ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

44 / 106
第044話 パートナーを信じる心は曲がらない!

「な、なにィ――ッ!?」

 

“アニマル・チェンバー・デスマッチ”3人目の解放超人は――“ファイティング・コンピューター”ウォーズマン。

 無情にも閉ざされたままの鉄檻を掴みながら、ネプチューンマンは心中で嘆いた。

 

(ここで歴史が変わるとは! 前回の対決ではオレが3番目に選ばれセイウチンと共にマイケルを追いつめたのに……これではセイウチンがウォーズマンとマイケルのふたりに一方的に痛めつけられてしまう!)

 

 こうなってしまっては、ネプチューンマンはさらに5分間手出しができなくなる。

 しかしその間、セイウチンはたったひとりでウォーズマンとマイケルのふたりを相手取らなければならない。

 

「マイケル――ッ!」

「クゥーン」

 

 ウォーズマンが勇ましくパートナーの名を呼び、マイケルが“肉のカーテン”に構えていたセイウチンの腕を殴るのではなく掴んだ。

 

『マイケル、ウォーズマンの合図を受けセイウチンをロープに振った――っ』

 

 ロープまで投げられ、反動で返ってくるセイウチン。

 その無防備な喉元を狙い、ウォーズマンがラリアットの体勢で左腕を振る。

 

『あ――っとウォーズマン、ネオ・イクスパンションズのお株を奪うアックスボンバーを見舞った――っ!』

 

 ネプチューンマンの喧嘩(クォーラル)ボンバーほどではないが、狙いすましたボンバーはセイウチンから容易くダウンを奪う。

 続けてウォーズマンはセイウチンの両脚を抱えるように持ち、高々と掲げる。

 

『ウォーズマン、今度はセイウチンを立ち姿勢のまま抱えあげた――っ』

 

 父親が子供をたかいたかいするような、あるいは力自慢の男が花嫁を祝福するような、そんな姿勢。

 もちろん、これも次なる技へのセットアップだ。

 

「こい、マイケル!」

「クゥ~ン」

 

 マイケルが飛び、身動きができないセイウチンの後頭部めがけて蹴りを放った。

 

『セイウチンに打点の高い延髄斬り――っ!』

 

 ウォーズマンの腕から蹴り飛ばされたセイウチンは高い位置からキャンバスに落下し、再度ダウンしてしまう。

 一方のマイケルは軽やかに着地。涼し気な顔でウォーズマンの横に並び立つ。

 

『マイケル、強靭なバネを見せつけた――っ! 空中殺法もお手の物だ――っ』

 

 早くもツープラトンを決めた“ヘルズ・ベアーズ”。

 やはりセイウチンひとりでは5分も凌ぐのは至難の業か――と、誰もが思う。

 

「ま……まだまだ~~っ」

 

 しかし、意外にもセイウチンはすぐに立ち上がった。

 5分間にも及ぶマイケルの猛攻を受け、さらにはツープラトンまで食らってしまったというのに、未だ闘志が潰える様子はない。

 が、肉は腫れ上がり全身各所からは出血、そしてふらふらと……見た目から察せられるダメージは大きい。

 

『防戦一方のセイウチン、なおも立ち上がる――っ! 試合はもはや、ネプチューンマンが参戦するまでにセイウチンが生き延びられるかどうかという様相になってきました――っ』

 

 実況アナウンスはすでにこの“アニマル・チェンバー・デスマッチ”をそう捉えていた。

 観客たちもほとんどが同意見だろう。

 趨勢は決した――セイウチンはここまで、ネプチューンマンひとりとなってしまえば“ネオ・イクスパンションズ”に勝ち目はない。

 

「クッ……」

 

 ネプチューンマンは鉄檻の中で歯噛みする。

 作戦は失敗した。もはやマイケルの暴走がどうこう言ってられる段階ではない。この場はセイウチンが5分間凌ぎ切ることが最優先だ。

 

「セイウチンよ! こうなってしまっては作戦を変更せざるをえない! 防御に徹することはやめ、反撃に転ずるのだ――っ!」

 

 2対1では肉のカーテンも無意味。疲弊した今のセイウチンでは逃げ続けるのも現実的ではない。

 ならばここはセイウチンの素の実力を信じ、攻めさせる。相手にもダメージを負わせたほうが、結果的には時間を稼げるだろう。

 だがセイウチンは首を振る。

 

「そ、それじゃダメだ……ネプチューンマン。オラはあんたの立てた作戦に納得してこの闘いに臨んでいる。多少のアクシデントに振り回されてちゃ……ヘラクレス・ファクトリー一期生の名が泣くだよ」

 

 セイウチンは作戦変更を拒否し、なおも防御による時間稼ぎに臨もうとしていた。

 

「バカモノ! 臨機応変という言葉があるだろう! 冷静に考えて、おまえひとりではウォーズマンとマイケルのふたりには太刀打ちできーん!」

 

 おそらくはネプチューンマンの懸念していたマイケルの暴走、それによるウォーズマンへの裏切りを最大限警戒しているのだ。

 新世代超人(ニュージェネレーション)として、万が一にも伝説超人(レジェンド)ウォーズマンに危険が及ぶような真似はできない。

 高潔なヘラクレス・ファクトリー一期生としての性格が、セイウチンを意固地にしていた。

 

「だからこそ、ここはあんたが出てくるまで時間を稼ぐだよ!」

 

 とはいえ、馬鹿の一つ覚えのように肉のカーテンを続けるセイウチンでもない。

 相手がふたりに増えたのであれば、相応の手段に変えるだけだ。

 

『お――っとセイウチン、リング内を四方八方走り回り、ヘルズ・ベアーズを翻弄していく――っ』

 

 セイウチンは足を使おうと考えた。

 もともと脚力には自信を持つセイウチンである。客受けは悪いだろうが、最終手段として逃げ回ることも視野に入れていた。

 

 ウォーズマンとマイケルはリングの中央付近でじっと立ち尽くす。

 セイウチンはその周囲を回り翻弄。

 ネプチューンマンは、

 

「ダメだ……それでは無駄に体力を消耗するだけだ――っ!」

 

 セイウチンに判断ミスを指摘する。

 相手が海千山千の超人であれば、ムキになってセイウチンを追いドツボにはまらせることもできるだろうが……相手は歴戦の伝説超人なのである。

 

 ウォーズマンは棒立ちのまま、タイミングを見計らう。

 どれほどの脚力自慢、どれほどの体力自慢であろうと、どこかで息を整える間が生まれる。

 狙うのはそこ――そして今、ウォーズマンはセイウチンがわずかに減速したのを見逃さなかった。

 

「コ――ホ――ッ」

 

『ウォーズマンの飛び蹴りがセイウチンを捉えた――っ!』

 

 あっさりと蹴り技を食らってしまったセイウチンは、ダウンだけはしまいと踏みとどまる。

 ウォーズマンは立ったままでいるなら好都合とばかりに組み付いた。

 

『ウォーズマン、ふらついたセイウチンの頭部を正面から脇で抱え込み……逆さに持ち上げた――っ』

 

 抵抗できないほどにダメージを受けているからこその、大掛かりな拘束。

 逆さまになったセイウチンは当然、頭が真下に来るよう固定されている。

 そのままウォーズマンが後方に倒れ込み、頭から落とせば――

 

『ブレーンバスターが炸裂~~っ!』

 

 極めてオーソドックス、ゆえに強力な脳天砕き技が、セイウチンにさらなるダメージを与えた。

 

「グアア~~ッ」

 

 キャンバスの上で悶絶するセイウチン。

 彼の特徴的なドレッドヘアは血に濡れていた。

 

『脳天を突き刺されたセイウチン、さすがに立てないか――っ!?』

 

 実況に反し、セイウチンはなおも立ち上がろうとする。

 とはいえ、先ほどの延髄斬りに続く頭部への直撃。

 その動作はどうしても緩慢なものになってしまう。

 

「オ……オラはまだやれる~~っ」

 

 重い体を持ち上げようとする途中、ウォーズマンが背後に躍り出る。

 セイウチンが完全に立ち上がろうとする直前で、後ろから首に腕を回してきた。

 

『ウォーズマンのチョークスリーパーだ――っ!』

 

 裸絞め。

 相手の頸動脈を腕で絞める単純な技だが、深く極まれば意識をシャットダウンすることは容易い。

 

「テメー! ウォーズマン! セイウチンを絞め落とす気か!?」

 

 ネプチューンマンが鉄檻を破壊せん勢いで前のめりになる。

 チョークスリーパーは一度極まってしまえば脱出困難な代物。

 ウォーズマンほどの関節技の名手が仕掛けるスリーパーともなれば、その精度は疑うべくもない。

 

「ぐ、ぐぐ……」

 

 セイウチンは苦しそうに唸る。

 どうにか己の首とウォーズマンの腕の間に手を差し込もうとするが、余力が足りないようだった。

 

「セイウチンよ、聞け」

 

 ウォーズマンはセイウチンの背後から言う。

 囁くような声は小さく、観客はもちろんネプチューンマンの耳にも届いてはいないだろう。

 だからこそ、己が考えを伝えるには絶好の機会。

 

「ケビンマスクはこのオレが必ず救い出す。だからおまえはここでギブアップするんだ」

 

 わかりきっていた決意表明と、降参の打診。

 すでにゴングが鳴った試合の最中にそんなことを言われるとは思わず、セイウチンは戸惑った。

 

「な……なにを?」

 

 ウォーズマンはチョークスリーパーの力を緩めぬまま言う。

 

「言葉のとおりだ。準々決勝へはオレたち“ヘルズ・ベアーズ”が勝ち進む。おまえたち“ネオ・イクスパンションズ”はここでトーナメントを降りるんだ」

 

 言い方を変えようとも、内容は変わらない。

 ウォーズマンはこのままセイウチンを絞め落とすのではなく、言葉で降参しろと促していた。

 

「ふ……ふざけるでねえ~~っ。オラとネプチューンマンはイチバンになるって約束したんだ……こ、こんだらとこでギブアップなんてできるか~~っ」

 

 超人レスリングは常に全力勝負。ベストバウトと呼ばれる試合の数々は例外なくKOによって決着するものだ。

 いくら劣勢になろうとギブアップ要求など受け入れがたい……いや、ウォーズマンはなにも可愛い後輩に手心を加えたいがために降参を勧めているわけではないだろう。

 

 これは、交渉だ。

 準決勝や決勝を見据えダメージを抑えようとしているのか、それとも別の目論見があるのか。

 どんな理由があれど、セイウチンが素直にそれを口にすることはない。

 

「目的を履き違えるな。おまえたち新世代超人の……いや、オレとネプチューンマンを含めた21世紀から来たタイムワープ超人のミッションはケビンマスクの救命。その他は二の次だ。イチバンを目指すなら、21世紀に帰ってからにしろ」

 

 たしかに、正義超人の使命を第一に考えるならそうするべきだろう。

 しかしこれはトーナメント。時間超人を倒し、ケビンマスクを救うためには力を証明する必要がある。

 

「い……言ってることはわかるだが、それならオラたちが勝ち上がってもいいはずだ~~っ」

 

 勝ち進むのはより強いほうであるべき。

 これはそれを決めるための試合だ。

 

「それは容認できん。なぜならば、おまえのパートナーであるネプチューンマンには怪しい行動が多すぎる」

 

 ウォーズマンは冷徹に言い放つ。

 横目でネプチューンマンを一瞥し、さらに声を潜めて続けた。

 

「やつの動向は観察させてもらった……このウォーズマンの正体をいち早く見破ったところでなにか怪しいと思っていたのだ。悪魔超人であるアシュラマンの招聘に始まり、ブロッケンJrを使ってカーペット・ボミングスの闇討ちを指示、二回戦前にはマシンガンズやアドレナリンズに秘密裏に接触したりなど、裏からこの“究極の超人タッグ戦”をコントロールしようとしている動きが見られる。ただ21世紀からケビンを救いに来ただけとは思えない立ち回りだ……なにか、オレたちの知らない重大な秘密を抱え、それゆえに別の目的を果たそうとしているようにも思える」

 

 一回戦から抽選会、そして二回戦までと、ウォーズマンは密かにネプチューンマンを探っていたのだ。

 普通なら自分たちの試合に備え練習に励むところを、彼はほとんどセイウチンと別行動を取っていた。

 

「ウォ……ウォーズマン。おめー、なにが言いてえだあ~~っ」

 

 セイウチンは怒気を交え問う。

 ウォーズマンの答えは簡潔だった。

 

「はっきり言おう。オレはやつがスカーフェイスと同じように“トロフィー球根(バルブ)”の魔力に魅了され、完璧(パーフェクト)超人としてそれを手に入れようとしているのではないかと疑っている」

 

 ネプチューンマンが、悪行超人と同じ目的を有している――と。

 

「ふ、ふざけたこと言ってるでねえ~~っ」

 

 セイウチンは怒り、チョークスリーパーをかける腕に思い切り爪を立てる。

 ウォーズマンは怯まず、セイウチンを諭すべく言葉を重ねた。

 

「ふざけてなどいない。やつは己が完璧超人として最も輝いていたこの時代に舞い戻ったことで、かつて封印したはずの悪の心を取り戻してしまったのだ。しかし表向きは正義超人として動き、おそらくは他のタッグチームにこの大会一番の難敵である時間超人を消させようとしている……抽選会でやつらとの対決を避けたのがその証拠。トーナメントから悪行超人が消え、これでアリサやケビンも助かると伝説超人や新世代超人が油断したところで本性を表す……これがオレの考えるやつのシナリオだ」

 

 ウォーズマンの推理は、セイウチンにとって思いもよらぬ可能性だった。

 まさかそんな狡猾に立ち回る超人がいるなど……いや、あるいはネプチューンマンほどの年齢を重ねた超人であるならば、そういった知恵を働かせてもおかしくないのかもしれない。

 

「セイウチン。おまえはネプチューンマンにとって、疑念を遠ざけるための隠れ蓑なのだ。新世代超人の中で最も正義に熱く優しさに満ちたおまえと組んでいれば、まさか悪事を企んでいるとは誰も思うまい」

 

 セイウチンは、ネプチューンマンに利用されている。

 突きつけられた考察に、セイウチンは声のトーンを落として言った。

 

「た……確かに、ネプチューンマンのおっちゃんはオラになんか隠してる……」

 

 練習時間を削ってちょくちょくいなくなったり、オプティカル・ファイバーなる力を秘蔵していたり……マイケルの正体についてもなにか言えないような確信を持っている様子だった。

 不審感がないといえば嘘になる。

 だが――

 

「でもウォーズマン……あんたの推理は大ハズレだ」

 

 ウォーズマンが知らないことを、セイウチンは知っている。

 それは、己を含めた正義超人たちへの素直な感情。

 ときには涙を、ときには誠意を、ときには使命感を見せた、あの姿。

 あれが演技などとは到底思えない。

 

「イリューヒンやバリアがやられたことに憤り……事情は知らねえがチェックに土下座までして謝り……キン肉マンたちの闘いに感動して涙を流す……なにより、超人レスラーとして錆びついていたオラのことをピッカピカに磨き上げてくれた。新世代超人の中でオラがイチバンになる姿を見てみたいとまで言ってくれた相棒を、疑うことなんてできねえ~~っ」

 

 セイウチンは腕に力を込める。

 ウォーズマンは無駄だと言わんばかりにスリーパーの力を強めた。

 

「ギ、ギブアップなんてもってのほか……この試合に勝つためなら、オラは……」

 

 完璧に極まったスリーパーを力尽くで引き剥がすの不可能。

 それならば――

 

「獣にだってなってやるだ――っ!」

 

 この自慢の“牙”を使う。

 セイウチンは一瞬にして獣のような形相を見せ、鋭く伸びた牙をウォーズマンの腕に突き立てる。

 刺さった箇所から鮮血が吹き出した。

 

『あ――っと! 突如伸びたセイウチンの牙がウォーズマンの腕に突き刺さり、チョークスリーパーを解除~~っ』

 

 たまらず腕を離してしまったウォーズマン。

 一旦距離を取り、豹変したセイウチンを警戒する。

 

「セイウチン……おまえ!」

 

 セイウチンの牙はウォーズマンの血で汚れていた。

 目つきは肉食獣のように鋭く、ドレッドヘアは荒々しく揺れている。

 

「ガルル――ッ!」

 

 上野動物園のライオンが竦み上がるような咆哮を上げ、肘を前に出して襲いかかった。

 

『セイウチン、ウォーズマンの顔面にエルボーを叩きつけた――っ』

 

 この試合で初めて見せたセイウチンの攻撃技に、さすがのウォーズマンも対処が遅れた。

“ネオ・イクスパンションズ”に訪れた反撃の好機。

 しかし、未だ参戦を果たせないネプチューンマンは表情に焦りをにじませた。

 

「い……いかん! あの姿は!」

 

 ネプチューンマンの脳裏に“前回”の忌まわしき記憶が蘇る。

 セイウチンの奥底に見出した獣性という力――それが表出した姿。

 今回の“究極の超人タッグ戦”では封印すると決めていたそれを、セイウチンは自ら開放した。

 

「グワガ――ッ」

 

『セイウチン、まるで野獣のような咆哮をあげながらウォーズマンに飛びかかる――っ』

 

 ウォーズマンの血を、肉を求めんと牙をむき出しにするセイウチン。

 その獣性に呼応するように、もうひとりの獣性を秘める超人が割って入った。

 

「クゥ――ン!」

 

 飛来するセイウチンを撃ち落とすがごとく、マイケルはハイキックを放つ。

 

『マイケルがそれを迎撃――っ』

 

 キャンバスに叩き落されたセイウチンが膝をつく。

 

「ちょうどいい」

 

 窮地を脱したウォーズマンは変貌したセイウチンを睥睨し、一歩下がった。

 

「セイウチンよ。オレが二回戦で“ネオ・イクスパンションズ”を対戦相手に選んだ理由はネプチューンマンの野望を暴きたかったのもあるが……このマイケルをおまえと闘わせたかったというのもある」

 

 ウォーズマンに代わり前に出たのは、もちろんマイケルである。

 

「我がパートナーは知性と獣性、二律背反する性質をあわせ持つ超人。しかし今はまだ潜在能力(ポテンシャル)頼りで、それを活かすための経験が圧倒的に不足している。マイケルが時間超人すら倒しうるほどの実力派超人へと成長するためには、似た性質を持つおまえとの対戦経験を積ませるのが最良だと判断したのだ……」

 

 抽選会のときには秘めていた知られざる目論見を語り、ウォーズマンはマイケルを送り出す。

 セイウチンは望むところと言わんばかりに大口を開け、真っ向から挑みかかった。

 

「グオオオ――ッ」

 

 対するマイケルは無駄に吠え返したりはせず、自ら踏み込み間合いを潰す。

 

『マイケル、突っ込んできたセイウチンを冷静にキャッチし、首相撲に捕らえる――っ』

 

 ゼロ距離となったマイケルとセイウチン。

 首をガッチリ組まれたセイウチンは対応に窮し、一方のマイケルは的確に相手の腹部を狙い撃った。

 

「クゥーン、クゥーン」

 

『そのまま膝蹴りの連打だ――っ』

 

 叩き込まれる膝、膝、また膝。

 セイウチンはなんとか手を差し入れ防ごうとするが、すぐに弾き飛ばされる。

 

『反撃の狼煙をあげたかと思われたセイウチン、やはりダメージが溜まりすぎているか!? 防戦一方だ――っ』

 

 連続の膝蹴りでセイウチンを弱らせ、抵抗が弱まったところで首相撲を解除。

 相手の体を回転させ、逆さまに抱えあげる。

 その状態から軽く跳躍し、脳天が一番下にくるように叩きつける。

 

『強烈なツームストンボムが決まった――っ!』

 

 キャンバスに突き刺さったセイウチンの体が崩れ落ちる。

 うつ伏せに倒れ、ダウン判定。

 手応えを感じたマイケルは追撃の手を止め、背中を向ける。

 

「うう……」

 

 何度目になるかわからない脳天砕きを受け、セイウチンの勢いが完全に止まった。

 ダウンカウントが進みながらも、起き上がれない。

 孤立無援の試合は、若き闘士から闘う力を奪い取ってしまった。

 

 そんなセイウチンのもとに、ひとりの男が歩み寄る。

 目元を覆うマスクに、攻撃的な鉄鋲仕込みのベスト、そしてレスリングパンツ。

 34年もの間、変わることなく愛用し続けてきたコスチュームで登場したのは――

 

「待たせたな、セイウチン」

 

 もちろん“ネオ・イクスパンションズ”の頭目、ネプチューンマンである。

 

『あ――っと、あまりにも静かに、そして厳かに登場~~っ! それゆえに4つ目のアニマル・チェンバーが開かれたことに気づくのが遅れ失礼しました! ネオ・イクスパンションズのチームリーダー、ネプチューンマンが今リングインだ――っ』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。