ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第004話 帰ってきたこの舞台!

 1983年5月5日、PM0:00。

 舞台は後楽園球場。

 

『1937年に開場されましたプロ野球の聖地、後楽園球場――1959年6月25日の天覧試合、1974年10月14日長嶋引退試合、1977年9月3日王貞治のホームラン世界記録と――様々な歴史を刻んでまいりましたこの球場でありますが、本日1983年5月5日は球場にとって新たな凄い歴史の1ページを刻むことになるでしょう』

 

 後楽園球場の観客席はすでに観客で埋め尽くされている。

 今からこの地で行われる闘争を期待し、誰もが固唾を呑んだ。

 

『この地上で真に自分の物と言えるたったひとつの魂を勝ち得た者のみが……歓喜の歌を歌う資格を得る!』

 

 もはやボルテージは最高潮。

 熟練の実況アナウンスが、ついに訪れるその瞬間を知らせた。

 

『1億4千年前の超人の歴史上、最強のメンバー528名の優性ゲノムを内包し……それを手に入れれば完全無比(コンプリート)の超人になる力を持つと言われるトロフィー球根(バルブ)。そのトロフィー球根を奪取、完全無比の超人となり、歓喜の歌を歌えし超人タッグはどのチームなのか――っ!』

 

 そして、決戦の幕は開く。

“究極の超人タッグ・トーナメント”――エントリー選手入場の時である。

 

 

 ◇

 

 

 選手控室。

 あてがわれた一室で、ネプチューンマンとセイウチンの“ネオ・イクスパンションズ”は自分たちが入場する順番を今か今かと待っていた。

 

「準備はいいか? セイウチン」

 

 自身の名前が書かれたタスキをかけ、自前のマントを装着し準備万端といった様相のネプチューンマンがセイウチンに声を掛ける。

 セイウチンはまるで瞑想でもするかのように坐禅を組んでいた。

 

「不思議な感覚だ……こんな大舞台を前にしたら、オラいつもなら緊張で足が竦んでしまいそうだのに。今はまったく不安がねえ。むしろ早く闘いてえって、闘志が湧き上がってるだ~~っ」

 

 セイウチンはヘラクレス・ファクトリー一期生として悪行超人と闘ってきた。新世代超人(ニュージェネレーション)の中では古参といえる超人ではあるが、こういった超人格闘技の大会への参加経験は少ない。

 しかしどうだ、この落ち着き払った様子は。緊張など微塵も感じさせない、手練れの風格ではないか。

 

「地力が上がり、無意識ながら自信がついたのだ。今のおまえは他の伝説超人(レジェンド)や新世代超人と比較してもなんら遜色ない。一線級だ」

「い、一線級……っ」

 

 太鼓判を押すネプチューンマンを前に、セイウチンは喉を鳴らす。

 挙動には喜色が見え隠れする反面、目尻のほうは不安げに下がっていた。

 

「だ、だどもけっきょく合体技(ツープラトン)の練習はろくにできなかっただが……」

「フフ……心配するな」

 

 今は多くは語らない。ネプチューンマンはただ、不敵に笑いセイウチンの不安を吹き飛ばす。

 セイウチンははたしてそれをどう受け取ったか、確かめる必要はない。すぐに大会運営スタッフからネオ・イクスパンションズの順番が知らされ、闘う男の顔つきになったからだ。

 

「さあ、行こうぜ相棒!」

「お、おう!」

 

 ネプチューンマンとセイウチンは控室を退室し、入場口へ向かう。

 昇降式のゴンドラに乗り込み、入場セレモニーが行われている地上へ上がった。

 

 視界に飛び込んできたのは、プロ野球の試合など目ではないくらいのいっぱいの観客。

 そして、先に入場を果たしている“究極の超人タッグ戦”出場チームの面々だった。

 

(オオ~~っ! キン肉マンにテリーマン、ロビンマスクに2000万パワーズも……顔ぶれはやはりあのときのままだ~~っ)

 

 ブタ鼻のブサイク面、日本人ウケのよさそうなハンサムガイ、西洋騎士のような鉄仮面、威圧的な隈取の二人組……懐かしきアイドル超人たちとの再会に、ネプチューンマンは歓喜に震えた。

 そんなネプチューンマンの内心とは裏腹に、バッファローマンをはじめとした入場済みの超人たちには衝撃が走る。

 

「や……やつは……3日前に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”でキン肉マン&テリーマンに敗れ……その後、友情に目覚めたネプチューンマンは地球撲滅を狙おうと奇襲をかける千人の仲間の完璧(パーフェクト)超人に自らの敗北を知らせるため人狼煙として自爆し死んだのではなかったのかぁ~~~~っ!?」

 

 バッファローマンはもちろん、キン肉マンもテリーマンもロビンマスクもモンゴルマンも……この時代の正義超人たちにとっては、ネプチューンマンは数日前に死んだはずの超人だ。驚くのも無理はない。

 前回とはスタンスが変わった今回、自らの口で懇切丁寧に説明してやってもいいが、その役目は新世代超人のイリューヒンとバリアフリーマンが担ってくれる。

 

「そう。一度は人狼煙で死んだかと思われたネプチューンマンだが……その超人としての高い能力と勇気の消滅を惜しんだ数名の仲間が……完璧超人界に代々伝わる“超人再生術”を20週と8日にわたって施し……」

「そうやって熱い友情によって見事ネプチューンマンは再生し……極悪完璧超人から正義超人への転身をはかった!」

 

 若い世代の超人ながら――片方は老人だが――よく知っている。

 

「そ……そうか、あのネプチューンマンは3日前の極悪完璧超人のネプチューンマンではなく……」

「巷間伝わるように正義超人として年齢を重ねて21世紀の未来からにゅーじぇねれーしょんという連中と一緒にタイムスリップしてきたネプチューンマンなんだな!」

 

 ふたりの説明により、バッファローマンとモンゴルマンも納得したようだ。

 

『さあ~~~~っ、タイムスリップが現実だとしたらここにいるのはまさに50歳を超えたとは思えない、鋼鉄の肉体を保ってきた21世紀型のネプチューンマン“究極の超人タッグ戦”参戦ということになります! 年はとってもさすがにひとかどの超人! 他の若手超人とは違うオーラを醸し出しております――――っ!』

 

 なにからなにまで、前回の“究極の超人タッグ戦”入場セレモニーをそのままコピーしたような展開だ。

 違いがあるとすれば、隣のセイウチンが獣性に目覚めず純正の正義超人として花道を歩いていることか。

 

 そしてネプチューンマンとセイウチンのふたりは、多くのライバルがひしめく狭いリングに向かっていく。

 もちろんその道中でセイウチンが飛んできた鳩を食らったり、持参した棺から顔の皮を剥がされたチェック・メイトが飛び出したりといったアクシデントもない。

 後ろめたいことなどなにひとつない、堂々のリングインである。

 

「ヒョホホ……本当にネプチューンマンとタッグを組んだんじゃなあ、セイウチン」

 

 新世代超人のひとり、バリアフリーマンは好々爺のような表情でセイウチンに声をかけてきた。

 だがその隣のパートナー、イリューヒンは憮然とした顔つきでネプチューンマンのことを見ていた。

 

「なにかオレに言いたそうだな、イリューヒン」

 

 その懐疑的な眼差しにわずか敵意を感じ取ったネプチューンマンは、本人に直接問う。

 

「一度固く信じたものをそう簡単に捨ててしまえるのか? あんたほどの強い意志を持った者が……」

 

 イリューヒンもまた誤魔化したりはせず、やや遠回しな表現でそう問うてきた。

 ネプチューンマンが一度固く信じたもの……それは完璧超人としての矜持のことを言っているのだろう。

 

「フフ……祖国ロシアのために戦ったおまえらしい疑念だな」

「なに?」

 

 ネプチューンマンのスタンスが以前のままであれば見事な洞察力だと手を叩くところだが、あいにく今となってはとんだ濡れ衣。

 ゆえにここは、無礼な若者に多少の皮肉を込めてこう返答する。

 

「“赤き死の飛行機(ママリオート)”だったか? 超人オリンピック ザ・レザレクションでは、祖国の勝利のため敵対超人の胴体を真っ二つにすることもいとわず……されど先に行われた“悪魔の種子(デーモンシード)”との闘いにおいては、ミートのボディパーツを手に涙まで流していた……そんな元・残虐超人のおまえが、ずいぶん言ってくれるじゃねえか~~っ」

「グムム……」

 

 掘り起こされたくない過去を掘り起こされたことで、イリューヒンは押し黙った。

 

「ホエホエ……痛いところを突かれたのぉ、イリュー」

 

 その様子を愉快そうに見つめるのがバリアフリーマンだ。

 ネプチューンマンはこの老人にもひとつ言いたいことがある。

 

「そういうあんたのほうこそ、ニルスはどうした?」

「へ?」

 

 ニルス、という名を出されたバリアフリーマンは素っ頓狂な反応を見せる。

 

「本来バリアフリーマンは、正義超人の若者ニルスと元・悪行超人ジージョマンの合体超人……だがこちらの時代に来てからは、ニルスのボディや人格は鳴りを潜めている……“戦慄のエロ核弾頭”なんて呼ばれるあんたよりも、血気盛んな若者であるニルスのほうがケビンマスク救命のミッションには最適なんじゃないか?」

 

 スネにある傷の深さでは、バリアフリーマン……いやジージョマンもイリューヒンに劣らない。

 加えて、一心同体の相棒であるニルスの沈黙は謎のままだ。

 

「い、いやあ、ニルスはその……」

 

 なにか言いづらい理由があるのか、バリアフリーマンは視線を泳がせながら後頭部を掻いた。

 

「きぃ~~ちゃった~~っ! 聞いちゃったぁ~~っ!」

 

 そんなバリアフリーマンたちとのやり取りの最中、茶々を入れてきたのがキン肉マンである。

 

「おまえら、元・悪行超人だったのか――っ! 胡散臭いやつらだとは思っていたが、これで決定的だなぁ――っ! ネプチューンマンが34年後の未来からやってきたというのは認めるにしても……おまえらにゅーじぇねれーしょんとかいう若僧共はやはり悪衆・時間超人の仲間だったんだな――っ!」

 

 キン肉マン……前大会“夢の超人タッグ・トーナメント”覇者であるこの男は、未来からやってきた新世代超人のことをインチキ詐欺師どもと信じて疑わない。少なくとも、この時点ではまだ。

 

「フゥ――ッ。キン肉マン……いや、キン肉スグル。万太郎たちがおまえの石頭を攻略し、認めさせるのは今回も骨が折れそうだな……」

「な、なにを言っとるんだ?」

 

 新世代超人たちがもっと早く伝説超人たちと和解し、共闘することができれば時間超人との闘いも楽になるのだろうが……正直なところ現実的ではない。

 最大の障害がこの20世紀の正義超人筆頭にして自身を倒した男、キン肉スグル。こいつの頭の固さは筋金入りで、いくら言葉を尽くしたとてキン肉万太郎を息子と認めるビジョンが見えてこない。

 だからここは、未来からやってきたという話は一旦置き正義超人とはなにかというところからアプローチをかけてみる。

 

「考えてもみろ。元・悪行超人ということは現在は正義超人ということ……ここにいるイリューヒンもバリアフリーマンも、スネに傷を持っているのには違ぇねぇ。だがそんなやつらは、おまえたち20世紀のアイドル超人にも大勢いるだろう。なあ、バッファローマンにモンゴルマン」

 

 ネプチューンマンが話を振ると、バッファローマンとモンゴルマンのふたりはバツが悪そうに視線を落とした。

 

「ウウ……」

「そ、それを言われると……」

 

 元悪魔超人に元残虐超人のふたりだ。経歴で言えばイリューヒンやバリアフリーマンと大差ない。

 

「キン肉マン。おまえはそういう輩たちと闘い、わかりあってきたのだろう。それが正義超人の友情だと説いてきたんじゃあないのか? なのにこいつら新世代超人だけは別だと……悪党は生まれたときから悪党で、改心など絶対にしないと、そう言いてえってのか~~っ?」

「グ……グムー」

 

 さすがのキン肉マンももっともだと思ったのか、反論することなく口を噤んだ。

 

「肉体が鍛え上げられているだけではなく弁も立つ。この老獪さ、やはりネプチューンマンはミーたちより34年の歳月を経た大ベテランと見てよさそうだぜ」

「し……しかしのう、テリー」

 

 反論はできないがなにか言い返したい顔のキン肉マンを、相方のテリーマンが制す。

 キン肉マンに言わせたい放題では新世代超人のフラストレーションが溜まるばかり。それは健康的ではない。

 前回は完全放置だったが、今回は新世代超人との不和解消のためにも適度に間に立ってやる必要がある。

 

「見ろ、おまえの自称・息子のお出ましのようだぜ」

 

 そうこうしている内に、さらなるエントリーチームが登場する。

 新たに現れたのは、キン肉マンの息子であるキン肉万太郎。

 そしてそのパートナーを務めるのは、キン肉マンにそっくりなマスクを被った謎の男。

 名をキン肉マングレートⅢ。正体は――

 

(うぉおお~~っ! カオス――――ッ!!)

 

 ネプチューンマンの命を救い、未来に送り返すという温情まで働かせてくれた大恩人――カオス・アヴェニール。

 結果的に未来ではなく過去に戻ってきてしまったネプチューンマンではあるが、偶然にもやり直しの機会を与えられたことでさらなる恩を感じている。

 

(や……やはりオレの読み通りだぁ~~っ! セイウチンやチェック・メイトといったパートナー候補を失った万太郎は、今回の究極の超人タッグ戦においてもカオスに出会った――っ。まだ時間超人としての記憶が戻っておらず、自分を人間だと思い込んでいるオタク少年ではあるだろうが……その潜在能力(ポテンシャル)は今のところオレだけが知っている――――っ!)

 

 スタンスを変えたことで、どの程度歴史に影響が出るかは未知数だったが……万太郎は無事カオスとタッグを組めたようだ。

 その後、リングに集った超人は見覚えのある顔ぶればかり。

 このやり直しの機会、現時点では出場チームが大きく変わるといったことはなさそうである。

 

(役者は揃った)

 

 しかし……ここから先は歴史通りとはならない。

 なんせこれから行われるのは、集まりすぎた出場選手たちを選別する間引きバトルロイヤル。

 全16チームが狭いリングで一斉に闘い……実力なき4チームが消える。

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