ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第042話 セイウチンの語る夢!

“ネオ・イクスパンションズ”が拠点としている練習用体育館。

“ザ・マシンガンズ”vs“ジ・アドレナリンズ”戦後、ネプチューンマンとセイウチンは明日の試合の調整を行うためスパーリングに励んでいた。

 

「セリャタ――ッ!」

 

 リング上でネプチューンマン相手にタックルを打ち込んでいくセイウチン。

 ネプチューンマンはそれを正面から受け止め、時には弾き返し、セイウチンの闘志を高めていった。

 

「もっとこい~~っ」

「オオ――ッ!」

 

 最初こそチェック・メイトのライバル宣言に戸惑いモチベーションが低下していたセイウチンだったが、体を動かすことですっかり持ち直したようだ。

 セイウチンの頭に浮かぶのは友達の姿ではなく、激闘を闘い抜いた先人たちの勇姿――彼らの試合は、心優しき若者に真剣勝負の醍醐味を伝えた。

 

(今日のマッスルブラザーズ・ヌーボーvs2000万パワーズ……そしてザ・マシンガンズvsジ・アドレナリンズの試合を観て、セイウチンが燃えている。これならいけるぜ~~っ)

 

 確かな手応えを感じながらの練習だった。

 ふたりは程よいところで手を止め、休憩に入る。

 

「調子が良さそうだな、セイウチン」

 

 タオルで汗を拭い、水分補給をしながらネプチューンマンは言う。

 セイウチンは流した汗が蒸発しそうなほどの熱気を放ちながら、自信に満ちた瞳を浮かべていた。

 

「ああ。チェックにライバルだなんて言われたもんだから……オラ、自分でも不思議なくらいモチベーションが上がりまくってるだよ~~っ」

 

 ネプチューンマンの印象に反し、チェック・メイトの言葉はセイウチンにとって刺激になっていたらしい。

 パートナーの闘争心を心強く思い、ネプチューンマンはさらに言う。

 

「相手が伝説超人(レジェンド)ウォーズマンでもか」

「ウォーズマンでもだ」

 

 控えめなセイウチンとは思えぬ即答が返ってきた。

 驚嘆するネプチューンマンに、セイウチンは語る。

 

「20世紀では第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイト、悪魔超人との闘い、キン肉星王位争奪サバイバルマッチと獅子奮迅の活躍をし、21世紀ではケビンマスクのセコンド超人クロエとしてロビン王朝(ダイナスティ)に栄光を取り戻したレジェンド中のレジェンド……相手にとって不足はねえ~~っ」

 

 ウォーズマンなにするものぞ、とセイウチンは闘志を滾らせる。

 

「フッ……」

 

 これが若さか――ネプチューンマンはパートナーの成長を嬉しく思い、だからこそ気を引き締める。

 今のセイウチンはおそらくウォーズマンしか見ていないだろう。

 強敵に臆さないその心意気は立派だが、次の試合はそう簡単な話ではないのだ。

 

「立派な意気込みだがな、セイウチン。おまえが真に意識すべきはウォーズマンではない」

「え?」

 

 なにしろウォーズマンの隣には――“やつ”がいる。

“前回”の記憶を持つネプチューンマンだからこそ、最大限気に掛けるべき存在を無視はできない。

 真面目な声音でセイウチンに言う。

 

「次のヘルズ・ベアーズ戦……警戒すべきはマイケルのほうだ」

「あ、あのクマちゃんだか~~っ?」

 

 案の定、ウォーズマンにばかり気を取られていたらしいセイウチンは意外そうに驚いた。

 

「やつはもしかしたら、この“究極の超人タッグ戦”の根幹を揺るがしかねんほどの凶鳥となるやもしれん……先の“チーム・コースマス”戦で見せたレスリングテクニックと凶暴性は、他の超人とは一線を画する。やつの動きひとつで、オレたちの時間超人討伐という計画が一瞬で水泡に帰してしまう危険性すらあるだろう」

「た……確かにあのクマちゃんは可愛い見た目のわりにすげえ動きだったけども……そ、そんなにだか?」

 

 いかなる実力者といえど、さすがに21世紀に名を残す伝説超人ウォーズマンに比べれば見劣りするのでは……と、セイウチンは言いたいのだろう。

 その疑問はもっともだが、マイケルも21世紀に爪痕を残していないわけではない。

 それを口で伝えることもできたが、セイウチンはネプチューンマンがしばらく黙っているだけですべてを察したようである。

 

「も、もしかして……あのマイケルの姿は見た目通りのヌイグルミで、ウォーズマン同様に中に強豪超人が入ってるってことなのか――っ!?」

 

 ネプチューンマンは首肯する。

 

「ああ、おそらくな」

 

 おそらく、と付け加えたのは“前回”のことをセイウチンに知られたくないからだ。

 なのでこの場は、あくまでもそう推察しているという前提で話を進める。

 

「だ……誰だ~~っ!? ネプチューンマン、あんたは気づいてるだか!? あんたの警戒心をそこまで煽り、あのウォーズマンのパートナーを務められるほどの逸材……そんな超人がまだ残っていただなんて!」

 

 さて、どこまで情報を共有しておくべきか。

 突拍子もない推理で真実に導いてはセイウチン不審を買ってしまうかもしれない。

 

「確証は得ていないがな」

 

 ネプチューンマンは手探りでセイウチンと話を合わせていく。

 もしかしたら、という程度の不確かな予想。

 だが限りなくそうだと信じている、確信度でいえば、目指す割合は8割ほどか。

 

「もしや……あんたと同じく、時空船に密航してきた未来の超人?」

 

 セイウチンの問いに、ネプチューンマンは首を横に振った。

 

「いいや……」

 

 さすがに三人目の密航者はありえない。いや、万太郎のガールフレンドも含めれば四人目にもなってしまうか。

 となれば残された選択肢はあとひとつしかない。

 

「じゃあ、この時代の……だけども、めぼしい強豪超人はもうほとんどこの大会にエントリー済みだったはず……」

 

 セイウチンはおそらく伝説超人の面々の顔を思い浮かべていることだろう。

 ヘラクレス・ファクトリーの教官か、もしくは授業で習った歴戦の闘士たちか。

 上手く解答を手繰り寄せてくれればネプチューンマンとしては手間が省けるが、はたして――

 

「あ、ああ~~っ! わかった――っ!」

 

 セイウチンはスッキリした顔で叫んだ。

 

「マイケルの正体は……21世紀では正義超人養成学校“ヘラクレス・ファクトリー”の教官を務め、この時代においては先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”で“四次元殺法コンビ”として出場、あのキン肉マン&プリンス・カメハメのタッグ“マッスル・ブラザーズ”と闘った……“飛翔天使”ペンタゴン先生だか――っ!? 確かにペンタゴン先生は第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトでウォーズマンとの対戦経験があるからパートナーとして抜擢されてもおかしくない! 前大会の出場選手でありながらこの“究極の超人タッグ戦”に顔を出してなかったことを考えても辻褄が合う~~っ!」

 

 ズコッ。

 思いもよらなかった名前を出され、ネプチューンマンはずっこけそうになる。

 

「いや……ペンタゴンではない」

 

 そういえば見ていない。

 ネプチューンマン自身、別に交流がある超人ではないが、やつはいったいどこにいるのだろうか。いや、たしか“キン肉星王位争奪サバイバルマッチ”でキン肉マンが飛翔チームのミキサー大帝に超人墓場送りにされた際そこにいたような……ということはこの時間軸だと死んでいるのか? よもや先日の“宇宙超人タッグ・トーナメント”でマッスル・ブラザーズと試合をしたときにくらったマッスル・ドッキングのダメージで? だ、だが王位争奪戦終盤……ネプチューンマンがネプチューン・メッセージを発信した際には元気な姿で大阪城に駆けつけてきたような……?

 

「じゃ、じゃあ……そのパートナーだったブラックホール?」

「四次元殺法コンビから離れろ」

 

 そもそもどういう縁で正義超人と悪魔超人が組んでいたんだ?

 そして“宇宙超人タッグ・トーナメント”ではキン肉マンもバッファローマンも特に気にしていなかったのはなぜだ?

 ウオオ~~ッ、今さらながら気になり始めてきたが、この“究極の超人タッグ戦”においては些事だ。

 ネプチューンマンはセイウチンの目を見る。

 

「マイケルの正体は……」

「正体は……?」

 

 もうはっきり言ってしまおう。

 最優先すべきは明日の試合の方針を明確にすること。

 そのためには、この名を出さなければ始まらない。

 

「……マンモスマンだ」

 

 ネプチューンマンは言う。

 セイウチンはきょとんとした表情で頭をもたげた。

 

「マ、マンモスマン……?」

 

 その名前を口に出してみても、すぐにはピンとこないようだった。

 だが10秒、20秒と考え込み……やがて、ぽんっ、と手を叩いた。

 

「あ、ああ~~っ! ヘラクレス・ファクトリーで習ったことがあるだ~~っ! たしかキン肉星王位争奪サバイバルマッチでキン肉マンチームと決勝を争った“知性チーム”の一員で……21世紀では悪魔将軍、キン肉マンスーパー・フェニックスと並んで3大最強悪行超人といわれた……あの“超人破壊師(デストロイヤー)”、マンモスマンだか――っ!?」

 

 そう、そのマンモスマンである。

 ヘラクレス・ファクトリーの授業では、“20世紀の悪行超人で一番強かったのは誰か?”という議題に対し、もしかしたらこのマンモスマンだったかもしれないという話が挙がったことがある。

 悪魔超人のボスであった悪魔将軍、公式の上ではキン肉マンの最後の対戦相手となったスーパー・フェニックスに並ぶほどと目された理由は、やはりキン肉星王位争奪サバイバルマッチでの快進撃にあるのだろう。

 特にキン肉マンビッグボディ率いる強力チームとの対戦でペンチマン、レオパルドン、ゴーレムマンを難なく倒してみせた“マンモスの三重殺”は超人史に特筆されている。

 

「だ……だけども、マンモスマンが超人レスラーとしてデビューするのはもうちょっと先の未来のはずじゃ」

 

 セイウチンの疑問は間違っていない。

 キン肉星王位争奪サバイバルマッチが行われるのは“宇宙超人タッグ・トーナメント”の後……この歴史においては間に“究極の超人タッグ戦”が挟まってしまったため、マンモスマンの登場はまだ先のこととなる。

 それなのになぜかといえば、歴史を改変した人物がいるのだ。

 

「そこはおそらく、未来のことを知る21世紀ウォーズマンがその情報アドバンテージを活かし、本来の歴史より早めにデビューさせたのだ。やつは後の王位争奪サバイバルマッチで、特訓中にマンモスマンの襲撃を受け無念の強制リタイアに追い込まれているからな……その実力を見込み、“究極の超人タッグ戦”を勝ち抜くためにパートナーにスカウトしたのだろう」

 

 ネプチューンマンの説明に、セイウチンは感嘆した。

 

「はえ~~っ、考えるもんだなあ。でも、それなら安心でねえか。ウォーズマンと組んでるってことは、今は悪行超人ではねえってことだろ?」

 

 楽観したように言うセイウチンだったが、ネプチューンマンの表情は曇る。

 

「どうかな……オレも実際にマンモスマンとは闘っているからよくわかるが、やつの残虐性は抑えつけられるような代物ではない。今はウォーズマンがうまく飼いならしているようだが、間引きバトルロイヤルと一回戦の闘いですでに暴走の片鱗は見え始めている……いつ悪行超人化して牙を剥くか、わかったものではない」

 

 ネプチューンマンは重苦しい雰囲気を纏って言う。

 セイウチンは徐々に深刻さを理解してきたようである。

 

「悪行超人化って、パートナーは正義超人のウォーズマンなのに……」

「最悪、そのウォーズマンすら裏切る可能性があるということだ」

「ええ――っ!?」

 

 タッグマッチの大会とは、“こいつなら絶対に信頼できる!”と見定めたパートナーと出場するもの。

 それがまさか、裏切りなど。

 

「セイウチンよ。次の試合、場合によっては我々はウォーズマンを無視してでもマンモスマンの暴走を食い止めねばならぬかもしれん。そしてそれは試合の中で致命の隙を生むことになってしまうかもしれないが……最優先すべきはウォーズマンの命だ。マイケルの動向には最大限警戒してもらいたい」

 

 それはもしかしたら、ただヘルズ・ベアーズに勝つことよりも困難なミッションかもしれない。

 しかし、正義超人としての使命感が強いセイウチンは力強く頷いてみせた。

 

「難しそうだが……やるっきゃねえ。オラがんばるだよ」

 

 期待していた言葉に、ネプチューンマンは嬉しくなる。

 とはいえ、セイウチンは若い。

 あまり重責を背負わせてしまうのもよろしくないだろう。

 ここは別角度から攻めてみるか……と、ネプチューンマンは話題を切り替える。

 

「ときにセイウチン、おまえは誰か闘いたいライバルはいないのか?」

「ほえ?」

 

 問われたセイウチンはきょとんとした表情を浮かべている。

 

「チェック・メイトはおまえをライバル視していたようだが、そういえばおまえの口からはそういったことを聞いていなかったと思ってな。多くの強豪超人がひしめくこの舞台で、おまえが意識しているのは誰なのかと」

 

 試合のモチベーションを高めるのはなにも使命感だけではない。

 今日のロビンマスクがそうだったように、ライバルに勝ちたいという気持ちはときに絶大なパワーを生むのだ。

 

「オラは……」

 

 セイウチンは考え込み、しかしそれほど時間をかけず己が思いを口にする。

 

「オラは……万太郎のアニキと闘いてえ」

「ほう」

 

 キン肉万太郎。

 言わずと知れたキン肉マンⅡ世だが、よもやセイウチンにまでライバル視されているとは。

 

「少し意外だ。キン肉万太郎はおまえが以前から“アニキ”と慕っていたほどの男……やはり“究極の超人タッグ戦”が始まる前、洗濯超人だのとバカにされたことが頭にきたか?」

「そんなちっちゃなことは気にしてねえだ。ただ……万太郎のアニキはオラにとって憧れなんだ」

「憧れ?」

 

 セイウチンは過去を振り返るような遠い目で語る。

 

「万太郎のアニキはヘラクレス・ファクトリーの同期だが……あのキン肉マンの息子っちゅーのが災いして、他の新世代超人(ニュージェネレーション)よりも悪行超人に目の敵にされることが多かった。でもアニキは、そのことごとくを蹴散らし正義超人軍に勝利をもたらしてきたんだ。情けなくも先に倒れたオラの仇討ちをしてくれたことも、何度だってあった……」

 

 セイウチンとて男の子だ。

 強い男への憧れは、肥大化することで“そいつを超えたい!”という闘争心に化ける。

 セイウチンの瞳に宿る炎は、まさしく戦闘男児のそれだった。

 

「そんなオラたち新世代超人の代表格ともいえる万太郎のアニキと闘って勝てたら、きっとすんごく気持ちいいんでねえかって。ネプチューンマン……あんたの言ってた“イチバン”に近づけるんでねえかって思えるだよ」

 

 若干恥ずかしそうにしながら、セイウチンは頬を掻く。

 ネプチューンマンは、

 

「いいじゃねーか」

 

 ニカッと笑い、パートナーの成長を心から喜んだ。

 セイウチンが実力を発揮するのに必要だった闘争心は、ライバルに勝ちたいという純粋な意思によって刺激された。

 獣性などというものに頼らずとも、セイウチンは強くなれる……ネプチューンマンは過去の自分の判断を馬鹿馬鹿しく思い、心の中で苦笑する。

 

「気づいているか、セイウチン。もしオレたちがヘルズ・ベアーズを破り……チェック・メイトとアシュラマンの“ザ・ナイトメアズ”が時間超人を倒した場合、トーナメントのベスト4各チームにはひとりずつ新世代超人が出揃うことになるんだぜ」

 

 ネプチューンマンがおもしろがって言うと、セイウチンはハッとした表情を作った。

 

「万太郎のアニキ……キッド……チェック……オラ……あ、ああ~~っ! 本当だ――っ!」

 

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”のキン肉万太郎。

“ジ・アドレナリンズ”のテリー・ザ・キッド。

“ザ・ナイトメアズ”のチェック・メイト。

“ネオ・イクスパンションズ”のセイウチン。

 

 ときに共に闘い、ときに一緒に遊び、ときにコギャルの女の子を取り合った、新世代超人の友人たち。

 パートナーに据えるのは、それぞれ――新進気鋭のニューカマー、20世紀の正義超人筆頭、同じく20世紀の悪魔超人筆頭、そして21世紀からやってきた大ベテラン超人。

 タッグの形は違えど、この4チームには共通項があるのだ。

 

「わざわざ21世紀まで弟子を助けに出張(でば)ってきてもらったウォーズマンには悪いが、オレも見てみたくなったぜ。同期のライバルたちを倒しイチバンになるおまえの姿が」

 

 その手助けをしてやるのが、ネプチューンマンのセイウチンに対する贖罪だ。

 

「明日は気張っていこうぜ。時間超人の討伐やケビンマスクの救命なんていうミッションはとっとと済ませて、後顧の憂いなく新世代超人ナンバーワン決定戦と洒落込むためによ~~っ」

 

 おもむろに拳を突き出すネプチューンマン。

 セイウチンはその拳に自分の拳を合わせた。

 

「おう!」

 

“ネオ・イクスパンションズ”の心は同じ。

 明日の対“ヘルズ・ベアーズ”に向けて――いや、その先に待ち構えるライバルたちとの闘いまで見据え、闘志を燃え上がらせるのだった。

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