ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第040話 勝利のためのフィニッシュ・ホールド!

『ロビンマスク、キン肉バスターをくらった直後だというのに凄まじい突進力だ――っ』

 

 ロビンマスクのライナー・タックルがキン肉マンを激しく突き飛ばす。

 テイクダウンが目的ではなく、突進の衝撃そのものでダメージを与えることを狙ったタックル技。

 それを理解できているからこそ、キン肉マンは下手に抗わず思い切りぶっ飛ばされたのだ――そう、後方のロープまで。

 

「でええーい!」

 

『キン肉マン、ロープの反動を利用したあびせ蹴りを放つ――っ』

 

 近年流行している20世紀のトレンド技でロビンマスクに逆襲を狙う。

 が、

 

『ロビンマスクがこれをキャッチ!』

 

 ロビンマスクは自ら飛び込むことであびせ蹴りの間合いを潰し、キン肉マンの体を捕らえる。

 捕らえたキン肉マンを振り子のように大きく振り、勢いをつけて自身の膝に背中から叩きつけた。

 

『こ……これは振り子式背骨折り! ペンデュラム・バックブリーカーだ――っ!』

 

 骨が砕けるような不快な音が響き渡る。

 だが油断してはいけない。キン肉マンの腰骨は昔から音が鳴りやすいのだ。

 ロビンはキン肉マンをキャンバスへ叩きつけ、次なる技のセットアップに入る。

 

『キン肉マン、ダウーン! そしてロビンマスクは宙へ跳んだ――っ』

 

 うつ伏せになったキン肉マンの背中めがけて、頭からダイブ。

 他の超人ならただのヘッドバットだが、ロビンの場合は違う。

 彼が被る鋼鉄の仮面は頭頂部に鋭い突起を備えるため、これがキン肉マンの背に深く突き刺さった。

 

 キン肉マンの背中から鮮血が吹き上がる。

 声もなく苦しむキン肉マンのそばを、ロビンは離れない。

 相手の体を押さえつけるようにしながら、傷を負った箇所に狙いを定め――

 

「あ……ああ~~っ! まずい! この技の流れは~~っ!」

 

 客席のミートくんがトラウマを思い出すかのように震え上がる。

 その間、ロビンは頭を振り下ろした。

 キン肉マンの背中の傷口へ、頭頂部の突起部分が突き刺さるように。

 

「セイリャ――ッ!」

 

 突き刺し、傷を抉り、血を撒き散らし、また刺す。

 何度も何度も、執拗に同じ箇所への刺突攻撃を繰り返した。

 

『なんということだ――っ!? ロビンマスク、鋭利な仮面の突起部分を使い、執拗にキン肉マンの背中を突き刺していく――っ! リングの上で流血事件発生だ――っ!』

 

 まるで地獄の絵図を見るようなリングの有り様。

 キン肉マンの体を中心にキャンバスは血で汚れ、観客からは悲鳴が上がる。

 

「ジョワ~~ッ、凶器も使わずこれだけの血を流させるとは」

「ヌワ~~ッ、その鋼鉄の仮面は伊達じゃねえってことか」

 

 正義超人のロビンマスクが見せる狂乱ファイトに、あの時間超人のふたりすらも驚きを見せた。

 

「わ……わかる。オレにもわかるぞミート……」

 

 震え上がるミートの隣では、カオスが興奮と恐怖が綯い交ぜになったような表情を浮かべる。

 超人レスリングのオタクである彼は知っている。

 これは第20回超人オリンピック決勝、キン肉マンvsロビンマスクの一戦でも使用された連携技――

 

「ペンデュラム・バックブリーカーで背骨を痛めつけてから、反則ギリギリの攻撃でさらに背中へ傷を負わせていく……これこそ、ロビンマスクがキン肉マンとの初対戦で見せた狂乱の三連背中攻め、“ロビンマスク死のコース”だ――っ!」

 

 あのときと同じリングで、同じ対戦相手に、同じ技を披露するとは。

 一介のオタクとして熱狂せずにはいられないカオスと違い、傍らのキン肉万太郎は恐怖で竦み上がる。

 

「三連って……じゃあこのあとに続くのは、まさか~~っ」

 

 この技の“続き”を予想し、ロビンマスクがとうとう勝負を決めにくると確信してしまったからだ。

 ペンデュラム・バックブリーカー、仮面の突起を使った刺突攻撃と続き、“背中”を攻めるロビンの技といえばあれしかない。

 

 答え合わせをするかのように、ロビンマスクはキン肉マンを担ぎ上げた。

 背中を向けた状態で両肩の上に乗せ、右手で首を、左手で腿をクラッチする。

 そうやって両端から力を加えれば、キン肉マンの体はアムステルダムの跳ね橋のように真っ二つになることだろう。

 そんなロビン・ザ・フェイバリットの名は――

 

「くらえ――っ! ロンドン名物“タワーブリッジ”!」

 

『出た――っ! ロビンマスク伝家の宝刀が、第20回超人オリンピック決勝以来久々にキン肉マンを捕らえた――っ!』

 

 かつてロビンマスクは、キン肉マンをこのタワーブリッジに捉えKO寸前まで追い込んだ。

 腰骨の破砕音を確認したところで技を解いたが、それはキン肉マンの仕掛けた罠。

 勝ちを確信したところで反撃をくらい、そのまま逆転負けという屈辱を与えられたのである。

 

「さあ――っ! 今度は超人オリンピックやグランドキャニオンの一戦のときのようにはいかんぞ! 油断も容赦もない……あの頃よりもさらに磨かれた私のタワーブリッジを! 攻略できるものならしてみせろ――っ!」

 

 あのときのキン肉マンはロビンに対してこう言った。

“たしかにキミの技は素晴らしい。だがそれに溺れてしまっては技の効力は半減する。それが弱点なのさ”と。

 

 もっとも、当時ダメ超人だったキン肉マンがその弱点を的確に突けたのかといえばノーだ。

 あの勝利は野生の本能による無意識の反撃、後に火事場のクソ力と呼ばれるパワーの賜物。

 

 だからこそ――今度はしっかりと、実力で打ち破ってみせたい。

 

「ふ……ふふ……」

 

 キン肉マンはタワーブリッジで背中を極められながらも、笑った。

 

「わかっていたぜ、ロビン……おまえがタワーブリッジを温存していたことは」

「なに!?」

 

 ロビンの反応を誘いながら、この状況がキン肉マンの術中であるかのように語る。

 

「この技はロビンマスクの象徴ともいえる必殺技(フェイバリット)……そして、わたしとの二度の対戦でも使用し、いずれも仕留めきれなかった因縁の技でもある……それをこんな大舞台で、試合終盤の今まで出さなかったんだ。フィニッシュ・ホールドとして温存しているだろうことは読めていた……」

 

 当時フィニッシュ・ホールドというものを持たなかったキン肉マンは痛いほど知っている。

 超人にとって、必殺技とは自信の象徴、戦術の中核を担うもの。

 多くの超人は最後にこれで勝負を決めると計算し、ダメージを蓄積させるべく試合を組み立てていく。

 逆にこの必殺技をしのいでしまえば、相手超人の戦術は崩壊し決め手を失うのだ。

 

「だからこそ、逆転の隙が生まれる――っ!」

 

 キン肉マンはフリーになっている手を、自身の首をホールドするロビンの手に伸ばした。

 指を一本掴み、逆方向に思い切り力をかける。

 

「グアッ」

 

 指折り。

 キン肉マンからのまさかの抵抗に、ロビンマスクはたまらず技を解いてしまった。

 

「わたしが一部界隈で“マッスル・デビル”と呼ばれたことを知らんわけではないだろう! “死のコース”なんて懐かしい技を見せてくれた礼に、わたしも懐かしい技で決めてやるぜ――っ!」

 

 タワーブリッジから解放されキャンバスに降り立ったキン肉マンが、ロビンマスクに技を仕掛けにいく。

 ロビンマスクの正面に立ち、上から覆い被さる形で両腕をロック。そのまま円運動で相手を振り回す。

 

「疾きこと風の如く――っ!」

 

『キン肉マン、ロビンマスクをダブルアームの体勢に捕らえて大回転――っ!』

 

 遠心力に逆らうことなくロビンをキャンバスに叩きつけ、次のアクションに移行。

 ロビンの股関節に腕と脚を差し込み、回転を加えながらリング上空へ飛び上がる。

 

「徐かなること林の如く――っ!」

 

『次にローリングクレイドルの体勢で上昇――っ!』

 

 充分な高度を確保した後は体勢を変え、ロビンを逆さにして両腕で胴をクラッチ。

 膝を折りたたみ相手の脳天が一番下に来るようにして、勢いよくキャンバスに着地する。

 

「侵略すること火の如く――っ!」

 

『パイルドライバーで一気に下降――っ!』

 

 そこからさらにロビンを捕まえ直し飛び上がる。

 空中で両手両脚を極め、相手の体を吊り上げれば――

 

「動かざること山の如し――っ!」

 

『最後はロメロ・スペシャルに極めた――っ!』

 

 ダブルアーム、ローリングクレイドル、パイルドライバー、ロメロ・スペシャル。

 4つの基本技から成るプリンス・カメハメ直伝の複合技が完成する。

 

「これぞ48の殺人技No.3“風林火山”じゃ~~っ!」

 

 キン肉マンは空中でロビンをロメロ・スペシャルに固めながら叫んだ。

 同等の声量で喜びをあらわにしたのが、客席のカオスである。

 

「ウヒョオオ~~ッ! これは……キン肉マンが第20回超人オリンピックチャンピオンとなった直後、アメリカ遠征時に立ち寄ったハワイでハワイ超人チャンピオンであるジェシー・メイビアとダブルタイトルマッチを行った際に見せた技! 過去を遡っても使ったのはその一戦だけという、キン肉マンの技の中では知る人ぞ知るレア・フィニッシュ・ホールドだ――っ!」

「カ……カオス……おまえちょっとオタクが戻ってるぞ」

 

 大興奮のカオスと若干引いている万太郎をよそに、キン肉マンはさらに深くロメロ・スペシャルを極めていく。

 手足の強靭さ、柔軟性、バランス感覚、そして集中力――技の発動に必要なあらゆる要素を無駄なく使い、堅実にダメージを与えるこの“風林火山”。

 先にキン肉バスターも食らっていたロビンには抵抗する力が残されておらず、ただ追い詰められるのみ。

 

「どうだ――っ! カメハメ師匠と生み出したこの技は――っ! さすがのおまえでもこの技の存在は知らなかったんじゃないのか――っ!?」

 

 カオスの言うとおり公式戦では一度しか使用していない技だ。

 ロビンマスクといえど研究不足から対処し切れぬだろうと、キン肉マンは踏んでいた。

 だが……ロビンは静かに言う。

 

「知らないわけがないだろう……」

 

 苦痛を声ににじませながらも、訥々と語る。

 今一度、己の胸に熱く滾る“執念”という炎を燃やすために。

 

「国外追放されたわたしが……なぜ一度愛する妻アリサを捨てたと思う? なぜアメリカへ渡りおまえを追ったと思う? すべてのきっかけはおまえがハワイ超人チャンプとなったという報を新聞で読んだからだ……あのおかげで、私の中の燻っていた執念が燃え上がった」

 

 あのときの屈辱を思い出せ。

 イギリス代表超人として、超人同盟の客将として、ウォーズマンの調教師として、三度の負けを経験した。

 この期に及んでまだ負けるのかと、ロビンは己を奮い立たせる。

 

「そのときのフィニッシュ・ホールドを意識しないわけがない。キン肉ドライバー、キン肉バスターに次いで、おまえが出してくるならこの技だろうと……事前に読んでいた!」

 

 ロビンマスクはがむしゃらに身を揺らし、両手と両脚の拘束を振りほどいた。

 

『あ――っとロビンマスク、空中でロメロ・スペシャルを振りほどき、キン肉マンとともにキャンバスへ落下していく――っ』

 

 今度はこちらが技を仕掛ける番だ。

 そして、手番はもうキン肉マンには渡さない。

 

「そしておまえは見誤った! 私のフィニッシュ・ホールドがタワーブリッジであると!」

 

 落下しながらもキン肉マンの背後に回り、両腕を掴む。

 バランスを整え、着地体勢も整える。

 狙うのはダウンではない。

 

『空中で体勢を入れ替え、着地……ロビンマスクが仕掛けるこの技は~~っ!?』

 

 キン肉マンは2本の脚でキャンバスに立った。

 ロビンマスクはその背後に“乗っている”。

 

 両脚を相手の両太腿にフックさせる形でバランスを取り、両手首を掴んで捻り上げる。

 こうすることで技をかけられた側は完全に動きを封じられ、もがけばもがくほど泥沼にハマっていく。

 別名アリ地獄ホールドとも呼ばれるこの技の名は――

 

「パロ・スペシャル――――ッ!」

 

『こ、これはウォーズマンの必殺技(フェイバリット)、“パロ・スペシャル”だ――っ!』

 

 ロビンマスクがここ一番というところで仕掛けた技は、ロビン・スペシャルでもタワーブリッジでもない。

 彼の愛弟子であるウォーズマンの高等サブミッションだった。

 

「な……なんじゃと~~っ」

 

 予想だにしなかった技の発動に、キン肉マンは泡を吹いて倒れたい思いだった。

 一方のロビンマスクに精神的揺らぎはない。

 この技の発動は最初から予定していたことだからだ。

 

「なにを驚く! この技はもともと、我が一族に伝えられる一子相伝の技! ウォーズマンはそれを自慢のブレイン・コンピュータで見つけ出し、自分のものとしたが……そこからさらに磨き上げたのは師匠を務めたこの私だ! 実戦でももちろん使いこなせる――っ!」

 

 ロビンマスクは語気に気合を込め、掴んだ両腕を飛行機の操縦桿のように前に倒す。

 

「あぐああ~~っ」

 

 キン肉マンの口から漏れる絶叫。

 激痛を知らせる汗が、滝のようにマスクの隙間から流れ落ちた。

 

「父上――っ!」

 

 父親の尋常でない痛がり方に困惑する万太郎。

 傍らのミートも顔色を恐怖で染め、この世の終わりのように叫んだ。

 

「あ……ああ~~っ! だめだ――っ!」

「な、なにがだめなんだよミート!」

 

 いつも冷静なミートとは思えない慌てぶりに、万太郎もカオスも只事ではないのだと察した。

 ミートは語る。

 

「あなたのお父君であるキン肉スグル様は、これまでも数多くのフィニッシュ・ホールドを打ち破り白星を積み上げてきましたが……パロ・スペシャルだけは、完全攻略を成し遂げられていない数少ない技なんです!」

 

 あのときの凄絶な一戦は今もミートの脳裏に焼きついている。

 まったく身動きの取れないキン肉マン。

 悪魔のようなウォーズマン・スマイル。

 軋む骨と、筋繊維が断絶していく音色。

 あの恐ろしきパロ・スペシャルが、よもやロビンマスクの手によって再現されることになるなんて。

 

「で、でも父上は第21回超人オリンピック決勝でウォーズマンを破り優勝している! そのときもパロ・スペシャルを攻略したんじゃないのか――っ!?」

 

 万太郎は当然の疑問をぶつけるが、ミートは沈鬱な面持ちで答える。

 

「あ……あのときは、ロボ超人であるウォーズマンが王子にパロ・スペシャルを極めている最中に活動限界である30分を超え、自ら技を解いてしまったんです。試合は結局、その隙を突いた王子がキン肉バスターを仕掛け逆転……結果的には勝利しましたが、試合内容では完敗だったと後に王子本人が語っています……」

 

 第21回超人オリンピック優勝の栄光は、決してパロ・スペシャルを攻略して掴んだものではない。

 事態の深刻さを思い知らされ、万太郎は顔を青くする。

 

「そ……それじゃ実質、父上はパロ・スペシャルを破ったことがないっていうの~~っ?」

 

 絶望を感じ取る万太郎の視線の先で、キン肉マンはなおもパロ・スペシャルに抗っていた。

 

「さあ、ギブアップかキン肉マン!?」

「ぬかせ~~っ」

 

 両手首を掴まれたまま、肩の力でロビンの腕を押し返そうとする。

 しかしいかに筋肉自慢のキン肉マンとはいえ、人体構造を無視した動きはできない。

 もがけばもがくほどロビンの術中――パロ・スペシャルはより深く、より強烈に極まっていく。

 

「見ているかウォーズマン! わたしは過去2回に渡りキン肉マンに敗れ……おまえを弟子として送り出した第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトにおいても敗北を喫している! わたし個人と弟子の敗北! その両方の屈辱を払拭するにはこの技で勝利するしかない! ゆえに、わたしがキン肉マンに放つフィニッシュ・ホールドはタワーブリッジでもロビン・スペシャルでもなく……初めからこのパロ・スペシャルだと決めていた――っ!」

 

 先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”で死に絶えた元タッグパートナーに、そして未来からタイムスリップしてきた変わらぬ姿の愛弟子に、この技を捧げる。

 ロビンマスクの万感の思いが籠もったフェイバリット・ホールドは、いかに“奇蹟の逆転ファイター”と呼ばれたキン肉マンでも返せるものではない。

 

 そう、キン肉マンの異名は“奇蹟の逆転ファイター”。

 どんな劣勢に追い詰められながらも、必ず最後には逆転して勝利をもぎ取ってきた。

 メイク・ミラクル。奇蹟を起こすに等しいその力は、まさしくスーパーヒーローの証明と言えた。

 

「し……真のヒーローは“あきらめ”を知らぬ者……たとえこの身が砕けようとも~~っ」

 

 諦めては奇蹟は起こせず、逆転勝利も掴み取れない。

 だからキン肉マンの心は折れないのだ。

 どんな痛みを受け、どんな屈辱にまみれようとも、勝利の先にあるものを得るためには。

 

「わたしに勝利を託してくれたテリーのため……わたしを父上と慕い応援してくれる者のため……悪行超人に怯えるすべての者のため……スーパーヒーロー・キン肉マンとして、諦めるわけにはいかない~~っ」

 

 キン肉マンの額に刻まれた“肉”の文字が燃え上がる。

 全身がボアァッとした光を放ち、固められた両腕の筋肉がパンプアップ。

 ここぞという場面で、超人強度の原則を無視した超パワーを発揮するこの現象こそ――

 

「火事場のクソ力――――っ!!」

 

 後の未来で“K・K・D”と定義される、キン肉族にだけ与えられた神秘の力。

 ウォーズマン、バッファローマンといった強敵たちも、この力の前に敗れていった。

 いわばのキン肉マンの逆転スイッチ。ロビンマスクという難敵との試合で発動しないわけがない。

 

『あ~~っとキン肉マンが起き上がった――っ!』

 

 あらぬ方向に曲げられようとしていた両腕を、火事場のクソ力で強引に戻す。

 前傾姿勢から後ろに体重をかけ、自分の背後でバランスを取っているロビンマスクを振り落とそうとした。

 ――しかし。

 

「火事場のクソ力返し――っ!」

 

 ロビンマスクは猛々しく吠え、再び両腕を前に押し出した。

 まるでキン肉マンの力をそのまま反射するかのごとく、先ほどより深い前傾姿勢を強いる。

 

「この技は相手のパワーを瞬間的に吸収して自分のパワーに変換する! いかに火事場のクソ力といえど、このパロ・スペシャルの術理に抗えるものではない!」

 

 そう、これこそがミートが懸念していたパロ・スペシャルの真の強さ。

 ウォーズマン戦でもキン肉マンが完全攻略できなかった理由である。

 

 そして今回の場合、キン肉マンが技を破れない理由はもうひとつあった。

 火事場のクソ力を発動したキン肉マンと同じように、ロビンマスクの体もまた発光していたのだ。

 ボアァッという、宵闇でランタンの炎が燃えるような神秘的な光に、万太郎は見覚えがあった。

 

「あ、あれはまさか……ケビンの“大渦(メイルストローム)パワー”なのか!?」

 

 ケビンマスクが使っていた火事場のクソ力に相当する力を思い出し、万太郎は戦慄する。

 あれがロビンマスク――我が最大のライバルにして最高の親友、ケビンマスクの父。

 その親友の父親が、己の父親を蹂躙しようとしている。

 

「キン肉マンよ! この“究極の超人タッグ戦”は時間超人の襲来をきっかけに……我が妻アリサの命を救うため、我が息子ケビンの未来を守るために始まった闘いだ! 誰よりも奮起し、主役(ヒーロー)となるべきなのはおまえではない! このロビンマスクだ!」

 

 スーパーヒーローは、キン肉マンだけではない!

 家族を救うため、友に栄冠を届けるため、宿敵に勝利するため、ここは必ずモノにする!

 

「グアアア……ッ」

 

 キン肉マンの口からこぼれる声が、力を失っていく。

 頃合いと見たロビンマスクが、短く息をついた。

 そして、最後の一撃を放つ。

 

「道は譲ってもらうぞ、友よ! パロ・スペシャル・ジ・エンド――――ッ!!」

 

 一気に体重をかけ、キン肉マンの体をキャンバスに押し倒す。

 固められていた両腕はバキボキベキという音を立てて肩から粉砕。

 可動範囲以上に捻り上げられた両腕はもはや動かず、キン肉マンの意識は激痛に刈り取られた。

 

 ハラボテは叫ぶ。

 

「ゴ……ゴングじゃ!」

 

 カン! カン! カン!

 傍らのノックが木槌でけたたましくゴングを叩いた。

 

 リング上にはふたりの超人。

 キャンバスに倒れているのは、“ザ・マシンガンズ”のキン肉マン。

 それを悠然と見下ろしながら立つのは、“ジ・アドレナリンズ”のロビンマスク。

 

 誰が見ても一目瞭然な、勝者と敗者の構図だった。

 

『あ――っと因縁だらけの四者による正義超人対決を制したのは、ジ・アドレナリンズだ――――っ! 打倒キン肉マンに燃える男ロビンマスクと、テリーマンの息子を自称する新星テリー・ザ・キッドが、“完全無欠のタッグ”と呼ばれるザ・マシンガンズを二回戦で打ち破った――――っ!!』

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