン肉族を上回ったと言えよう。
「それだけロビン
多くのロビンファンが閉口する中、万太郎はロビンマスクに声援を送る。
このキン肉万太郎最大のライバルの父親は、これしきのことでは倒れないと。
そう信じて。
「そして!」
だからといって、ロビンマスクに勝ってほしいわけではない。
万太郎がこの試合で応援していたのは、そうずっと――
「そのうえで、この試合に勝つのはこのキン肉万太郎の父、キン肉マンだ!」
実の父、キン肉マンの勝利をあらためて願う。
どれだけペテン師と罵られようと、どれだけアホだのブサイクだの言われようとも。
リングに立つのは最愛の父、そして子供の頃から憧れ続けたスーパーヒーロー・キン肉マンなのだから。
「万太郎……」
息子の健気な想いを受け、キン肉マンは感動に身を震わせる。
そして、こちらの息子も。
「ダ……ダディ……」
クリアベッド内のケビンマスクが、微かに声をもらした。
「ケビン!」
ロビンが呼びかけ、親子の視線が交差する。
フルフェイスの鉄仮面から覗く、弱々しい眼光……見れば見るほど、未来に生まれてくるアリサとの息子なのだという実感が増してくる。
我が子の声が聞きたい。今一番欲している言葉を、息子の口から聞きたい。
ロビンは願い、そして。
「勝ってくれ……」
ケビンは気力を振り絞り、ただそれだけを伝えた。
それだけで、充分だった。
「……いい息子を持ったな、キン肉マン」
ロビンはリング上で待ってくれているライバルに対して言う。
さらにそのライバルと瓜二つの容姿を持つ若者へ、感謝の意を込めこう言った。
「万太郎……21世紀に帰ったら、キッドも誘っておじさんの家に遊びにくるといい。とっておきのイギリス紅茶とスコーンをごちそうするぜ」
自らが立ち上がるきっかけを与えてくれた息子の友人と、34年後の約束を交わす。
そしてロビンは、万太郎やケビンの声援に応えるべく息を吸い込んだ。
「ウオオオ――ッ!」
『ロ……ロビンマスクが吠えた――っ!』
視線をキン肉マンに戻し、闘志みなぎる目を光らせ言う。
「キン肉マンよ! 時間超人の語る歴史など鵜呑みにするなよ! 私たちの歴史を作るのは、今を生きる私たちだけだ――っ!」
未来は変えられる。
いや、たった今変えてみせる!
ロビンマスクの意気込みに、キン肉マンも対抗心を燃え上がらせた。
「あたりまえだ! わたしの息子がロビンの息子に敗けるなど……あってたまるか――っ!」
自然にこぼれた言葉は、客席の万太郎の耳にも届いた。
「ち……父上! 今ボクのことを息子って!」
試合中ゆえに発言の真意は問えない。
それでも万太郎は、反目していた父に認められたような気がして嬉し涙を流した。
予想外の事態に困惑した素振りを見せたのは、ライトニングとサンダーだ。
「ヌウ~~ッ、瀕死のケビンを見せロビンマスクのメンタルを粉々に破壊してやろうと思ったのに……」
「ジョワ~~ッ、どうやら逆効果になっちまったようだ」
時間超人のふたりは悔しげに唸り、そしてついに試合が動く。
主導権を掴みにいったのは、息子からエールを受け取ったばかりのこの男。
「ロビン戦法No.7!」
ロビンマスクが姿勢を低く構え、キャンバスに片手をつける。
「ピンチの直後は最大のチャンス!」
繰り出すのはもちろん、キン肉マンと出会う以前“
『あ――っとロビン、キン肉マンにお得意のライナー・タックルだ――っ!』